今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2019/03/07

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

前回のyudukiボスの記事にもありましたように、先週はAAA – Global Hard Dance All Nighterに出演致しました。
お越し頂いた方々、本当にありがとうございました。

本パーティーに於いては出演者の大半からアミダクジによってB2Bの組み合わせを決定すると云う試みが行われ、割とレアなセッションが見られたのではないかと思います。
メインストリーム系に寄ったストイックなものもあれば、大ネタを経由しながらファンキー路線を突き詰めた方々もいて、なかなか贅沢なフロアの使い方ができた一晩でした。
TECHNO ALLIANCE関連のパーティーは夕方の時間帯に行われることが多いのですが、たまにはこういうオールナイトを共にするのもアリなのではないかと思った次第です。
メインフロアの方も各種ハードダンスてんこ盛りと云った塩梅でずっと流れる音に没頭しており、折角目玉だったビリヤニを食べ損ねました。

ちなみに、私のB2B相手はテクノは元よりハードダンスやアニメソングまで幅広くこなすgekkoさんでして、この組み合わせが決まった時は無節操問題児同士が出会ってしまったと揶揄されました。
実際どうなるか、出番直前まで分からなかったものの、いざ始まってしまえばご想像の通りになってしまいました。テクノとは一体。
具体的にはハードグルーヴ~サイケ~ベースライン~最後はわやくちゃな感じ。
尚、最も危惧されていた矢澤にこは回避されました。
但しIncidentは不可避でした。
やー楽しかった。もう3時間はできる組み合わせでした。

さて、今週頭に大変なニュースがあったのを皆様はご覧頂いておりますでしょうか。
レイヴ黎明期から活動を開始し、現在に至っても電子音楽シーンに並々ならぬ影響を及ぼしてきたThe Prodigyのフロントマン、Keith Flintが亡くなりました。

第一報は03月04日にThe ProdigyのFacebookページによって齎され、海外/国内音楽メディアが一斉に追随。

Keith Flint, Prodigy frontman, dead at 49 – CNN

The Prodigy’s Keith Flint dies aged 49 – BBC News

Keith Flint from The Prodigy has died – News – Mixmag

The ProdigyのKeith Flintが2019年3月4日の午前に逝去、享年は49歳 | クラブミュージック情報サイト HigherFrequency ハイヤーフリケンシー

【追悼】Keith Flint(キース・フリント) – TOWER RECORDS ONLINE

イギリスのロック・バンド、The ProdigyのKeith Flintが死去。享年49歳 | block.fm

第一報の時、死因については明らかになっておりませんでしたが、Instagramに投稿されたThe Prodigyメンバー、Liam Howlettのコメントによると、自ら命を絶ったそうです。

自分の年齢ほどある音楽キャリアの持ち主がこのような選択を取ったことについては心中余りあるものがありますが、疑いなく彼と彼のいたグループはワタクシの音楽趣向の幅を大きく広げ、楽しいものにさせてくれました。
今はただ感謝し、そして冥福を祈ります。

と云うワケで今回はKeith Flintについてワタクシなりにご紹介します。
既に多くのメディアでも取り上げられているような追悼回です。

Keith Flint (The Prodigy)

出生は1969年、ロンドン。
Liam Howlettとは1980年代からの知り合いであり、1990年にMaxim、Leeroy Thornhillを加えてThe Prodigyを結成。
翌年にWhat Evil Lurksと云う曲をXL Recordingsから発表し、リリースデビューを果たします。

The Prodigy / What Evil Lurks

The Prodigy – What Evil Lurks – YouTube

ちなみに当時Keith Flintはヴォーカルと云うパートではなく、ダンサーとしてライブに華を添えておりました。
更に付け加えるならこの頃の髪型は後年の逆モヒカンではなく、普通にロン毛。

ファーストアルバム、ExperienceまでのThe Prodigyのサウンドは当時イギリスを席巻していたレイヴの要素を凝縮した上でヒップホップやロックのサンプリングを多用するイリーガルなスタイルが特徴と言えます。
有名なところでThe Prodigyの代表曲と言えるOut Of Spaceのリフはルーツレゲエのこれですね。

1994年には2枚目のアルバム、Music For The Jilted Generationを発表。
混沌としたジャンルの坩堝だったオールドスクールレイヴから一定の指向性を得たようなトラックが多く、Voodoo PeopleNo Good (Start The Dance)など、こちらも代表曲が多く収録されております。

そして1997年にリリースされた3枚目のアルバム、The Fat of the Landに於いてThe Progidyはエレクトロニック・バンドとしての方向性を決定付けるべく、大きな刷新を行います。
それこそがメンバーの配置転換であり、この時からKeith FlintはダンサーからヴォーカルとしてThe Prodigyのフロントマンを務めるようになります。
髪型もこの時から逆モヒカンにチェンジ、以降彼のトレードマークになります。

