こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
4週間ぶりに担当致します。
前回担当回に更新ができなかったため、本日2件記事を公開しております。
よろしければご覧ください。
【次回Hardonize】
日程が公開されました。
日にちは12月06日(土曜日)、15時からとなります。
場所はいつもの早稲田茶箱にて皆様のご来場をお待ちしております。
ゲストについても追々公開されますが、前回と打って変わって今回ちょっと変わり種回です。
ハードテクノの周辺音楽にスポットが当たりそうなというか、個人的にも実験色を出していきたいと考えています。
【Spotifyプレイリスト】
Spotifyプレイリストの2025年08月分が公開されております。
当連載でピックアップしたハードテクノをメインとするトラックをプレイリスト化した全74曲。
自分はHardonize#50のプレイリストと、新作非4つ打ちテクノ (2025年08月版)で取り上げた曲が入っております。
【今回のお題】
近況も兼ねてになりますが、予てより告知を行っておりました¡¡SAKE!! Vol.6に出演させて頂きました。
主宰の12_1さん、及びお越し頂いた方々ありがとうございました。
昨日は¡¡SAKE!! Vol.6ありがとうございました!
おかげさまでMOGRAに集結した50本以上の四合瓶がほぼ完売しました👀
パーティを作り上げてくださった酒蔵様、演者各位、お客様、MOGRAの皆様には頭が上がりません。
少しでも日本酒の良さを知るきっかけになっていただけたなら嬉しいです。#SAKE250914 pic.twitter.com/KEeY9xVbHd— 12_1(トニー) / Wowl (@12_1) September 15, 2025
会場となった秋葉原MOGRAの両フロアで絶え間なく日本酒が提供される光景は、なかなかに珍しいものだったように思えます。
色々な方の持ち寄ったお酒を楽しませて頂きました。
出演陣もいつもより多く、それぞれの思惑が如実に表れていたのも面白かったですね。
とことんストイックなプレイを付き通す方もいる一方で、アンセムや大ネタを盾にフザけ倒す奴もいて、パーティーのコンセプトよろしく、酒の宴という感じでした。
またやってくださいね。
さて、僕はこの日、9人中5番手という、パーティーの丁度半分に当たる時間に配置されました。
前後のプレイヤーは前がDJ YO-Cさん、後ろが12_1さん、つまりハードハウスからハードコアに橋渡ししなければならないという役割を与えられたわけです。
それも持ち時間40分で。
そもそも今回のパーティーは、自分を境界としたときの前4人と後ろ4人でサウンドの傾向が全く違うものになっていました。
前4人はテクノ、ハウスあたりを基調とした、スタンダードなダンスミュージックにスポットを当てる方々だったのに対し、
後ろ4人はハードコアやファンコットといった、エッジの効いたテンポの速い音楽のプレイヤーで固められていました。
ということはつまり、これは単純に自分の前後だけ考えれば良いという話ではなく、パーティーが前半から後半にスイッチする重要な転換点に於いて、双方のバランスをとるためのプレイが求められている、という解釈をしました。
持ち時間40分で。
この時点でなかなかの難題です。
ではもう少しミクロな話で、ハードハウスからハードコアに持っていけるのかという点について。
実はこれも地味に難題でして、正攻法としてはハードダンスの中でじわじわテンポを上げていき、ハードコアにシフトする、という方法があります。
この2つの音楽はサウンド的にあまり違いがなく、テンポにさえ気を払えば最もスムーズなジャンル遷移であることは間違いありません。
しかし、裏を返すと意外性は無いに等しく、また両者とも強固なフォーマットの上で成立している音楽なので、その他のジャンルの介入余地が低いという難点があります。
折角オールジャンルのパーティーに出演させて頂いているわけですから、自分がやるには少し味気ないと感じてしまいます。
ちなみに、1曲の中でテンポが変わる曲を活用してはどうか、という案がありますが、直接ハードハウスからハードコアにシフトする曲はあまり無いような気がします。
自分が知っているのは以下の2曲です。
We Got It! – Paul-F, Djay D | Spotify
Gear Shift – Technikal, Simon Qudos | Spotify
