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【特集】Hardonize#37 プレイリストピックアップ:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/11/26

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

近況報告。


カレー作ってます。


今週末、出演者全員がカレーを振る舞い、DJをするという狂気のパーティーにワタクシも参加させて頂く運びとなっておりますのでご興味のある方は是非。
近況報告終わり。

ほぼ2週間経ってしまいましたが、Hardonize 37回目が無事に終了致しました。
お越し頂いた方々、お聴き頂いた方々、本当にありがとうございました。

未だ先行きの見えない状況下の中での開催となったわけですが、蓋を開けてみればいつものHardonizeといった塩梅で大変楽しかったです。
お招きしたゲストの方々のお力添えもあり、各々がハードテクノに対する別々の解釈を体現していてかなりバランスの良い回になったように感じております。
ストイックな雰囲気もファンキーな曲も、実験的でアンダーグラウンドなサウンドもバカみたいに五月蠅いリズムも、そしてそれらから別の音楽軸へ派生できる応用力も全てハードテクノの華。
要はみんな違ってみんな良い。

774muzikさんはハードミニマルとハードトライバルを軸に硬質なリズムとループ感を追求するプレイで、往年のハードテクノテイスト溢れるものでした。
前回は自宅からの配信参加だったという件もあり、『久し振りに現場に立てて嬉しいんだろうな。』という話を演奏中にレジデント間でしてました。

それに対し続くyudukiさんも徹底してハードミニマルで抗戦していましたが、現代テクノのハード、インダストリアルといったエッセンスを織り交ぜており、脈々と現在まで受け継がれているハードテクノの美学みたいな点にスポットを当てていました。
2番手にして何というか、無慈悲。

その2人に対して対極的だったのが3番手のSangoさんで、ラテン~ディスコリフ全開のハードグルーヴラッシュ。
陰陽の対比が凄い。
途中レイヴブレイクスなんかも飛び出して『おおっ。』となりましたが、本当にこの人もいつまで経っても趣味が変わらない人だなと思った次第です。

ゲスト1人目、Takayuki Kamiyaさんはメインストリームテクノを全曲早回しという真面目なのに何かがおかしいプレイでした。
彼の選曲に因るところも大きいのでしょうが、やはり現行テクノの持つ深度と硬度はどの時代のハードテクノにも通用することをまざまざと見せつけられました。
アグレッシヴなトラックを多めに聴けたのも楽しかった点でした。

ちなみにこの日の前に静岡で彼が出演となった際、そして今回のHardonizeでもCalling Earth (UMEK Remix)がプレイされていましたが、これ本当に今年の鬼テクノ。
原曲1994年ですからね。
今になってリミックスされた経緯もよく分かりませんが、原曲に匹敵する牽引力は凄まじいの一言。

で、今回がデビュー戦にしてレジデント全員に太鼓判を押された目玉、SILENT TALKERは期待通りというか、あのMIX通りというか、あらゆる音楽の引き出しが広くて眼福でした。
今回の出演陣の中に於いては誰よりもアングラなテクノを掬い上げており、且つそれを踏み台にレイヴ、ベースラインまでキッチリカバー、最後は本当にシュランツでバトンが回ってきました。
烏滸がましいとは思いつつもおそらくテクノ以外でプレイしても形になると思いましたし、また彼らのプレイは拝見したいですし、何ならまた呼びたい。

余談ですが、終わってから彼らに『いつかTAKさんに一矢報いたいと思ってます。』みたいなことを言われまして、えーと、いつかB2Bでもやりましょうか?


