「 TAK666 」一覧

ヒトクセあるサンプリングのテクノ特集:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2022/06/23

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりに担当致します。

【告知1】

次回Hardonizeまで1ヶ月を切りました。


2022/7/16(sat) Hardonize#41 at waseda sabaco

gekkoさん、Mck4yさんという若きクロスオーバープレイヤー2名がゲスト。
様々なカルチャー、シーンを股に掛けた活動を展開している極めて器用な両名なので当日何が飛び出すのか全く予想がつきません。
告知直後から言ってること何も変わらなくて本当に申し訳ないです。
蓋を開けてみるまでどうなっているか分かりません。
シュレーディンガーのHardonizeです。
どうかその目で観測しに来てください。

07月16日、会場はいつもの早稲田茶箱でお待ちしております。
また、今回も入場エントリー制となっておりますので以下のURLよりご登録をお願い致します。
Hardonize #41 in東京 – パスマーケット

【告知2】


Hardonizeの前週07月09日に静岡COAで出演機会を頂きました。
昨年05月に2会場を用いて行われた秋葉原重工以来の静岡出演です。
ちなみにその時はカレー作ってましたけど今回は多分ありません。多分。

Takayuki KamiyaさんやKouki Izumiさんら東京のテクノ勢と一緒です。
聴いたところによるとハードテクノ志向の高い回を想定しているとのことなので、それに沿うような選曲で臨みたいと考えております。
だって翌週ハードテクノかけないかもしれないからね!
お近くの方は是非。

【今回のお題】

さて、当連載に於ける自分の回ではハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていく形式となっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

それはそれとして最近の774muzikさんの回でブートレグについて言及していたので、今回は自分もそれにあやかりたいと考えている次第です。
しかし彼の記事を見てもお分かり頂ける通り、ブートレグといってもそのネタ元は様々です。
大半を占めるのは一般的によく知られたポップスや、ある程度知名度のあるダンスミュージックを各クリエイターが得意とするジャンルに当て嵌めるパターンでしょう。
それらは音楽としてのフォーマットに似通っている部分があるため、ある程度そのまま元ネタを流用できる部分があるものですが、時にそういった共通点のない、突飛なサンプリングを持ち前のアレンジ力とアイディアでダンスミュージックのフォーマットに落とし込んだブートレグというものが出てきます。

先の774muzikさんの回の中ではVanillaのリミックスがそれに当たります。

BootMania IIDX / The Disco Truck (of Vanilla)

Stream The Disco Truck (of Vanilla) by BootMania IIDX | Listen online for free on SoundCloud

これは元ネタがCMソングなので尺が短く、そのままテクノに当て嵌めようとするとかなりタイトな構成になってしまうため、ボイスをループさせて別のトラックと合わせたり、時にピッチ加工してフレーズを調整するといったアイディアで捻じ伏せています。

他にもちょっと前にリリースされてHardonize内で唖然としたHomma Honganjiさんのこちらの楽曲や、

Homma Honganji / TV Detectives Club

TV Detectives Club (Original Mix) by Homma Honganji on Beatport

Sangoさんが時折使っているコチラなどが同系統と言えます。

Oiscarapper / Da Funda

Da Funda (Original Mix) by Oiscarapper on Beatport

前者はテレビ探偵団のオープニング曲、後者は志村けんのだいじょうぶだぁのオープニング曲がそれぞれ元ネタとなっており、
ダンスミュージックと何の接点もない原曲をダンスミュージックに乗せる工夫が凝らされています。

というワケで今回取り上げるテーマは

ヒトクセあるサンプリングのテクノ紹介

とし、年代問わず自分の好きなトラックについて紹介していきます。
具体的には上で挙げたようなテレビ番組のオープニング、CM楽曲、民謡、果てはニュース番組や環境音といった辺りを引用としたテクノとなります。
面白楽曲ばかりかと思われるでしょうが、とりわけセンスやアイディアの光るものもございます。

早速ですがヒトクセあるサンプリングのテクノ特集いってみましょう。

【曲紹介】

レオパルドン / Cake or Girl

Cake or Girl | レオパルドン | やばさ RECORDINGS

日本のプロデューサーユニットレオパルドンによるテクノ
奇天烈なネタモノダンスミュージック、ナードコアを代表するアーティストであり、その彼らを代表する1曲でもあります。
元ネタは一切分からないが、タイトルが全てを物語っている強烈なボイスサンプリングが最大の特徴。
バックトラックはラフなハードダンスなので使い勝手も十分なリーサルウェポン。

2001年の作品なのでCDしか流通媒体がなく、かなりプレミアが付いていた時期もあったのですが、現在はこのように配信が行われております。
ネタモノ好きなら必携且つ必殺のトラック。

ONSEN-TARO / DONG-PANG!

