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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/03/22

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

少し前に話題になったこととして、『CLONESの新作が出た』と云うのがありました。
これですね。

CLONESが何かと申しますと、今から10年以上前にヴァイナルでシリーズ化されていたブートレグ専門のレーベルです。
KRAFTWERKのRobotネタを筆頭に使いやすいテクノが揃っていて、ネタモノ好きの心をガッチリ掴んでいた言わば伝説的存在。
ヴァイナルの衰退と共にひっそりと幕を下ろしたかのように思えましたが、それが今になって新作をリリースすると云うのは驚愕に値します。
あんまりハードテクノっぽさはありませんが、ブレイクビーツ、ハウスの荒削り感が出ており、これはこれで忘れていた何かを思い起こさせる仕上がりでした。

ちなみに当時ヴァイナルで出ていたトラックもアルバムに纏められた上で販売されています。
上記Robotも収録。

全曲通してパーカッシヴなテクノ、その上サンプリングがテクノ、ハウスのド定番曲と云うこともあり、歴史を辿る意味でもオススメの1作です。

当時の話として、このようにブートレグ専門レーベルとしてヴァイナルを切っていたレーベルはいくつかありました。
Bootek、P Series辺りはハードテクノに於いて鉄板の支持を集めていましたし、後期にはBootyloopと云う新星が現れたり、シュランツと云う音楽の認知度を高めていたSchranz Seriesなど。
当時はまだSoundcloudなど音楽を配信する媒体が整ってない時代ですから、ネタモノはレコード屋を根気強く掘ることで見つかる型番しか書いてない、あとは真っ白と云ったようないかにも『アヤしい』ヴァイナルでしか聴けなかったのです。
オマケに片面1曲しか入ってなかったりするので、ハズレを引いた時のショックたるや・・・良くも悪くも勉強になりました。

ちなみに上で挙げたBootek、P Series、Bootyloop、Schranz Series、これらは今配信で買うことができます。

Bootek Downloads at Trackitdown
P Series Holland MP3 & Music Downloads at Juno Download
Bootyloop MP3 & Music Downloads at Juno Download
Schranz Series MP3 & Music Downloads at Juno Download

流石にカタログ全てではないですが、即戦力になるくらいは揃ってます。

余談ですが、これらの他に有名なテクノ系ブートレグレーベルと云えばDJ Special NeedsYou Know、日本からもBodyshowerなどが挙げられます。

当連載で紹介している楽曲はBeatportの試聴を埋め込んでいる場合が殆どで、確かにBeatportはアーカイブ量の多さやDIGのし易さで現状最も優位性を保っていることは大方認めるところだと思います。
しかしそれでも全てをカバーできるわけではないため、他配信サイトや個々のレーベルサイト、SNSなど幅広くアンテナを張り巡らせた方が面白楽曲と出会える確率は高くなります。
現に上記のブートレグはBeatportにはありません。

単曲ではなく、作品単位で幅広くリリースが行われている媒体の1つにBandcampがあります。
アーティスト個人やレーベルがそれぞれ画一のページを持ち、価格帯は無料から設定可能と云う自由度の高さがあり、また販売物もトラックデータのみならず、サンプリングパックやヴァイナル、CD、アパレル、グッズと多岐に渡ります。

ってなワケで今回はBandcamp限定リリースをテーマとして紹介します。

Rydel

ハードグルーヴ黎明期よりシーンを支えてきたスロベニアのアーティスト、Rydel。
当時からブートレグのリリースを積極的に行っており、Soundcloudにもその名残が見えます。
上に載せた曲も超大ネタですね。今月に入って公開されたものなので新作ホヤホヤ。
派手派手なネタモノあり、ユルいテックハウスもありでカラーに富んでます。

Rydel – Bandcamp

David Moleon

こちらもハードグルーヴ黎明期より活動しているクリエイター/DJです。
以前スポットを当てて紹介しましたので詳しくはこちらを。
彼の運営しているWaaz Musicと云うのが割合サンプリングに寄ったリリースが多く、こんな感じのバッチバチネタモノEPがあったりして面白いのですが、Bandcampならではの特徴としてはサンプリングパックを配布していることでしょう。
君だけのハードグルーヴを作ってライバルに差をつけろ!

