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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2019/07/11


特別連載:ハードテクノとは何か?
第3回:ハードアシッド編
特別連載:ハードテクノとは何か? – 目次

第1回:黎明期編
第2回:ハードミニマル編
第3回:ハードアシッド編 (今回)

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

ここ数回に渡ってお送りしております、ハードテクノが内包する音楽のスタイルについて解説していくコーナー、今回はその3回目となります。

初回ではハードテクノのサブジャンルについて上のような図を用いて表した上でハードテクノの特徴を
・メインストリームテクノよりは速いテンポ
・4分打ちのハイハットによる疾走感のあるグルーヴ
・キックの強度やベースの厚み
としました。
今回はこの中のハードアシッドと云う音楽について紹介していきたいと思います。

いきなりで申し訳ございませんが、このハードアシッドと云う呼称は一般的に広く使われているものではありません。
とは言え、Soundcloudでタグ検索すると一定数の楽曲は挙がってくるので、ワタクシがここで勝手にそう呼び出したと云うものでもないのですが、これから説明する音楽をそう呼んでいる人はそう多くないと云うことは覚えておいてください。

と言うのも、本来の呼び方はアシッドテクノ、或いはもっとシンプルにアシッドなのです。
しかし、この呼称に属する音楽はアシッドサウンド(※後述します。)を使ったあらゆるスタイルのテクノが含まれるため、これから紹介するハードテクノのエッセンスを取り入れたアシッドテクノを指す名称として単純なものがハードアシッドとなり、今回は便宜上この呼び方で統一させてください。

それを踏まえた上で、この音楽を特徴付ける最も重要な要素であるアシッドサウンドについて説明すると、1980年代中期にRolandが発売したシンセサイザーTB-303を用いて鳴らすことの出来る特徴的な音が最初期の定義です。
これを最初にダンスミュージックへ落とし込んだのがシカゴのハウスDJ、DJ Pierreでした。

Phuture / Acid Tracks (12″ Version)

Acid Tracks (12″ Version) by Phuture on Beatport

オリジナルは1987年リリース。こちらは2013年にリリースされたリマスター版です。
この全編に渡ってビヨビヨ鳴っているのがアシッドサウンドです。
この奇妙且つ革新的な音はダンスミュージックの枠を超えて広く支持され、当初ベース代用シンセとしての用途を想定されていた安価な機材だったTB-303はあっという間にクリエイター必携の機材へとのし上がった程の広がりを見せました。
(現在ではえげつないプレミア価格で取引されております。)

ちなみに現在では生産を終了してしまったTB-303ですが、MC-09TB-3TB-03と云った同系統の音を出すことの出来る後継機(クローン)が多く販売されたため、今となってはTB-303を使用せず作られたアシッドサウンドも多く存在します。

また、このアシッドサウンドの拡大に一役買ったのが、当連載の初回でも触れた90年代初頭のヨーロッパ・レイヴです。
快楽主義を至上命題とするレイヴミュージックはアシッドサウンドの中毒性と相性が良く、当時のレイヴアンセムと称された有名楽曲の多くにこの音が用いられました。
LFO / LFO然り、The KLF / What Time Is Love?然り、Orbital / Chime然り、そして初回でも紹介したJoey Beltram / Energy Flash然りです。

やがて90年代初期にテクノと云うジャンルが確立するのに追随するように、アシッドサウンドもまたテクノとの親和性を見出すようになります。
これがアシッドテクノと呼ばれる音楽の成り立ちと言えるでしょう。
代表的な曲といえばこちら。

Hardfloor / Acperience 1

Acperience 1 (Original Mix) by Hardfloor on Beatport

ドイツの2人組ユニット、Hardfloorによる1992年作のトラック。
結成から僅か1年にしてリリースされたこの曲は全編9分にも及ぶ超大作であり、2台のTB-303を同時に鳴らすと云うインパクトも相まって大ヒットを記録。
後にAcperienceシリーズと銘打つ彼らの代表曲となっております。
現行7まで続いており、そのAcperience7は2017年のアニメーション映画交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューションの挿入曲として書き下ろされたと云う経緯があります。

