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テクノに近いビート、テンポの日本語ラップ特集:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2022/07/07

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりに担当致します。

【告知1】

Hardonize、いよいよ来週でございます。

2022/7/16(sat) Hardonize#41 at waseda sabaco

gekkoさん、Mck4yさんをゲストにお迎えしております。
最早思惑が何周もしているため、結果いつものHardonizeに落ち着く可能性もゼロではありません。
個人的には何が飛び出すか読めないパーティーの方が好きだったりするので、どういう進行になろうともそこにフィットできるプレイを目指したいところです。
07月16日、会場はいつもの早稲田茶箱でお待ちしております。

再三の申し出で恐縮ですが、今回も入場エントリー制となっておりますので以下のURLよりご登録をお願い致します。
Hardonize #41 in東京 – パスマーケット

【告知2】

前回もお伝え致しました通り、今週末07月09日はTakayuki KamiyaさんやKouki Izumiさんら東京のテクノ勢と一緒に静岡COAでプレイします。


東京以外でプレイできる機会はとても貴重なのでとても楽しみです。
こちらはオーガナイザー直々にハードテクノというオーダーを頂いておりますので、ハードテクノをメインに周辺音楽もちょいちょいを軸に良い感じトラックをごっそり持って行きます。
お近くの方は是非。

【今回のお題】

さて、当連載に於ける自分の回ではハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていく形式となっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

やっぱりそれはそれとしてなんですけど、最近こんな本を買いました。


スヌープ・ドッグのお料理教室 | 晶文社

すっかり面白おじさんとして板についているオリジナル・ギャングスタによるお料理レシピ本です。
この人のこれまでのキャリアを知る人からしたらどんな危ないことが書いてあるんだと思われるでしょうが、物凄い真面目に故郷アメリカのローカルフードの作り方が書いてあり、本当に美味しそう。
日本では見かけない、あのいかにも現地感のあるハイカロリーな料理はこうやって作られているのかというのを知ることができますし、中にはそんなに難易度が高くなさそうなものもあって料理初心者でも参考になる箇所がいっぱい。

何より装丁はめちゃめちゃカッコいい。
見栄えもするし、実用性も抜群ということで是非手に取って欲しい一冊です。
そこそこ大判なので嵩張るのが嫌という方には電子版も各プラットフォームから出ています。

まぁ、とはいえアーティストとしてブレないのがやっぱり面白い。
最近Eminemとコラボレーションした曲のPVが公開されてましたが、開始5秒で笑ってしまいました。

Eminem & Snoop Dogg / From The D 2 The LBC

Eminem & Snoop Dogg – From The D 2 The LBC [Official Music Video] – YouTube

何だその太さのアレ。
フィクションでも見たことが無いぞ。

と、いきなりヒップホップに関する前口上を展開しておりますが、今回Hardonizeにお招きしたMck4yさんはヒップホップにも詳しく、そちらのシーンでも活動拠点となるパーティーをいくつか持っている本当に幅の広い人です。
昔はテクノヒップホップは明確に対立しており、どちらもどちらを認めない時代があって自分みたいな両方聴く者としては非常に肩身が狭かった思い出があります。
今はそれこそMck4yさんや以前ご出演頂いたharaさん、DubYukaさんといった若い世代のプレイヤーやリスナーが幅広く音楽を聴いているおかげでその頃程両者の溝はないような気もしますが、
やはり独自のフォーマットを持っている音楽同士、大きな接点はないまま今に至っているというのが凡そのところだと思います。

その一方で全く接点がないかと言われればそうではなく、ラッパーを起用したテクノトラックだったり、アーティストのコンセプトとしてヒップホップ・ミーツ・テクノを掲げている方々というのもいます。
日本に於いて前者で最も有名なのは電気グルーヴスチャダラパーという双方のシーンの大御所同士が組んだこちらではないでしょうか。

電気グルーヴ×スチャダラパー / 聖☆おじさん

電気グルーヴ×スチャダラパー 『聖☆おじさん』 – YouTube

ヒップホップ・ミーツ・テクノとしては身近なところでLEOPALDONが思い当たります。
ついサンプリングの使い方に耳がいきがちですが、ラップの強度も兼ね備わったパーティーチューン。