前者はストレートに中盤でテンポが速くなり、また元のテンポに戻る曲で、後者はBPMが曲の展開と共に、5ずつ上がっていき、ハードコアの領域である170に達したところで元に戻る、を2回繰り返すクセ強トラック。
まぁ2つも候補があるのならこれらを軸足に考えれば良いのでは、という話になりそうですが、ここでも問題が1つ。
今回、自分がバトンを受け取るDJ YO-Cさんの流すハードハウスは、こうした現代的な音使いのトラックではなく、旧来はワープハウスとも称されていたような、もっと古い質感のクラシカルなスタイルのものが殆どであり、両者には微妙なニュアンスの違いが生じていることです。
事実、今回の彼の〆の1曲はCamisra / Let Me Show Youという、1998年にリリースされたザ・クラシックでした。
Let Me Show You (Extended Mix) | Camisra | Armada Music
先の曲とは全く音の質感が異なっているのがお分かり頂けると思います。
ここを綺麗に埋めるにはハードハウスの中で数曲跨いでいく必要が生じ、そうなると先にも挙げた『その他のジャンルの介入余地が低い』という懸念点が払拭できないことになります。
結論を申し上げますと、この日の僕のトラックリストはこのような形になりました。
ディスコ~レイヴ~ベースライン~日本語ラップ~ドラムンベース~アニメソング~ハードコア
22曲/40分。
全容はこちらです。
No | Artist | Trackname | Listen |
---|---|---|---|
01 | Gary Beck | Hopper | bandcamp |
02 | Isaiah | Stop The Tape And Hit Rewind | bandcamp |
03 | Taku Inoue × KAGAMI | MIRROR BALL “LOVE” FUTURE FUNK | SoundCloud |
04 | Utada Hikaru | Travelling (Kokushimusou No Future House Mix) | SoundCloud |
05 | North Base | Insomniac | bandcamp |
06 | — | Moonlight Legend (Yudaidhun ’92 Remix) | SoundCloud |
07 | Albin Myers | Rave Ghost | beatport |
08 | HUTCHER | GET BUSY DUB | SoundCloud |
09 | wotaku | シャンティ (DJ WILDPARTY Remix) | Spotify |
10 | ralph | Assassin | YouTube |
11 | 夜猫族 (feat. XakiMichele, tip jam & Tade Dust) | ぶっ生き返す | YouTube |
12 | YENTOWN (feat. kZm, Awich, PETZ, MonyHorse & JNKMN) | バグり | YouTube |
13 | Fuma no KTR, WAZGOGG (feat. bunTes) | Buzzer Beats | Spotify |
14 | Touhou | U.N. Owen Was Her (Cosmowave Remix) | bandcamp |
15 | Captain Bass, Amplify | Don’t Let Me Go | beatport |
16 | Tiesto, Hedex, Basslayerz | Click Click Click | beatport |
17 | Trigga, Chase & Status, Irah, Flowdan, Takura, Bou | Baddadan | beatport |
18 | Creepy Nuts | オトノケ – Otonoke | YouTube |
19 | 米津玄師 | BOW AND ARROW | YouTube |
20 | 奥華子 | 変わらないもの (The LASTTRAK Remix) | SoundCloud |
21 | Darwin, Time Rhythm | Keep It Going | bandcamp |
22 | Scooter, Paul Elstak, Joost | Luv U More | beatport |
相当な遠回りをしていることがお分かり頂けますでしょうか?