それらを踏まえてトリを任されたのが、ここに至るまでの間に酒で負傷した状態の年齢不詳不肖、ワタクシ。
ハードテクノにはスポットを当てつつ、しっちゃかめっちゃかな状態を維持しつつ、オチをつけるという問いに対する自分なりの答えを出したつもりです。
酔っ払いですけど。

全容はこちら。
ベースミュージック~ディスコ~ハードグルーヴ~ハードダンス~ハードスタイル~シュランツ~富士山

No Artist Trackname Link
01 AAZAR I LIKE IT SoundCloud
02 AJ Tracey Redbull (TC4 Carnival remix) bandcamp
03 Levela Kicked Off Beatport
04 MAHA Get Busy (Jersey-Club Remix) SoundCloud
05 Hamdi Trumpet (Y U QT Remix) bandcamp
06 植松伸夫 The Winner (H.K.WORKS Reimx) SoundCloud
07 FUNNY KRAVITZ XXDEEN 試聴なし
08 S.I. Futures Freestyle Disco Beatport
09 Taku Inoue × KAGAMI MIRROR BALL “LOVE” FUTURE FUNK SoundCloud
10 Tidy Boys Orange Project (Ben Carr’s Dirty Disco Dub) Beatport
11 DJ Preach Tokyo (Raul Mezcolanza Remix) Beatport
12 DJ nagureo 20,November (GreenLady Bootleg) SoundCloud
13 Andy BSK Ziel Erreicht bandcamp
14 Yosshie 4onthefloor All I Ever Wanted bandcamp
15 RICHARD LOWE Razorback Beatport
16 D00D (feat Mesloes) Follow Your Taste (Geck-O remix) Beatport
17 Hannya Psydrums Beatport
18 Fraw Future Sounds Beatport
19 Tim Neumann aka Lunatic Acid Maniac Beatport
20 Boris S. Psychedelic Drug Beatport
21 Dr. Peacock & Ferocious Dog Psychedelic Spin Apple Music
22 電気グルーヴ 富士山 Apple Music

例によって数曲かいつまんでご紹介します。

01 / AAZAR / I LIKE IT

AAZAR – I LIKE IT by AAZAR | Free Listening on SoundCloud

フランスのプロデューサーAAZARによるジャージークラブ。
ディスコに於ける大クラシックKC & The Sunshine Band / That’s The Way (I Like It)ネタ。
インパクトのあるあのコーラスが切り刻まれ、ヘヴィーウェイトなリズムとベースが並走する破壊力満点のアレンジ。
にもかかわらずフリーダウンロードなので、ベース系のプレイヤーのみならず広く推したいトラックです。

05 / Hamdi / Trumpet (Y U QT Remix)

Trumpet (Y U QT Remix) | Hamdi

イギリスのプロデューサーY U QTによるベースライン。
派手さは抑えめながら、メインに据えたベースがじわじわと空間を牽引していく直球な構成。
4つ打ちベースライン、ガラージ、ダブと幅広くフォローできそうな応用力も含め、とりあえず持っておけば安心できる優等生トラック。

08 / S.I. Futures / Freestyle Disco

Freestyle Disco (Original Mix) by S.I. Futures on Beatport

イギリスのベテランプロデューサーSi Beggの変名義、S.I. Futuresによるテクノ。
本名義含め、かなり変態的な音使いをすることで知られたアーティストですが、この曲もその例に漏れない作品と言えるでしょう。
全体的なシーケンスはテクノとかハウスを踏襲していながら、リズムはガラージっぽい上にベースはまんまベースミュージックのそれであり、ウワモノはブラスやコーラスがディスコちっくという、十重二十重とジャンルの層を演出している異形の音楽。

ちなみにこれいつ出たかというと2001年。
ベースミュージックとテクノが接近している現在を予見したかのような作品でもあり、作曲者Si Beggの天才と変態の紙一重ぶりには心底震えます。

09 / Taku Inoue × KAGAMI / MIRROR BALL “LOVE” FUTURE FUNK

MIRROR BALL “LOVE” FUTURE FUNK by IKASAGOJ | AKIM IKASAGOJ | Free Listening on SoundCloud

ジャパニーズディスコテクノに燦然と輝くアンセム、MIRROR BALL FUTURE FUNKとゲーム、アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージの人気曲ミラーボール・ラブIKASAGOJがマッシュアップしたもの。
組み合わせに意外性がある一方でかなりスムーズにそれぞれの音が混ざり合っており、何よりタイトルに洒落が効いてて好きです。
Hardonizeレジデントは全員KAGAMI好きですし、先日行われた早稲田温泉に於いてyudukiボスがミラーボール・ラブを推していたこともあり、今回にピッタリだなと思った次第です。

