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2024年のイビザサウンド特集:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2024/07/04

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりに担当致します。

【Spotifyプレイリスト】

毎月恒例、Spotifyプレイリストの06月分が公開されました。

はい、サイケデリックトランスをリストインした犯人は私です。(連載回)
でもHardonizeはこういうハードテクノの周辺音楽にもスポットを当てているパーティーなので、ハードテクノ好きもそうじゃない人も是非引き続きチェックの程、よろしくお願い致します。

【告知】

次回Hardonizeの情報が公開されております。

2024/8/3(sat) Hardonize #47 at waseda sabaco | Hardonize web

Cherryboy FunctionさんGuchonさんの両名をゲストにハードテクノとその周辺音楽をお届けします。
両者ともハードテクノをメインフィールドに活動している方々ではないものの、ハードテクノを含む様々な音楽に造詣が深いプレイヤーなので、どのようなサウンドが繰り出されるのか、とても楽しみです。

彼らの直近のリリースを取り上げるとこのような感じです。

DE DE MOUSE × CHERRYBOY FUNCTION / Sunset lover

DE DE MOUSE × CHERRYBOY FUNCTION – Sunset lover Music Video – YouTube

Guchon, andrew, Carpainter, Seimei – Dream Team EP

Stream Guchon, andrew, Carpainter, Seimei – Dream Team EP [Official Teaser] by TREKKIE TRAX | Listen online for free on SoundCloud

日にちは08月03日(土曜日)、15時からとなります。
場所はいつもの早稲田茶箱にて皆様のご来場をお待ちしております。

【今回のお題】

さて、当連載に於ける自分の回ではハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていく形式となっております。
ちなみに、年始は3回に渡ってフリーダウンロード特集を行っておりましたので、ご興味のある方は是非ご参照ください。(1) / (2) / (3)

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

ですが、今回のテーマを述べる前に1曲だけ新譜を紹介させてください。

KETTAMA / Pretty Green Eyes (Sunset Ibiza Mix)

Stream KETTAMA – Pretty Green Eyes (Sunset Ibiza Mix) by KETTAMA / G-TOWN RECS | Listen online for free on SoundCloud

購入リンク(beatport):https://www.beatport.com/track/pretty-green-eyes-sunset-ibiza-mix/19164862

アイルランドのプロデューサーKettamaによるテクノ
昨年から今年にかけて、イギリスの大ベテランユニットUnderworldとのコラボレーショントラック、g-town euphoria (luna)そしてFen Violetと立て続けにリリースし、
強烈な存在感をシーンに示しているKettamaですが、またしても特大インパクトを誇るビッグボムが投下されました。

この曲には元ネタがあります。

Ultrabeat / Pretty Green Eyes

Ultrabeat – Pretty Green Eyes (Official Video) – YouTube

2003年にリリースされたトランス
尺八のようなオリエンタルな笛の音や透明感のある男性ボーカルはかなり特徴的で当時大ヒット、今ではクラシックとして取り上げられることが多い曲です。
トランスハードコアに於いては正規版、ブートレグ問わず数々のリミックスが存在し、今でもたまにハウスでサンプリングされているのを耳にする、世代を超えて愛されている1曲と言って良いでしょう。
(Soundcloudでトラック検索してこの量です。)

ただ、テクノ的な解釈の元作られたアレンジというのはこれまで聴いたことが無く、今回のこのリリースには結構たまげました。
それも現行のメインストリームテクノのようなリズム主体の重たいものではなく、原曲のボーカルを活かしながら感傷的なシンセリフを添え、前のめりなハイハットが特徴的なリズムに乗せたメロディックなスタイルで、2024年現在こういったトラックを作るならKettamaを置いて他にいないだろうと思わせる仕上がりです。
丁度自分がヴァイナルを買っていた時期に原曲がリリースされ、実際耳にしていた思い出補正も相まって即行でカートインしてしまいました。
2023年のハードテクノ10選に於いてKettama / 1997を挙げましたが、今年もKettamaから目が離せそうにありません。