HRDFLR / Acperience7_eureka_mix

MV HRDFLR「Acperience7_eureka_mix」(交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 1 挿入曲) – YouTube

その後、テクノがハードテクノへと広がっていく過程でアシッドテクノもまた硬質的なリズムに対してアプローチする一派が出てきました。
その前夜とも言える1995年にリリースされたこちらの曲はアシッドテクノに於ける超重要なものとして位置付けられています。

DJ Misjah & DJ Tim / Access

Access (Original Mix) by DJ Misjah & DJ Tim on Beatport

オランダのDJ MisjahとDJ Timのペアによって作られた曲。
それまでのテクノには無かった肉厚なビートの上でアシッドサウンドがこれでもかとばかりに鳴り響く攻めっ気たっぷりの仕上がり。
自身のみならず、これがリリースされたDJ MisjahのアシッドテクノレーベルX-TRAXの代表曲としても有名な程、一大ヒットとなりました。

後年、Thomas SchumacherSecret Cinemaといったテクノ界の大御所たちによるリミックスEPが出たり、比較的最近と言える2015年にも次世代のトランスアーティストJohn Askewによるリミックスがリリースされたりと未だに強い影響力を持っている紛れもなくアシッドテクノアンセム。

詳しいアシッドハウス~テクノに至るまでの時代については既に相当数のまとめ記事が存在するので以下に紹介するに留めます。

アシッド・ハウス – Wikipedia

100曲で振り返るアシッドハウスの歴史(1/5) | Mixmag Japan

アシッドハウス、レイヴの歴史が一目でわかる秀逸な回路基板風の相関図 – letter music

アシッドハウス、レイブ全盛期を振り返るドキュメンタリーとは? | block.fm

さてやっと本題、ハードアシッドについてです。
それに触れるに際し、原点にして頂点とも言えるイギリスのレーベルがあります。
それがAaron LiberatorChris Liberator、そしてJulian Liberatorの3人によって1993年に設立されたStay Up Foreverです。
3名とも先のヨーロッパ・レイヴ、特にアシッドサウンドに触発されたことで出会ったもの同士とあって、レーベル初期の作品は別段ハードでこそないものの、アシッドテクノを産出し続けていると云う点に於いては一貫しています。
そう、設立から四半世紀を経た2019年現在もなんと活動継続中のレーベルなのです。

彼らが明確にハード路線に傾倒するようになったのは1995年のこと。
テクノの誕生以降、あらゆるスタイルの楽曲が生まれるようになった中でChris Liberatorはアシッドテクノの本質は太いアナログサウンドに基づくリズムにあると提唱しました。
より下品でアグレッシヴなサウンドを追求するそのスタンスはアシッドテクノの中でもアンダーグラウンドな層に届き、じわじわと、しかし着実に根を広げていったのでした。

※参考:Chris Liberator | higher-frequency

そのハード路線転向直後の作品がこちらになります。

Dom / Acid War (Liberator’s 303 Attack Mix)

Acid War (Liberator’s 303 Attack Mix) by Dom on Beatport

1995年の作品。
リミキサーであるLiberator(Liberator DJs)とはAaron Liberator、Chris Liberator、Julian Liberatorの合同名義です。
上で紹介したHardfloorのAcperience 1が全長9分に及ぶと強調しましたが、こちらはそれを凌ぐ10分に届きそうな尺。
そしてその尺をBPM150と云う速さ且つほぼ全編に渡って攻撃的なアシッドサウンドが支配すると云う、それまでのテクノの常識を覆すようなトラックを提示しました。
これ以降、Stay Up Foreverからのリリース及びLiberator DJsの3人の手掛ける音はこういったハードアシッドの色合いが強くなっていきます。