David Moleon – Bandcamp

Goncalo M

こちらもハードグルーヴ黎明期より(以下略)
そしてこちらもサンプリングパックを配布しております。
両者はハードグルーヴに於いても非常に近い傾向を持っているので、ニコイチにしたところで全く違和感ない筈です。
また、楽曲に於いてもほぼ自身の全リリースを網羅しているので圧巻のページとなっております。

Goncalo M – Bandcamp

Ganez The Terrible

アシッドテクノ界隈は今尚ヴァイナル限定でリリースしてたりして、主流の配信媒体に引っ掛かりにくい側面を持っていたりします。
Ganez The Terribleも自身が運営するレーベルのデジタルリリース分についてはほぼBandcampへ移行させ、新作もこちらで頒布してます。
こちらも以前特集を組んだ人なので詳しくはこちらで。
尚、ウェブサイトがいつの間にかオシャレになってました。

Ganez The Terrible – Bandcamp

Repetitive Underground

アシッド繋がりでもう1つ。デンマークの若手クリエイター、CVesthによるレーベルページ。
それぞれのリリースは各配信サイトからも購入できる流通方法を取っているものの、Bandcampでは投げ銭販売。
つまりフリーでも入手可能と云う形態を取っています。こういうのも地味によくあるパターン。
トラックは大変切れ味のある硬質アシッドテクノで大変格好良い。
今後の活躍が期待されます。

Repetitive Underground – Bandcamp

Scuderia

イタリアの新興インダストリアルテクノレーベル、Scuderia。
現在のところリリース数は9枚ですが、その全てをヴァイナルカットしており、いくつかの作品は既に完売していると云うくらいカルト的人気を得ています。
レーベルオーナーのLuciano Lamannaは活動歴3年足らずの若手ですが、90年代からフランスのハードテクノシーンに君臨しているAl Feroxの秘蔵っ子。
上の作品は来月リリース予定のものですが、ハードテクノ、レイヴ、インダストリアル、アシッドなどが混然一体となったパンキッシュな仕上がり。

Scuderia – Bandcamp

EURO2000

こちらも実験音楽色が強いレーベル。
先のScuderia同様、フィジカルリリースも行っているのですが、なんとこちらは媒体がカセット。(当然いくつかは完売している。)
しかも調べていくと面白いことに、参加アーティストの数名は常日頃からカセットでのリリースを敢行しておりました。
デジタルが主流になったことに対するアンチテーゼなのでしょうか。
無機質で硬いブレイクビートと云う音も相まって溢れんばかりのアンダーグラウンド感を醸し出しております。

EURO2000 – Bandcamp

polygon prompt

最後はコチラ。日本の沖縄県から硬いテクノを発信しているpolygon prompt氏。
古くはオタク×クラブをコンセプトに開催されていたパーティー、LINEARのコンピレーションに参加されていたこともあり、僕はそちらから知ったクチですが、現在もコンスタントにEPをリリースされております。
特に上の作品はフィールドウォークゲーム、ingressに影響を受けて作られたテクノ。
氏の得意とするサイバネティックな曲調が遺憾なく発揮されております。そりゃーニュースサイトにも載っちゃいますね。

polygon prompt – Bandcamp

次週03月27日は774Muzikさんが担当します。

おお、そういえば774MuzikさんもBeatport外でリリースを続けており、つい先日新曲が出たのでした。

曰く、『最近リリースされない感じの好きなハードミニマル』だそうです。
音数が少ない分、フラットな状態に持っていきたい時とか、上に何か重ねて遊んだりとか解釈がプレイする人によって変わりそうなトラックとお見受けしました。
もし本人に思うところあれば次回語ってくれることでしょう。(ネタ振り)

今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/03/08

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

03月に入り、ようやく暖かくなったと思ったらまた気温が下がってきました。
こんな不安定な気候にもなると季節の変わり目とやらを感じざるを得ません。
個人的に飯が美味く、汗をかいてみっともないことにならずに済む冬は好きな季節なので、それが終わってしまうことには一抹の寂しさがあります。
(余談ですがワタクシは冬も半ズボン派であり、挙句その格好でクラブに自転車で乗り付けるので、『何で生きてるの!?』と言われることがあります。褒め言葉と受け取っております。)

そんなワケでしんみりとした気持ちを表すような音楽を今回は紹介したいと思うのであります。
メロディアスで儚い感じ。
となればちょっとトランスに近くて、本連載の(一応)テーマであるハードテクノに絡むアーティスト。
以前紹介したNorman Andrettiもテーマ的にはピッタリですが、もっとベテランがいました。
この方々を今日はご紹介します。

Filterheadz

filterheadz
https://www.facebook.com/FilterheadzOfficial
https://soundcloud.com/filterheadz

ベルギー内陸部、ルーヴェン出身の2人組ユニット。
アーティスト写真の通りお互いソックリな風貌をしておりますが、それもその筈で彼らはなんと兄弟。
しかもこのFilterheadz結成前となる1980年代には2人共バンドを結成しており、The PoliceやU2などUKロックに影響された音楽活動をしていたそうです。

しかし90年代に入り、Roger SanchezやMasters at Work、David Moralesなどハウス界のレジェンド達に触れたことでダンスミュージックへ活動をシフト。
ディスコやユーロダンスのサンプリングを駆使したハウストラックをいくつかの変名義でリリースしたのちの1999年にFilterheadzと名前を決め、2人で本格的なユニットを始めるようになります。