で、ここからが本題で、先の楽曲のリミックスタイトルに『Ibiza』という単語が入っております。
Wikipediaにページがありますが、スペインに属するこの島は1970年代から今に至るまでクラブのメッカとして象徴的な存在です。
日本で言ったら淡路島ほどの小さな面積の中に、50年位以上続くPACHAを筆頭に多数の名門クラブが存在していると言えばその特異性が伝わるでしょうか。
イビサ島の老舗クラブ「PACHA」が誕生から50周年 | BARKS
伝説のナイトクラブ SPACE IBIZAがイビザ島に帰ってくる | EDM MAXX – EDM情報マガジン

イビザ島のパーティーはヒッピーの文化も相まってか、あらゆるジャンル、サウンドが混ざり合うことが多く、特にテクノハウストランスに跨った楽曲やDJスタイルはイビザサウンドの特徴とされていました。
リゾート地らしいアーバンでゴージャスなサウンドを用いつつ、夕焼けを思わせる感傷的なメロディーがあったり、その一方でフィジカルに機能するビートやグルーヴといった要素も兼ね備えたハイブリッドなもので、実際、イビザの名前を冠したこれらの楽曲コンピレーションやMIX CDを2000年代によく目にした記憶があります。
ibizaおよびElectronicの音楽(2000年のものから)| Discogs

翻って先程のKETTAMA / Pretty Green Eyes (Sunset Ibiza Mix)を聴くとこれらの特徴をバッチリ押さえており、イビザの名前を冠するに相応しい内容です。
更に最近リリースされた他の楽曲も、こうした特色を持つものが結構見受けられたので、それらをまとめて紹介しようというのが今回の趣旨になります。
(ここまで長かった・・・。)

というワケで、今回取り上げるテーマは

2024年のイビザサウンド

とします。

アーバンで感傷的なメロディーを持ち、様々なジャンル背景が見える、というのをキーポイントとして、ここ1~2ヵ月の間にリリースされたトラックをメインに取り上げていきます。
早速ですが2024年のイビザサウンド紹介いってみましょう。
尚、試聴がYouTubeもしくはSoundcloudの場合は購入先として別途beatportのリンクを貼付しております。

【曲紹介】

Riordan / Bring Me Down

Stream Bring Me Down by Riordan | Listen online for free on SoundCloud

購入リンク(beatport):https://www.beatport.com/track/bring-me-down/19120195

イギリスのプロデューサーRiordanによるUKガラージ
元ネタは2000年にリリースされたUKガラージStanton Warriors, Zack Toms / Bring Me Down
原曲のボーカルをブレイクに残しているものの、リズムパートは全く別物。
極太のベースフレーズと小気味良いハイハットリズムでグイグイ引っ張っていくタイプのトラックです。

Keno, Mailman / Pampkekno

Pampkekno | Keno, Mailman | Keno

フランスのプロデューサー同士、KenoMailmanによるテクノ
フィルター混じりの断続的なリフとシンプルなリズム、ウッドベースみたいな低音で構成された跳ね感の強いトラック。
ブレイク以降は煌びやかなシンセとアシッドリフも加わり、よりファンクネス指数の高い雰囲気を演出します。
ディスコ好きには結構刺さる気がします。

Jonas Gottlieb / Sorry For The Looks

Sorry For The Looks | Jonas Gottlieb | Dance Petrol Records

ドイツのプロデューサーJonas Gottliebによるテクノ
うねりのあるベースフレーズ、軽快なピアノサウンド、スムースな女性ボーカルと三役揃ったトラック。
昔の生音感が強いハードハウス辺りと合わせたくなります。
夏真っ盛り感が半端じゃないですね。

Mall Grab, Flansie & Sunny / Drift

Drift | Mall Grab, Flansie & Sunny | LOOKING FOR TROUBLE

イギリスのプロデューサーMall Grab、そしてオランダのプロデューサーFlansieSunnysopostedによるテクノ
哀愁漂うレトロなピアノフレーズを前面にフィーチャーしたトラック。
深度のあるベースからオールドスクールレイヴの臭気が漂っているのも個人的にグッときます。