12 / DJ nagureo / 20,November (GreenLady Bootleg)

20,November(GreenLady Bootleg) by GreenLady | Green Lady | Free Listening on SoundCloud

日本の覆面プロデューサーGreenLadyによるハードグルーヴ。
っつってもすぐ正体分かると思います。何なら中の人とB2Bしたことありますワタクシ。
タイトル通り、元ネタは音楽ゲームbeatmaniaの初代に収録されたコレ。
選曲理由については11月ですからねってことで。
元がラテン風味なハウスなので、そりゃハードグルーヴとも相性◎。

14 / Yosshie 4onthefloor / All I Ever Wanted

All I Ever Wanted (Original Mix) | Yosshie 4onthefloor | 4onthetrax

日本のプロデューサーYosshie 4onthefloorによるテックダンス。
どうでもいいことですが、最近出先で何故かよく会う人。
今回のHardonizeの数日前にリリースされたばかりの新曲ホヤホヤです。
本人には伝えたのですが、古風なユーロテクノを想起させるリフが変わっててテクノ~ハードダンス間の良い橋渡しになりそうだなと思ったので早速起用させてもらいました。
その場の思い付きで軽くビートジャグリングしてみたら結構上手いことハマってくれたので、ちょっとルーティーン詰めてみようかと思ったり。

15 / RICHARD LOWE / Razorback

Razorback (Original Mix) by Richard Lowe on Beatport

アイルランドのプロデューサーRichard Loweによるテックトランス。
以前書いた新作テックダンス / テックトランス特集で取り上げたり、もし自分がHardonize公募にエントリーしたらMIXでも使用しましたが、この曲に関してはかなり気に入っております。
これだけ毅然としたトランスの洗練されたリズムを奏でているのに、ウワモノがカウベルって。
少なくとも自分の聴いてきたトランスとは一線を画したサウンドであり、しかも妙にそれがハマっていて『格好良いかも?』と思ってしまう辺り完成度の高い曲であるという認識を持っています。
勿論、単純に変ミュージック好きというのは否めない。

18 / Fraw / Future Sounds

Future Sounds (Original Mix) by Fraw on Beatport

ドイツのプロデューサーFrawによるロースタイル。
ハードスタイルの中でもより重厚で攻撃的なキックをコアとするサブジャンル、ロースタイル。
少し前まで硬派でアンダーグラウンド色が強かった印象がありますが、近年のトラックは面白キック合戦の様相が顕著でして、既存のリズムの概念が崩される音が次々出てくるので楽しいですね。
そのジャンルに於いてメインストリームの一角を担っているのがGearbox Digitalというレーベルであり、そこから今年初頭にリリースされたのがこちら。

バッキバキに歪んでいるにも関わらず芯があるという意味不明なキックのオンパレード。
4分打ちのサイケデリックトランスっぽいベースも相まってとにかくアグレッシブ。

20 / Boris S. / Psychedelic Drug

Psychedelic Drug (Original Mix) by Boris S. on Beatport

ドイツのプロデューサーBoris S.によるシュランツ。
前回の新作シュランツ特集でも取り上げた、サイケデリックトランスにシフトする珍しい曲。
今年リリースされたシュランツに於いては1、2を争うくらい印象に残っていた曲だったので、ようやく使えたことにほっこりです。

21 / Dr. Peacock & Ferocious Dog / Psychedelic Spin

Dr. Peacock & Ferocious Dog – Psychedelic Spin (Official Video) – YouTube

オランダのハードコアプロデューサーDr. PeacockとイギリスのフォークロックバンドFerocious Dogによるサイケデリック・トランス。
この時点でそれぞれのジャンルとその組み合わせが大分おかしい。
元ネタとしてFerocious Dogが2017年にリリースしたSpinという曲があり、思いっきりヴァイオリンを前面に出したケルト民謡とパンクが合体したような奇天烈さが変ミュージックスキーの心を鷲掴み、彼らの代表曲として確立しました。
一方でハードテックやフレンチコアといったハードコアの中でもとりわけ速いスタイルを追求していたDr. Peacockは何を思ったのか近年オーケストラ編成でハードコアを演奏するというスタイルを確立しており、これが大ウケ。
生演奏を交えたハードコアのプレイヤーとして広く認知されるに至っております。

