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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/05/18

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

前回の記事では同人テクノをテーマとして取り上げました。
これらは現在の日本に於けるインディーズテクノシーンの一端と言い換えることもできるわけですが、日本にテクノが根付いたのは今に始まったことではありません。
例えばKagamiやQuadra(a.k.a. Hiroshi Watanabe)が所属していたFrogman Recordsや、Ken Ishii、Co-Fusionが所属していたSublime Recordsと云った日本のテクノレーベルは90年代から存在しており、海外レーベルと比較しても遜色ない多くの名曲を輩出してきました。
(Sublime Recordsについては現在も継続活動中です。)
その中に当Hardonizeとして是非取り上げたいクリエイターがおりますので、前回から引き続き日本人アーティストにスポットを当ててお送りします。
今回ご紹介するのはこの人。

【Chester Beatty】

chester beatty

https://www.facebook.com/chester.beatty

金沢出身のDJ/クリエイター。
現在は東京在住でdextraxのryo氏が率いるLader Productionに所属しております。
当初はナガイエリともう1人を含む3人組グループの名義だったそうですが、程なくして個人名義に。
Disq、Bodyshowerと云ったセルフレーベルから積極的にリリースを重ねる一方、Jeff MillsやSurgeonも所属するジャーマンテクノシーンの名門Tresorとも契約を結んだ出世人です。

この名義での初のリリースは97年のこの曲でした。

Chester Beatty, DJ Shufflemaster / Beatboxx EP A1

重厚で疾走感のあるハードミニマル。
今でこそこのような曲をハードミニマルと呼ぶことができますが、当時はまだ明確なカテゴライズが出来ていない時期でもありました。
ちなみにJeff Millsがこの手のテクノを作っていたのが丁度この時期(The Bellsのリリースが96年)であり、更にインターネットもまだ発展途上だったことを考えると、デビュー作にしてかなり先鋭的なことをやっていたことが伺えます。

そして2000年に出たこのリリースではある1つの方向性を見出します。

Chester Beatty / Levanon B1

当Hardonize連載記事をご覧頂いている方であれば、今これを聴いてパッと思い当たるフシがある筈です。
そう、後年ハードグルーヴと呼ばれる音楽を氏は2000年にして、日本人アーティストとして、既に具現化させていました。
パーカッションとフィルター、そしてブラス系サンプリング、やや速いテンポ、這うようなベースライン、どれも今のハードグルーヴが持つ要素です。
私が知る限りでは当時のファンキーなテクノと云えばKagamiに代表されるディスコっぽいものか、或いはトライバルリズムに寄ったものが殆どで、このようにハードテクノの要素を取り入れたものはほぼ無かったように思えます。

これ以降、Chester Beatty氏はファンキーなハードテクノとしてのカラーをより前面に打ち出したリリースを重ねます。
以下3作品はデジタルリリースされてないものですが、特にオススメしたい曲なので是非レコード屋でDIGして頂きたい。
そんなに入手難度は高くない筈です。

FLR / Easy Filter (Chester Beatty Remix)


※FLRはKen Ishii氏の別名義。

DJ Shufflemaster / Fourthinter (Narita Remix)

Chester Beatty, Peter Jacques Band / Shot of Love (Walking on Music)

2001年~2003年辺りのリリースです。
ド直球に派手なハードテクノで、マスタリングこそ今風ではないことを除けば現行の新譜に全く引けを取らない仕上がりです。
3番目に提示した曲は前述のTresorから出たアルバム『Shot Of Love』に収録されており、このアルバムそのものがこういったディスコ×ハードテクノトラックのコンパイルとなっているので心からオススメです。