Robin Wylie / Pulse Track

Pulse Track | Robin Wylie | Ritual Poison

イギリスのプロデューサーRobin Wylieによるテクノ
厚みのあるベースシンセと反するようにレトロな電子音が軽快に跳ね回っている構成。
殊更メロディーを強調しているワケではないものの、ベースのフレーズとウワモノのサウンドがノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。

テンポこそ違いますが、どことなくOrbital / Chimeを連想させるんですよね。

DJs Pareja / Perfecto Radar (Chrissy Rave Dub Mix)

Perfecto Radar (Chrissy Rave Dub Mix) | DJs Pareja | Djs Pareja

アメリカのプロデューサーChrissyによるブレイクス
1拍目に重心を置いた偏屈な非4つ打ちリズムにオールドスクールレイヴの金字塔、Bizarre Inc / Playing with Knivesのピアノフレーズがサンプリングされています。
このウワモノとビートの雰囲気が乖離しているところから土臭いレイヴの精神性が感じられてかなり好みです。
後半になると細かくリフのパターンが変わっていく、サンプリングセンスが光る楽曲。

Clint / Native House Dance

Native House Dance | Clint | Permanent Vacation

フランスのプロデューサーClintによるハードハウス
裏打ちのベースによる跳ね感をキープしつつ、その上で展開されるシンセの引き出しの多さが光るトラック。
安直にイメージする1990年代のハードハウスの音がしこたま投入されており、2024年リリースなのが疑わしいレベルで全体的にサウンドがレトロ寄りです。(だがそれが良い。)

Matt Guy / Every Little Time (Back in ’97 Extended Mix)

Every Little Time (Back in ’97 Extended Mix) | Matt Guy

イギリスのプロデューサーMatt Guyによるハードハウス
’97とリミックスタイトルに入っていますが、先月出たばっかりの曲です。
ボーカルは1997年にリリースされたPoppers Presents Aura / Every Little Timeからの引用ですが、それに加えてLock ‘N Load / Blow Ya Mind (Club Caviar Extended Remix)の独特な連打フレーズが用いられており、こっちの方が目立ってます。
レイヴオルガンのややいなたい感じとかも含め、往年のハードハウスヘッズにオススメしたいトラック。

Baccus / Your Love

Your Love | Baccus

フランスのプロデューサーBaccusによるテクノ
アシッドベースにフィルターを織り交ぜた浮遊感たっぷりのシンセが乗ったトラック。
ソウルフルな女性ボーカルもアーバンな雰囲気作りに一役買ってます。

KIKO TESLA / Just Because You Can

Just Because You Can | KIKO TESLA | Green Roll Records

オーストラリアのプロデューサーKIKO TESLAによるテクノ
ハイハットとクラップによる推進力の高いビートと、穏やかなピアノとパッドが合わさった曲。
ダンスミュージックとしての機能を維持しつつ、綺麗に締めることができるので、踊り明かした最後の1曲として使いたくなりますね。

KLP / Come Thru

COME THRU (Official Video) – YouTube

購入リンク(beatport):https://www.beatport.com/track/come-thru/19130784

オーストラリアのプロデューサーKLPによるハウス
こちらも〆候補。
アシッドベースとピアノサウンドに加えてボーカルも入っているので、よりメロウに着地させたい場合はこちらの方が向いているかもしれません。

【次回】

そんなワケで今回はここまで。

次週07月09日は774Muzikさんが担当します。
では。

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選曲解説:TYMM07編:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2024/06/20

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりに担当致します。

【告知】

次回Hardonizeの情報が公開となりました。

2024/8/3(sat) Hardonize #47 at waseda sabaco | Hardonize web

ゲストにお迎えしたのはCherryboy FunctionさんGuchonさんの両名。
なかなかハードテクノらしからぬ組み合わせだと自負しておりますが、アーバンでファンキーなグルーヴに関してはDJ、トラック双方で追随を許さない2名だと認識しております。
ハードテクノの近縁にあるハウスやレイヴ、エレクトロ、ディスコといった音楽にもフォーカスが当たりそうな回なので、季節的にもピッタリなんじゃないでしょうか。

ちなみに、彼らの直近のリリースを取り上げるとこのような感じです。
双方要チェックですよ!

