こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
前回の記事では同人テクノをテーマとして取り上げました。
これらは現在の日本に於けるインディーズテクノシーンの一端と言い換えることもできるわけですが、日本にテクノが根付いたのは今に始まったことではありません。
例えばKagamiやQuadra(a.k.a. Hiroshi Watanabe)が所属していたFrogman Recordsや、Ken Ishii、Co-Fusionが所属していたSublime Recordsと云った日本のテクノレーベルは90年代から存在しており、海外レーベルと比較しても遜色ない多くの名曲を輩出してきました。
(Sublime Recordsについては現在も継続活動中です。)
その中に当Hardonizeとして是非取り上げたいクリエイターがおりますので、前回から引き続き日本人アーティストにスポットを当ててお送りします。
今回ご紹介するのはこの人。
金沢出身のDJ/クリエイター。
現在は東京在住でdextraxのryo氏が率いるLader Productionに所属しております。
当初はナガイエリともう1人を含む3人組グループの名義だったそうですが、程なくして個人名義に。
Disq、Bodyshowerと云ったセルフレーベルから積極的にリリースを重ねる一方、Jeff MillsやSurgeonも所属するジャーマンテクノシーンの名門Tresorとも契約を結んだ出世人です。
この名義での初のリリースは97年のこの曲でした。
重厚で疾走感のあるハードミニマル。
今でこそこのような曲をハードミニマルと呼ぶことができますが、当時はまだ明確なカテゴライズが出来ていない時期でもありました。
ちなみにJeff Millsがこの手のテクノを作っていたのが丁度この時期(The Bellsのリリースが96年)であり、更にインターネットもまだ発展途上だったことを考えると、デビュー作にしてかなり先鋭的なことをやっていたことが伺えます。
そして2000年に出たこのリリースではある1つの方向性を見出します。
当Hardonize連載記事をご覧頂いている方であれば、今これを聴いてパッと思い当たるフシがある筈です。
そう、後年ハードグルーヴと呼ばれる音楽を氏は2000年にして、日本人アーティストとして、既に具現化させていました。
パーカッションとフィルター、そしてブラス系サンプリング、やや速いテンポ、這うようなベースライン、どれも今のハードグルーヴが持つ要素です。
私が知る限りでは当時のファンキーなテクノと云えばKagamiに代表されるディスコっぽいものか、或いはトライバルリズムに寄ったものが殆どで、このようにハードテクノの要素を取り入れたものはほぼ無かったように思えます。
これ以降、Chester Beatty氏はファンキーなハードテクノとしてのカラーをより前面に打ち出したリリースを重ねます。
以下3作品はデジタルリリースされてないものですが、特にオススメしたい曲なので是非レコード屋でDIGして頂きたい。
そんなに入手難度は高くない筈です。
※FLRはKen Ishii氏の別名義。
2001年~2003年辺りのリリースです。
ド直球に派手なハードテクノで、マスタリングこそ今風ではないことを除けば現行の新譜に全く引けを取らない仕上がりです。
3番目に提示した曲は前述のTresorから出たアルバム『Shot Of Love』に収録されており、このアルバムそのものがこういったディスコ×ハードテクノトラックのコンパイルとなっているので心からオススメです。
さて、ここまで氏の作品をずらずらっと挙げてみましたが、実はどれも2000年代の曲でございまして、じゃあ最近はどんな曲を作ってるのかと申しますとこんな感じ。
ハードテクノではないですね。
檸檬は70年代のシティポップをコンセプトに2013年からリリースを開始したプロジェクト。
https://www.facebook.com/lemonrsc/
https://soundcloud.com/lemonrefrain
4枚目のEPとして2015年にリリースされた『君と出逢えば』は同年の『スマ婚』のCMソングとして使用されている他、今年初頭に放送された資生堂による音楽番組『花椿アワー』内にてtofubeats氏にプレイされたりもしました。
(そのトラックリストがこちら。)
このプロジェクトにCheaster Beatty氏はアレンジャーとして参加しております。
上のグイグイ来るハードテクノのイメージからはかけ離れたものがありますが、程良くアーバンでファンクな曲調は松任谷由美辺りが好きな人には超オススメ。
あと毎回ヴァイナルでリリースしていると云うことも書き加えておきます。
クラブミュージックとして取り上げると、去年このようなリリースがありました。
こちらもハードテクノではなく、アシッドハウス。
Cheaster Beatty氏と共に日本のハードテクノシーンを長きに渡り牽引してきたDJ Shufflemaster氏、そして先日来日したシカゴハウスのレジェンド、DJ FUNKとのコラボレーションと云う正にあの時代を彷彿とさせるコラボレーションはちょっとした事件です。
(しかもリミックスにDJ TASAKA。)
と云うわけで音楽活動自体は継続している模様。
去年丁度DJ Shufflemaster氏が未発表曲コンピレーション『Restrospective I 1995-2002』、『Restrospective II 1995-2002』を立て続けにリリースしたこともあり、その中にも硬いテクノがふんだんに含まれていることから、ふとした拍子にCheaster Beatty氏もこの手の曲を作ってくれることに期待を寄せております。
余談ですが、全く現在のハードテクノに関わっていないと云うわけではなく、とあるハードテクノアーティストのマスタリングとしてクレジットに名前が載ってたりするのですが、その話はまた追々。
次週05月23日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。