さて、ここまで氏の作品をずらずらっと挙げてみましたが、実はどれも2000年代の曲でございまして、じゃあ最近はどんな曲を作ってるのかと申しますとこんな感じ。

檸檬 / ラストキス

ハードテクノではないですね。
檸檬は70年代のシティポップをコンセプトに2013年からリリースを開始したプロジェクト。
https://www.facebook.com/lemonrsc/
https://soundcloud.com/lemonrefrain
4枚目のEPとして2015年にリリースされた『君と出逢えば』は同年の『スマ婚』のCMソングとして使用されている他、今年初頭に放送された資生堂による音楽番組『花椿アワー』内にてtofubeats氏にプレイされたりもしました。
(そのトラックリストがこちら。)

このプロジェクトにCheaster Beatty氏はアレンジャーとして参加しております。
上のグイグイ来るハードテクノのイメージからはかけ離れたものがありますが、程良くアーバンでファンクな曲調は松任谷由美辺りが好きな人には超オススメ。
あと毎回ヴァイナルでリリースしていると云うことも書き加えておきます。

クラブミュージックとして取り上げると、去年このようなリリースがありました。

Chester Beatty, DJ Shufflemaster Feat. DJ Funk / Our House Music

こちらもハードテクノではなく、アシッドハウス。
Cheaster Beatty氏と共に日本のハードテクノシーンを長きに渡り牽引してきたDJ Shufflemaster氏、そして先日来日したシカゴハウスのレジェンド、DJ FUNKとのコラボレーションと云う正にあの時代を彷彿とさせるコラボレーションはちょっとした事件です。
(しかもリミックスにDJ TASAKA。)

と云うわけで音楽活動自体は継続している模様。
去年丁度DJ Shufflemaster氏が未発表曲コンピレーション『Restrospective I 1995-2002』、『Restrospective II 1995-2002』を立て続けにリリースしたこともあり、その中にも硬いテクノがふんだんに含まれていることから、ふとした拍子にCheaster Beatty氏もこの手の曲を作ってくれることに期待を寄せております。
余談ですが、全く現在のハードテクノに関わっていないと云うわけではなく、とあるハードテクノアーティストのマスタリングとしてクレジットに名前が載ってたりするのですが、その話はまた追々。

次週05月23日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/05/04

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

201705_M3
先週は同人音楽即売会M3に行って参りまして、その釣果がこちらになります。
同人音楽と云うものについては今年頭に書いた記事でも取り上げておりまして、ざっくり説明するならば『様々なジャンルを含むインディーズ流通の音楽』です。
従って収穫物にはテクノ以外も含まれているのですが、概ね1日でこれくらいワタクシのライブラリーが増える日が年に数回ございます。
そんなわけで今回のテーマは

『M3-2017春』で買った新譜同人テクノ

です。
DJユースなものから同人音楽らしい面白いものまで、国内にはまだまだこんなクリエイターがいるんだなと云うことが伝われば幸いです。
前置きもそこそこに早速いってみましょう。
※表記順は『【アーティスト名】 / 【リリース名】 [【サークル(レーベル)名】]』です。

本間本願寺 / 源氏香 [ビッグファイア]


国内ハードグルーヴのオリジネイターと言ったら間違いなくこの人、海外レーベルからもバシバシリリースを飛ばしているHomma Honganji氏の初のフルアルバム。
10曲通してファンキーなハードテクノと云うのは(本人も言ってましたが)同人即売会史上初。と云うより国内作品の括りでも初なんじゃないでしょうか。
bandcampで配信されたトラックをメインにやや危ないネタものも交えた収録内容となっており、バッチリDJで使える1枚となっております。
個人的オススメはシンプルなボトムにスペーシーなシンセが乗った4曲目、『夕顔』。
ビッグファイア:http://bigfire.info/

bassmicrobe / exception EP [秋葉原重工]