DE DE MOUSE × CHERRYBOY FUNCTION / Sunset lover

DE DE MOUSE × CHERRYBOY FUNCTION – Sunset lover Music Video – YouTube

Guchon, andrew, Carpainter, Seimei – Dream Team EP

Stream Guchon, andrew, Carpainter, Seimei – Dream Team EP [Official Teaser] by TREKKIE TRAX | Listen online for free on SoundCloud

日にちは08月03日(土曜日)、15時からとなります。
場所はいつもの早稲田茶箱にて皆様のご来場をお待ちしております。

【Spotifyプレイリスト】

当連載で取り上げられている楽曲についてまとめたSpotifyのプレイリストの05月分が公開されております。

先日行われたHardonize#46.5で使用されたトラックも含まれた計86曲と大ボリュームの内容。
エレクトロニカアンビエントからハードミニマルハードグルーヴまで自信をもってオススメできるHardonizeセレクト、是非お楽しみください。

【今回のお題】

さて、先週末はyudukiボスがレジデントを務めるTYMM07にお招き頂いておりました。
TYMMレジデントメンバー、及びお越し頂いた方々ありがとうございました。

複数の音楽ジャンルを横断するクロスオーバープレイヤーとしてピックアップして頂いていたものの、出番直前までどのくらいまでやっていいのか様子を伺つつ臨みましたが、
終わってみれば
テクノダークステップドラムンベース高速4つ打ちサイケデリックトランス
レイヴベースライン日本語ラップアシッドハウスと、
かなり圧縮された29曲/60分を提示できたかなと思います。

全容はこちら。

No Artist Trackname Listen
01 Kettama G-TOWN IN EFFEKT bandcamp
02 Tripped Hips Don’t Fly bandcamp
03 Dok & Martin, Theodor Nabuurs Rave State beatport
04 Fjaak Mechanic Love bandcamp
05 Prodigy Smack My Bitch Up (Noisia Remix Sinister Souls Sla Je Slet Edit) bandcamp
06 Gein, Smyla Invaderz bandcamp
07 Brainpain, Katharsys SFN bandcamp
08 Holotrope & QO Bass So Loud. bandcamp
09 Kernkraft 400 Zombie Nation (Sketi Rmx) SoundCloud
10 Was A Be Move bandcamp
11 Neve, Harka Club Flip bandcamp
12 CLB Champion Rave SoundCloud
13 Gen-Ohm pres. Cannibal Inquisitor Marauder bandcamp
14 Quantiko Critical Arcade bandcamp
15 Giga P ヒビカセ (Anksunamun Remix) SoundCloud
16 Electric Universe Time Bender bandcamp
17 Starman, Italo Bounce On The Move beatport
18 Case 82 In To You bandcamp
19 PRESTi SEARCHIN FOR MY RIZLA DUB SoundCloud
20 monolith slip TOKUGAWA bandcamp
21 Limp Bizkit Break Stuff (MORTY UKG BOOTLEG) SoundCloud
22 OZROSAURUS OG YouTube
23 DJ KRUSH (feat. Jinmenusagi) 破魔矢 -Hamaya- YouTube
24 Moment Joon (feat. あっこゴリラ, 鎮座DOPENESS, HUNGER, ACE COOL & Jinmenusagi) BAKA (Mega Remix) YouTube
25 アルファ ガンバリスギDEナイト YouTube
26 森, Shinichi Osawa YAZAWA YouTube
27 Gohai & Input C Expedition beatport
28 salute, Sammy Virji Peach bandcamp
29 Theos & VieLaJoie Odd Goblin bandcamp

ちなみにプレイ中、TYMMのレジデントの中でもyudukiボスだけは『あいつまたやってんな。』みたいな表情をしていたので、16年パーティーを共にしている重みを感じました。
裏を返すと16年もの間、僕はハードテクノじゃないものをハードテクノと言い張ってプレイしていることになるわけです。