先に挙げた通り、グルーヴをキープしながらテンポを上げるという最適解が自明であるにもかかわらず、です。
こういうトラックリストに至ったのには勿論、自分なりの考えや理屈が存在します。
それはDJにおける絶対的な正解とは縁のないものかもしれませんが、それぞれがそれぞれのスタンスで音楽をプレイし合うのがクラブの醍醐味だと常に思っておりますので、
何かしら参考になれる部分もあるかもしれないという考えのもと、上のトラックリストをリファレンスに自分の理屈についてできるだけ言語化する、というのが今回のテーマです。
前置きが非常に長くなりましたが、改めて今回のお題は
です。
従って、今回は個々のトラック解説とかはあまりやりません。
昨年、選曲解説:TYMM07編というのを書きましたが、それの続編的な形となります。
今回の記事の中で重複している部分もありますが、『この時考えていたこと』をなるべく言語化した結果ですので、何卒ご容赦ください。
それでは選曲解説:¡¡SAKE!! Vol.6編いってみましょう。
【事前準備1:タイムテーブルを確認する】
まず、そのパーティーの大体のサウンドの傾向と前後のプレイヤーがそれぞれ誰なのか、そして自分の出番が何番目かということを常に押さえます。
自分はパーティーというものの良し悪しについて、開催時間全体を通して1つの流れが構築できているかを1つの判断基準にしているので、そのパーティーに出演するとなった場合は、複数いる出演者のうちの1人として『前の人からスムーズに曲を拾い、次の人に綺麗に曲を渡す』ことを絶対に心がけます。
これは前回の記事からの引用になりますが、どんなパーティーであってもこの点については遵守しているという自負があります。
冒頭で述べたように、今回の場合は9人中5番手という、パーティーの丁度半分に当たる時間であり、前後のプレイヤーは前がDJ YO-Cさん、後ろが12_1さんでした。
繰り返しになりますが、ハードハウスからハードコアに橋渡しを行う、というのが今回のプレイ内容を考える上での出発点になります。
パーティーによっては、特定のサウンドやジャンルにスポットが当たっているものもありますが、今回はオールジャンルのパーティーということで、そういった制約の部分については特に考える必要はありませんでした。
但し、今回に関しては音楽以外に日本酒目当てのお客さんも大勢いるだろうという点や、夕方開催なので雰囲気的にあまり合わないだろうという観点から、ドープ過ぎる、アングラ過ぎるものについては避け、ある程度の分かりやすさについては維持するべきとも考えました。
自分の出番が5番手という、パーティーとしては流れが構成され、お客さんのテンション+酔い度も高まりつつあるタイミングに位置していることも決め手の1つですが、パーティーによっては後半とのコントラストを強調するため、あえてダークで沈ませるような音にスポットを当てることもあり、正直場合によりけりです。
このあたりは露骨に普段見ている現場だったり、DIGの質によってどこまでの振れ幅が出せるかが決まるポイントだと思っています。
尚、今回の場合は当て嵌まりませんが、フロアが複数ある会場の場合、自分と同時刻に別のフロアでプレイしている方のサウンドの傾向まで含めて考えます。
フロアの数だけ流れる音楽に振れ幅があって良いと思っており、その方がフロアを回遊していて楽しいと感じることが多いので、同時刻帯に別のフロアで流れそうなジャンルは除外しがちです。
この点についても前回触れた通りです。
【事前準備2:何で受け取り、何で渡すか】
さて、自分のプレイの大枠は明白なのですが、肝心の中身をどうするのかについては選曲開始時点では全く目途が立っていませんでした。
持ち時間が40分と短いため、ある程度タイトなMIXが求められているという点も難易度を高くしている要因でしたね。
この場合、目下の課題であるハードハウスから受け取れる曲、もしくはハードコアへバトンタッチできる曲についてピックアップすることから着手しました。
真っ先に思いついたのは後者でした。
というのも、比較的最近リリースされた曲の中に、個人的にとんでもないインパクトを誇るものがあったからです。
それがこれです。
Scooter x Paul Elstak x Joost – Luv U More – YouTube
Luv U Moreといえば、音楽プロデューサーとして30年以上のキャリアを誇り、今尚多くのフェスで最前線に経ち続けるオランダの大ベテランPaul Elstakが1995年にリリースした天下無双のハードコアクラシックです。
一方、Scooterも同時期に活動を開始したドイツのエレクトロニック・バンドで、トランス~ハードダンス~ハードコアを次々と取り込み、商業的シーンからこれらの音楽を支えてきたアーティスト。
