こんばんみ。774muzikです。
前回のTAKくんの記事がCave特集ということで、バトンを渡されたらトライバル大好きおじさんとしては、やるしかねぇ!と。
そこはもう大好物なところなので、ジャンルとしてのトライバルハードテクノを更に掘り進めてみたいと、そう思うわけです。
というわけで、今回はトライバルハードテクノの歴史振り返り回とさせていただきますので、よしなに。
そうそう、その前に。
前出TAKくんの記事で言及されていた、DJ DeroのTechnobatucadaですが、Youtubeに無い状況だったので上げてみました。
(そのうち消されるかもですが。)
かつて僕がBMSを作っていた時代に、99dbという楽曲のRemixをしたことがあるんですが、その中でこの曲からのサンプリングを行っていたりしました(それ以外もほぼサンプリングという酷い曲でしたが・・・)。
BMSJournalというサイトのHyper Remix2というイベントに投稿した楽曲で、僕のBMSでは最初で最後のヒット作(?)といっていいのではないでしょうか。
まぁ、良い思い出ということで。
さて、それでは本題に参りたいと思います。
テクノの歴史において、トライバルを主体としたハードテクノというものが明確に提示されたのは、やはりこの曲のリリースではなかったかと思います。
これ自体は1994年のリリースとなっていますが、収録された盤が「1989年から1991年の間に作られた未リリーストラック集」という趣旨のものであったことを考えると、Beltramの先見性たるや恐ろしいものがあります。
そして、この楽曲のリリースから引き続くように、トライバルハードテクノの源流ともいうべき楽曲群が生まれていきました。Jeff MillsによるAxis~Pourpose Makerからの一連のリリースです。
90年代後半においてリリースされたこれらの楽曲達は、パーカッションによるグルーヴ感を基調としたトライバルテクノというものをスタイルとして確立します。
Jeff Mills – Casa (Axis 1995)
Jeff Mills – Gift Of The Hills (Purpose Maker 1996)
JEFF MILLS – Alarms (Purpose Maker 1996)
Jeff Mills – Automatic (Purpose Maker 1997)
Jeff Mills – L8 (Purpose Maker 1998)
この流れは、Oliver HoやBen SimsといったJeff Millsフォロワーや、Mark Broomといったアーティスト達によって更に拡張されていきます。
Oliver Ho – Metaphysical A1 (Meta 1999)
Ben Sims – Reverser (Theory Recordings 1998)
Mark Broom – New Arrival (Pure Plastic 2000)
聴き返してみると、90年代の終わりから1999年位までのトライバルテクノは、大勢としては、やはり当時のハードテクノの主流であったハードミニマルの文脈上にあったように感じます。
その後、2000年~2003年頃にかけてファンキーテクノが台頭してくるのに呼応する形で、トライバルテクノにも徐々に変化が現れてきます。
すなわち、ひたすらストイックにループするビートから、派手で分厚いビート・大きなブレイク、という形が主流となっていきます。
Ben Sims、Paul Mac、Cave、Marco Bailey、Max Walder、Boriqua Tribez、Axel Karakasisなどなど、作り手も豊富になり、各々が有機的にRemixし合い、各々のレーベルからリリースし、という形で非常に動きも活発化していくと共に、当時かなりの勢力を誇っていたスウェディッシュハードテクノ勢(Adam Beyer、Hertzなど)とも交わり、主流であったファンキーテクノの中でも存在感を増していった印象があります。
レーベルで見ると、Primate、Ingoma(Ben Sims主宰)、MB elektronics(Marco Bailey主宰)、Pure Plastics(Mark Broom主宰)などが活発なリリースをしていました。
今でもテクノおじさん達のアンセムとなっている曲が多数リリースされた時期でもあります。
Ben Sims – Manipulated (Adam Beyer Remix) (Primate Recordings 2000)
Andrew McLauchlan – Love Story (Re-Edit) (Bush 2000)
Gayle San – Chigo (Primate Recordings 2001)