最初期の音楽こそハウスであるものの、Carl CoxやMarco Baileyの影響でテクノのエッセンスを、また当時大きな影響力を持っていたイビザのシーンに触れたことでトランスの要素を取り入れた『美しくも鋭い』曲は多くのプロデューサー、DJの目に止まることとなりました。
特にCarl Coxのレーベル、Intec Recordsから2002年にリリースされたSunshine(後述)はトライバルテクノとプログレッシヴが融合した傑作としてスマッシュヒットを記録します。
これによってテクノ、ハウスシーンに於ける信頼を勝ち取った彼らは、その後もGreen Velvet / La La LandEric Prydz / Call on Meと云った大御所のリミックスも手掛けることとなりました。

2005年にはよりメロディアスなハウス路線を強調するように自身のレーベル、Love Distortionをスタート。
同レーベルから出たBlue Sky HappinessEndless Summerなどのアンセムトラックを生み、SPINNIN’ RECORDS、ID&T、Armada Musicと云った錚々たるトランスレーベルからコンピレーション収録のオファーが舞い込むようになります。
(この辺配信されていないのが実に勿体ないくらいのお気に入り。)
しかし2007年頃よりほぼ作曲を停止、ライブ本数もゼロと云う年がしばらく続きます。
理由については諸説あるものの、彼らがユニットを結成する切欠となった初期の音楽と、当時のシーンが求めていた音楽に乖離が生じていたことは無関係ではないでしょう。

しかし2012年にFilterheadzは帰ってくるのです。
それもMarco Baileyのレーベル、MB ElektronicsとUmekのレーベル、1605からのリリースと云うお土産を抱えてきたことは広く話題となりました。
休止の間に磨かれたサウンドは洗練さを増しており、シンプルながら深いビートに今まで培ってきた綺麗なシンセが浮遊する、まさしく『美しくも鋭い』曲に仕上がっています。
また、上記のようなベテラン同士の交流も盛んな一方、Raul Mezcolanza、D-Unityと云った若いアーティストとも積極的にコラボレーションを行っており、新しい感性を取り入れることに躊躇しない姿勢が見て取れます。

テクノと云う音楽は時代の潮流に流されないようでいて、実はそれらに影響を受けないと云うわけではありません。
従って長く活動を続けるためには多くの代償を伴います。
Filterheadzの歩んできた道筋もこのように決して平坦なものではなかったワケですが、それユエにドラマチックな存在として世代を超え、多くの支持を受けています。
最先端を走りながらも夢中になった『あの頃』を忘れず、そして『あの頃』に匹敵するものを追い続けている、そんな兄弟です。

そんなFilterheadzのオススメ楽曲はこちら。

Tomaz, Filterheadz / Sunshine

ハードテクノ時代の作品そのいち。上記で挙げたメロディアス+トライバルな1曲。

Tomaz, Filterheadz / los Hijos del Sol

ハードテクノ時代の作品そのに。ラテントライバル系。00年代前半のテクノを象徴するアンセム。

Filterheadz / Yimanya

プログレッシヴ時代の作品。数多くのリミックス、ブートレグが作られた大ヒットワークス。

Filterheadz / Rubicon

活動復帰後の作品。培ったプログレッシヴの要素を踏襲しつつ深いボトムの響く現代メインストリームテクノ。

Pagano / Starburst (Filterheadz Remix)

珍しいレイヴスタブもの。インパクトもありつつテクノ~ハウス間で使いやすいビート。

これらに加えて最近のFilterheadzの作品をもっと知りたいと思ったら、去年出たアルバムが大変オススメ。
現代メインストリームテクノの流れを追える上、周辺音楽の要素も取り入れたFilterheadzらしい曲もあったり、過去作品のリミックスもあったりとボリューム満点の逸品。

Filterheadz - Magnetic
Filterheadz / Magnetic

ちなみに今回このアーティストを取り上げた理由はもう1つあります。
今も昔もFilterheadzは海外パーティーに引っ張りだこで、日本にも何度か来日経験があるのですが、そのうちの1つは前回Hardonizeにご出演頂いたTAKAMI氏の所属するREBOOTの15周年アニバーサリーでした。
いよいよ今週末はREBOOT 15th ANNIVERSARY TOUR FINAL!! – DJ Q’HEY blog
Marco Baileyとペアで来たと云うのは凄い。
これが2013年。と云うことはそこから5年経った現在2018年はREBOOT 20周年に当たるわけでして、そのアニバーサリーが行われるのが今週末なのです。

青山MANIAC LOVE、代官山AIR、渋谷amate-raxiと都内では名高いハコを渡り歩き、現在は渋谷contactに拠点を構えてテクノを牽引し続けているパーティー。
是非足を運んでみてください。
REBOOT – The Best Underground Techno Party in Tokyo

そのTAKAMI氏にHardonize後のコメントで『新しいテクノも聴け!』と言われたのもあって今回の選出になった話もありますが・・・ここまでにしましょう。

次週03月13日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。