このビッグネーム2つが2025年に交わるんだ、というのがとにかく衝撃的でした。
もしかしたら今年1番のインパクトかもしれません。
というワケでリリースされたタイミングでは特に使うアテはなかったものの、秒でカートインしており、これは今回使うべきだろうと思い至りました。
とりあえず最後の曲をLuv U Moreにする、ということだけ明確になりました。
大きな一歩です。
関連して、応用のききそうなハッピーハードコアについても数曲準備しておきましょう。
次に前の出順のDJ YO-Cさんからどう受け取るかについて。
これまでの彼のプレイを見てきて、なんとなくクラシカルなハードハウスであることは想定できるものの、一方でそういった曲は彼のプレイで流れるだろうし、なんなら彼の専門領域でもあるわけなので、自分からそこに足を踏み入れることはせず、周辺音楽の中から探そうという方針になりました。
その中でタイトなMIXができ、質感がハードハウスと似ており、且つ自分のプレイという単位で考えた際の序盤に合う音楽は何かと考えた時に思いついたのがディスコテクノや、新興ハードグルーヴでした。
言わば、4つ打ちのループ主体でありつつ、ウワモノのインパクトがあり、しかもそれが生音っぽくレトロ感もあり、曲の展開にメリハリが効いている、という条件を全て満たす音楽です。
参考記事:
新作ハードグルーヴ (2025年07月版)
新作ディスコ (2025年07月版)
実際に1曲目に使ったのがこれ。
Hopper (Original Mix) | Gary Beck | Mutual Rytm
比較的最近リリースされたトラックで、当連載でも既に取り上げられており、上で列挙した条件に比較的当て嵌まっていると言えます。
こういったテイストの曲を10曲ほど用意し、序盤の数曲をこれらでまかなう、という方針にしました。
この時点で決まっているのは、
ディスコ⇒(色々)⇒ハードコア
ということになります。
40分は短いとはいえ、流石にもう少し具体的に中盤の内容について詰める必要があります。
【事前準備3:MOGRAというクラブの特性を活かす】
ここでもう1つ、選曲において重要なファクターになるのが、開催地です。
東京にクラブは数多く存在しますが、その中でも今回の会場である秋葉原MOGRAは大きな特徴を持ったハコであると思っています。
その要因はエリアに根差した独自の音楽シーンです。
今や世界中の人が認識しているように、秋葉原はアニメ・ゲームカルチャーの中心地です。
過去に海外から招聘したゲストDJを連れて観光案内を行ったことがあるのですが、みんな秋葉原に来ると『駅に着いた瞬間からアニメイラストが目に入り、路上にはメイド服を着た女の子が立っていて、カラフルな看板やネオンが街を彩る、エリア全体がテーマパークみたいだ。』と言って喜んでいました。
誰とは言いませんが、自国では何らかの規制を受けそうなエロ同人誌を持って大喜びしていた人もいます。誰とは言いません。
そんな秋葉原にある秋葉原MOGRAではレギュラーで開催されているアニメソングのパーティーが複数あり、また店長のD-YAMAさんもアニメソングのDJとして数々のフェスや企業との協賛を果たしているトッププレイヤーです。(ちなみに同い年。)
その一方でダンスミュージックにおいても幅広くカバーしており、Hardonizeが公私共に仲良くさせてもらっている秋葉原重工のメイン開催地はここですし、自分が以前出演させてもらったハードコアのパーティー、WEEKEND RAVERSもここ開催でした。
毎月開催されているelemogは、毎回テーマとなるサウンドを変えつつ、多方面からゲストを招いて行われている名物パーティーであり、何回か遊びに行かせて頂いております。
このように、アニメカルチャーとダンスミュージックを分け隔てなく取り入れたクラブとしては先鋭的な存在であり、そのブースに久し振りに立つ機会を得たということで、何かしらアニメソングの要素を取り入れたいと考えました。
自分はそこまでアニメを見る習慣が無いのですが、それでも近年聴いた中でかなりインパクトのあった曲がこちらです。
【MV】Creepy Nuts – オトノケ(Otonoke) – YouTube
TVアニメダンダダンオープニングテーマ。
原作となった「ダンダダン」で韻を踏み続けるライミング、ホラー映画や都市伝説、その他ジャンプ作品まで取り込んだ歌詞のコンテクスト、高速のジャージークラブビートを取り入れたシンプルで強度のあるリズムに、サビでは聴き心地の良いアーバンなギターリフが乗っかった、情報量の塊のような曲。