で、こういうプレイをしているとどういう基準で選曲をしているのかと聞かれることがあります。
キッパリと『ノリと勢いでやってます。』と答えるのもそれはそれでカッコいいのですが、自分なりに考えてこの内容になっている箇所も勿論あるので、今回はこのトラックリストを元になるべく言語化して解説していきたいと思います。
以前公募用DJMIXの組み方といった内容で記事を執筆したことがありましたが、今回はその現場編という形。

題して、

選曲解説:TYMM07編

です。
従って今回は個々のトラック解説とかはあまりやりません。

勿論、これがDJにおける絶対的な正解であると言うつもりも全くありません。
それぞれがそれぞれのスタンスで音楽をプレイし合うのがクラブの醍醐味だと思っておりますので、あくまでTAK666の主観に基づく考え方としてご覧頂き、あわよくば参考になれれば幸いといった感じです。

それでは選曲解説:TYMM07編いってみましょう。

【事前準備1:タイムテーブルを確認する】

まず、そのパーティーの大体のサウンドの傾向と前後のプレイヤーがそれぞれ誰なのか、そして自分の出番が何番目かということを常に押さえます。
自分はパーティーというものの良し悪しについて、開催時間全体を通して1つの流れが構築できているかを1つの判断基準にしているので、そのパーティーに出演するとなった場合は、複数いる出演者のうちの1人として『前の人からスムーズに曲を拾い、次の人に綺麗に曲を渡す』ことを絶対に心がけます。
今回の場合では前の人がyudukiさんで得意ジャンルが概ねテクノであり、次の人がMASASHI MATSUIさんでメインジャンルがアシッドハウスシカゴハウスなので、
テクノからスタートして色々やったあと、アシッドハウスに着地させる大枠を想像します。

持ち時間の中盤で何をやるのか、についてはパーティーの大体のサウンドの傾向や、自分の出番が何番目かといった辺りに絡んできます。
1つのジャンルにスポットを当てたストイックなパーティーであれば、そのサウンドから大きく外れないことを意識するときもありますし、逆にオールジャンルのパーティーであれば、どこまでサウンドの振れ幅を出せるか、といった考えを重視することもあります。
これは正直ケースバイケースですが、どちらもできるように日頃のDIG段階で準備するようにはしています。
今回は言うまでもなく後者のパターンでしたね。

自分の出番が何番目か、については前半であればウォームアップを意識した(どちらかといえば)大人しい、渋いサウンドを多めに配置する、後半であればもう少しアグレッシヴだったり、メロディックなサウンドにスポットを当てる、といった判断をするために押さえます。
今回は4番手でパーティーの中でもコアタイムだったので、後者を選択しましたが、先日のHardonize#46.5に於いてはトリでかなり渋い内容を披露したので、これも概ねこう、というだけで時によりけりなところはあります。

余談で今回の場合は当て嵌まりませんが、フロアが複数ある会場の場合、自分と同時刻に別のフロアでプレイしている方のサウンドの傾向まで含めて考えます。
フロアの数だけ流れる音楽に振れ幅があって良いと思っており、その方がフロアを回遊していて楽しいと感じることが多いので、同時刻帯に別のフロアで流れそうなジャンルは除外しがちです。

【事前準備2:具体的な中盤の流れをイメージする】

プレイするサウンドのざっくりとした傾向を打ち出したところで、具体的にどのジャンルをプレイするのかをピックアップしていきます。
当たり前の話ですが、全てのジャンルには特徴があり、相互にどのジャンルと共通点が多く、相性が良いかといったポイントがあります。
これは色々な音楽を聴くことによって養われていくものになるので、色んな曲を掘り、色んなパーティーに行きましょう。

今回のTYMM07に於いてプレイするジャンルの決め手になった要素が3つあります。
(1)テーマを設定する:レジデント4人の特性となるジャンルを1つずつピックアップする
(2)ジャンル遷移に使えるトラックをピックアップする
(3)最近見つけたヤバいトラックをピックアップする