LEOPALDON / ミュージカル・ミュータント

ミュージカル・ミュータント | LEOPALDON | やばさ RECORDINGS

というワケで今回取り上げるテーマは

テクノに近いビート、テンポを取り入れた日本語ラップ紹介

とし、年代問わず自分の好きなトラックについて紹介していきます。
テクノヒップホップというかけ離れた音楽の良さをどちらも取り入れた巧みなトラックの数々、是非お楽しみください。

早速ですがテクノに近いビート、テンポの日本語ラップ特集いってみましょう。

【曲紹介】

DISCO TWINS feat. 宇多丸 (RHYMESTER) / DISCO TWINS’ INFERNO

Spotify – DISCO TWINS’ INFERNO – song by DISCO TWINS, 宇多丸

日本を代表するDJでありトラックメイカー、KAGAMIDJ TASAKA両名によるユニットDISCO TWINSによるテクノ
2006年にリリースされたキャリア唯一のアルバムTWINS DISCOは世代やシーンを越えた様々なボーカリストたちを起用した歌もののテクノが収録されており、本作もその中の1曲です。

日本を代表するヒップホップグループRHYMESTERのマイクロフォンNo.1宇多丸を起用したド派手ファンキーテクノ
エレクトロライクなグルーヴ感満点のベースライン、裏打ちのストリングスループ、前のめりなハイハットの打ち方と賑やかで楽しい音が勢揃いしています。
且つラップも的確に韻を踏みつつ、ディスコMCばりの煽りシャウトなんかもあって全部が引き立っています。
自由で楽しいテクノ

アルファ / ガンバリスギ DE ナイト

Spotify – GANBARISUGI DE NIGHT – song by アルファ

アルファによるヒップホップ
なんですけど、トラックはかなりクセの強いリズムのテクノ
彼らは活動初期の頃DJ TASAKAをプロデューサーに迎えて活動しており、その影響が強く残っている曲とも言えます。

テクノのテンポはこの頃のヒップホップに比べると相当速いため、普通にラップを乗せると違和感が出そうなものですが、持ち前のスキルと遊び心で見事にトラックを掌握しているのが凄いところ。
特にTSUBOIの後半パートはタイトに韻を踏みつつ、倍速のフローを取り入れていて聴き応え抜群です。

環ROY×NEWDEAL / プライマルスクリーム

Spotify – プライマルスクリーム – song by 環ROY, NEWDEAL

ラッパーの環ROYと、DJでありトラックメイカーHitoshi Ohishiの別名義NEWDEALによるヒップホップ・ミーツ・テクノというコンセプトの元、2009年に作成されたアルバムThe Klashに収録された1曲。
両名ともそれぞれのシーンで名を馳せていた存在だけに、異色のコラボレーションとして話題になった覚えがあります。

とはいえトラックはかなりオーソドックスなテクノが揃っているのでテクノ馴染みがある方なら違和感なく聴ける作品になっています。
中でもインパクトが強かったのがこのプライマルスクリームで、エレクトロ風のベースラインにブリープ音のウワモノというシンプルな組み合わせが主体となっているのにちょいちょいレイヴオルガンとアーメンブレイクが差し込まれる箇所があってドキッとさせられます。
メインストリームのテクノにレイヴサウンドが定着している今聴くと、また違った味わいを感じ取れるトラックではないかと思うワケです。

SKYFISH feat. 鎮座DOPENESS / CHO YABEEE

Spotify – CHO YABEEE – song by SKYFISH, 鎮座Dopeness

当時ヒップホップベースミュージックの架け橋となっていた気鋭のトラックメイカーSKYFISHが当時から独特なフローと声質で存在感を放ちまくっていたラッパー鎮座DOPENESSを起用して作られたヒップホップ
と書くとそれまでなんですが、トラックは南アフリカに起源を持つアンダーグラウンドなダンスミュージックであるクドゥルと呼ばれるジャンルに当たるものになっています。

簡単に説明するとシンプルなシンセと独特なパーカッションの打ち方に特徴がある土着感溢れるスタイルの音楽なのですが、西洋の音楽とは異なるファンキーな雰囲気を持っており、それが純国産のこの曲にも見事に踏襲されております。
鎮座DOPENESSの独特な歌い方もこうした異形トラックに映えまくりで、溢れんばかりのオリジナリティを主張している曲になっています。
イッツア変ミュージック。大好き。