そもそもの曲のコンセプトが『曲には制作者の念が込められており、その曲が再生されるたびに込められた念が蘇る(再生される)というのを、この世に未練のある霊に重ね合わせて作られた。』ということらしく、この視点には大変脱帽しました。
めちゃめちゃ好きですこの曲。
Creepy Nutsが語る、アニメ『ダンダダン』主題歌「オトノケ」制作秘話 | ビューティー、ファッション、エンタメ、占い…最新情報を毎日更新 | ananweb
運が良いことにこの曲は今回の〆にするハードコアのテンポとも共通しているため、後半に持ってこれそうだと考え、これを軸としたアニメソングパートを設けることにしました。
キーになる要素としては、テンポが速い上で穏やかさを感じる音使いをしている曲という点です。
実際オトノケの後に繋いだのは米津玄師 / BOW AND ARROWでしたが、これもメダリストのオープニングですね。
ちなみに他に用意した曲としては米津玄師 / Plazma、水曜日のカンパネラ / 赤猫、Kidella / Wake up、MINMI & Nujabes / 四季ノ唄、雄之助 / ディメンション、この辺り。
もっとこの手の音楽に詳しくなりたいですね。
尚、アニメソングからハードコアへの橋渡しについてですが、個人的にはそこまで難しくないジャンル遷移だと思っております。
というのも、アニメソングをハードコアにアレンジした、いわゆるブートレグは枚挙にいとまがない程に数が出ており、詳細はあえて割愛しますが、SoundCloudを少し漁るだけでそれらを簡単に見つけることが可能です。
中には『なんでこのアーティストが!?』みたいな曲もあったりしますし、そういった曲ほど、ある日突然非公開になったりするので、見つけた瞬間に入手手段までチェックするようにしましょう。
こういったトラックを両者の間に配置することで、アニメソングからハードコアへの移行を、ある程度スムーズに行うことができるので、この辺りもいくつか準備しておくことにしました。
というわけで、現段階でのプレイリストの構想が
ディスコ⇒(色々)⇒アニメソング⇒ハードコア
こうなりました。
【事前準備4:テンポの差をどう埋めるか】
さて、これまでの流れで少しずつセットの肉付けが進んでいるものの、今回の最重要課題とも言える『どのようにしてテンポを速くするのか』については、まだ有効な解を得られていません。
冒頭で触れた2曲や、選曲解説:TYMM07編の中で記したように、1曲の中でジャンルを跨ぐ曲というのはいくつか存在するので、それらを使えば非常に話は速く済むのですが、この時点では中盤の流れについてもう少しイメージを固める必要がありました。
改めて現状を整理すると、ディスコからテンポ速めのアニメソングに遷移するような展開について考える必要に迫られています。
具体的にBPMで表すと、ディスコが140前後、前段で候補に挙げたオトノケが170であり、仮に1曲の中でテンポが変わる曲を用いないのであれば、このBPM140と170の間となる150~160の音楽を用意することで、緩やかに速いテンポに寄せていく流れを構築することができます。
では、BPM150~160を基本とするジャンルとは何でしょうか。
ハードテクノ的にはやはりシュランツが代表例として挙げられます。
07月にJason Littleが自身の活動歴20年を冠したアルバム、20th Anniversaryをリリースしたことも記憶に新しいですね。
あとはBPM160というテンポに対して強固なフォーマットを敷いているジューク/フットワーク(例:V.A. / MOVELT JUKE JAM 5)や、ハードスタイルのビートを更に先鋭化させたロースタイル(例:V.A. / Gearbox Presents Hot Pursuit)あたりも候補に挙げられます。
しかし自分にはもう1つ、この速度域に対して思い当たる音楽がありました。
それがヒップホップです。
従来のヒップホップといえばBPM100前後を基調とした、いわゆるダウンテンポのトラックがスタンダードであり、たまに変わり種としてテクノに近いビート、テンポの日本語ラップが出てくる、くらいの印象だったかと思いますが、誕生から50年を迎えた近年のヒップホップは日進月歩の速度で発展を遂げており、特に多種多様なダンスミュージックと接近したトラックが次々に出てくるようになりました。
それは今回取り上げるBPM150~160の範囲に留まらないわけですが、ここに該当する曲だけでも以下のように挙げることができます。
(日本語ラップばっかり聴いているので、その中から選出しております。)
ZORN / Changing
Red Eye (feat. 漢 a.k.a GAMI) / Get over it.
