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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/08/24

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

前回コミックマーケットに因んで(因んだのか?)トライバルテクノの雄であるCAVEをご紹介したところ、まんまと次の回で774Muzikさんがトライバルテクノ大特集をやってくださいました。
本連載屈指の分量となっており、2017年にもなってここまで念入りにトライバルテクノについて語った記事もそうそうないでしょう。ありがとうございました。
その一方でSangoさんやYudukiボスは淡々と自分の得意フィールドの音楽を紹介しており、新しきも古きも変なものも紹介しているこの連載、気付けば2年目突入してました。先月。気付くの遅え。と云うか誰も気付いてないっぽい。

20170824
ちなみにコミックマーケットはこのくらい買ったんですが全然リッピングが追い付いておらず、一昨日のボスの振りには応えられそうにありません。ごめんボス。

始めに、今週頭に私のMIXが公開されましたのでご報告致します。

AHI COMPILATION 07 – Exclusive Mix 1 – mixed by TAK666

毎度お世話になっているテクノレーベル、秋葉原重工のプロモーション企画と云うことで同レーベル音源だけ用いた内容です。
メロディアスな曲からミニマルへ移行して最後はハードと云うように一口にテクノと言えど様々なスタイルがあり、その国内最前線に立つ方々をフィーチャーしつつインディーズならではの尖った楽曲も目白押しと云った点で大変面白いレーベルです。
パーティーも定期的に秋葉原MOGRAにて開催しており、次回は09月23日を予定されています。是非足を運んでみてください。
http://www.ahiweb.info/

さて、日本の地下テクノシーンを支えているのは勿論秋葉原重工だけではありません。
彼らのようにフィジカルリリースを主体とした団体もあったり、クラブパーティーを主眼に置いた集団(おこがましくも我々のような)もある一方で、インターネットを主な活動場としている方々もいらっしゃいます。
所謂ネットレーベルですね。
過去に何度かフリーダウンロード公開されているハードテクノ音源のレビューをしてきたように、ネットレーベルにはフットワークの軽さやアイディアの豊富さなどを生かしたネットレーベルならではの面白さがあると思っております。
そんなわけで本日はアーティストではなく、界隈的にも決して遠くないこちらのレーベルをご紹介。

【OmanticRecords】

OmanticRecords

http://omantic.me
https://facebook.com/OMANTICRECORDS
https://omanticrecords.bandcamp.com

カタカナで書くとオマンティックレコード。何とも卑猥さを感じるネーミングですが、概要のところで

オマンティックレコードはインターネット勃起テクノレーベルです。

と堂々謳っているので致し方なしと云う塩梅。言っている意味はサッパリ分かりません。
2010年11月に設立され、2011年05月に最初のリリース『Goats Gone Wild』を発表。
この頃って丁度『NetLabel Warfare』があったりしてネットレーベルと云うものが一定の注目を集めていた時期ですね。
現在も活動継続中で、最新作『Chiba-city ACID』はつい先日出たばかりの50作目。かなり長期間に渡ってリリースを重ねております。
一部を除いてほぼBandcampを介した投げ銭システムにて楽曲の配布がされているので文無しにも優しい。
また、Tシャツの受注やVSTプラグインの開発なども行っておりますが、総じてデザインがいかがわしいのも特徴。(褒め言葉)

主宰はksd6700氏。
http://ksd6700.net
https://soundcloud.com/ksd6700
千葉のINAGE(読み方は『インエイジ』)所属のクリエイター。
ちなみに同レーベルにはマッシュアップチーム、コバルト爆弾αΩも在籍しております。
(更に余談ですが昔INAGEのフリーペーパー頂いた記憶があります。)
作曲はテクノ、ハウスからブレイクビートまで幅広くこなし、時にハードウェアを用いたライブを行うこともあるのですが、その時のプレイ内容はゴリゴリのアシッド~ハードテクノだったりします。
参考映像がこちら。

[20140112] Aki-Bug SuperS – ksd6700(前々夜祭, 本祭)

そう、Hardonizeを行っている会場、茶箱と縁深い方々が集った秋葉原屋内フェス、『Aki-Bug』に出演されていたんですね。
大胆にサンプリングを織り交ぜつつ繰り広げられるアシッドテクノの世界、開催場所を考えると大分通好みのライブですが、盛り上がってますね。
茶箱にも出演経験があり、個人的にはこちらの方が記憶に残っていたりします。