で、何でこのペアでサイケデリックトランスなのかは本当に謎。
謎なんですが、ケルティックな速いサイケとしてあまりにも愉快なので大好きです。

22 / 電気グルーヴ / 富士山

Denki Groove – Fuji-san [Live at FUJI ROCK FESTIVAL 2006] – YouTube

言わずと知れた日本のプロデューサー電気グルーヴによるテクノ。
原曲は1993年リリース。
アルバムVITAMINに収録された曲の中では最も速く、ライブに於いても頻繁に演奏される彼らの代表曲の1つ。
ちなみにその時、ピエール瀧は上の映像にもあるように富士山になって噴火します。

何故〆がこの曲かというと、前回のyudukiさんのエントリーで触れられていたように直近で静岡に行ってたんです我々。
といってもワタクシはTakayuki Kamiyaさん、REV-TUNEさん、Bishamonさんと行動を共にしていたのですが、何の因果かyudukiさんも全く同じタイミングで静岡に旅行に来ており、沼津港で合流するというイベントが発生。

これがその時の写真です。

Hardonizeの際、その時に買ったまぐろチーズチーズかつおを配布したので、『静岡は楽しいし良いところなのでみんな行きましょう。』という思いを込めて〆をこれにしました。
伝わった?伝わったよね。

以上、Hardonize #37のトラックリストをお送り致しました。
所々にネタモノやインパクトの強いサウンドを配置しつつも、如何にそれ一辺倒にならないようにするかとか、それらを伏線として如何にスムーズなジャンル遷移ができるかといったところに常々重点を置いており、それをハードテクノに落とし込んだプレイをHardonizeでは披露している感じです。
平たく言うと今回もいつも通りってことになりますが、その中で何か面白い音と巡り合えたなら嬉しい。
それこそがクラブパーティーの醍醐味だと思っておりますので。

そんなワケでHardonize#37 プレイリストピックアップはここまで。
次週12月01日は774Muzikさんが担当します。
もう年末じゃんね。

今回はこれにて。

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新作シュランツ特集 (2020年11月版):今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/11/12

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

明後日11月14日はHardonize #37です。

ゲストに秋葉原重工よりTakayuki Kamiyaさん、
そしてMIX公募予選を見事勝ち抜いたDubYukaさん & tRAIN deLAYさんから成るSILENT TALKERの2組をお招きしてお送りします。

軽く今回のゲストについてご紹介しますと、Takayuki Kamiyaさんについては過去にもHardonizeにお招きしたことのあるまぁテクノ全般に造詣の深い人です。
ミニマルからハードまで、古きも新しきも彼の手の中。
その一方でテクノではお馴染みのキーワードであるストイックなプレイかというと必ずしもそうではなく、過去にご出演頂いた際、延々とJoris Voorn / Incidentネタが投下されるなんて回もありました。
おかげで後にIncidentネタをまとめた記事を書くことになるなど、大変な思いをしました。

とはいえ、これも言ってみれば如何にテクノで面白いことができるかを煮詰めた彼なりのアンサーだったのでしょう。
数か月前に自宅からほぼ無告知で10時間テクノでDJする模様を配信したり、真面目にやってもフザけていても総じて面白い人です。
何気にパーティーでの共演は久し振りということもあってとても楽しみです。

余談ですが、昨年のTOKYO HARD GROOVE SESSION ’19 -Spring-でご一緒した際に出演順が自分⇒Takayuki Kamiyaさんで連続しており、
その時の互いのトラックリストが


このザマという回がありました。
当初彼はこんなプレイをするつもりではなかったらしく、ワタクシのプレイを受けてこうなったとのことで、『君と共演するとロクな事が起きない。』とよく言われております。
今回はそうならないと良いですね。(鼻をほじりながら。)

そしてもう1人、というか1組が今回の目玉でありB2Bユニット、SILENT TALKERです。
なんと今回のHardonizeが初お披露目ということで、新しい旅路に立ち会えることはとても光栄に思います。
かといってキャリア真っ新な新人というワケではなく、DubYukaさんもtRAIN deLAYさんもお互い数々のパーティーを経験している言わば戦友。
自分も何度かその場にいたこともあり、『なかなかやりよる。』という感想を抱いたこともしばしばありました。