DownTownDogs (feat. EIEN & Kampf) / BOOZER
STACK THE PINK (feat. ACE COOL) / Nottin’ Broken
SUSHIBOYS / 木にしない
ちなみに2024年を象徴するビッグヒットとなったCreepy Nuts / Bling-Bang-Bang-Bornもここに含まれますし、彼らの最新アルバム、LEGIONに収録されている曲はかなり該当するものが多かったですね。
こういったテイストの曲で個人的にインパクトの強かったものを選ぶとなった際、直近で思いつくものがありまして、それがこれです。
YENTOWN – バグり feat. kZm, Awich, PETZ, MonyHorse & JNKMN (Prod. DJ JAM) – YouTube
まずトラックが異様過ぎます。
太いベースとキック、そして絶え間ないボイスサンプルのループによって構成された、不穏さとキャッチ―さが同居したシンプルなビートは、パッと思いつく類似例がないほどに独創的。
その上で5人のMCがそれぞれ異なるアプローチでラップを乗せており、そのどれもがこの異様なトラックに対してスムーズにハマっているのにも驚かされます。
現代的日本語ラップにおけるトレンドを押さえながらも、実験的要素を多く含んだ1曲。
また、もう1つこのテンポを採用している日本語ラップで、以下のようなものがあります。
Buzzer Beats (feat. bunTes) – Fuma no KTR, WAZGOGG, bunTes | Spotify
こちらは完全4つ打ちのキックに裏打ちの跳ね系ベースを採用しており、強烈にハードダンスを想起させるトラックを採用しています。
MIXのポイントもしっかり設けられており、一般的なハードダンスへの橋渡しとしても申し分ない仕上がりになっているため、この2曲を軸に日本語ラップセクションを設けることで、テンポを上げつつ、使いやすいダンスミュージックへ遷移させることができそうです。
更に、近年の日本語ラップはダンスミュージックの中でも特にトラップやドリル、UKガラージといったベースミュージックとの接近が顕著であるため、
ここを足掛かりにした日本語ラップへの遷移もスムーズに行うことができるという点も、今回のプレイリストの決め手になっています。
というわけで、プレイリストの構想はこのようになります。
ディスコ⇒(色々①)⇒ベースミュージック⇒日本語ラップ⇒ハードダンス⇒(色々②)⇒アニメソング⇒ハードコア
【事前準備5:しょうもないネタ】
ここで『色々②』としている部分、つまりハードダンスからアニメソングに繋ぐセクションについては、多様なサブジャンルを含み、サウンドやビートの振れ幅が広く汎用性の高いドラムンベースを起用することにしました。
ディスコ⇒(色々①)⇒ベースミュージック⇒日本語ラップ⇒ハードダンス⇒ドラムンベース⇒アニメソング⇒ハードコア
大分プレイリストの輪郭がはっきりしてきました。
少し懸念点があるとすれば、ハードダンスからドラムンベースについては両者ともダンスミュージックのフォーマットに則った音楽同士なので、曲の組み合わせ次第でどうにかなるのですが、
(実際に両者の転換点として使ったCaptain Bass, Amplify / Don’t Let Me Goは、煌びやかなシンセと4つ打ちを意識させるリズムパーツが入ったドラムンベースです。)
アニメソングについては、必ずしもダンスミュージックのフォーマットに沿って作られているわけではなく、MIXのポイントや尺、出音など、思想の異なる点が多々あります。
そのため、両者を跨ぐのに際し、より慎重な選曲が求められるわけです、本来は。
先述のアニメソングのセクションにおける使いたい曲としてCreepy Nuts / オトノケを挙げました。
この曲は冒頭『ダンダダン、ダンダダン・・・』というボーカルの反復から曲がスタートします。
【MV】Creepy Nuts – オトノケ(Otonoke) – YouTube