DONG-PANG!(ドンパン節:秋田県) by Onsen-taro on iTunes

みうらじゅんプロデュースによる民謡×ダンスミュージックをコンセプトにした覆面プロデューサー、ONSEN-TAROによるテクノ
元ネタは盆踊りとかで用いられることもある秋田県の民謡、どんぱん節

民謡ネタというだけでも十分珍しいのに、その中でもとりわけ脱力感のあるものを主題目に据えた曲。
三味線や和太鼓などを駆使したサウンドも含め、愉快なテクノといった塩梅。
PVもあるのですが、歌詞に因んだハゲ頭が大量に登場します。
これっぽっちも嬉しくねぇ。

SLK-9888.sys / THE SAFARI (KSD-CDJ-edit)

THE SAFARI (KSD-CDJ-edit) / Lion Musashi (Remixed by SLK-9888.sys) – YouTube

同人サークルSilly Walkerを主宰していたSpelunkerさんによるテクノ
某音楽ゲームのタイトル曲のアレンジとしてリリースされたものなのですが、タイトル繋がりでサンプリングされているのが富士サファリパークのCMソングであり、こちらのインパクトの方が強い曲。

あのCMの冒頭のブラス3音をひたすらループすることでフレーズを作るというセンスが絶妙。
随所に仕掛けられた下世話なサンプリング群も数寄者には堪らないですね。
そのブラスを支えているのが忙しいトライバルリズムなのでハードグルーヴの原型を満たしていると言えなくもない曲。

一時期の同人音楽のごった煮感が溢れまくっていてめちゃめちゃ好きな曲。

the anazaworld / Point Getter 20

Point Getter 20 by The Anazaworld on Apple Music

日本のプロデューサーThe Anazaworldによるテクノ
ちなみにリリース元は石野卓球KAGAMIなどがかつて在籍していた日本の老舗テクノレーベル、Frogman Records

派手なウワモノはなく、反復リズムとボイスループを軸にしたオーソドックスなテクノの雰囲気を纏って進行するものの、中盤で差し込まれるサンプリングがまさかの欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞の採点音。
しかも不合格。

発想の根幹もさながら、当時国産テクノを牽引していた最前線のレーベルからリリースされた経緯も含めて謎が多いトラック。

Hiroshima Denryoku / Tequila

Stream Tequila by Hiroshima Denryoku | Listen online for free on SoundCloud

日本の4人組奇天烈テクノバンドHiroshima Denryokuによるテクノ
彼らの奇天烈っぷりをご存じない方は是非彼らのライブ映像を見て頂きたいのですが、メンバーにギター、ボーカル、リズムマシン担当がそれぞれ1人ずついる他にフロアで全身タイツ或いは全身サランラップの姿で奇妙な踊りをし続ける人がいるというアバンギャルドな構成のライブをします。
ちなみに早稲田茶箱とも縁のある方々で、1度ここでライブを見たこともあります。

そんな彼らのふざけきった楽曲がこれ。
どこかで1度は耳にするThe Champs / Tequilaネタのテクノといえばそれまでですが、
当時某歌舞伎役者が起こした暴行事件、通称『灰皿テキーラ事件』のニュース音声及び謝罪会見をサンプリングしており、なんというかこう、タチが悪い。

それでいてリズムマシン担当のatnrさんはゴリゴリに音楽理論を駆使して楽曲制作を行っているので出音が良い、且つメロディが美しい。
そのスキルを投入するのはこの曲ではないような気もする程、あらゆる方面に突き抜けた曲。
ライブもまた見たいですね。

FANTASTIC EXPLOSION / チョコレート

Fantastic Explosion – Chocolate – YouTube

日本のプロデューサーユニットFANTASTIC EXPLOSIONによるハウス
ボイスループはBelle Epoque / Disco Soundから、メインフレーズはDan Hartman / Relight My Fireから、
サビはLで始まる某お菓子メーカーのCMでお馴染み、しばたはつみ / My Sweet Little Eyesからそれぞれ引用しているてんこ盛りっぷり。
FANTASTIC EXPLOSIONの特徴として昭和っぽいサウンドを用いるという点があり、冒頭のナレーションにもそれが表れています。

