今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/08/15

こんばんみ。774muzikです。
前回のTAKくんの記事がCave特集ということで、バトンを渡されたらトライバル大好きおじさんとしては、やるしかねぇ!と。
そこはもう大好物なところなので、ジャンルとしてのトライバルハードテクノを更に掘り進めてみたいと、そう思うわけです。
というわけで、今回はトライバルハードテクノの歴史振り返り回とさせていただきますので、よしなに。

そうそう、その前に。
前出TAKくんの記事で言及されていた、DJ DeroのTechnobatucadaですが、Youtubeに無い状況だったので上げてみました。
(そのうち消されるかもですが。)

かつて僕がBMSを作っていた時代に、99dbという楽曲のRemixをしたことがあるんですが、その中でこの曲からのサンプリングを行っていたりしました(それ以外もほぼサンプリングという酷い曲でしたが・・・)。

BMSJournalというサイトのHyper Remix2というイベントに投稿した楽曲で、僕のBMSでは最初で最後のヒット作(?)といっていいのではないでしょうか。
まぁ、良い思い出ということで。

さて、それでは本題に参りたいと思います。
テクノの歴史において、トライバルを主体としたハードテクノというものが明確に提示されたのは、やはりこの曲のリリースではなかったかと思います。

これ自体は1994年のリリースとなっていますが、収録された盤が「1989年から1991年の間に作られた未リリーストラック集」という趣旨のものであったことを考えると、Beltramの先見性たるや恐ろしいものがあります。
そして、この楽曲のリリースから引き続くように、トライバルハードテクノの源流ともいうべき楽曲群が生まれていきました。Jeff MillsによるAxis~Pourpose Makerからの一連のリリースです。
90年代後半においてリリースされたこれらの楽曲達は、パーカッションによるグルーヴ感を基調としたトライバルテクノというものをスタイルとして確立します。
Jeff Mills – Casa (Axis 1995)

Jeff Mills – Gift Of The Hills (Purpose Maker 1996)

JEFF MILLS – Alarms (Purpose Maker 1996)

Jeff Mills – Automatic (Purpose Maker 1997)

Jeff Mills – L8 (Purpose Maker 1998)

この流れは、Oliver HoやBen SimsといったJeff Millsフォロワーや、Mark Broomといったアーティスト達によって更に拡張されていきます。
Oliver Ho – Metaphysical A1 (Meta 1999)

Ben Sims – Reverser (Theory Recordings 1998)

Mark Broom – New Arrival (Pure Plastic 2000)

聴き返してみると、90年代の終わりから1999年位までのトライバルテクノは、大勢としては、やはり当時のハードテクノの主流であったハードミニマルの文脈上にあったように感じます。
その後、2000年~2003年頃にかけてファンキーテクノが台頭してくるのに呼応する形で、トライバルテクノにも徐々に変化が現れてきます。
すなわち、ひたすらストイックにループするビートから、派手で分厚いビート・大きなブレイク、という形が主流となっていきます。
Ben Sims、Paul Mac、Cave、Marco Bailey、Max Walder、Boriqua Tribez、Axel Karakasisなどなど、作り手も豊富になり、各々が有機的にRemixし合い、各々のレーベルからリリースし、という形で非常に動きも活発化していくと共に、当時かなりの勢力を誇っていたスウェディッシュハードテクノ勢(Adam Beyer、Hertzなど)とも交わり、主流であったファンキーテクノの中でも存在感を増していった印象があります。
レーベルで見ると、Primate、Ingoma(Ben Sims主宰)、MB elektronics(Marco Bailey主宰)、Pure Plastics(Mark Broom主宰)などが活発なリリースをしていました。
今でもテクノおじさん達のアンセムとなっている曲が多数リリースされた時期でもあります。
Ben Sims – Manipulated (Adam Beyer Remix) (Primate Recordings 2000)

Andrew McLauchlan – Love Story (Re-Edit) (Bush 2000)

Gayle San – Chigo (Primate Recordings 2001)

Tomaz vs Filterheadz – Sunshine (Intec Records 2002)