Tomaz vs Filterheadz – Sunshine (Intec Records 2002)
Boriqua Tribez – Pie Ass (Ingoma 2002)
Max Walder – Samba Del Costa (Lupp 2002)
Marco Bailey – Platinium (Roku aka Ben Sims & Mark Broom Remix) (MB elektronics 2003)
Monika Kruse – Latin Lovers (Terminal M 2003)
Cave – Street Carnival (Ingoma 2003)
この時期におけるリリースでは、とりわけCaveによる作品が質・量共に際立っていたように感じます。
Ben Simsに才能を見出だされ、彼のレーベルIngomaからデビュー作にして最大のヒット作Street CarnivalをドロップしたCaveは、その後も独特かつハイレベルなトラックを量産し、トライバルテクノを牽引する存在となります。
個人的な話ですが、僕がレコードを買い漁り始めたのがちょうどこの頃でして、リアルタイム感があります。
Cave – Carima (Hydrophonic Recordings 2004)
Cave – Elapid (Wetmusik 2004)
Cave – Tambores (Ingoma 2004)
Cave – Speleon (Ben Sims Remix) (Spilo Records 2005)
そうそう、Marco BaileyとTom HadesによるレーベルRhythm ConvertからDJ Electro OneのFederitiva EPがリリースされたのもこの時期。DJデビューした当時によく使ってました。
DJ Electro One – Medellin (Rhythm Convert 2004)
Caveの最盛期経過後(2006年以降はミニマル的な要素を備えた楽曲に変わっていきます。)、すなわち2005年頃以降の世代でこの路線を踏襲していたアーティストとしては、Carl Falkを推したいところです。
デビュー自体は2003年ですが、彼が特に注目を浴びたのは2005年にHertzの新レーベルHz Trax1番としてリリースされたPish Poshからではないかと思います。
彼の音は、Cave直系の図太い音を維持したものでありつつも、とにかく派手で大げさなブレイクに特徴があります。
1995年から2005年までの10年間で徐々に作り上げられてきたトライバルテクノは、ここに一定の完成を見たといえるでしょう。(実際のところ、1995年から2005年までの10年間における革新のような大きな変化は、以降現在までの約10年間、ほぼ見られないように思われます。)
Carl Falk – Posh (Hz Trax 2005)
Carl Falk – Bullets (Hz Trax 2006)
Carl Falk – Run For Fun (MHX Records 2006)
Carl Falk – Pirate Audio 08B – B1 (Pirate Audio 2006)
Carl Falk – Brazilicious (Patterns 2007)
Carl Falk – Bull-Shot (Patterns 2007)
・・・しかし、この頃から、テクノのメインストリームはミニマルへと移っていき、かつて隆盛を誇ったファンキー/ハードテクノは急速に勢いを失っていくことになります。無論、トライバルも例外ではありませんでした。
今日に至り、David Moleon、Chris Chambersといった、ミニマル台頭以降に頭角を現してきたアーティストが精力的にリリースを重ねているものの、やはりアンダーグラウンド感は否めないものとなってしまっています。
好きなものは好きなのでメインかどうかは関係ないですが、「このジャンルでは食えない」となって、アーティストが絶滅するようなことにはなってほしくないなぁ・・・・・と思っています。
長々と書き連ねてきましたが、トライバルハードテクノに興味を持ってくれる方が少しでも増えてくれればとてもうれしいです。
アーティストのことも曲のことも全然書ききれていませんが、まぁ、スペースの都合ということでご容赦くださいませ。
なお、スタイルの変遷に関する意見は、僕が好んで聴いていた楽曲群からの考察なので、違う角度から見ている方には異論もあるかと思いますが、一意見としてお読みいただければと思います。
以上、774muzikがお送りしました。
次回は、DJ Sangoがお送りします!では!