こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
30年以上に渡り、神保町でCDのレンタルを行っていたジャニスと云うお店が今月を以って(つまり明日で)閉店となります。
(中古CDの販売店舗については年内までは引き続き営業を行っていくそうです。)
この店に思い入れがあり過ぎるし、在庫量多過ぎるしで結局何買ったら良いか分からなくなってしまった。
多分また行くけど。
ありえないレア盤が大量に投げ売りされているので、是非思い思いの品々を救出しに来て欲しい。 pic.twitter.com/om4Yc9Mq9Z— TAK666 (@12345666) 2018年11月5日
ロック、ポップスは勿論の事、ヒップホップや電子音楽、ワールドミュージックからアニソン、果てはサンプリングCDに至るまで数万枚の在庫を抱えていたお店。
一般的なレンタルショップにはまず並んでいないと思われるマニアックな品々が多く、入手しづらい過去作を聴きたいと思った時には大変頼りになる存在でした。
思い出せないくらい前から利用していたこともあり、また1つ贔屓にしていた音楽関連のお店が消えてしまうことはとても悲しいものがあります。
本当にありがとうございました。
実はここでパーティーをやったことがあるんです。
現在の店舗になる前、ジャニスは雑居ビルの9階にあったのですが、8階のテナントが空いていた時期にそこをイベントスペースとして開放していたことがありまして、折角なので変なことをしましょうとAVSS代表のDa/Leさんを唆して行ったのが解放最前線と云うパーティーでした。
ちなみに出演者は自分の師匠に当たる練乳さんや、Fumiaki Kobayashiさんとユニットを組んでいたギタリスト且つDJのMasayuki Ozakiさん、そして後にHardonizeを一緒にやることになる774Muzikさんなどがいました。
当時流行っていたcapsuleとかかけてましたね。
一生懸命当時の写真を探してみたものの、見つけられませんでした。
その代わり、ジャニスのブログ記事にてちょっとだけ触れられております。
> 寸劇が始まったり、ジュリアナと化したり
これはDENIMさんですね。
> ターンテーブルの上にフィギアが乗ってたり
これはThanatosさんですね。
今見ると扱いに困ったんだろうなと云うのが察せられます。
奇人が多くて面目ない限り。
そんなこともあって大変お世話になったお店なのでした。
尚、ジャニスではこれまでレンタルとしてお店に置いていたCDを一挙放出しております。
自分はこの1か月間通い詰めており、既に100枚近く救出済み。
前回記事で触れたM3の後なので出費がヤバいことになってますが、長年お世話になったお店の閉店となればやむを得ない。
ちなみにお値段なんと1枚300円。
冒頭の通り、営業は明日30日までとなるので是非お暇を作って足を運んでみてください。
レア盤多数・・・と云うかちょっと引くぐらい在庫あります。
さて、本来ならば件のジャニスで救出した名盤◎選、みたいなテーマがしっくり来るところですが、ここ2回特集続きなので今回は普段通りのアーティスト紹介とします。
まだ明日も可能性があるわけですし。
冒頭に関連付けるとしたら、数万枚の在庫を持つジャニスと云うお店がプッシュしていたテクノアーティスト、それも割と最近のシーンにとって重要な存在となっており、且つワタクシの趣味にバッチリ合致する人がいるのでコチラをご紹介します。
https://www.facebook.com/SpecialRequest187/
https://soundcloud.com/specialrequest
イギリスの羊毛都市リーズのアーティスト。
本名はPaul Woolfordで、本名名義での活動は2000年代初期の頃から展開しています。
言うなればSpecial Requestは彼が持つプロジェクトの1つです。
活動開始当初はハウスを主軸としており、その才能はすぐに有名プロデューサー達を虜にしました。
初期の頃よりハウス~ディスコの名門Subliminalや、元UnderworldのDarren Emersonが運営しているUnderwater Recordsなどの作品へ参加していることからもその片鱗が窺えます。
後に本家Underworldのリミックスを担当したことも彼の知名度を大きく押し上げる要因になりました。