それぞれが特大のインパクトを持つサンプリングなのに、互いに引けを取ることなく曲全体を構成しているという奇跡のバランスを持つトラック。
シンプルにハウスディスコといった視点で見てもファンキーで使い勝手満点。
現在のところ配信がなく、CDも現在プレミアついてるようですが、入手の機会があったら是非。

Gassyoh / Semitechno

Stream Gassyoh – Semitechno by Gassyoh | Listen online for free on SoundCloud

日本のプロデューサーGassyohさんによるテクノ
ネットレーベルMaltine Recordsからリリースされたもので、現在もダウンロードが可能です。

タイトル通り、蝉の鳴き声をサンプリングしたテクノ
それもハードミニマルに近い硬めのビートなのでサンプリング元との雰囲気の乖離が著しい。
それでもループし続けてると違和感が段々消えていくあたり、ミニマルの魔力を感じます。
でもこの発想はおかしい。

っていうかHardonizeレジデントはみんな何かしらの形でGassyohさんと縁がある筈なのにこの曲が流れたことは今のところない気がします。
春はryoh mitomi / haru-kaze、夏はGassyoh / Semitechnoくらいの感じで使い倒しても良さそうなのでは?
(秋と冬については思いつきませんでした。)

ORIONBEATS and Yuki Hata / Kariyushi Urban Resort

Kariyushi Urban Resort | ORIONBEATS and Yuki Hata | ORIONBEATS

沖縄民謡×テクノユニットRYUKYUDISKOの兄、ORIONBEATSによるテクノ
今年の04月に出た比較的新しいもので、前のめりなグルーヴに三線や指笛といった沖縄感のあるサウンドが乗ったヒトクセありつつも、ダンスミュージックのソリッドな印象が出ています。

ただ、この曲の肝は中盤のブレイクで展開される強烈によれたビート。
凡そ一般的なテクノでは聴けないリズムの打ち方ですが、これが今回フィーチャリングに起用されたYuki Hataさんの手腕によるもの。
このnoteに詳しく書いてあったのですが、8小節トラックアワードという文字通り8小節という短い尺で曲を作るコンテストが行われ、そこに応募されたYuki Hataさんの8小節に、審査員として参加していたORIONBEATSが感銘を受けて今回のフィーチャリングが実現したという経緯があったようです。
ジャズから影響を受けたとされるアドリブ感強めのビートを得意としているようで、それがこの曲のブレイクに持ち込まれたものだったという、なかなか熱くなるストーリーがあった曲。

ちなみにRYUKYUDISKOとしてのリリースは2015年で止まっておりますが、沖縄民謡×テクノをメインコンセプトにし独特な楽曲はヒトクセあるので以下に好きな曲を貼っておきます。

Ryukyudisko / Native Machine

Native Machine (Original Mix) by Ryukyudisko on Beatport

キラキラしたシンセサウンドに連打気味の三線という、東洋的でアップリフティングなテクノ
途中の三連符の打ち方とかはモロに沖縄感出ますね。

CHURASHIMA NAVIGATOR / HAIMURU BUSHI

HAIMURU BUSHI(For DJ Remaster 48khz 24bit) | CHURASHIMA NAVIGATOR

日本の4人組バンドCHURASHIMA NAVIGATORによるダブステップ
こちらも沖縄を活動拠点としており、且つ沖縄民謡を取り入れているという点で共通しているものの、トラックの質感は全く異なっております。
深いベースラインに無機質なループ系のリフという緊張感のあるリズムに、エコーが施された三線と沖縄方言の伸びのあるボーカルの奇妙なコラボレーション。
サウンド的なアングラ感と地理的なアングラ感が豪快に合わさった素敵楽曲。

ちなみにタイトルの『はいむるぶし』とは沖縄の方言で南十字星を中心とし、その周囲に群れている星々を示す言葉だそうです。

THE MUNEO HOUSE / yabaiyo

[ムネオハウス] THE MUNEO HOUSE PV – yabaiyo (version1)