当時のハードアシッドのクラシックと云えばこちらの曲も有名です。

Lochi / London Acid City

London Acid City (Original Mix) by Lochi on Beatport

Chris Liberatorと同じくアシッドテクノの古参プロデューサーであるPounding GroovesのユニットLochiによる1996年の作品。
こちらもイントロからアウトロまでみっちりアシッドサウンドが詰まっており、それがパラメーターを変化させながら展開していく内容です。
ある種の宣言とも取れるタイトルと相まって非常にインパクトの強い曲で、リリースから10年経った2006年にはセルフリミックスがリリースされたりもしました。
こちらは残念ながら配信されていない模様。ちなみにワタクシはこのヴァイナルを持っております。

また、後年には後続のハードアシッドプロデューサーであるJamie Taylor a.k.a. Tik Tokがこの曲にインスパイアされたと思わしき曲をリリースしております。

Tik Tok / Lincoln Acid City

Lincoln Acid City (Original Mix) by Tik Tok on Beatport

これもまたかなりアグレッシヴなハードアシッド。
現代のクリアでカッチリした音でもって作りこまれているので、使い勝手の良いトラックです。
過去に行ったJamie Taylor aka Tik Tok特集はコチラ

当時を代表するアーティストはLiberator DJsの他にもおりまして、同じくイギリス、ロンドンを拠点とするGeezer a.k.a. Guy McAfferもその筆頭格。
元バンドマンと云う異色の経歴の持ち主でありながら1996年よりアシッドテクノのトラックメイカーとして活動を開始。
その処女作がProzacと云う曲で、数多くのコンピレーションやDJMIXにも収録された言わば彼の代表曲でもあるものですが、1998年に発表したセルフリミックスがハード路線の紹介としてはピッタリの出来栄え。

Geezer / Prozac (Rejected Mix)

Geezer – Prozac (Rejected Mix) – YouTube

まさしくChris Liberatorが提唱したファットなリズムとディストーションのきいた下品なリフと云うアシッドテクノの本質に近付いた作品。
これもまた9分超え。
そうです、ハードアシッドの1種の特徴とも言える要素として曲が長いと云う点があります。
リフそのものは短いスケールの反復がコアとなっているのですが、そこにパラメーターの変化を細かく加えることでより反復感を強調しているためと云うのが要因です。
ものによっては再生しながらリアルタイムでパラメーター操作したものを1発録音した曲もあったりします。
そういうところは確かにバンドのキャリアが光る点ではあるのかもしれませんね。

ちなみにこのGeezer、Jah Scoopと云う名義でレゲエダブの制作も行っていると云うマルチプレイヤー。
更には最近、このレゲエとハードアシッドを組み合わせた新しいサウンドを提唱しております。

Benji303 / Play With Fire (Jah Scoop Remix)

Play With Fire (Jah Scoop Remix) by Benji303 on Beatport

レゲエ特有の裏打ちのギターが思った以上にハードアシッドと相性が良くて驚きます。
最近ダブをちょいちょい聴くようになったこともあり、個人的にこのスタイルにはかなり注目を寄せております。
原曲を手掛けたBenji303は2010年代に現れたハードアシッド新星注目株のような存在で、いろいろな形でGeezerともコラボレーションを行っている師弟のような関係。
こちらも以前特集を行いました。

もう1人、ハードアシッドの立役者としてここに付け加えるとするとやはりD.A.V.E. The Drummerは外せません。
Liberator DJs同様、1990年代初頭から活動を継続しているイギリスのアーティストで、こちらも活動初期はアシッドテクノに傾倒する姿勢をとっていました。
根底にあったのはレイヴの煌びやかさに依存しないダークな音作りであったようですが、結果としてハードアシッドとは相性が良かったようです。

D.A.V.E. The Drummer / Freedom Fighter

DAVE The Drummer – Freedom Fighter (Smitten) – YouTube

1997年の作品。
この曲ではアシッドサウンドを本来の使い方に近い、ベースとして用いており、ウワモノとなるリフはかなりシンプルなものに留まっています。
その分リズムの推進力が全面的に発揮されている、これまで紹介したものとは少し毛色の異なるタイプのハードアシッド。
リフがシンプルな分、前回紹介したハードミニマルとは相性が良いです。
D.A.V.E. The Drummerも以前特集を組んでおります。