その躍進は近年も衰えず、2011年に20周年を迎えたデトロイトテクノのレーベルPlanet Eの世界ツアーに主宰のCarl Craigと同行、そして同レーベルからのリリースを果たします。
また、この時テクノシーンに訪れていたダブテクノと云うトレンドにもすぐに呼応し、当時最先端を走っていたレーベルHotflush Recordingsとサイン、数々のアーティストとのコラボレーションを経てフリージャズや現代音楽の要素を吸収するなど、より実験的なアプローチへと舵を切っていくことになります。
その中で大きな出来事となったのが、Ben UFOから楽曲のサポートを受けたことでした。
Ben UFOもまたダブテクノ、ミニマルテックハウスの代表格として語られることが多いアーティストですが、特筆すべきは彼がパーソナリティを務めていたロンドンのラジオRinse FMです。
その昔、イギリスではロックをはじめとする大衆向け音楽の放送を1日45分までと厳しく制限していた時代がありました。
一方イギリスと云えばブリティッシュ・ロックと云うカテゴリーがあるくらい音楽の盛んな国でもあるわけで、日々生まれてくる曲やアーティストをその制限の中で伝えきれるわけもなく、リスナーは多くの不満を抱えていました。
それを解消せんとばかりに立ち上がったのがパイレーツ・ラジオ、所謂正式な放送免許を持たず放送を行なう海賊放送です。
これは最初海の上から船で送信するような大掛かりなものだったそうですが、機材の小型化や低価格化が進むにつれて陸上へと拠点が移るようになり、また放送を行う者の数も増えていったそうです。
Rinse FMもその中で生まれたラジオ局(?)でしたが、ここが他と違っていたのはクラブミュージックを積極的に取り上げていたことです。
90年代にレイヴサウンドが爆発的な流行を遂げた際、Rinse FMはレイヴやジャングルと云った当時最新のジャンルにスポットを当て、またそれらがドラムンベースやガラージと云った新たな音楽へと変容していく様子も追従しました。
長きに渡ってRinse FMはパイレーツ・ラジオとして存在していましたが、2010年に放送ライセンスを取得したことで正式な放送局として認められることになり、現在でもグライムやダブステップと云ったアンダーグラウンドミュージックにとって欠かせない役割を担っています。
そういったパイレーツ・ラジオをPaul Woolfordは10代の頃に聴いて育ってきました。
その後数々のプロデュースやコラボレーションを行ってきて、もう1度新しい気持ちで音楽と向き合いたいと考えていた時にRinse FMと関わりがあったことは大きな出来事となったのでしょう。
彼は1993年までのこれらが録音されたテープアーカイブとヴィンテージハードウェアシンセを使い、2012年に新しい名義でのプロダクションをスタートさせました。
それこそが今回のメインテーマ、Special Requestです。
自らの原点とも言えて、且つ20年近く傍らにあったレイヴ、ジャングル、そしてパイレーツ・ラジオと云ったカルチャーですが、本名名義であるPaul Woolfordの活動ではこれらに立ち入ることはあまりありませんでした。
Special Requestとなるまでの彼は前述の通り、現行のアーティストとして流行に追随し、広くオーディエンスに受け入れられるような手法の模索をより積極的に行っていたからです。
しかし更に視野を広げ、自分が前進するために自分の根源となる部分と向き合う必要があったと語っています。
そしてそれは彼が考えていなかった程エキサイティングな体験を齎しているそうです。
トラックは全て自然に湧き出た感覚から当たり前のように、スムーズに完成まで辿り着くことが多く、またこれらに取り組んでいる最中は『他人に理解してもらえるか』と云う余計な思考を挟む余地もない程夢中になれるのだと。
更にはこれらが流行りの音楽ではないという事実もより一層の興奮を覚えるのだと語っています。
思えば本来のレイヴやジャングルが当時マーケティングを意識していたかと問われればおそらくそうではないものが大多数で、どちらかと云うと初期衝動そのものをコンパイルしたものでした。
だからこそあれだけ攻撃的で、無節操で、鋭く尖った楽曲が大量に出回ったのだと思います。