今回のオチ。
まさか令和の時代にこれを取り上げるとは自分でも思っていなかったんですが、今回のコンセプトにはバチッとハマってしまったので。

経緯についてはWikipediaのページを参照して頂きたいのですが、今から20年前に2ちゃんねるで匿名アーティストたちがこぞって鈴木宗男の国会答弁をサンプリングし、ダンスミュージックと組み合わせた楽曲を発表していたことがあったのです。
その数半年間で250曲以上。アルバム21枚相当というとんでもない量です。
中でも好きなのがこれでして、サウンド、展開、サンプリングの使い方、全てがアマチュア離れしています。
ドライブ感のあるベースラインに複数種類のリフを巧みに組み合わせ、ループ感は保ちつつドラマティックに展開していくトランステクノの中間くらいのトラック。
イントロのユーフォリックな感じもそれに拍車をかけていて当時のインターネットの謎のエネルギッシュさが内包されたようであり・・・マジで20年越しに何を真面目に分析しているんでしょう私は。

ちなみにまだ楽曲を配布しているところがあるのか調べたらありました
公式サイトもまだ残ってました。
インターネット文化遺産として未来永劫残っていて欲しい。

どうでも良い話ですが、2002年当時実際にクラブでムネオハウスを題材としたパーティーが行われておりまして、当時未成年で行けなかったことが人生で悔しい出来事のかなり上位にきます。
かつてHardonizeレジデントだったLZDさんや、ゲストでお招きしたneco-punchさんはこの時の出演者サイドの方々で、実は一方的に知ってました。

まとめ

以上、ヒトクセあるサンプリングのテクノにスポットを当ててお送りしました。
数あるクラブミュージックの中でもテクノはストイック且つミニマルであることが必須条件であるかのような扱われ方をしておりますが、別にそれだけがテクノの面白さではないことは引き続き主張していきたいところです。
特に近年のテクノはインパクトのあるサウンドを用いたトラックが増えてきており、かつての何でもあり感を取り戻している印象も受けるので、その調子でもっと自由に、混乱を招くぐらいのトラックが増えてくることを変ミュージックスキーとして期待しております。

そんなわけで今回はここまで。

次週06月28日は774Muzikさんが担当します。
では。

続きを読む


ガラの悪いドラムンベース特集:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2022/06/09

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりに担当致します。

【告知】

前回も記載した通り、次回Hardonizeのゲストが公開されております。


2022/7/16(sat) Hardonize#41 at waseda sabaco

gekkoさん、Mck4yさんという若きクロスオーバープレイヤー2名がゲスト。
前代未聞のハードテクノのパーティーでハードテクノが流れないかもしれない世界線について大きく期待を膨らませております。
その足掛かりとして前回この連載でハードテクノと全く関係ないアニメソング、ゲームソング特集をお送りしたところ、


なんかよく分からないレスポンスを頂きました。
現段階から情報戦が行われている様相を呈しております。

07月16日、会場はいつもの早稲田茶箱でお待ちしております。
また、今回も入場エントリー制となっておりますので以下のURLよりご登録をお願い致します。
Hardonize #41 in東京 – パスマーケット

15年目を前にHardonizeはどうなってしまうのか、その目で見届けて貰えると嬉しいです。

【近況】

・ちょっとだけ音楽に絡むやつ
前回ちょっとだけ述べた昭和のジャケットに平成テイストの楽曲が入った令和のゲームのサウンドトラック、予約してしまいました。


元ネタは世代と大幅に離れているので完璧な後追いなんですけど、このインパクトに抗えませんでした。
ちなみにゲーム本体は先日酒を飲みつつ知り合いとワイワイプレイしてみたのですが、ちっとも幸せな結末を迎えられませんでした。
厳しい女です。色んな意味で。

・全然音楽と関係ないやつ


我らが茶箱より今月から加熱式タバコ以外喫煙を禁ずるというお触れが出されたため、Ploom Xを買ってみました。
初の電子タバコ、どんなもんじゃろと思って吸ってみたんですけど難しくないですかアレ。
絶対ムセる。初めてかって時ぐらいムセる。
そうかこれがアンチエイジング。僕はまだ大人になれません。
オチと味に対する不満は特にないです。

【今回のお題】

さて、当連載に於ける自分の回ではハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていく形式となっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