ここまでハードアシッドが確立するに際し重要な存在として挙げられるアーティストを3組紹介してきましたが、彼らはそれぞれ別個でレーベル運営も行っておりました。
Aaron LiberatorはWahWah、Chris LiberatorはCluster Records、Julian Liberatorは4×4 Recordings、GeezerはRipe Analogue Waveforms (RAW)、D.A.V.E. The DrummerはHydraulixを設立しており、どれもハードアシッドが世界に放たれる拠点として機能していたわけなのですが、後年、これらを含む20以上のレーベルをStay Up Foreverが吸収、それぞれのレーベルを傘下に持つ巨大なアシッドテクノコネクションを形成するようになります。
現在Stay Up Foreverのサイトでこれらのレーベルの作品が参照できるのはこのためです。
ここまでアーティスト、プロデューサーの繋がりが強いシーンと云うのもなかなか珍しいのではないかと思う一件です。

2000年以降も彼らに影響を受けたアーティストが多く出現しました。
例を挙げるとアシッドテクノの本場イギリスからはMobile Dogwashはオススメです。

Mobile Dogwash / Psycho-Delic

Psycho-Delic (Original Mix) by Mobile Dogwash on Beatport

2007年の作品。
オールドスクールテイスト抜群のディストーションアシッドもの。
これ以外にもド直球なハードアシッドを多く手掛けております。
後年の作品でもWith a Parsnipは何回か使ったことがあるくらいには好み。

またイギリス以外にもこのスタイルのアシッドテクノは伝搬しております。
こちらも以前特集を行ったGanez The Terribleはフランスのクリエイター。

Ganez The Terrible / The House Of Jericho (Remix 1)

GTT 01 – Ganez The Terrible – The House Of Jericho (Remix 1) 2003 – YouTube

2003年作。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、元ネタです。
上で取り上げたD.A.V.E. The Drummerのダーク寄りなスタイルを踏襲しているタイプのハードアシッド。
この時代にしては珍しくブレイクビーツ混じりのブレイクなんかも取り入れており、ブートレグで片付けてしまうには惜しい逸品。

また、テクノ以外からの要素を合致させたトラックの作り手とも言えるのがSterling Mossです。 (特集回)

Sterling Moss, DVS / Techno Punks

Techno Punks (Original Mix) by Sterling Moss, DVS on Beatport

2017年作。
過去の曲は割合ハードミニマルとも言える暗くて硬い曲が多いのですが、ここ数年で目に見えてアシッドサウンドを前面に強調したトラックが増えてきたので、あえて最近の曲を紹介します。
前のめりなグルーヴとバウンス感のあるファンキーなアシッドサウンドのリフが良いバランスで共存する個人的にドツボな楽曲。

最後に、現行のハードアシッドの掘り方について。
上記で紹介した曲の試聴リンクが埋め込まれているように、beatportjunodownloadと云った大手配信サイトでも楽曲の購入自体は可能です。
しかし、固有のジャンル分けがされているわけではなく、これらのサイトから探そうとするとテクノやハードテクノと云ったカテゴリーの中から根気よく探すしかないと云うのが悲しい現状です。

こちらからヒントを提示するとしたら、幾つかのレーベルがハードアシッド楽曲を纏めたコンピレーションをリリースしております。
比較的最近のオススメを挙げるとこの辺りです。

Hypnohouse Acid Techno Collection, Pt. 4 from Hypnohouse Trax on Beatport

Special Acid Techno Compilation, Vol. 4 from AK Recordings on Beatport

両者ともシリーズ化されているのでこれらの収録アーティストを辿ってみると云うのが1つの現実的な案ではないでしょうか。
コンピレーション自体も入門編としては大分贅沢なラインナップとなっております。