Boriqua Tribez – Pie Ass (Ingoma 2002)

Max Walder ‎– Samba Del Costa (Lupp 2002)

Marco Bailey – Platinium (Roku aka Ben Sims & Mark Broom Remix) (MB elektronics 2003)

Monika Kruse – Latin Lovers (Terminal M 2003‎)

Cave – Street Carnival (Ingoma 2003)

この時期におけるリリースでは、とりわけCaveによる作品が質・量共に際立っていたように感じます。
Ben Simsに才能を見出だされ、彼のレーベルIngomaからデビュー作にして最大のヒット作Street CarnivalをドロップしたCaveは、その後も独特かつハイレベルなトラックを量産し、トライバルテクノを牽引する存在となります。
個人的な話ですが、僕がレコードを買い漁り始めたのがちょうどこの頃でして、リアルタイム感があります。
Cave – Carima (Hydrophonic Recordings 2004)

Cave – Elapid (Wetmusik 2004)

Cave – Tambores (Ingoma 2004)

Cave – Speleon (Ben Sims Remix) (Spilo Records 2005)

そうそう、Marco BaileyとTom HadesによるレーベルRhythm ConvertからDJ Electro OneのFederitiva EPがリリースされたのもこの時期。DJデビューした当時によく使ってました。
DJ Electro One – Medellin (Rhythm Convert 2004)

Caveの最盛期経過後(2006年以降はミニマル的な要素を備えた楽曲に変わっていきます。)、すなわち2005年頃以降の世代でこの路線を踏襲していたアーティストとしては、Carl Falkを推したいところです。
デビュー自体は2003年ですが、彼が特に注目を浴びたのは2005年にHertzの新レーベルHz Trax1番としてリリースされたPish Poshからではないかと思います。
彼の音は、Cave直系の図太い音を維持したものでありつつも、とにかく派手で大げさなブレイクに特徴があります。
1995年から2005年までの10年間で徐々に作り上げられてきたトライバルテクノは、ここに一定の完成を見たといえるでしょう。(実際のところ、1995年から2005年までの10年間における革新のような大きな変化は、以降現在までの約10年間、ほぼ見られないように思われます。)
Carl Falk – Posh (Hz Trax 2005)

Carl Falk – Bullets (Hz Trax 2006)

Carl Falk – Run For Fun (MHX Records 2006)

Carl Falk – Pirate Audio 08B – B1 (Pirate Audio 2006)

Carl Falk – Brazilicious (Patterns 2007)

Carl Falk – Bull-Shot (Patterns 2007)

・・・しかし、この頃から、テクノのメインストリームはミニマルへと移っていき、かつて隆盛を誇ったファンキー/ハードテクノは急速に勢いを失っていくことになります。無論、トライバルも例外ではありませんでした。
今日に至り、David Moleon、Chris Chambersといった、ミニマル台頭以降に頭角を現してきたアーティストが精力的にリリースを重ねているものの、やはりアンダーグラウンド感は否めないものとなってしまっています。
好きなものは好きなのでメインかどうかは関係ないですが、「このジャンルでは食えない」となって、アーティストが絶滅するようなことにはなってほしくないなぁ・・・・・と思っています。

長々と書き連ねてきましたが、トライバルハードテクノに興味を持ってくれる方が少しでも増えてくれればとてもうれしいです。
アーティストのことも曲のことも全然書ききれていませんが、まぁ、スペースの都合ということでご容赦くださいませ。

なお、スタイルの変遷に関する意見は、僕が好んで聴いていた楽曲群からの考察なので、違う角度から見ている方には異論もあるかと思いますが、一意見としてお読みいただければと思います。

以上、774muzikがお送りしました。
次回は、DJ Sangoがお送りします!では!