Hardonizeとも度々コラボレーションを行ったりして大変お世話になっているパーティー、『秋葉原重工』のレーベルとしての新作がコチラ。
EDM、ベースミュージックから速いのまで多様なスタイルをお持ちのbassmicrobe氏によるテクノEP。
重たい、ストイックな感じの音楽が好きな方が好きそうだなと思う一方、氏のオールジャンルに裏打ちされた遊び心も見え隠れする面白さがあります。
個人的オススメは若干トライバルなボトムの上でリフがコロコロ変わる4曲目、『diverge』。
ちなみに購入者特典として追加で3曲ダウンロードできるようになっており、そちらは異様にアシッドシンセを強調したものが集まっております。
秋葉原重工:http://www.ahiweb.info/

Philce / RODEO [exbit trax]


ハードテクノとも親和性の高いアップリフティングな4つ打ちダンスミュージック、ハードダンス。
Philce氏はその音楽に於いてかなり自由奔放に、様々な音を取り入れた楽曲を作る印象がありますが、それを満天下に示す形でリリースしたのがこのソロアルバム。
大箱の煌びやかな照明の中に映えるド派手なシンセが手を変え品を変え打ち鳴らされたトラックの数々はピークタイムにうってつけ。
個人的オススメはジャズっぽいピアノ旋律の後、急に下品なベースが炸裂する8曲目、『The Sight』。
ちなみに本作は2枚組となっており、DISC2はexbit trax及び周辺アーティストによるリミックスが詰め込まれています。
exbit trax:http://exbittrax.jimdo.com/

ゴエモンインパクト / からくりテクノ道中 [YTR RECORDS]


この雑コラ感あるジャケットや文字列だけ見ると誰だこいつらはとなるのも無理ありません。
実態はnadeco氏とRedOgre(Bound Round)氏のユニットで、リリースとしては本作が初ですが、最近この名義でパーティーにちょくちょく出演してたりもします。
両者共活動母体はハードコアですがHardonizeへ出演して頂いたこともある程ハードテクノにも造詣が深く、それがこういった形で世に出るのは嬉しいことです。
ハードグルーヴあり、アシッドあり、インダストリアルありと少ない曲数ながら実験意欲溢れる1枚。
個人的オススメはパーカッションと声ネタのループがファンキーな5曲目、『Into the Roil』。
YTR RECORDS:http://ytrrecords.blog51.fc2.com/

Kouki Izumi / Multiway Transport EP [technoA]


東方×テクノを掲げてもう10年選手、『リズムしか鳴ってない、よく分からない音楽を作っています。』とはKouki Izumi氏本人の弁。
M3ではオリジナル作品をリリースしており、今回の新作がコチラになります。
徹底的に削ぎ落とされたテクノ、ミニマルが氏の主戦場であり、それで6時間のDJとか平気でこなすストイックな嗜好の持ち主。それが音にもバッチリ反映されている印象を受けます。
個人的オススメは複雑なリズムとスチーム的音使いで無機質さが際立つ2曲目、『Multiway Transport』。
technoA:http://technoa.info/

TUSA / SAKURA [circumstance]


以前の記事でも紹介させて頂いたリスニングとしても機能するテクノ、エレクトロニカをリリースしているcircumstance。そこに所属するTUSA氏のEPがこちらになります。
試聴はタイトルトラック1曲しか上がっておりませんが、実際は3曲入り。
で、聴いて頂くと分かると思うのですが、どことなくゴアトランスっぽい独特のメロディーを軸としています。
スネアの打ち鳴らし方とかもこの手のテクノが枝分かれする前の90年代感あって懐かしさを感じさせますね。今尚こういった作品が生まれるのも同人音楽の魅力です。
個人的オススメはプログレッシブトランス的なロングスケールのコードが並走するシンセによって奏でられる3曲目、『Techno Works』。
circumstance:http://www.circumstanceinc.com/

ひとまず6作品ガガッと挙げてみましたが如何だったでしょうか?
勿論これらは今回購入したうちの一部ですのでまだまだ紹介したい作品はたくさんあります。
上で挙げたのは全て新譜なので旧譜もそうですし、あと前も言いましたがテクノ以外もやりたいですね。
トランスとか、エレクトロニカとかEDMとか・・・どうでしょうかボス?

次週05月09日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。