そんな2人が手を組んで挑んできた今回の公募用音源は前回述べた通り、かなりやられました。
改めて載せますとこちらです。

SILENT TALKER (DubYuka & tRAIN deLAY) / Harmageddon Heavy Tekno Strikeback Mix

Harmageddon Heavy Tekno Strikeback Mix by SILENT TALKER (DubYuka & tRAIN deLAY) by DubYuka | Mixcloud

変則テクノでスタートし、ブレイクビーツ、レイヴ、ベースライン、アシッドなどテクノ外の要素も積極的に取り入れながらシュランツまでカバーするクロスオーバースタイル。
個人的な趣向として、パーティーでは次に何がかかるか分からなくさせて欲しいという思いと、繋いだ前後の曲に何らかの共通点があって欲しいという思いが同時にあるので、これはそれを両方とも見事に体現していたという点に於いてかなりツボでした。
自分と同じ匂いを感じつつも細かい箇所で自分と異なるアプローチを見せているので、当日はこれを経てどんな音を聴かせてくれるのか、これまた楽しみです。

ちなみにtRAIN deLAYさん、


週末に両方やってもらって構いません。

尚、ご来場頂く場合には以下のサイトから予約が必須となっております。
残り枚数も少なくなってきたようなので、お越しをお考えの方は是非ご登録をお願いします。
尚、オンラインでのお支払いではなく、通常通り入場料はエントランスでお支払い頂く形となりますのでお間違えなきよう。

Hardonize #37 in東京 – パスマーケット


静岡行ってきたのでお土産持って行きます。

さて、今年からワタクシの回はハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていくものとなっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

特別連載:ハードテクノとは何か? – 第1回:黎明期編


ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

今回取り上げるサブジャンルは

シュランツ

です。

特別連載に於いては6回目に取り上げた、ヘヴィーウェイトなリズムと高速テンポが特徴的なハードテクノの狂暴性をフィーチャーした音楽です。
古くはブートレグが大量生産されていたこともあり、日本でも爆発的に注目を集めた経緯がありました。
現行のシュランツはそこまでブートレグ主体のシーンは築いておらず、より高速なテンポや重厚感のあるビートを追求したり、様々なジャンルの要素を取り込んだりとサウンド面に於ける発展が顕著に見られます。

これまでのワタクシの担当回に於いてハードテクノの内外問わずサブジャンルの音源紹介をしてきましたが、ここに至るまでシュランツを取り上げてなかったということに思い至ったのと、上記SILENT TALKERのMIXに於いてシュランツが使われていたことでチャンスだなと思ったので。
やはりインパクトのある音は好きでちょくちょく掘っていることもあり、今もまだ脂の乗ったリリースが多いと感じております。
おかげで今回も紹介曲数は多めです。
よろしくお願いします。

早速ですが新作シュランツ紹介いってみましょう。

Tassid, Eski / Chemistry

Chemistry (Original Mix) by Tassid, Eski on Beatport

イギリスのプロデューサーTassidとアメリカのプロデューサーEskiによるハードテクノ。
キャリア初期からペアで手掛けている曲が多い2人です。
リリース元のSKUXXも彼ら2人が運営を務めるレーベルで、ハードアシッド~ハードミニマルまで硬め速め派手めなトラックが揃っているため、Hardonizeクルー全員が信頼を置いております。

そんな中から直近のリリースがこちら。
圧の強いリズムにアラームのようなシンセが鳴りっ放しのアグレッシヴなハードテクノ。
生粋のシュランツというわけではありませんが、各種ハードテクノ~シュランツとの橋渡しとして機能性抜群なトラック。