YOCO ORGAN / 一から

一から – YOCO ORGAN [Official Music Video ] Short Ver. – YouTube

金沢を拠点とするラッパーユニットYOCO ORGANによるヒップホップ
トラックを手掛けたのはHujiko ProさんとGuchonさんによる全方位型RAVEユニット国士無双です。

バックトラックはグルーヴ感のあるアシッドハウス
フック~ブレイクのパートに鳴っているピアノが夏っぽくて今聴くのに丁度良く、タイトルに因んだ前向きな歌詞も聴いてて非常に気持ちの良いトラックとなっています。

関連して、先の曲を手掛けた国士無双のメンバーであるGuchonさんが手掛けたヒップホップ関連の曲がこちら。

Fragment (feat. TAK THE CODONA) / おまじない (guchon remix)

Spotify – おまじない – guchon remix – song by Fragment, TAK THE CODONA

ディープダブステップエレクトロニカといった無機質な電子音を取り入れたヒップホップを多く手掛けるトラックメイカーユニットFragmentの楽曲のリミキサーに起用されたトラック。
原曲の面影が一切無い、裏打ちのレイヴオルガンが終始目立つテクノ
しかしそれ以上に特徴的なのがサブベースで、ちゃんと音の出る環境で聴くと分かるようにテクノでも類を見ない深度のベースが鳴っている、通好みのアレンジとなっています。

Fuma no KTR × WAZGOGG feat. nns, kkn / PockeTrance

Fuma no KTR × WAZGOGG – PockeTrance feat. nns, kkn 【Lyric video】 – YouTube

新進気鋭のトラックメイカーWAZGOGGFuma no KTRnnskknと若手実力派ラッパー3人を起用したヒップホップ
なんですけど、タイトルにトランスと銘打たれているようにトラックが4つ打ちのループもの。

バースの部分ではラップがメインとなるように音に隙間を残す組み方となっている一方、サビはラップなし、リズムが最大限前に出る構成となっています。
近年のBPM150のベースラインに近いものとなっていますが、日本語ラップが乗ったこのスタイルの曲ってかなり珍しい気がします。

ちなみに先月リリースされたばかりの新曲。
こういう肩透かし展開のあるトラックは大好きなので、これを機にこういう曲が増えることをひっそり願っております。

テークエム feat. SOCKS & SHINGO★西成 / Yanpi Remix

テークエム – Yanpi Remix feat. SOCKS & SHINGO★西成 (Official Music Video) – YouTube

独特なフローとユーモア溢れるワードセンスを武器とするラッパーテークエムが2021年にリリースした原曲に、SOCKSSHINGO★西成という先輩格のラッパーを迎えて新録したもの。
これも05月にリリースされた比較的新しい曲。

とにかくBACHLOGICの手掛けたサイバーパンク感のあるビートが強烈。
キック以外の殆どのパーツが3連符で組まれており、且つラップも3連符で進行しているため、物凄いよれたビートに聴こえます。
それでいてキックは終始4つ打ちという実験的要素の強い曲・・・の筈なのに三者三様にトラックを活かした歌い方をしている圧巻の1曲。

Jinmenusagi x MICHEL DIOR / MIYAKO

Spotify – MIYAKO – song by Jinmenusagi, Michel Dior

日本のラッパーJinmenusagiがコートジボワール出身でフランス在住のラッパーMICHEL DIORと組んだ異国共存ヒップホップ
これもトラックが相当異色の部類に当たります。
1拍目のキック、3拍目のスネア、蠢くベースの3音を軸としたディープダブステップを彷彿とさせる緊張感のあるビートになっているのですが、随所にそれらとかけ離れた民族的なパーカッションの音が差し込まれており、土着感の漂うアンダーグラウンドさが滲み出ています。
本トラックについては両者の間で作成されたらしいので、MICHEL DIORの出身地域である西アフリカの要素がこういったパーカッションリズムなのかもしれません。

また、両者ともところどころにスタッカートを置いた発音をしており、パーカッションの鳴りをラップでも再現しているようで特殊さを更に引き上げているポイントです。

Catarrh Nisin Ft. Itaq & Gucci Prince / Player Killin’

【MV】Catarrh Nisin Ft. Itaq & Gucci Prince – Player Killin’ (Prod. by J2S) – YouTube