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/08/10

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

明日から3日間コミックマーケットでございますね。
何度か取り上げておりますようにこういった即売会で頒布される同人音楽の中にもハードテクノと親和性の高い音楽が多数存在しているわけでありまして、紳士淑女に於かれましてはそういった鼓膜を刺激する作品を求めに・・・或いは別の部位を刺激するためのナニかを求めに赴くであろうと推察されます。
本来であれば出展者の情報なども載せていきたかったタイミングではありましたが、私は事前下調べをせず直感で買い物をすることが楽しかったりするので今回は特集的なことはせず、粛々と通常連載の形を取りたいと思います。
もしHardonize的に取り上げたいナイス作品と出会えたら次回ご紹介させて頂きますユエ。

それにしても最近暑い。
毎年のことにも関わらず全く慣れる気配がなく、人間は本当に環境適応できるような進化を遂げているのか不安になる程です。
所感として、夏で褒められる点と言えば賑やかな音楽が似合うことぐらいのものです。サンバとかカーニバル的なやつ。
その手のトライバル的要素がハードテクノと相性が良い点については当連載でも色々な回で触れられておりますが、中でも爆発的ヒットを生み出したアーティストと言われると我々世代のテクノスキーであれば少なくとも半数は共通の回答を述べる筈です。
上述の『カーニバル』で察した方がいらっしゃったら大正解。

【CAVE】

cave

ノルウェー、オスローのDJ/クリエイター。
1998年からDJを開始し、2001年からテクノ~ハウス楽曲のプロデュースも兼ねる。
デビュー作はBen SimsのレーベルIngomaからのリリースと初手から大物に見出されていた感がありますが、このデビュー作がハードテクノに於いてとにかく重要な作品となります。理由は後述。
その後もPrimevil、Intec、Hz Traxなど実力派レーベルは元より、UniversalやMinistry Of Soundと云った大手メジャーレーベルからも次々と作品を輩出し、2005年から2009年にかけてはSpilo Recordsのレーベルオーナーも務め、Boriqua TribezやOrtin Camらと共に2000年代のテクノシーンを牽引しました。
DJとしてもDance ValleyやSonarなど大規模フェスへの参加経験もある傍ら、Fabrik Madrid、Florida 135などの有名クラブにゲストとしても招かれるなど40か国以上でのプレイ経験があります。
尚、2006年にはPaul Mac、Ortin Camらと共に来日もしています。
DJスタイルも3台のターンテーブルを駆使しつつ、エフェクトやDJ用サンプルトラックを重ねることでハードなサウンドを奏でる技巧派ぶり・・・と見ての通りかなりの経歴をお持ちの方です。

さて、上で触れたCAVEのデビュー作にして出世作がこれだったわけです。

Cave / Street Carnival


https://play.google.com/store/music/album?id=B4kuoitw4gjjzplmqwjkkxdg34y&tid=song-Tckxcrvk6hppjgnk4mycavwslfi&hl=en

2003年リリース。
粗っぽいハードミニマルのリズムにパーカッションループが延々続き、極め付けと言わんばかりにパーカッションしか鳴らなくなる特大のインパクトを誇るブレイク。
前出のBen SimsやPaul Macがそれまで行っていた生音っぽいリズムのテクノを更に先鋭化させたこの曲は、新しいスタイルの音楽としてジャンルの垣根を越えて大ヒットを記録します。

具体例を出すとトランスの大御所Tiestoや、

(最初にかかります。)

Armin van Buurenまでもがプレイした程です。

(最後にかかります。)

また、この曲の大流行を受けてこれまたジャンルの垣根を越えてリミックス、ブートレグが出回りました。
ハウス、トランス、シュランツ、果ては同人音楽まで把握できているものだけでも相当な数に上ります。
1つ1つ挙げるとキリがないので割愛しますが、明日がコミックマーケットであることを踏まえて1曲だけご紹介。

DJ TECHNORCH / 復活富士山頂大回転 ~Fujiyama Panic~

国内きってのキワモノハードコア生産者、DJ TECHNORCH氏の2007年の作品。
『ガバ・ミーツ・何か』と云うコンセプトの元に作られたアルバム、『BOSS ON PARADE ~XXX meets GABBA~』に収録されているだけあってあのパーカッションの部分が全部ガバキック。
こういう面白音楽がリリースされるのも同人音楽の強みでございます。