KlangKuenstler / Himmelreich

Himmelreich (Original Mix) by KlangKuenstler on Beatport

ドイツのプロデューサーKlangKuenstlerによるハードテクノ。
少し前まではメインストリーム系の渋いテクノ~テックハウスを手掛けていたアーティストでしたが、ここ最近のリリースはかなりハードテクノに寄せており、遂にシュランツに近い領域に踏み込んでしまったと言えるのがこちらになります。
突き刺すようなハイハットリズム、歪んだボトムライン、幾層にも重ねられたシンセ群が三位一体となって迫り来るマッチョなトラック。
これもシュランツとの橋渡しに使えそうですが、逆にシュランツから一般的なハードテクノに戻す際にも役立ちそうな気がします。

Mental Crush / Maximum Overload

Maximum Overload (Original Mix) by Mental Crush on Beatport

ポーランドのプロデューサーMental Crushによるシュランツ。
現行のシュランツシーンに於ける代表格的存在と言っても過言ではないアーティストであり、この曲のリリース元であるRebirth Societyも10年に渡ってシュランツシーンに君臨している名門レーベルです。

Mental Crushの作風の特徴として、変化球的サウンドを組み合わせたトラックをコンスタントに輩出している点が挙げられます。
この曲もそのカテゴリーと捉えており、ハードハウスっぽいシンセリフをメインに据えたファンキーなテイスト。
とはいえ結局リズムがシュランツそのものなので、総じて面白さが上。
先の特別連載で取り上げたPacmanなんかと毛色が近いですね。

ついでにもう1つ、少し前に出たMental Crushと同じポーランドのプロデューサーDouble Drumsとのコラボレーション楽曲もまた変化球ウワモノなのでご紹介。

Mental Crush, Double Drums / Get Rock Baby!!

Get Rock Baby !! (Original Mix) by Mental Crush, Double Drums on Beatport

聴いての通り、ギターリフ全開のガン攻めシュランツ。
Afrika Bambaataa / Just Get Up And Danceのラップをモロ使いしている辺りもオールドスクール感あってニヤリとさせられます。

更に加えてこのDouble DrumsというアーティストもMental Crush直系のサウンドアプローチをしていて面白い曲多いです。
最近のリリースだとこんな感じ。

Double Drums / Serial Killer

Serial Killer (Original Mix) by Double Drums on Beatport

レイヴィーなシンセ乱れ打ち。
上のGet Rock Baby!!もそうですが、尺が4分ちょいというテクノ系の音楽にしてはタイトに纏められているのも特徴の1つ。

Boris S. / Psychedelic Drug

Psychedelic Drug (Original Mix) by Boris S. on Beatport

ドイツのプロデューサーBoris S.によるシュランツ。
これだけ半年ほど前のリリースになるのですが、あまりにも好きなのでご紹介。
Boris S.といえばシュランツ黎明期からシーンを先導していた超ベテランアーティストでして、2016年にはキャリア15年を祝した111曲入りのベストアルバムなんかもリリースされております。
物量が多過ぎて逆にツッコめない。

そんな彼が今年の初頭に出したI Am Differentという反骨精神丸出しのタイトルを冠したアルバムに収録されたのがこちらのトラック。
タイトル通り、中盤でサイケデリックトランスにシフトするシュランツ。
かつて無かったクロスオーバーが現れたと初めて聴いた瞬間はかなり興奮しました。
先のMental CrushやDouble Drumsのトラックといい、トランス、ハードダンスとの融合ものが個人的に結構アツいと感じております。

I Am Differentは他にもアシッドシンセをフィーチャーしたトラックトラップのエッセンスを取り入れたトラックなどベテランの技が光る箇所満載で聴き応えがあります。
2020年のシュランツを代表するアルバムとして是非手に取って頂きたいところ。

Insect / No way out

No way out (Original Mix) by Insect on Beatport

ここから更に速めのBPM160台の曲を取り上げていきます。
こちらはハンガリーのプロデューサーInsectによるシュランツ。
今年設立された新興レーベルBlackworksからのリリースであり、Insectも活動歴1年ちょいの若手アーティスト。
でありながらこの強烈に歪められたリズムにこれまた打撃音のような攻撃的なシンセが跋扈する、ベテラン顔負けの重厚さを持ったトラックがリリースされました。
インダストリアルとシュランツの中間を行くタイプの曲といえます。