それはそれとして前回同様、今回のHardonizeゲストのプロフィールに目を向けるとドラムンベースという単語があるではありませんか。
個人的にはテクノと同じくらい好きなジャンルの1つであり、以前ドラムンベースのパーティーのレジデントを務めていたこともあります。
この音楽も長年の歴史の中でテクノと同様に様々なサブジャンルへと派生していった過去があるためサウンドや雰囲気の幅がめちゃめちゃ広く、近年でも先祖返りや他ジャンルとの異種交配を行い弛まぬ進化を続けている活発なジャンルであるため、ドラムンベースという大枠に絞っても相当色々なプレイが可能です。
楽曲を掘っていて次々新しい発見があるのは楽しいですね。

というワケで今回はドラムンベースに焦点を当てたいと思ったものの、丁寧にサブジャンル1つ1つについて取り上げていくと先の特別連載と同等の大ボリュームになってしまう。
かといって全くテーマを絞らないのも収集がつかなくなる。
どうしたもんかと考えた時、僕にクラブという場所を教え、与えてくれたドラムンベースDJ且つパーティーの師匠である練乳さんがかつてこう言っていたのを思い出しました。

『イギリスのチンピラミュージックことドラムンベース

それだ。
チンピラっぽいドラムンベースにしよう。
大好きだし。そういう曲ばっかりかけ続けるB2Bユニットも組んでたりするし。

というワケで今回取り上げるテーマは

ガラの悪いドラムンベース紹介

とし、年代問わず自分の好きなトラックについて紹介していきます。
パーカーがあればフードを被り、金のネックレスがあれば首に飾り、バンダナがあればそれを口に巻いてからご覧ください。
どれも手元にない場合は好きな寿司ネタを想像してください。

早速ですがガラの悪いドラムンベース特集
いってみましょう。

【曲紹介】

Ebony Dubsters / Ra (Original Sin Remix)

Ebony Dubsters – Ra (Original Sin Remix) – YouTube

イギリスのプロデューサーOriginal Sinによるドラムンベース
ドラムンベースの中でも強調されたベースシンセでフレーズを作るジャンプアップと呼ばれるサブジャンルで、個人的にはこのサブジャンルの存在を強く認識する切欠になった曲。

イントロ、ブレイクの生々しい息遣いが感じられるパートから一転してリズムパートに入った時のホーンめいたフレーズがとにかく印象的。
それに追従するベースの動き方や、脇に添えられたアラームっぽいシンセも合わさって言い逃れできないチンピラ感が漂っています。
あと4分打ちのライドの音がめちゃめちゃデカくて疾走感も凄い。
今回のテーマに当たってはいの1番に思いつく曲です。

ちなみに原曲を手掛けたEbony Dubstersというアーティストは共に90年代初期からドラムンベースシーンのトップに君臨し続けるスーパーレジェンド、Shy FXT.Powerによる変名義ユニット。
往年のキャリアを感じさせるオールドスクールフレイバー漂うトラックですので、あの頃のドラムンベースが好きな方にはこちらも是非。

Chase & Status / No Problem

No Problem (Original Mix) by Chase & Status on Beatport

2000年代以降のドラムンベースを代表するイギリスのプロデューサーユニットChase & Statusの曲。
イントロは民俗的なパーカッションにラップが乗った生っぽい雰囲気なのに、メインパートでは一転してビックリするくらい早弾きのスタブがお目見え。
オールドスクールなサウンドと相まってめちゃめちゃインパクトがあります。
メインパート以降も随所に呪術的なパーカッションの音が仕込まれており、それもかなり独特。

ちなみに歌詞にもなかなかのメッセージが込められていて、
You can try copy like a slave to a trend (流行の奴隷のように物真似し続ける)
Nothing they can say and nothing they can do (何も示さないし何も起こらない)
It’s no problem for me, but is a problem for you! (俺には関係ないがお前にとっては問題だ!)
意訳するとこんな感じ。
その直後に放たれる音が当時の流行とかけ離れたあの音なので、お見事としか言いようがない曲。

Gino / Sacrifice

Sacrifice (Original Mix) by Gino on Beatport

イギリスのプロデューサーGinoによるドラムンベース
2019年リリースなので今回取り上げる中では比較的新しめの曲。

ギリギリと締め付けるベースの音にも痺れますが、この例えようのないザラついた質感のメインリフとフレーズがとにかく耳に残ります。
フィルで入ってくるドラムの音以外は無機質でドライな音で構成されており、ひたすら荒廃感が漂っている印象。
頭1拍しかキックを置いていないリズムもちょっと変だし、今回取り上げた中に於いて一際怪しさの光るトラック。