2008/04/18 – 実験教室 第7回 – ksd6700

図らずしも先週ご紹介したようなトライバルテクノが鳴り響いてます。
これ私が撮ったものなのですが、暗過ぎて何も見えませんね。

このようなライブの音が反映されたトラックがOmanticRecords最新作、『Chiba-city ACID』だと思います。

ksd6700 / Chiba-city ACID

カッチリしたキックを始めとする機械然としたリズムパターンの上で鳴らされるアシッドシンセ。
テックハウスからテクノに持ち上げたり、逆にテクノにベースのグルーヴ感を与えたい時など重宝しそうな1曲です。

一方でテクノとそれ以外の要素を混ぜ合わせたような曲がこちら。

ksd6700 / JupiterStep

一聴して分かるUnderground Resistanceのサンプリングにグライミーなベースライン。
4つ打ちともブレイクビートともつかない構成でありながらインパクトの大きい変な曲となっており、大変ツボです。

ちなみに個人のSoundcloudアカウントでもいくつか曲をアップロードしており、中でも取り上げたいのがこれ。

ksd6700 / MEGATECH PRAYER MP3

ジャケットイラスト通りのアレネタです。正確にはPSゲーム版のステージBGMがハードミニマルにアレンジされております。
エグめの楽曲と相性良さそうですし、ネタありきじゃなくても使える仕上がりが大変素晴らしい。

公式サイトによるとOmanticRecordsは主宰のksd6700氏以外にも11組のアーティストが所属しております。
個人的に驚いたのはHASEGAWA-4200氏の名前があったことでした。
完全にジュークの印象しかありませんでしたが、改めて聞き直すとテクノも作っていたんですね・・・認識を改めます。

ハードテクノ的な観点でもう1名取り上げるならthe percussionz氏はオススメです。
https://soundcloud.com/the-percussionz
OmanticRecords参加作品としてはこの辺りです。

the percussionz / dance! tokio! dance! (2020 Cristal Tokio mix)

the percussionz / 銀河の渡り鳥

両方ともアシッドシンセを用いたディスコ調トラック。分かりやすく言うとKAGAMIっぽい感じ。
詰まるところHardonizeでよく流れるようなファンキーテクノに大変近い曲を作っておられます。アリガタヤ。
加えてthe percussionz氏のSoundcloudアカウントにて大量にブートレグが公開されており、往年のテクノアンセムやJ-POPがアッパーなダンスミュージックに変貌を遂げてます。
BPM130近辺の4つ打ちもあり、ダウンビートやドラムンベースもあったりと、こちらはこちらで多才。

所属アーティスト以外にも外部クリエイターを起用したリミックス作品なんてのもございまして、こちらは冒頭の秋葉原重工にも参加されている909state氏の作品。

DERTHXY / poh (909state remix)

ほぼキックとスネアとハイハットとシンセしか聴こえない男前なハードアシッド。
ksd6700氏と同様、ハードウェア構成でライブをやるクリエイターの筆頭格らしい作品です。

楽曲だけでなくMIXもナンバリングを重ねておりまして、中でもこちらはトライバルテクノを軸にJ-POPの要素を混ぜこぜにしたアグレッシヴな内容でオススメです。

ZAIBATSU / GeneralMeeting at InterNets Mar2017

尚、公式サイトによるプロフィールでは

「 ZAIBATSU(財閥)」は、「DJ Mitsubishi(DJ 三菱)」「DJ Mitsui(DJ 三井)」「DJ Sumitomo(DJ 住友)」「DJ Yasuda(DJ 安田)」らから成る覆面DJユニットです。

と紹介されており、ふざけっぷりが秀逸。こんな文章、逆立ちしても出てきません。

と云った感じでアンダーグラウンドならではのアヤしさとインディーズならではの豊富なアイディアを詰め込んだネットレーベルがOmanticRecordsです。
ダンスミュージックに於けるテクノと言うとどうしてもインテリジェンスだったりストイックな部分ばっかり目がいきがちですが、もう少し肩の力を抜いて聴けるような側面もあると云うことがお分り頂ければ幸いです。

尚、OmanticRecordsとしてはネット上でのリリースを行っておりますが、上で挙げたksd6700氏所属のINAGEに於いてはフィジカルリリースも行っており、コミックマーケットやM3と云った即売会を通して購入することが可能です。
親交レーベルとしてOmanticRecords所属のクリエイター楽曲も多数収録されているので是非お手に取ってみてください。
http://inage.info