Catarrh NisinItaqGucci Princeによるグライム
ビートメイカーには本場イギリスのアーティストJ2Sを起用しており、本気度の高さが伺えます。

ガラの悪いドラムンベース特集の後だからというワケでもないのですが、まぁ負けず劣らずガラが悪い。
そして同業者に向けたディスの鋭さがエグい。
その鋭い批判を3分足らずという短い尺にみっちりと詰め込んだ3人のスキルの高さが凄い。

と、かなり刺激になる曲で大推薦です。
この感じはテクノでは味わえないヒップホップ周辺音楽の大きい強みですよね。

最後は清涼感のある曲で〆ましょう。

トップハムハット狂 / Dreamy Toy Rocket

Spotify – Dreamy Toy Rocket – song by TOPHAMHAT-KYO

ニコニコ動画出身のラッパー且つトラックメイカートップハムハット狂によるヒップホップ
トラックは4つ打ちを軸にレトロで可愛いサウンドが乗った派手とは別の煌びやかさを纏ったもの。
中盤でトラップビートにスイッチしたり、ラップと歌唱を切り分けるコラージュ的手法にはインターネットミュージックっぽさを感じます。
歌詞の内容も含めて耳触りが良いので、むしろヒップホップに馴染みのない人に聴いて欲しいタイプの曲。

まとめ

以上、テクノに近いビート、テンポの日本語ラップ特集をお送りしました。
両極端な音楽同士だけに、ピンポイントでこういったトラックを探そうと思うと結構苦労するので、案外スキマを縫った特集になったのではないかと思います。
需要の程は分かりませんが、テクノにとってもヒップホップにとっても変ミュージック扱いされるこういう曲もまた大好きです。
それぞれ個人で好きな音楽というものがあるとは思いますが、そうじゃない音楽の中にも好きな音楽と無関係なものは存在しないというのが伝わると嬉しいです。

そんなわけで今回はここまで。

次週07月12日は774Muzikさんが担当します。
皆様Hardonize#41でお会いしましょう。
では。

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ヒトクセあるサンプリングのテクノ特集:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2022/06/23

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりに担当致します。

【告知1】

次回Hardonizeまで1ヶ月を切りました。


2022/7/16(sat) Hardonize#41 at waseda sabaco

gekkoさん、Mck4yさんという若きクロスオーバープレイヤー2名がゲスト。
様々なカルチャー、シーンを股に掛けた活動を展開している極めて器用な両名なので当日何が飛び出すのか全く予想がつきません。
告知直後から言ってること何も変わらなくて本当に申し訳ないです。
蓋を開けてみるまでどうなっているか分かりません。
シュレーディンガーのHardonizeです。
どうかその目で観測しに来てください。

07月16日、会場はいつもの早稲田茶箱でお待ちしております。
また、今回も入場エントリー制となっておりますので以下のURLよりご登録をお願い致します。
Hardonize #41 in東京 – パスマーケット

【告知2】


Hardonizeの前週07月09日に静岡COAで出演機会を頂きました。
昨年05月に2会場を用いて行われた秋葉原重工以来の静岡出演です。
ちなみにその時はカレー作ってましたけど今回は多分ありません。多分。

Takayuki KamiyaさんやKouki Izumiさんら東京のテクノ勢と一緒です。
聴いたところによるとハードテクノ志向の高い回を想定しているとのことなので、それに沿うような選曲で臨みたいと考えております。
だって翌週ハードテクノかけないかもしれないからね!
お近くの方は是非。

【今回のお題】

さて、当連載に於ける自分の回ではハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていく形式となっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

それはそれとして最近の774muzikさんの回でブートレグについて言及していたので、今回は自分もそれにあやかりたいと考えている次第です。
しかし彼の記事を見てもお分かり頂ける通り、ブートレグといってもそのネタ元は様々です。
大半を占めるのは一般的によく知られたポップスや、ある程度知名度のあるダンスミュージックを各クリエイターが得意とするジャンルに当て嵌めるパターンでしょう。
それらは音楽としてのフォーマットに似通っている部分があるため、ある程度そのまま元ネタを流用できる部分があるものですが、時にそういった共通点のない、突飛なサンプリングを持ち前のアレンジ力とアイディアでダンスミュージックのフォーマットに落とし込んだブートレグというものが出てきます。