このフレーズは、この曲が用いられているアニメのタイトルそのものであり、非常に印象的なイントロになっています。
一方、2023年のドラムンベースを象徴する1曲として以下の曲があります。
Chase & Status, Bou – Baddadan ft. IRAH, Flowdan, Trigga, Takura – YouTube
近年のドラムンベースのトレンドである、ホーンのようなベースフレーズを起用した音数の少ないスタイルのトラック。
シーンを代表するプロデューサーと、複数のベテランMCがタッグを組んだこの曲はクラブシーンの垣根を越え、本国イギリスを中心に特大ヒットを記録しました。
「Baddadan」が大ヒットしたChase & Status、BRIT Awardsの年間最優秀プロデューサー賞を受賞 | block.fm
完全に余談ですが、Chase & StatusとTakuraの組み合わせは、2022年に公開したガラの悪いドラムンベース特集にてピックアップしたNo Problemという曲でも行われております。
これも大好き。
で、このBaddadanという曲は、ブレイク明けに『Nobody badder than we』の略である『バダダン、バダダン、バダダン』というバースが入ったのち、リズムパートに一気になだれこむ展開となっております。
ここは曲中で特に強烈なインパクトを誇る箇所であり、フェスにおいてはオーディエンスが大合唱する光景がしばしば見られます。
『バダダン』、『ダンダダン』
『バダダン』+『ダンダダン』
つまり、『Baddadanのブレイク明けにオトノケのイントロを重ねる』というしょうもない思い付きが天から降ってきまして、これを実行しました。
文字で書くと『バダダン、バダダン、バダダン、ダーンダダン』みたいな入り方をします。
平場のパーティーではできないレベルのおフザケですが、今回のような『酒』をテーマにしたパーティーであれば許されそうな気がしたので。
という離れ技によって、ドラムンベースからアニメソングへの橋渡し(?)も含め、当初より大分プレイリストの構想が明確になりました。
ここまでイメージできればこの時点では充分という認識です。
【事前準備6:フローを元に各ジャンルの大まかな配分を計算する】
前回の選曲解説の中で記した内容と同様になりますが、持ち時間の間にプレイできる曲数というのはある程度予測を立てることができます。
上記のフローに含まれるディスコであれば曲を繋いでから次の曲に繋ぎ終えるまでにかかる時間は3分~4分ですが、一方で日本語ラップやアニメソングに関しては1分~2分で次々にスイッチさせていくスタイルが定着しています。
今回は比較的短い尺で繋いでいくジャンルが多いので、1曲当たり2分として、今回の持ち時間40分を割ると20曲という数字が出ます。
これが今回のプレイでかけられるトータルの曲数だろうと仮置きします。
その上で先述のフローに戻ります。
ディスコ⇒(色々①)⇒ベースミュージック⇒日本語ラップ⇒ハードダンス⇒ドラムンベース⇒アニメソング⇒ハードコア
『色々①』としているセクションについては未解決ではあるものの、他のセクションと同等程度の曲数を用いることにした場合、全部で8つのジャンルを跨ぐことになるので、これを先程のトータル曲数の20から割ると1ジャンル当たり2.5曲、つまり2~3曲で展開していくという計算になります。
この数値は概算値ではあるものの、実際に使用したのが22曲であり、そう大差ないことから事前の参考値としては充分機能しますし、こうした予測を立てておくことで終盤の展開が慌ただしくなる、といったことが避けられるように思えます。
これまでの中でジャンル遷移に有効的な曲についてはピックアップしているため、その前後を補強するようなインパクトのある曲や、汎用性の高い曲などを更にピックアップし、選曲フォルダに格納しておきます。
今回に限っては先の通り、秋葉原MOGRAでの出演ということもあって普段使えないようなアニメ系ネタモノもちょいちょいこの中に入っていました。