レーベル伝いと云う手も大いに可能だと思います。
上記コンピレーションのリリース元であるHypnohouse Traxは一般的なアシッドテクノも含めた様々なスタイルのものがあります。
ハードアシッドにこだわるならば上で少し触れたJamie Taylor a.k.a. Tik Tokが運営するMP303ですとか、Benji303率いる303 Alliance辺りはとても良い感じです。
その他にもFlatlife Records DigitalBraingravyなどそれなりにレーベルも数多く存在しているので、是非これらを参考に探してみてください。

そして何と言っても忘れてはいけないのがこのハードアシッドを含むアシッドテクノ専門のオンラインショッピングサイトがあると云うことです。
それがこちら。

909London

自身もDJとして活動しているThermoBeeによって運営されている楽曲配信、情報サイト。
バックカタログとして掲載しているものを試聴すると分かりますが、隅から隅までアシッドサウンドです。
お値段は大手配信サイトに比べると割高ではあるものの、大手配信サイトに対して先行で販売される作品があったり、更にはここにしか流通していないトラックがあります。
例えば上で紹介したGeezer a.k.a. Guy McAfferのレゲエ×ハードアシッドプロジェクトであるJah Scoopの活動レーベルSonic Iration Digitalは現状、909Londonを通す方法以外に購入手段がありません。

これらの理由により、大手配信サイトからは得られないアシッドテクノの情報源としてはかなり強力なものになります。
是非ご留意のほど。

以上、ハードアシッド編をお送り致しました。
この音楽の特徴についてまとめると、アシッドサウンド+速い+反復 (+長い)がキーポイントになっていると思います。
あと上記で触れることができませんでしたが、大抵の曲にロングブレイクがあると云うのも1つ大きなポイントです。
前回紹介したハードミニマルとは異なり、あまり複数の曲を長時間重ねるような構造にはなっておらず、アシッドリフが細かく変化しているのを楽しむ、と云うのが魅力のスタイルです。

今回も相当長くなってしまいました。(本当は新規アーティストの紹介とかもしたかった。)
タイトに纏められるか不安だった前回の予感が大当たりしてしまいました。

と云うわけで次回の『特別連載:ハードテクノとは何か?』につきましては07月25日に公開。
小テーマはマシンミュージックに対する生音の逆襲、ハードトライバル編となります。

そして次週07月16日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2019/06/27


特別連載:ハードテクノとは何か?
第2回:ハードミニマル編
特別連載:ハードテクノとは何か? – 目次

第1回:黎明期編
第2回:ハードミニマル編 (今回)
第3回:ハードアシッド編

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

と、その前に。

今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2019/06/25


前回のボスの更新に於いて次回Hardonizeの日程が公開となりました。
09月07日09月07日でございます。
ゲスト詳細は追って発表致しますので、是非今後とも当サイトをチェックして頂きますようお願い致します。

さて、前回より始まりました、ハードテクノが内包する音楽のスタイルについて解説していくこのコーナー。
今回もお付き合い頂けますと幸いです。

前置きもそこそこに前回の記事の中でハードテクノの特徴を

・メインストリームテクノよりは速いテンポ
・4分打ちのハイハットによる疾走感のあるグルーヴ
・キックの強度やベースの厚み

とした上でハードテクノの中のサブジャンルと周辺音楽をこのような図で表しました。

今回はこの中のハードミニマルと云う音楽について紹介していきたいと思います。

これまた前回からの引用になりますが、90年代半ばに生まれたリフが延々反復するタイプのテクノ(=DJツールとしてのテクノ)は当時革新的でした。
これらは最小限の展開で構成されるテクノ、ミニマルテクノとして今日に至るまで1つのジャンルを確立している音楽です。
1つ例としてミニマルテクノのクラシックを挙げます。

Richie Hawtin / 005

Richie Hawtin – 005 (High Quality) – YouTube

ミニマルテクノに於いて帝王と称されているRichie Hawtinによる1997年の作品。
上記の通りたまに短く音の抜き差しが行われるだけでほぼ展開が無く、リズムやリフのパラメータが微妙に変化しているものの、どこにシークバーを置いても同じような音が流れています。
このスタイルは後年、2000年代中期辺りに更に先鋭化の一途を辿り、凄まじい求心力を持つようになるのですが、それはまた語る機会があったらと云うことで。