The Prodigy / Voodoo People (Phibes Remix)

Stream The Prodigy – Voodoo People (Phibes Remix) [FREE DL] by PHIBES | Listen online for free on SoundCloud

イギリスのプロデューサーユニットPhibesによるドラムンベース
タイトル通りの大ネタです。
同曲のドラムンベースといえばThe Prodigy / Voodoo People (Pendulum Remix)が有名で、あちらがロックのポジティブなマインドを押し出した高揚感重視のリミックスであるのに対し、こちらはもっとアンダーグラウンドのの臭気を纏ったようなアレンジが施されています。

というのも元ネタのフレーズはイントロとブレイク部分で使用されているに留まり、リズムパートに差し掛かると『と思うじゃん?』と言わんばかりに全く別の曲にシフトします。
それも低いところを蠢くベースラインと反復重視のリフが合わさったダークなテイストで、数寄者には堪らない。
展開が変わる瞬間のフェイクドロップにも悪意が見え隠れする憎たらしい曲。

ブートレグらしくフリーダウンロードで公開されているので、持ってない方はこれを機に是非。

James Marvel (feat. MC Mota) / Trump

Trump (Original Mix) by James Marvel, MC Mota on Beatport

ベルギーのプロデューサーJames Marvelと同郷のMC、Motaによるドラムンベース
曲名及びジャケットからお分かり頂ける通り、かつて某大国の大統領だった人に対するアンチテーゼが込められた曲。
特に政治的思想はないんですが、特にこのジャケットは本当にユーモラス且つ下品で好みです。
それを歌っているレゲエっぽい早口フロウのMCがめちゃテクニカル且つリズミカル。
何よりオーケストラをサンプリングしたような重厚で壮大なウワモノによるデデドン!がお腹いっぱいになるまで聴ける曲として一級品。
細かくプログラミングされたリズムや、それに対してもたついて聴こえるシンセも上記の要素と絡み合って極上のストリートサウンドとして成り立っています。

Qo feat. Nuklear MC / Killcode (Mindscape Remix)

Killcode feat. Nuklear (Mindscape Remix) by Qo, Nuklear MC, Nuklear on Beatport

ハンガリーのプロデューサーMindscapeによるドラムンベース
ビックリするくらい圧が強いベースが最前面に出ているシリアスさを伴った曲。
これもイントロ、ブレイクとの落差が凄いですね。
リズムパート中盤のベースはそのままにビートが複雑に崩れる展開とか、個人的には涎出るくらい好きです。

この曲のように無機質でエッジのある音を特徴とするサブジャンルはニューロファンクと呼ばれ、先のジャンプアップ同様にガラの悪い曲が多い印象です。
是非お見知り置きを。

Mefjus, June Miller / Saus

Saus (Original Mix) by Mefjus, June Miller on Beatport

オーストリアのプロデューサーMefjusと、オランダのプロデューサーJune Millerによるドラムンベース
今回取り上げる中に於いてぶっちぎりの変態リズム枠。
4つ打ちです。但しスネアが。
それもある程度進行するとテンポに対して半分の打ち方になるので、緩急がとんでもないことになってます。
その上でフィルの打ち方が異様に細かい上、様々な音色のドラムパーツを駆使している緻密さも併せ持った曲。
ブレイクに入るとより顕著にそれが表れていますね。

この頃のJune Millerは変なリズムの曲が多くてめちゃめちゃよく聴いてました。
同時期にリリースされたアルバム、Robots & Romansは彼の尖りまくったセンスが表れている作品なので、是非。

June Millerも大変好みのアーティストではあるのですが、Mefjusもまた個人的に好きなアーティストの筆頭でして、特に斬新なベースの音作りという点に於いては一歩抜きん出ていた印象を受けます。
彼の周囲にもそんなアーティストが数多く集っているのでその一例を以下に。

Mefjus / Ringshifter (Culprate Remix)