先の774muzikさんの回の中ではVanillaのリミックスがそれに当たります。

BootMania IIDX / The Disco Truck (of Vanilla)

Stream The Disco Truck (of Vanilla) by BootMania IIDX | Listen online for free on SoundCloud

これは元ネタがCMソングなので尺が短く、そのままテクノに当て嵌めようとするとかなりタイトな構成になってしまうため、ボイスをループさせて別のトラックと合わせたり、時にピッチ加工してフレーズを調整するといったアイディアで捻じ伏せています。

他にもちょっと前にリリースされてHardonize内で唖然としたHomma Honganjiさんのこちらの楽曲や、

Homma Honganji / TV Detectives Club

TV Detectives Club (Original Mix) by Homma Honganji on Beatport

Sangoさんが時折使っているコチラなどが同系統と言えます。

Oiscarapper / Da Funda

Da Funda (Original Mix) by Oiscarapper on Beatport

前者はテレビ探偵団のオープニング曲、後者は志村けんのだいじょうぶだぁのオープニング曲がそれぞれ元ネタとなっており、
ダンスミュージックと何の接点もない原曲をダンスミュージックに乗せる工夫が凝らされています。

というワケで今回取り上げるテーマは

ヒトクセあるサンプリングのテクノ紹介

とし、年代問わず自分の好きなトラックについて紹介していきます。
具体的には上で挙げたようなテレビ番組のオープニング、CM楽曲、民謡、果てはニュース番組や環境音といった辺りを引用としたテクノとなります。
面白楽曲ばかりかと思われるでしょうが、とりわけセンスやアイディアの光るものもございます。

早速ですがヒトクセあるサンプリングのテクノ特集いってみましょう。

【曲紹介】

レオパルドン / Cake or Girl

Cake or Girl | レオパルドン | やばさ RECORDINGS

日本のプロデューサーユニットレオパルドンによるテクノ
奇天烈なネタモノダンスミュージック、ナードコアを代表するアーティストであり、その彼らを代表する1曲でもあります。
元ネタは一切分からないが、タイトルが全てを物語っている強烈なボイスサンプリングが最大の特徴。
バックトラックはラフなハードダンスなので使い勝手も十分なリーサルウェポン。

2001年の作品なのでCDしか流通媒体がなく、かなりプレミアが付いていた時期もあったのですが、現在はこのように配信が行われております。
ネタモノ好きなら必携且つ必殺のトラック。

ONSEN-TARO / DONG-PANG!

DONG-PANG!(ドンパン節:秋田県) by Onsen-taro on iTunes

みうらじゅんプロデュースによる民謡×ダンスミュージックをコンセプトにした覆面プロデューサー、ONSEN-TAROによるテクノ
元ネタは盆踊りとかで用いられることもある秋田県の民謡、どんぱん節

民謡ネタというだけでも十分珍しいのに、その中でもとりわけ脱力感のあるものを主題目に据えた曲。
三味線や和太鼓などを駆使したサウンドも含め、愉快なテクノといった塩梅。
PVもあるのですが、歌詞に因んだハゲ頭が大量に登場します。
これっぽっちも嬉しくねぇ。

SLK-9888.sys / THE SAFARI (KSD-CDJ-edit)

THE SAFARI (KSD-CDJ-edit) / Lion Musashi (Remixed by SLK-9888.sys) – YouTube

同人サークルSilly Walkerを主宰していたSpelunkerさんによるテクノ
某音楽ゲームのタイトル曲のアレンジとしてリリースされたものなのですが、タイトル繋がりでサンプリングされているのが富士サファリパークのCMソングであり、こちらのインパクトの方が強い曲。

あのCMの冒頭のブラス3音をひたすらループすることでフレーズを作るというセンスが絶妙。
随所に仕掛けられた下世話なサンプリング群も数寄者には堪らないですね。
そのブラスを支えているのが忙しいトライバルリズムなのでハードグルーヴの原型を満たしていると言えなくもない曲。

一時期の同人音楽のごった煮感が溢れまくっていてめちゃめちゃ好きな曲。

the anazaworld / Point Getter 20

Point Getter 20 by The Anazaworld on Apple Music

日本のプロデューサーThe Anazaworldによるテクノ
ちなみにリリース元は石野卓球KAGAMIなどがかつて在籍していた日本の老舗テクノレーベル、Frogman Records