話をハードテクノに戻しますと、この展開の少なさをハードテクノに流用した音楽と云うのがハードミニマルです。
リフにはスケールの短いシンセの音が用いられるのが一般的ですが、極稀に生音サンプリングやボーカルが使われることもあります。
ハードテクノとミニマルテクノは共に1990年代中期から発展した音楽であるため、ハードテクノ誕生以降の過程に於いて最も成長に貢献した音楽がこのハードミニマルであるとも言えます。

前回の黎明期編とリリースの時期は被りますが、ハードミニマルの夜明けとも言えるのがコチラの作品。

Regis / Speak To Me

Speak To Me (Original Mix) by Regis on Beatport

発売は1995年。後にリマスターバージョンが出ており、上記リンクはそちらになります。
イギリスのレーベルDownwardsの発起人にしてプロデューサー、Regisの処女作。
全編通してアラームのようなリフが厚みのあるリズムに乗っており、この手の音楽の基礎が詰まっているように感じます。

このDownwardsと云うレーベルは後にハードミニマルの代表格とも言えるアーティストSurgeonのデビュー作をリリースしたレーベルでもあります。

Surgeon / Argon (2014 Remaster)

Argon (2014 Remaster) by Surgeon on Beatport

こちらは1994年発。
まだシカゴハウスのバウンシーなテイストが残るものの、無機質なリフやリズムと云ったハードミニマルの基本を押さえてます。
こちらもリマスター盤が現在配信されております。

イギリス繋がりで更に例を挙げると、The Adventもまたハードミニマルの代表格と呼べる存在。

The Advent / Panther

The Advent – Panther – YouTube

1998年のリリースなので、ハードテクノ誕生後と言って良い時期の作品になります。
疾走感のあるリズムにシンプルなリフの反復。
割と初期から速いテンポの曲を多く手掛けていたこともあり、アグレッシヴさをテクノで表現していた存在としては唯一無二感があるように思います。

アメリカ、中央ヨーロッパ以外のこの頃のテクノを牽引していた国としてはスウェーデンが挙げられます。
代表格と云えば現在に至るまでテクノシーンを牽引し続けているトップレーベル、Drumcodeの立ち上げ人であるAdam Beyer

Adam Beyer / Compressed A1

Compressed A1 (Original Mix) by Adam Beyer on Beatport

1996年に出たこの曲は最早リフと呼べる音も無くなり、硬いリズムが延々と反復するのみと云う最小限の構成となりました。
にも拘らず、ハードテクノのクラシックとしてこの曲を挙げる人も少なくないくらい強烈なインパクトを残した一品です。
そしてこの曲がリリースされたDrumcodeもまたテクノのシーンに於ける重要レーベルとして認知され、Joel MullCari LekebuschThomas Kromeと云った多くのスウェディッシュ・クリエイターたちを世界へ知らしめる足がかりとしても機能しました。

少し時代は飛びますが、Adam Beyerによる強烈なハードミニマルと云えば2000年に出たこれを挙げる方も少なくありません。

Ben Sims / Manipulated (Adam Beyer Remix)

Ben Sims – Manipulated (Adam Beyer Remix) – YouTube

通称生団子 or 生パン粉。
原曲はトライバルパーカッションがメインのテクノと云う感じでしたが、パーカッションを残し、その他リズム隊に厚みを加えた挙句、原曲にはないラテンボーカルのサンプリングを使うと云う謎のセンスが炸裂している曲。
ちなみに元ネタはこちら
ハードテクノの顕在化以降でここまで露骨に有機的パートのサンプリングを用いた例は少ないため、聴く人にとっては余計に印象に残る結果となったのでしょう。

