こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
10月に入りました。
と云うことはHardonize本編まであと1ヶ月切ったことになります。
パーティーインフォメーションはこちら。
「ハードテクノ」を様々な周辺ジャンルも内包し
各々のDJによる解釈でフロアにお届けするハードグルーヴパーティ。
10年の...
設立時にメンバーだったShinichi SasakiことLZDさんをゲストに迎え、Hardonizeの10年間を総括する回になります。
ハードテクノに魅せられた男たちによる6時間、是非お楽しみください。
話変わって、先日「錦糸町音ゲーナイト」&「深夜テクノ-電子音と酒-」番外編 と云うパーティーに出演致しました。
錦糸町にあるLITTLE SAKE SQUARE と云う日本酒バーでたまに行われているパーティーの出張版と云う名目で東京のテクノ界隈(且つ酒好き)の面々が集まった、までは良かったのですが、生憎この日は猛烈な台風が日本を直撃した日でもあり、本来の枠よりパーティー時間が短縮することになってしまいました。
そうなると短時間で1人ずつプレイしても面白くないとのことで急遽出演者7人で3時間のB2B を行うことになりまして。
これが大変楽しかったです。
元よりB2B大好き人間ではあるのですが、予期せず流された曲に対してどう対応するかと考えるのが面白くて仕方ないですね。
しかも今回は自分以外に6人もいて、それぞれ別のアプローチでテクノに向き合っているので、その分広い選曲脳で構える必要があり、それに対してバチッとハマった選曲ができた時は満足感もひとしお。
自分の番以外はブース内と云う特等席で他の人のプレイを見続けられると云うのも堪らなく、開始数分で高まってしまった結果、自分の番まで余裕があってグラスが空の時は必ずおかわりを買いに走ると云う行動を取り続け、気付いたら結構な量を飲んでおりました。
当日の模様について茶箱 店長のエージさんがこのようなツイートをしておりました。
言いえて妙ですね。
ちなみにブース内から見るとこんな感じでした。
デイトレーダーではない。
天候にこそ恵まれませんでしたが、是非またやって欲しいパーティーでした。
良い経験になりました。
さて、今回はちょっと変わり種、と云うか遊び心が過分に含まれたテクノを多く手掛けているアーティストにスポットを当てます。
先のパーティーに於いてもこの人の作った曲はプレイしたのですが、あのような乱戦の場に於いては相当映えるものと思っております。
昔気質のようでいて音は現行のテクノに沿っている、それなのにリズムやウワモノが独特のチョイスで聴いてて面白い。
個人的趣味も相まって大変オススメの人なので、是非お見知りおきを。
Atix
http://www.atix.fr/
https://www.facebook.com/Atix.fanPage
https://soundcloud.com/atix-f
フランス、リヨン出身のアーティスト。
Division Virtuel と云うテクノレーベルのボスで、地元フランスのクリエイターのフックアップを積極的に行いつつ、自身もDJ、及びクリエイターとしてフランス国内で活動しております。
DJを開始したのは1994年で、当時はヒップホップとハードコアの2足の草鞋で活動していたようです。
とはいえ、当時のヨーロッパはレイヴカルチャーの真っ只中にあり、それを通じてブレイクビートやジャングル、ドラムンベース、そしてテクノと様々な音楽から影響を受けることになります。
ちなみに当時から熱心な機材オタクでもあったようで、アーティスト名Atixは1981年にRoland から発売されたドラムマシーン、TR-606 Drumatix が由来となっているそうです。
彼のYoutubeアカウントには100%ハードウェアで構成されたショートテクノライブの模様がアップロードされています。
クリエイターでなくとも参考になる映像です。
Atix Training #3 Live Techno 16/10/2017
VIDEO
リリースに関しては1999年に2作品をリリースしたのちに一旦休止、2006年にDivision Virtuelを立ち上げ、その第1作目で復活を遂げ、今に至ります。
当時のテクノシーンはミニマル、クリックと呼ばれる微弱な音のスタイルがトレンドとなっており、Atixも復活後しばらくの間はこの手の曲を中心に手掛けておりました。
但し活動初期の頃に受けた影響は引き摺っており、なんとか自分の作風に取り入れようと機会を窺っていたフシがあります。
それが具現化するのはCrash Tune Recordingsと云う同じフランスのレーベルから外部客演として招かれた際に提供したトラックでした。
Atix / Bread Bag
一聴して分かるレイヴオルガン。
それが規則的なグルーヴの上で延々と続くこの曲は、当時の彼の作品群の中で1番目立って実験的でした。