それぞれ詳しく述べます。

(1)テーマを設定する:レジデント4人の特性となるジャンルを1つずつピックアップする

今回出演させて頂いたTYMMというパーティーですが、自分の印象ではパーティーとして特定のジャンルにスポットを当てているわけではなく、レジデント4人とゲストプレイヤーによってソリッドなグルーヴを紡いでいくことを主軸にしている、というものでした。
もっというと、レジデント4人の日頃プレイしているジャンルが明確に異なっているところに特徴があると思ったので、『これを1人でやってしまおう。』というのをテーマとして挙げました。

あくまで自分の印象ですが、4人の特性となるジャンルを具体的に挙げると
ToranekoテクノUKガラージ
yudukiテクノハードテクノ
Mck4yロックヒップホップ
Masamuneドラムンベース
このようになるので、これをそれぞれ抽出し、自分の持ち枠のどこに配置すれば良いかを考えます。

(2)ジャンル遷移に使えるトラックをピックアップする

テクノに関しては先に述べた通り、yudukiさんからテクノで拾ってそのまま継続すれば良いと考えたので、
実質残り3ジャンルですが、最初に思いついたのはMck4yさんのヒップホップの要素でした。
というのも、以前当連載で紹介した曲にこういうものがあります。

森, Shinichi Osawa / YAZAWA

森 prod. by Shinichi Osawa|Red Bull 64 Bars – YouTube

ヒップホップのバックトラックとしてはめちゃめちゃ異質で、テクノ的な4つ打ちリズムが用いられている上、アシッドシンセまで起用されています。
ということはこのシンセを軸に展開すれば、今のところ〆に考えているアシッドハウスにスムーズに遷移できる。
ということで先程大枠で考えていた
テクノ⇒(色々)⇒アシッドハウス
が、
テクノ⇒(色々)⇒ヒップホップアシッドハウス
とジャンルのピースが1つ埋まりました。

次に思いついたのはToranekoさんのUKガラージの要素と、Mck4yさんのロックの要素で、丁度最近見つけたブートレグにこんなものがありました。

Limp Bizkit / Break Stuff (Morty UKG Bootleg)

Stream Limp Bizkit – Break Stuff (Morty UKG Bootleg) by Dazed Muzic | Listen online for free on SoundCloud

ロックの大ネタで、実際現場でのMck4yさんの食いつきも早かったですね。
且つ、ロックベースミュージック、そしてヒップホップに跨る作品としてこういったトラックがあります。

OZROSAURUS / OG

OZROSAURUS / OG – Official Video – – YouTube

この2曲でUKガラージからヒップホップが繋がるので、先程のフローは
テクノ⇒(色々)⇒UKガラージヒップホップアシッドハウス
このようになります。

(3)最近見つけたヤバいトラックをピックアップする

残るMasamuneさんのドラムンベース要素をどこで用いるかですが、幸いなことにドラムンベースという音楽は汎用性の利く音楽でして、様々なサウンドのサブジャンルが日々開拓されています。
一方、これまで選択したジャンルの主なBPMが130~140であり、ドラムンベースは170~180なので大きな開きがあり、スムーズなジャンル遷移が難しいと思われるかもしれませんが、ドラムンベースからテンポシフトして別のジャンルになる曲というのは、実は大量に存在します。
ほんの一例ですが、過去のトラックリストの中から抜粋。

Utah Saints & Drumsound & Bassline Smith / What Can You Do for Me
(ダブステップ⇒ドラムンベース⇒ダブステップ⇒ドラムンベース)
Darkzy feat. Bru-C / Whats Going On (PELIKANN Remix Vip)
(ベースライン⇒ドラムンベース)
Radiokillaz / New Future (Vinyl Junkie & Sanxion Remix)
(ブレイクス⇒ドラムンベース)
RUMI / R.U.M.Iの夢は夜ひらく
(ヒップホップ⇒ドラムンベース)
Crystal Waters / Gypsy Woman (Bredren 2015 Bootleg)
(ドラムンベース⇒ハウス⇒ドラムンベース)
REMO-CON / G-Sigh (Nish’s DnBoot Remix)
(テックダンス⇒ドラムンベース⇒テックダンス)