余談ですが、Adam Beyerは最近公開されたDJMag.comのインタビューに於いてこれまでの自身のキャリアを振り返って語っております。

Adam Beyer: Techno’s uncompromising kingpin | DJMag.com

まだ全部は読めてないのですが、もうすぐデビューから25年を向かえるテクノ~ハードテクノの第一人者が自身の幼少期も含めた上で語っていると云うことで貴重な記事。

ちなみに、Adam Beyerのデビュー作はDrumcodeではなく、Planet Rhythm Recordsと云うスウェーデンのレーベルでした。
ここのオーナーを務めていたのがGlenn Wilsonと云う人で、彼は当時クリエイターではなかったものの、1998年から楽曲制作を開始。
こっちはこっちで相当ハードでストイックな楽曲を手掛けており、オススメです。

Glenn Wilson / Serum

Serum (Original Mix) by Glenn Wilson on Beatport

やや歪んだリズムによって厚みを演出している感じの2002年作トラック。
最近になってbandcampアカウントで過去作の再発を行っているので、このタイミングで歴史を振り返るには良い例ではないかと。

一方テクノ発祥の地であるドイツからも多くのハードミニマル楽曲がリリースされました。
DJ、クラブオーナー、そしてレーベルオーナーを経てクリエイターとして活動を始めた万能人Chris Liebingもその1人。

Chris Liebing / Dandu Groove

Dandu Groove (Original) by Chris Liebing on Beatport

1997年にリリースされた初期の頃の作品。
圧の強いキックを始めとするリズム主体の構成です。

Chris Liebingは後年ハードミニマルから派生したある音楽に影響を与える存在となるのですが、それは追々解説していきます。

また、以前紹介したEric Sneoもジャーマン・ハードミニマルのパイオニアと言えるでしょう。

Eric Sneo / Snare Attack

Snare Attack (Original Mix) by Eric Sneo on Beatport

2005年に出たアルバム、Slave to the Beatより。
このアルバム、本当は全曲オススメしたいくらい好きなのですが、中でもこの曲はやや後ろに重心を置いたリズムに薄くアラームのような音が乗っていたり、ちょっとこれまで紹介した曲とは毛色の違う要素が入ってます。

最後に最近のハードミニマルについて。
これまで述べたように発祥からかなり長く経過している音楽ではありますが、現在でもこのスタイルは受け継がれており、今でも多くのリリースを目にします。
当連載でも他の方々が紹介しているのをしばしば目にしますが、自分なりに2つ程紹介させてください。

Rene Reiter / They Find Us

They Find Us (Original Mix) by Rene Reiter on Beatport

ハードミニマル専門と云うわけではないのですが、これはこれで手掛けることも多いオーストラリアのクリエイターRene Reiterの今月リリースされた作品。
打ちつけるようなストンプ系リズムとスモーキーなサウンド。
最近のダークテクノのリズムがまさにこのような感じなので、現行のトレンドに沿っていると云う意味では持っておくと安心できそうです。

Vices & Violence / School Street

School Street (Original Mix) by Vices & Violence on Beatport

つい3日前に発売されたもの。
全くレーベル名もアーティスト名も知らない名前だったので調べたところ、発売元であるVector Functions Recordsはなんとメキシコ。
そしてこのVices & Violenceと云うアーティストもここ1~2年で現れた新人でした。

リズムの打ち方はオールドスクールを踏襲しつつも、かなり歪んだキックを使っている懐かしさと意外性を持つ曲。
これ以外の曲もこのようにダークでアグレッシヴな曲が多く、今後も期待がかかるクリエイターです。

以上、ハードミニマル編をお送り致しました。
この音楽の特徴についてまとめると、速い+硬い+反復がキーポイントになっていると思います。
サブジャンルと言えど歴史が長いため、少々取り上げるアーティストも曲も多くなってしまいました。
次回はもう少しスマートに纏められると良いですけど・・・予定しているものがこれはこれで歴史の長いものであるため、割合不安です。
懲りずにお付き合い頂けますと嬉しいです。

と云うわけで次回の『特別連載:ハードテクノとは何か?』につきましては07月11日に公開。
小テーマはアナーキー・イン・ザ・ハードテクノ、ハードアシッド編となります。

そして次週07月02日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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