Special Requestはそう云った対外的な要素を排除して純粋に好き勝手やる、『個』と向き合うプロジェクトであると言えるでしょう。
最後にSpecial Request名義でのトラックのスタイルについて説明すると、上述の通り90年代レイヴやジャングルを踏襲しつつ、ベースやリズム帯には現行ダンスミュージックの厚みが出るようアレンジが施された電子音楽・・・としか呼べない『何か』。
煌びやかさはありませんが、重低音の深度と過度に再構成されたアーメンサンプリングは十分な攻撃性を擁しており、そのリズムパターンもブレイクビーツ一辺倒ではなく、4つ打ちもあればノンビートもあるため、テクノからベースミュージックまで幅広いシーンで通用する仕上がりとなっております。
これまでにフルアルバムが2作品出ておりますが、フィジカルリリースではどちらもCD2枚組仕様と大変なボリュームで、そのどれもがパーティーに於いて機能する曲であることが凄まじい密度と完成度を誇っています。
Soul Music | Special Request on Bandcamp
Belief System | Special Request on Bandcamp
参加レーベルを挙げると90年代から変わらずレイヴシーンの台風の目となっているXL Recordings、及びロンドンの名門クラブ、Fabricの傘下であるHoundstoothとどちらもダンスミュージックの歴史を語る上で重要な存在であることもまた明記しておきます。
これらもまたSpecial Requestの作品に対する信頼度の高さが伝わる出来事なのではないでしょうか。
尚、Special Requestと云うフレーズは1994年にリリースされたTop CatのRequest The Styleと云う曲の冒頭でMCが放っているものが初出です。
レゲエシーンに於いてはアンセム的な扱いの曲で、周辺音楽であるレイヴやジャングルには頻繁にサンプリングされているフレーズの1つなので、まず間違いなく名義の出典はこの曲にあると言って良いでしょう。
Special Requestもまた自身の作品にこのボイスサンプルを多用していますし、何なら本家大元のリミックスまでやってます。
原曲購入の際はこちらからどうぞ。
Request the Style (Original Mix) by Top Cat on Beatport
その他Special Requestのオススメはこちらになります。
ちなみに上記アルバム未収録曲を選びました。
アルバムSoul Musicより前に出されたEPに収録されている1曲。
アーメン乱れ打ちのブレイクス。
シンプルユエに緩急の付け方が映えます。
ちなみにEPのタイトルはHARDCORE EP。強い。
似た路線でもう1曲。
1拍目、2拍目のキックの深度がエグいことになってます。
パッドシンセからレイヴの不穏さ、危うさみたいなものを感じ取れるのが魅力。
ピアノブレイクス混じりの4つ打ち。
展開がハッキリしていてとにかくジャンル遷移に於いて機能します。
これもかなり低音が太いので、良い環境の元、大音量で聴きたいタイプです。
本名義と別名義の合作。
トータル10分を超える大作バリアレックハウス。
レイヴオルガンをメインリフとして据えたテクノ。
出音は現代のものと遜色ない一方でハイハットが異様に前に出てる感じがオールドスクールめいてます。
テクノ主体のセットの中でもガラッと雰囲気を変えたい時とかに活躍するでしょう。
尚、今回の記事を作成するに当たり、参考になった記事が色々ございますのでまとめて紹介致します。
パイレーツ・ラジオ、レイヴ、そしてSpecial Requestについて更に詳しく知りたいと云う場合は是非こちらをご覧ください。
どれも大変勉強になり、そして面白いです。
パイレーツラジオはどのように生まれ発展してきたのか? – FNMNL (フェノメナル)
アーメンブレイクをサンプリングしたベスト・トラック20選【後編】 | Mixmag Japan
Paul Woolfordが語るSpecial Request、Shut Up and Dance、パイレーツラジオ
Amazon.co.jp: パイレーツ・ロック (吹替版)を観る | Prime Video
次週12月04日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。