次週08月29日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/08/10

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

明日から3日間コミックマーケットでございますね。
何度か取り上げておりますようにこういった即売会で頒布される同人音楽の中にもハードテクノと親和性の高い音楽が多数存在しているわけでありまして、紳士淑女に於かれましてはそういった鼓膜を刺激する作品を求めに・・・或いは別の部位を刺激するためのナニかを求めに赴くであろうと推察されます。
本来であれば出展者の情報なども載せていきたかったタイミングではありましたが、私は事前下調べをせず直感で買い物をすることが楽しかったりするので今回は特集的なことはせず、粛々と通常連載の形を取りたいと思います。
もしHardonize的に取り上げたいナイス作品と出会えたら次回ご紹介させて頂きますユエ。

それにしても最近暑い。
毎年のことにも関わらず全く慣れる気配がなく、人間は本当に環境適応できるような進化を遂げているのか不安になる程です。
所感として、夏で褒められる点と言えば賑やかな音楽が似合うことぐらいのものです。サンバとかカーニバル的なやつ。
その手のトライバル的要素がハードテクノと相性が良い点については当連載でも色々な回で触れられておりますが、中でも爆発的ヒットを生み出したアーティストと言われると我々世代のテクノスキーであれば少なくとも半数は共通の回答を述べる筈です。
上述の『カーニバル』で察した方がいらっしゃったら大正解。

【CAVE】

cave

ノルウェー、オスローのDJ/クリエイター。
1998年からDJを開始し、2001年からテクノ~ハウス楽曲のプロデュースも兼ねる。
デビュー作はBen SimsのレーベルIngomaからのリリースと初手から大物に見出されていた感がありますが、このデビュー作がハードテクノに於いてとにかく重要な作品となります。理由は後述。
その後もPrimevil、Intec、Hz Traxなど実力派レーベルは元より、UniversalやMinistry Of Soundと云った大手メジャーレーベルからも次々と作品を輩出し、2005年から2009年にかけてはSpilo Recordsのレーベルオーナーも務め、Boriqua TribezやOrtin Camらと共に2000年代のテクノシーンを牽引しました。
DJとしてもDance ValleyやSonarなど大規模フェスへの参加経験もある傍ら、Fabrik Madrid、Florida 135などの有名クラブにゲストとしても招かれるなど40か国以上でのプレイ経験があります。
尚、2006年にはPaul Mac、Ortin Camらと共に来日もしています。
DJスタイルも3台のターンテーブルを駆使しつつ、エフェクトやDJ用サンプルトラックを重ねることでハードなサウンドを奏でる技巧派ぶり・・・と見ての通りかなりの経歴をお持ちの方です。

さて、上で触れたCAVEのデビュー作にして出世作がこれだったわけです。

Cave / Street Carnival


https://play.google.com/store/music/album?id=B4kuoitw4gjjzplmqwjkkxdg34y&tid=song-Tckxcrvk6hppjgnk4mycavwslfi&hl=en

2003年リリース。
粗っぽいハードミニマルのリズムにパーカッションループが延々続き、極め付けと言わんばかりにパーカッションしか鳴らなくなる特大のインパクトを誇るブレイク。
前出のBen SimsやPaul Macがそれまで行っていた生音っぽいリズムのテクノを更に先鋭化させたこの曲は、新しいスタイルの音楽としてジャンルの垣根を越えて大ヒットを記録します。

具体例を出すとトランスの大御所Tiestoや、

(最初にかかります。)

Armin van Buurenまでもがプレイした程です。

(最後にかかります。)

また、この曲の大流行を受けてこれまたジャンルの垣根を越えてリミックス、ブートレグが出回りました。
ハウス、トランス、シュランツ、果ては同人音楽まで把握できているものだけでも相当な数に上ります。
1つ1つ挙げるとキリがないので割愛しますが、明日がコミックマーケットであることを踏まえて1曲だけご紹介。

DJ TECHNORCH / 復活富士山頂大回転 ~Fujiyama Panic~

国内きってのキワモノハードコア生産者、DJ TECHNORCH氏の2007年の作品。
『ガバ・ミーツ・何か』と云うコンセプトの元に作られたアルバム、『BOSS ON PARADE ~XXX meets GABBA~』に収録されているだけあってあのパーカッションの部分が全部ガバキック。
こういう面白音楽がリリースされるのも同人音楽の強みでございます。