このようにどういったドラムンベースを取り上げるのか、またその前後のジャンルをどうするのか、については選択肢は色々あるので、ここは単純に自分の好きなトラックを持ってくることにします。
厳密にはここでも事前準備1で述べたパーティーカラーに沿うかどうか、の判断基準は入ってきますが、今回はオールジャンルのパーティーなので、ある程度フレックスに考えます。

で、最近見つけたのがこれだったわけです。

Gen-Ohm pres. Cannibal Inquisitor / Marauder

Marauder | Gen-Ohm pres. Cannibal Inquisitor | Gen-Ohm

ローラーズと呼ばれるドラムンベースの中でも音数が少なく、ガラが悪いサブジャンルがあるのですが、そこからブレイクを挟んで全く別ジャンルであるところの高速サイケデリックトランスにシフトする曲。
こんな変なジャンルシフトをする曲は聴いたことがなかったので結構度肝を抜かれまして、使うチャンスを伺っていたところでした。

そうなるとドラムンベース高速サイケデリックトランスの流れになるのですが、サイケデリックトランスも数は少ないながらテンポシフトする曲があるので、それを起用すると後のジャンルに向かうことができるだろうと考えます。
上記トラックリストの16、Electric Universe / Time Benderがそれに該当します。
というわけで、事前準備最終段階でのフローはこのようになります。
ここまでイメージできればこの時点では充分という認識です。
テクノ⇒(色々)⇒ドラムンベースサイケデリックトランス⇒(色々)⇒UKガラージヒップホップアシッドハウス

【事前準備3:フローを元に各ジャンルの大まかな配分を計算する】

先に定めたフローは余白を設けているものの、持ち時間の間にプレイできる曲数というのはある程度予測を立てることができます。
例えばテクノであれば、曲を繋いでから次の曲に繋ぎ終えるまでにかかる時間は3分~4分ですし、ヒップホップであれば1分~2分で次々にスイッチさせていくスタイルが定着しています。
だいたい間を取って1曲当たり2.5分として、今回の持ち時間60分を割ると24曲という数字が出ます。
これが今回のプレイでかけられるトータルの曲数だろうと仮置きします。

で、先のフローを見返すと、『色々』としている中のジャンルが1つだとしたら8つのジャンルを跨ぐことになるので、これを仮のトータル曲数の24から割ると1ジャンル当たり3曲で展開していくという計算になります。
この3曲を何にするのか、については現場の雰囲気や実際にプレイしている時の思い付きで決めることになりますし、選んだ曲や繋ぎ方によって結構前後する数値ではある(実際は29曲使っていますし。)のですが、参考値として押さえておくと終盤の展開が慌ただしくなる、といったことが避けられるように思えます。

自分はパーティーごとに選曲フォルダを作成するタイプなので、先のフローで定めた6つのジャンルについては参考値3曲の3倍である9曲程度を選び、フォルダに格納します。
『色々』としているものについては前後の相性を考えた時に使いやすいもの、汎用性のあるものを中心にある程度広く構えてフォルダに格納します。
今回の場合はレイヴハードハウスアシッドテクノブレイクス辺りを選んでましたが、結局後者2つは使わなかったですね。

というわけで事前準備としてはこれで完了です。
あとはドキドキしながらパーティー本番を迎えます。

【パーティー中:足りない音を探す】

自分の出順が来るまではできるだけフロアにいてどんな音が流れているのか、耳を傾けるようにします。
特に、パーティーとの親和性はあると思うのにまだ流れていない音というのを積極的に探すようにして当日のプレイに反映させることが多いです。
この日はトップバッターのMck4yさんがヒップホップからスタートしてハウスに着地させるプレイ、
続くMasamuneさんはそこから流暢にリキッドファンクに遷移するプレイで、割とアーバンなグルーヴ感のあるサウンドが続いているなという印象でした。