というわけで事前準備としてはこれで完了です。
あとはドキドキしながらパーティー本番を迎えます。
【パーティー当日~出番】
自分の出順が来るまではできるだけフロアにいてどんな音が流れているのか、耳を傾けるようにします。
特に、パーティーとの親和性はあると思うのにまだ流れていない音というのを積極的に探すようにして当日のプレイに反映させることが多いです。
とにかく出番開始ギリギリまで、自分のプレイに対する判断材料を増やすことを心がけています。
今回の場合、自分の出番前であったDJ YO-Cさんは、長年のキャリアに基づく実直なテクノ~ワープハウスをプレイされており、裏を返すと飛び道具的要素が少なかったように感じられたため、その点については自分が補完する余地があると感じました。
具体的には前段で触れたようなアニメ系ネタモノが序盤から使えそうだなと思ったので、実際3曲目にこれを用いています。
Stream MIRROR BALL “LOVE” FUTURE FUNK by IKASAGOJ | Listen online for free on SoundCloud
誰とは言いませんが、当日はこれの中の人が会場に来ており、『自分でさえ使ったことないのに!』と申しておりました。
実際にどの曲を使うのか、についてはその場のノリや思い付きに任せている部分も多く、全てを言語化するのは難しいです。
ですが、結局のところこれまで自分が聴いてきたもの、準備してきたもの、考えてきたことの帰結だと思っています。
自分の中でDJの醍醐味の1つは『前後の曲に繋がりを持たせ、それらの相互作用によって持ち時間の中で波を作ること』だと考えているため、どんな現場、どんな時間帯、どんなジャンルにおいてもそれが発揮できるよう、引き続き色々な音楽を摂取していきたいと思っています。
【まとめ】
とまぁ自分なりには色々思考を巡らせてこのような内容になっておりますが、結局序盤のジャンル遷移がディスコ⇒レイヴ⇒ベースミュージックになっているあたり、自分の手クセが出ているというか、癖(ヘキ)が表れているというか。
詰まるところ、理屈を超えた『好き』には抗えないのかもしれません。
どんどん好きなものを増やしていきましょう。
この日使ったコレとか2017年の曲ですけど、ことあるごとに使っている気がしますし。
最後にこれだけ紹介して終わります。
Rave Ghost – Albin Myers | Spotify
スウェーデンのプロデューサーAlbin Myersによるベースライン。
強烈にピッチベンドを施した形容し難いウワモノが、これまた形容し難いフレーズで鳴らされている曲。
ベースに関しても同様で、こんなに間隔の詰まったフレーズはなかなか類を見ない気がしますし、4つ打ちのキックと裏打ちのハイハットを前面に出したシンプルなリズムに対し、これらの変な音使いが強烈なインパクトを与えてきます。
タイトルとは裏腹に、いわゆるレイヴを象徴するような派手で煌びやかな音は一切ない反面、ジャケットは90年代から今も続いているハードコアのフェス、Thunderdomeのオマージュという、これも非常に心掴まされるポイント。
Albin Myersは時期によって作る音楽に変遷があり、こういう変な曲を作っていた時もあればちょっと前までハウスを手掛けておりましたが、今年に入ってキャリア初のアルバムがリリースされました。
MOOD MANAGER (EXTENDED MIXES) | Albin Myers
『このアルバムをリリースするまでに、キャリアをスタートさせて17年かかりました』と語られており、これまで彼が手掛けた音楽の片鱗が詰め込まれた魂の作品。
先の頃を彷彿とさせる少し偏屈なトラックもあったりして個人的にはかなり嬉しいです。
【次回】
そんなワケで今回はここまで。
次週10月07日は774Muzikさんが担当します。
では。
同日公開記事:新作トランス特集:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2025/10/02