ちなみにこの曲には元ネタがあります。

Sergio Mendes / Fanfarra (Cabua-Le-Le)


https://play.google.com/store/music/album?id=Bmftqejdjvwpvgg2ndgxf7mqruq&tid=song-T4igmyjwwqxdmilkhyc7norji5m

ボサノヴァの火付け役として知られるSergio Mendesによる1992年の曲。
あのブレイクは元は冒頭の部分に当たっていたんですね。
中盤からメロディーが入ってきて大分イメージしやすいサンバっぽくなりますが、打楽器だけの編成は『バトゥカーダ』と云うサブカテゴリーで呼ばれているそうです。
この曲に関しては100名を越える打楽器バンドによって演奏されているとのこと。道理で厚みのあるリズムに聴こえるわけですが、流石ブラジル、サンバにかける情熱がハンパではない。

大分Street Carnivalに関する情報が長くなってしまいました。
ともあれこの曲の出現によってハードテクノはトライバルパーカッションと相性が良いことが世界的に認知され、機械音然とした無機質なハードミニマルとは別のスタイルとして発展していきます。
その1種こそHardonizeでもよくプレイされるファンキーなハードテクノ、ハードグルーヴへと繋がったことは間違いありません。
CAVEはハードテクノの歴史に於いてその進化をアシストしたクリエイターでもあるわけです。

その後CAVEはSpilo Recordsが活動を停止する2009年辺りまでトライバルハードテクノの最前線に立っておりましたが、後年はテックハウスへとシフト、現在は既に音楽活動から完全に身を引いております。
では何をしているのかと云うと、航空会社やビジネススクールの講師を経て自国ノルウェーの広告代理店で事業部長とのこと。超キャリアマン。
上記のように世界的スマッシュヒットを記録し、自身でレーベルを運営する程音楽で成功した人がスパッと活動を終えることは大決断だったように思えますが、その後の事業で更に社会的地位を確立していることは更に驚きですね。
未だに音楽が好きでいる身としては若干の寂しさを覚えますが、彼がハードテクノに与えた功績は大きく、引き継がれた要素は今尚聴くことができます。
様々な意味を込めて偉大なアーティストの1人であることは疑うべくもないでしょう。

そんなCAVEのオススメはこちら。

Hertz / By Myself (Cave Remix)

Cave / Speleon

Balthazar, Jackrock / Rockin’ Dancefloor (Cave Remix)

Cave / Charion

次週08月15日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


大分余談ですが、CAVE同様トライバルテクノの重要人物として挙げられるアーティストにDJ Deroと云う方がおりまして、その方の2作目に当たる作品が上記のFanfarra (Cabua-Le-Le)をサンプリングしたその名もBatucadaと云う曲があります。そのまんまですね。

DJ Dero / Batucada

こちらは1993年リリースとStreet Carnivalより大分前の作品です。
お聴きの通りハードテクノと言うよりはトライバルハウスと分類した方がしっくりくる曲ですが、このBatucadaと云う曲もまたリリース直後から大ヒットとなり、数々のコンピレーションやMIX CDに収録され、挙句DJ Dero本人によるリミックスも大量に作られた代表作でもあります。
その中でStreet Carnivalと同時期である2003年に発売されたTechnobatucadaと云うリメイク作品があり、こちらは大分ハードテクノと親和性の高い仕上がりとなっております。
残念ながら試聴が見つからなかったのでここでは紹介できませんでしたが、もし中古市場で見かけることがありましたら是非入手してみてください。
尚、その後DJ Deroはエレクトロハウス方面へと活動の舵を切っていくのですが、やはりBatucadaは度々リミックスされています。
中でもこの曲のブレイク~明けてからのリフが吹っ切れてアホっぽくて好きです。

Rivera, Dero / I Love Batucada (Dero Animal Drums Mix)

やはりトライバルテクノに関してはその筋に詳しい774Muzikさんに思いっきり解説して欲しいなぁと思うところ。
実はこの人もStreet Carnivalを受けて曲を・・・いや、これ以上僕の口からは言うまい。
別に次週でなくても結構ですので、もし興が乗ったら何卒お願いします。