このフュージョンに一定の感触を見出した彼はそれまで培ってきたミニマル、テックハウスの技術に別の音楽の要素を融合させていくようになります。
エレクトロ、グライム、プログレッシヴ、ブレイクビートなど、翌年2012年のAtixのリリースは、同じ人が作っているとは思えない程多様性に富んでいます。
そしてその結果彼が出した答えは『アシッド』 でした。
多くのジャンル同士の交配を繰り返し続け、2014年ともなると彼の音楽はリズムも一回り太くなり、ウワモノもインパクトの強いものを多用するようになるなど、ミニマルとは全く別のものに変貌していたのですが、そこに対して更にTB303の独特な音を加えるようになっていきます。
それはレイヴ回帰のようでいてそれだけに留まらない、現行のテクノも見据えつつもハードでアグレッシヴな音を奏でており、ある意味で多くの人を戸惑わせるものとなっておりましたが、中にはそれを魅力と捉える人もいたようです。
その1人がかつてドイツから世界中のエレクトロシーンを引っ掻き回し、同じく2014年頃にレイヴにも傾倒するなど型に嵌らない活動を展開していたBoys Noize です。
彼の運営するBNR Trax からAtixに白羽の矢が立ち、期待に応えたトラックは世界中のアーティストとレーベルから賞賛を受け、数ヶ月間に渡ってトップセールスを記録しました。
Atix / Drop Zone
エレクトロの太いベースがゲットーめいた声ネタとリズムと共に打ち鳴らされるタイトルトラック。
後にBoys NoizeのオフィシャルMIXにも使用されるなど、彼の代表曲として知られるようになりました。
そしてAtixの実験はここで終わりませんでした。
むしろ一層ハードさを増し、更に90年代レイヴのエッセンスを取り入れることで、新たな境地へ足を踏み入れようとしています。
個人的に大きく取り上げたいのは今年の夏に出たこの曲です。
Atix / Circles
これもまたレイヴオルガンものですが、より前面にフィーチャーしている上にボイスサンプリングも当時よく使われていたもの。
そしてビートの鳴りがエグい、且つ4つ打ちではない。
と云った具合に変ミュージック好きの心を2重3重に掴むものとなっております。
こんな曲が2018年に出るんだなと感動すらしてしまいます。
ちなみにこのEPまるごとこんな感じなので、願わくばEPごとチェックして頂きたい逸品です。
The Dome EP from Tripalium Records on Beatport
先述のパーティーで使ったのはコレでした。
と云うか今後も積極的に使っていくものと思われます。
過去のAtixのインタビューに於いて、彼は興味深い発言をしています。
それは、
今後電子音楽は増々使い捨てになる。
つまり、いくつかの曲は僅か数ヶ月しか生きることができない。
そのため自分が曲を演奏したり制作したりするとき、それがどのように古くなるか想像している。
と云う趣旨のものです。
おそらく音楽の消費速度のことについて言及しているものと思われますが、どのように古くなるのか、或いは古くなるとどうなるのかと云うことについて考える人と云うのは珍しいような気がします。
その考えの発端にあるのは彼が最も影響を受けた90年代レイヴであることは想像に難くありません。
あの音楽が今現在どのように受け止められているのか、その延長線上に何があるのか、と云うことについてAtixは真剣に向き合っています。
これまでの実験トラックの多さから考えると必ずしもあの頃と同じ音で勝負するとも思えませんが、レイヴのような熱狂的な音楽の再来を望み、且つそのための努力を惜しまないアーティストです。
僕のようにリアルタイムで90年代を味わえなかった年代からすればそれは悲願でもあるため、大いに期待してしまう存在、それがAtixです。
そんなAtixのオススメはこちら。
Atix / Chromatic
現行テクノに沿ったトラック。
シンセから仄かなレイヴの香り。
ストレートな4つ打ちではない辺りがヒネくれててまた良い。
Atix / Animate
ベースハウスとジャックハウスの合いの子。
テックハウスにも使えそうですし、相互間の繋ぎとしても使えるであろう万能型。
Atix / Sound Phrases
プログレッシヴ~ディープめの曲。
リリース年度が古いことからも分かる通り、初期の作風に近い感じです。
ちなみに、Atixは別名義でSQNCR69と云う名義も持っており、こちらでも精力的にリリースを敢行しております。
トラック名は全て匿名。これは以前紹介したASC の手法に近いものを感じます。
音的にはニアBPM135のハードミニマルが多いため、Hardonize的に紹介すべきはこっちだったかもしれませんね。
SQNCR69 / 180524B
次週10月09日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。
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