ここに更に付け加えるならと考えた時にディスコレイヴが真っ先に思いついたので、『色々』としていた未定の部分をこれで埋めていこうという考えになったわけです。
但し、ディスコに関しては自分の後ろに控えているMASASHI MATSUIさんとも被る部分が出そうだなと思ったので、最終的にはレイヴに思考の比重が寄っていきました。
理由として付け加えるなら、序盤にプレイすることを考えていたテクノに於いてもレイヴに通ずるサウンドのトラックは多く、
特に今年04月にリリースされたFJAAKのアルバムFJAAK THE SYSTEMのインパクトは凄まじいものがあり、Mck4yさんとyudukiさんと自分は昨年の来日公演でこいつらのプレイににブッ飛ばされているという共通点があったので、状況が整ったなという変な確信がありました。

Fjaak / Mechanic Love

FJAAK – Mechanic Love | FJAAK

加えてこうした下品なレイヴサウンドからドラムンベースに移行するトラックにも思い当たるフシがあり(上記トラックリストの05、Prodigy / Smack My Bitch Up (Noisia Remix Sinister Souls Sla Je Slet Edit))、自分の前の出順であるyudukiさんがプレイしている最中に準備段階では『色々』としていた部分が氷解していき、より具体的なジャンル遷移が構築されていった形です。

【プレイ中】

いよいよ自分の出番を迎えるわけですが、ここでの出来事についてはその場のノリや思い付きに任せている部分も多く、全てを言語化するのは難しいです。
(お客さんとしてcartaxさんが来ていたので、本人作のmonolith slip / TOKUGAWAを使ったりとか。)
が、結局のところこれまで自分が聴いてきたもの、準備してきたもの、考えてきたことの帰結だと思っています。
今回の場合であれば1ジャンルだいたい3曲でシフトしていくという大枠は踏まえつつ、プラスアルファで言えるとすれば残り時間や来ているお客さんによって曲を調整するといった程度です。
稀にそれまで考えたものから出番直前になって大幅な進路変更を行う場合もありますが、ブースに立つまで何も考えないといったことは無いようにしています。
感覚としては詰め将棋に通ずるところがあるかもしれません。

【日常のトレーニング】

ここまでで参考になれているのか非常に怪しいもんですが、最後にこうしたプレイを行う上で日頃から心がけていることについて。

本連載でもたまに触れているように、新しい音楽を探す、これまで聴いてこなかった音楽を聴く、明らかに変な要素のある曲を聴く、といったことが大前提になりますが、加えてそこに自分がDJとして曲を繋ぐならどういった方法が考えられるか、というのも意識して行っています。
その曲のジャンルは?テンポは?メロディーの有無は?ボーカルの有無は?ビートの強度は?リズムは4つ打ちか否か?ウワモノはシンセor生音?など、様々な切り口で分解を試みて、自分のライブラリーの中から何と最も相性が良いか、ということを考える癖をつけています。

先の準備段階に於いて『色々』とした部分が多ければ多い程、思考の瞬発力(大喜利力)が関わってくると思っているので、そういった部分を鍛えるためでもありますし、これを繰り返していると今まで聴いたことのなかった音楽の傾向を分析できるようになり、興味の幅が広がります。
ひいてはそれが新たな自分のライブラリーに加わったりするので、自分はこの方法をオススメします。

思考の瞬発力(大喜利力)を鍛えるという意味では色んな人とB2Bをするというのもオススメです。
自分と考えや持ち弾の違うプレイヤーが渡してきた曲にどうやって返すのか、長い目で見たらどういうラリーを続けるのが理想なのかということについて2~3分ごとに答えを出さなければいけない、というのは自分の実力が試されますし、相手の返し方によっては新たな気付きと成長を与えてくれる形式だと思っています。
それがパーティーとして枠が設定されたB2Bであれば、パーティー全体の中でどういう立ち位置なのかや、お客さんにどう見せるのかといったことも考えなければならず、何度やっても奥深さを感じます。
とはいえ、気楽で楽しいのは人の家に集まって酒を飲みながらゲラゲラB2Bする方ですね。
『お前そんなの持ってたのか!?』みたいな瞬間も好きですし、今後とも積極的にやっていきたいと思う次第です。

【次回】

そんなワケで今回はここまで。

次週06月25日は774Muzikさんが担当します。
では。

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