派手なウワモノはなく、反復リズムとボイスループを軸にしたオーソドックスなテクノの雰囲気を纏って進行するものの、中盤で差し込まれるサンプリングがまさかの欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞の採点音。
しかも不合格。

発想の根幹もさながら、当時国産テクノを牽引していた最前線のレーベルからリリースされた経緯も含めて謎が多いトラック。

Hiroshima Denryoku / Tequila

Stream Tequila by Hiroshima Denryoku | Listen online for free on SoundCloud

日本の4人組奇天烈テクノバンドHiroshima Denryokuによるテクノ
彼らの奇天烈っぷりをご存じない方は是非彼らのライブ映像を見て頂きたいのですが、メンバーにギター、ボーカル、リズムマシン担当がそれぞれ1人ずついる他にフロアで全身タイツ或いは全身サランラップの姿で奇妙な踊りをし続ける人がいるというアバンギャルドな構成のライブをします。
ちなみに早稲田茶箱とも縁のある方々で、1度ここでライブを見たこともあります。

そんな彼らのふざけきった楽曲がこれ。
どこかで1度は耳にするThe Champs / Tequilaネタのテクノといえばそれまでですが、
当時某歌舞伎役者が起こした暴行事件、通称『灰皿テキーラ事件』のニュース音声及び謝罪会見をサンプリングしており、なんというかこう、タチが悪い。

それでいてリズムマシン担当のatnrさんはゴリゴリに音楽理論を駆使して楽曲制作を行っているので出音が良い、且つメロディが美しい。
そのスキルを投入するのはこの曲ではないような気もする程、あらゆる方面に突き抜けた曲。
ライブもまた見たいですね。

FANTASTIC EXPLOSION / チョコレート

Fantastic Explosion – Chocolate – YouTube

日本のプロデューサーユニットFANTASTIC EXPLOSIONによるハウス
ボイスループはBelle Epoque / Disco Soundから、メインフレーズはDan Hartman / Relight My Fireから、
サビはLで始まる某お菓子メーカーのCMでお馴染み、しばたはつみ / My Sweet Little Eyesからそれぞれ引用しているてんこ盛りっぷり。
FANTASTIC EXPLOSIONの特徴として昭和っぽいサウンドを用いるという点があり、冒頭のナレーションにもそれが表れています。

それぞれが特大のインパクトを持つサンプリングなのに、互いに引けを取ることなく曲全体を構成しているという奇跡のバランスを持つトラック。
シンプルにハウスディスコといった視点で見てもファンキーで使い勝手満点。
現在のところ配信がなく、CDも現在プレミアついてるようですが、入手の機会があったら是非。

Gassyoh / Semitechno

Stream Gassyoh – Semitechno by Gassyoh | Listen online for free on SoundCloud

日本のプロデューサーGassyohさんによるテクノ
ネットレーベルMaltine Recordsからリリースされたもので、現在もダウンロードが可能です。

タイトル通り、蝉の鳴き声をサンプリングしたテクノ
それもハードミニマルに近い硬めのビートなのでサンプリング元との雰囲気の乖離が著しい。
それでもループし続けてると違和感が段々消えていくあたり、ミニマルの魔力を感じます。
でもこの発想はおかしい。

っていうかHardonizeレジデントはみんな何かしらの形でGassyohさんと縁がある筈なのにこの曲が流れたことは今のところない気がします。
春はryoh mitomi / haru-kaze、夏はGassyoh / Semitechnoくらいの感じで使い倒しても良さそうなのでは?
(秋と冬については思いつきませんでした。)

ORIONBEATS and Yuki Hata / Kariyushi Urban Resort

Kariyushi Urban Resort | ORIONBEATS and Yuki Hata | ORIONBEATS

沖縄民謡×テクノユニットRYUKYUDISKOの兄、ORIONBEATSによるテクノ
今年の04月に出た比較的新しいもので、前のめりなグルーヴに三線や指笛といった沖縄感のあるサウンドが乗ったヒトクセありつつも、ダンスミュージックのソリッドな印象が出ています。