ちなみにInsectは自身のSoundcloudアカウントでフリーダウンロード楽曲もしばしば公開しているのですが、押し並べて強烈なインダストリアルリズムを奏でていてビックリします。
参考までに、現在の最新作がこちら。

Insect / Uprising

Uprising [freedl] by INSECT | Free Listening on SoundCloud

非4つ打ちだしバッキバキに歪んでるし、何食ったらこんな音が出せるのか。
ずっと非4つ打ちなのですが、ブレイク後に裏打ちのシンバルが入ると4つ打ちに聴こえるとか、実は相当実用性もあったりします。

あと先程のNo way outと同じEPに収録されている曲も面白いのでついでに。

Neagles / Poppers Bass

Poppers Bass (Original Mix) by Neagles on Beatport

フランスのプロデューサーNeaglesによるシュランツ。
シュランツ的泣きメロ解釈とも言うべき、ちょっと哀愁漂うシンセが印象的なトラック。
全体的に出音が低音寄りなのもアングラ感漂ってて好みです。

Boiling Energy / Back to Schranz

Back to Schranz (Original Mix) by Boiling Energy on Beatport

オランダのプロデューサーBoiling Energyによるシュランツ。
決意表明のようなタイトル通り、今回紹介する曲の中では1番正統派なシュランツ。
高速バリ硬リズムに声ネタとシンセがループするまさにお手本のような曲なので、基礎をしっかり押さえておく意味でも優秀なトラックとなっております。
ブレイクの非4つ打ち部分を上手いこと活かせると異ジャンルからのクロスオーバーとかにも使えそうですね。

ANONIMOSDJS / Da Underground

Da Underground (Original mix) by ANONIMOSDJS on Beatport

アメリカのプロデューサーANONIMOSDJSによるシュランツ。
シュランツにしては使用しているサウンドの手数が多いトラック。
ダブステップのようなパートがあったり、インダストリアルっぽいリズムになったかと思えばサイケデリックなリフが並走し出したりと、かなりしっちゃかめっちゃか。
単曲で面白い展開を演出できるのは強みであり、古くはブートレグを大量生産するなど異ジャンルの要素を取り入れることに抵抗のないシュランツイズムに則った曲とも言えます。

Pawlowski / Demonic Dimensions

Demonic Dimensions (Original Mix) by Pawlowski on Beatport

フランスのプロデューサーPawlowskiによるハードテクノ。
これまで紹介した曲とは少し毛色が違うものの、面白かったのでここに載せます。
レイヴ、アシッド、ハードコアなど1990年代の要素と現代のハードテクノを融合させたような曲を多く手掛けているアーティストで、個人的にはモロ好み。
ユーロポップ丸出しのレトロなリフにヘヴィーウェイトなキックという異種交配っぷりは粗削りなオールドスクールレイヴの空気感そのもの。
そしてめっちゃ速いテンポ。
本当に2020年リリースなのか疑わしくなるレベルですが、とにかく好き。

Srezcat (feat. Persian Groovies)/ Liquid Protocol

Liquid Protocol | Srezcat | HiTNEX TRAX

最後に国産トラックを取り上げます。
覆面プロデューサーSrezcatと、同じくとあるアーティストの変名義Persian Grooviesによるシュランツ。
イントロのエモなピアノフレーズから一気に荒々しいリズムへシフト。
それもハードスタイルの中でも一層歪んだリズムを特徴とするサブジャンル、ロースタイルのパーツを組み合わせつつ展開していくテクニカルな仕上がりです。
ブレイクのハードダンスに寄せたフレーズも意外性があり、総じて遊び心満点なので聴いてて楽しい。
タフで煌びやかな曲。

以上、シュランツにスポットを当ててお送りしました。
ハードミニマルの派生形として誕生したシュランツではありますが、こうして直近の曲を聴くとその枠を超えた独自のフォームを形成しているのが分かります。
新しいアーティストの流入も盛んであり、既存の概念を崩すような曲と出会うこともしばしば。
アグレッシヴなダンスミュージックが好きであれば是非お見知り置き頂きたい音楽の1つです。

といった辺りで今回のサブジャンル特集はここまで。
明後日のHardonize #37でお会いしましょう。

次週11月17日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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