The Prodigy / Firestarter

The Prodigy – Firestarter (Official Video) – YouTube

そしてKeith Flintが初めてヴォーカルを務めたのがこちらのトラック。
キャッチーでシャープなロック、ポップスがブームとなっていた当時のイギリスに於いてこのKeith Flintの見た目は異質と言う他なく、このPVにも多くの苦情が寄せられたそうです。
所謂『子供が怖がる。』的な。
そんなママさんパパさんの感情とは裏腹にBreatheSmack My Bitch Up等の代表曲も合わせて収録されたThe Fat Of The Landはイギリスはおろか、アメリカでもアルバムチャートで首位を獲得。
それどころか、イギリスに於ける最速販売記録がギネスに登録されているとんでもない作品となりました。

The Prodigy『The Fat Of The Land』の衝撃 | プロディジー | アルバム

ちなみにこの頃の彼らのライブ映像がこちらです。

The Prodigy / Phoenix Festival 1996

The Prodigy – Phoenix Festival 1996 – YouTube

4日間通しで行われたフェスにヘッドライナーとして抜擢されていた際のもの。
ちなみにその他の日のヘッドライナーがLeftfieldGoldieThe Chemical Brothersと云う豪華過ぎるラインナップ。
ですが、彼らのパフォーマンスとそれを目の当たりにした熱気は本フェスの中でも一際目立っているように感じます。
事実、The Prodigyのライブに於いても最高と称されることの多い演奏模様です。

その後は従来以上に制作に対して時間をかけるようになったものの、比較的コンスタントにアルバムを発表。
サウンドプロデューサー、Liam Howlettのソロ作品が多いAlways Outnumbered, Never Outgunned (2004年)、よりエレクトロやブレイクスに接近し、現行サウンドとの共存を図ったInvaders Must Die (2009年)、クラブサウンド第一線のクリエイターとのコラボレーショントラックを多く含むThe Day Is My Enemy (2015年)、そしてバンドサウンドとしての側面を際立たせたとメンバーが語るNo Tourists (2018年)と、これまでに7枚のスタジオアルバムがリリースされております。
No Touristsは昨年11月にリリースされたばかりとまだ新しく、世界ツアーを行っていた矢先の出来事でした。

『もうアルバムは作らない。』とメンバーが語っていた2015年から3年経ちNo Touristsがリリースされた時は、この3人がまた何かやってくれるのではないかと大いに沸き立ったものです。
それがまさか最後の3人の作品になるとは思ってもいませんでした。
49歳、天寿と言うには早過ぎる。
また1つ伝説が終わってしまったかと思うと悔しいものがありますが、彼の生み出した素晴らしい数々のトラックに敬意を払い、そして聴き続けましょう。
加えてもしあなたがDJであるならば、それらをプレイすることもまた弔いになる筈です。
Rest In Peace, Keith Flint.

そんなKeith Flint (The Prodigy)のオススメはこちらです。
彼がヴォーカルを務めたものを選びました。

The Prodigy / Baby’s got a Temper

The Prodigy – Baby’s Got A Temper (Official Video) – YouTube

2002年シングルリリース。アルバム未収録曲。
ヒップホップ的ブレイクビートを軸に硬質な音の重層が加わったトラック。
映像はレトロ且つ下品と云うThe Prodigyをそのまんま表してるような作品です。

The Prodigy / World’s On Fire

The Prodigy – World’s On Fire HD 720p – YouTube

アルバムInvaders Must Die収録。
これも重厚なブレイクビーツですが、テンポは割と速め。
シンセの音色がなんとなくリッジレーサーっぽい上、唐突にOutlander / Vampのリフが入ってきたりしてニヤりとさせてくれる現代版レイヴサウンド。

The Prodigy / Champions Of London

The Prodigy – Champions Of London (Audio) – YouTube

最新アルバムNo Tourists収録。
上記の通り、バンドサウンドを追求した結果ドラムンベースに辿り着いてしまった曲。
The Prodigyはこのようなストレートなドラムンベースを手掛けるようなグループではなかったため、初めて聴いた時は驚きました。
シンプルに格好良い。

Caspa ft. Keith Flint / War

Caspa – War ft. Keith Flint – YouTube

Beatportリリースページはこちら。
ダブステップ黎明期からシーンの屋台骨として活動しているCaspaがKeith Flintをフィーチャーしたトラック。
なかなかあり得ない組み合わせですが、Keith Flintがソロでフィーチャリングされたのもキャリア通してこの1曲のみと云う相当レアな曲です。
時代性を反映した派手目なワブルベースにメタルライクなギター、果てはブレイクスっぽいリズムに展開したりとThe Prodigy精神を引き継いだ作品になっております。

最後余談になりますが、

The Prodigy / Voodoo People (Pendulum Remix)

The Prodigy – Voodoo People (Pendulum Remix) – YouTube

このPVで心底悪意の塊みたいな笑顔を浮かべるKeith Flintが好きでした。
ドラムンベースのPVはワケの分からないバトルをしているものが多い(コレとか、コレとか、コレも。)と言われる所以となっているものです。
曲も曲だけに大変インパクトのある作品です。未だに使いますし。

次週03月12日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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