ただ、この曲の肝は中盤のブレイクで展開される強烈によれたビート。
凡そ一般的なテクノでは聴けないリズムの打ち方ですが、これが今回フィーチャリングに起用されたYuki Hataさんの手腕によるもの。
このnoteに詳しく書いてあったのですが、8小節トラックアワードという文字通り8小節という短い尺で曲を作るコンテストが行われ、そこに応募されたYuki Hataさんの8小節に、審査員として参加していたORIONBEATSが感銘を受けて今回のフィーチャリングが実現したという経緯があったようです。
ジャズから影響を受けたとされるアドリブ感強めのビートを得意としているようで、それがこの曲のブレイクに持ち込まれたものだったという、なかなか熱くなるストーリーがあった曲。

ちなみにRYUKYUDISKOとしてのリリースは2015年で止まっておりますが、沖縄民謡×テクノをメインコンセプトにし独特な楽曲はヒトクセあるので以下に好きな曲を貼っておきます。

Ryukyudisko / Native Machine

Native Machine (Original Mix) by Ryukyudisko on Beatport

キラキラしたシンセサウンドに連打気味の三線という、東洋的でアップリフティングなテクノ
途中の三連符の打ち方とかはモロに沖縄感出ますね。

CHURASHIMA NAVIGATOR / HAIMURU BUSHI

HAIMURU BUSHI(For DJ Remaster 48khz 24bit) | CHURASHIMA NAVIGATOR

日本の4人組バンドCHURASHIMA NAVIGATORによるダブステップ
こちらも沖縄を活動拠点としており、且つ沖縄民謡を取り入れているという点で共通しているものの、トラックの質感は全く異なっております。
深いベースラインに無機質なループ系のリフという緊張感のあるリズムに、エコーが施された三線と沖縄方言の伸びのあるボーカルの奇妙なコラボレーション。
サウンド的なアングラ感と地理的なアングラ感が豪快に合わさった素敵楽曲。

ちなみにタイトルの『はいむるぶし』とは沖縄の方言で南十字星を中心とし、その周囲に群れている星々を示す言葉だそうです。

THE MUNEO HOUSE / yabaiyo

[ムネオハウス] THE MUNEO HOUSE PV – yabaiyo (version1)

今回のオチ。
まさか令和の時代にこれを取り上げるとは自分でも思っていなかったんですが、今回のコンセプトにはバチッとハマってしまったので。

経緯についてはWikipediaのページを参照して頂きたいのですが、今から20年前に2ちゃんねるで匿名アーティストたちがこぞって鈴木宗男の国会答弁をサンプリングし、ダンスミュージックと組み合わせた楽曲を発表していたことがあったのです。
その数半年間で250曲以上。アルバム21枚相当というとんでもない量です。
中でも好きなのがこれでして、サウンド、展開、サンプリングの使い方、全てがアマチュア離れしています。
ドライブ感のあるベースラインに複数種類のリフを巧みに組み合わせ、ループ感は保ちつつドラマティックに展開していくトランステクノの中間くらいのトラック。
イントロのユーフォリックな感じもそれに拍車をかけていて当時のインターネットの謎のエネルギッシュさが内包されたようであり・・・マジで20年越しに何を真面目に分析しているんでしょう私は。

ちなみにまだ楽曲を配布しているところがあるのか調べたらありました
公式サイトもまだ残ってました。
インターネット文化遺産として未来永劫残っていて欲しい。

どうでも良い話ですが、2002年当時実際にクラブでムネオハウスを題材としたパーティーが行われておりまして、当時未成年で行けなかったことが人生で悔しい出来事のかなり上位にきます。
かつてHardonizeレジデントだったLZDさんや、ゲストでお招きしたneco-punchさんはこの時の出演者サイドの方々で、実は一方的に知ってました。

まとめ

以上、ヒトクセあるサンプリングのテクノにスポットを当ててお送りしました。
数あるクラブミュージックの中でもテクノはストイック且つミニマルであることが必須条件であるかのような扱われ方をしておりますが、別にそれだけがテクノの面白さではないことは引き続き主張していきたいところです。
特に近年のテクノはインパクトのあるサウンドを用いたトラックが増えてきており、かつての何でもあり感を取り戻している印象も受けるので、その調子でもっと自由に、混乱を招くぐらいのトラックが増えてくることを変ミュージックスキーとして期待しております。

そんなわけで今回はここまで。

次週06月28日は774Muzikさんが担当します。
では。

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