ちなみにこの曲には元ネタがあります。

Sergio Mendes / Fanfarra (Cabua-Le-Le)


https://play.google.com/store/music/album?id=Bmftqejdjvwpvgg2ndgxf7mqruq&tid=song-T4igmyjwwqxdmilkhyc7norji5m

ボサノヴァの火付け役として知られるSergio Mendesによる1992年の曲。
あのブレイクは元は冒頭の部分に当たっていたんですね。
中盤からメロディーが入ってきて大分イメージしやすいサンバっぽくなりますが、打楽器だけの編成は『バトゥカーダ』と云うサブカテゴリーで呼ばれているそうです。
この曲に関しては100名を越える打楽器バンドによって演奏されているとのこと。道理で厚みのあるリズムに聴こえるわけですが、流石ブラジル、サンバにかける情熱がハンパではない。

大分Street Carnivalに関する情報が長くなってしまいました。
ともあれこの曲の出現によってハードテクノはトライバルパーカッションと相性が良いことが世界的に認知され、機械音然とした無機質なハードミニマルとは別のスタイルとして発展していきます。
その1種こそHardonizeでもよくプレイされるファンキーなハードテクノ、ハードグルーヴへと繋がったことは間違いありません。
CAVEはハードテクノの歴史に於いてその進化をアシストしたクリエイターでもあるわけです。

その後CAVEはSpilo Recordsが活動を停止する2009年辺りまでトライバルハードテクノの最前線に立っておりましたが、後年はテックハウスへとシフト、現在は既に音楽活動から完全に身を引いております。
では何をしているのかと云うと、航空会社やビジネススクールの講師を経て自国ノルウェーの広告代理店で事業部長とのこと。超キャリアマン。
上記のように世界的スマッシュヒットを記録し、自身でレーベルを運営する程音楽で成功した人がスパッと活動を終えることは大決断だったように思えますが、その後の事業で更に社会的地位を確立していることは更に驚きですね。
未だに音楽が好きでいる身としては若干の寂しさを覚えますが、彼がハードテクノに与えた功績は大きく、引き継がれた要素は今尚聴くことができます。
様々な意味を込めて偉大なアーティストの1人であることは疑うべくもないでしょう。

そんなCAVEのオススメはこちら。

Hertz / By Myself (Cave Remix)

Cave / Speleon

Balthazar, Jackrock / Rockin’ Dancefloor (Cave Remix)

Cave / Charion

次週08月15日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


大分余談ですが、CAVE同様トライバルテクノの重要人物として挙げられるアーティストにDJ Deroと云う方がおりまして、その方の2作目に当たる作品が上記のFanfarra (Cabua-Le-Le)をサンプリングしたその名もBatucadaと云う曲があります。そのまんまですね。

DJ Dero / Batucada

こちらは1993年リリースとStreet Carnivalより大分前の作品です。
お聴きの通りハードテクノと言うよりはトライバルハウスと分類した方がしっくりくる曲ですが、このBatucadaと云う曲もまたリリース直後から大ヒットとなり、数々のコンピレーションやMIX CDに収録され、挙句DJ Dero本人によるリミックスも大量に作られた代表作でもあります。
その中でStreet Carnivalと同時期である2003年に発売されたTechnobatucadaと云うリメイク作品があり、こちらは大分ハードテクノと親和性の高い仕上がりとなっております。
残念ながら試聴が見つからなかったのでここでは紹介できませんでしたが、もし中古市場で見かけることがありましたら是非入手してみてください。
尚、その後DJ Deroはエレクトロハウス方面へと活動の舵を切っていくのですが、やはりBatucadaは度々リミックスされています。
中でもこの曲のブレイク~明けてからのリフが吹っ切れてアホっぽくて好きです。

Rivera, Dero / I Love Batucada (Dero Animal Drums Mix)

やはりトライバルテクノに関してはその筋に詳しい774Muzikさんに思いっきり解説して欲しいなぁと思うところ。
実はこの人もStreet Carnivalを受けて曲を・・・いや、これ以上僕の口からは言うまい。
別に次週でなくても結構ですので、もし興が乗ったら何卒お願いします。