Ringshifter (Culprate Remix) by Mefjus on Beatport

イギリスのプロデューサーCulprateによるドラムンベース
先のSausのパートの一部にあったテンポに対して半分のビートを拡大解釈したスタイルの曲。
そして終始『何を食ったらこんな音が出せるんだ?』という音色のごっついベースが次々登場します。
随所でエレクトロニカ的な細かい音の抜き差しがあったりしてインテリジェンスな側面も見えるのですが、それを見失わせるくらいには凶悪な音が鳴っています。

ここまではリズムやサウンドなど、どこかしらにアグレッシヴな要素がある曲を取り上げてきましたが、本テーマを語る上ではそれだけに留まらないというのがドラムンベースの面白いところ。
次に紹介する曲は大分雰囲気が異なります。

Need For Mirrors / Wiggle

Wiggle (Original Mix) by Need For Mirrors on Beatport

イギリスのプロデューサーNeed For Mirrorsによるドラムンベース
聴き始めはリズムが硬いわけではない、派手なウワモノが乗っているわけでもない、渋いベースが淡々と鳴っている・・・と思っていたらそのベースがどんどん太くなっていき、ドラムとベースだけでリズムパートに流れ込んでいく、まさしくジャンル名を体現している曲。
そのベースのフレーズもめちゃくちゃ変。
例える言葉が見当たらないのですが、ぐわんぐわんする感じ。
少なくとも今のところはこの曲に似たベースを持つ曲というのは聴いたことがないくらいにはオリジナリティとクセの強い曲。

HyperJuice feat. Jinmenusagi / BADMAN DRUMZ

HyperJuice “BADMAN DRUMZ feat. Jinmenusagi“ [full stream] – YouTube

以前hardonizeにもご出演頂いたharaさんが所属するプロデューサーユニットHyperJuiceがラッパーのJinmenusagiさんを起用したドラムンベース
ラップ、歌、リフ、それぞれの聴かせ方をパートによってガラッと変えている展開の妙をドラムンベースに落とし込んでいる曲。
このジャンルに和楽器の音が入っているというのも斬新ですし、リフのパートではそれが聴いたことない高速の刻み方をされていて斬新極まれり。
その際のリズムもジャングルジュークが合わさったようないなたい感じで、やっぱりなかなか聴けないものに仕上がっています。

一方ラップや歌のパートでは808ドラムを用いた現行ヒップホップを彷彿とさせるビートとなっており、コントラストが凄い。
今や第一線のラッパーとして活動されているJinmenusagiさんの独特なフロウの歌い方もこの頃から健在で、リリックの内容も相まって曲の攻撃性に拍車をかけています。
新しいスタイルの到来を予感させた1曲。

Ozma / Censored (Dub Peddla Remix)

Censored (Dub Peddla Remix) by Ozma on Beatport

アメリカのプロデューサーDub Peddlaによるドラムンベース
1曲目に紹介したジャンプアップへと戻ってまいりました。
ボイスサンプルがガラの悪さを声高に叫んでいますが、これもまた特徴的なフレーズのベースラインが肝になっています。
パラメーターが変わって別の音になる箇所とか笑顔になるくらいガラが悪い。
あとやっぱりこの疾走感のあるライドの打ち方が好きだということを認識させられます。

これだけ派手に聴こえるのに、よく聞くと不思議と重なっている音はそんなに多くはないんですよね。

まとめ

以上、ガラの悪いドラムンベースにスポットを当ててお送りしました。
テクノで聴けるガラの悪さとは違い、電子音楽といえどコチラの方がより生々しい音使いをしているような気がします。
そのフィジカル感みたいなものが魅力の1つだと思っているフシはあるのですが、それはそれとしてフェス映えするような煌びやかなスタイルも、逆にアングラ極まったような実験的サウンドも、泣けるような美しいメロディーの曲も全部良い。
機会があったらそういった楽曲たちも取り上げられると良いですね。
・・・これ、何の連載でしたっけね?

あともしもっとこういうの聴きたいというマインドになられた方がいらっしゃいましたら拙作MIXをよろしくお願いします。
今回紹介した曲もちょいちょい含めつつ、こういうテイストのものばっかり取り入れております。
尚、ロゴは自信作です。

TAK666 – チンピラ合衆国国営放送 Vol.1 – 2020.05

Stream Jumpup, Neurofunk, Dnb Mix – 2020.05 by TAK666 | Listen online for free on SoundCloud

そんなわけで今回はここまで。

次週06月14日は774Muzikさんが担当します。
では。

続きを読む