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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/01/25

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
3週間ぶりにワタクシが担当致します。

先週、『電子音と酒 -Techno SAKE Square- vol.3』に出演致しました。
日頃お世話になっている秋葉原重工CEO、Takayuki Kamiya氏が錦糸町にあるLITTLE SAKE SQUAREと云う日本酒バーで行ったラウンジ系のパーティー。
テクノをはじめとする音楽に耳を傾けつつ100種類以上ある日本酒を飲み放題で一晩中飲める稀有な内容とあって、途中から友達の家で遊んでる感じになっておりました。
タイムテーブルもそれぞれロングセット気味に配置されたこともあり、ゆったりした心構えでDJに臨んでおりましたし。

で、酒の勢いとはやはり怖いもので最後Takayuki Kamiya氏のプレイ中になんとなく飛び入りして突発B2Bを行ったのですが、やったことがJoris VoornのIncidentが元ネタの曲を2人して延々かけ続けると云う意味不明っぷり。
今2018年です。14年前の曲です。まさしくIncident(事案)でした。

さて、Incident程ではないにしろ、当Hardonizeも長いこと続いておりまして予てより告知の通り、次回は10周年パーティーとなります。

2018/02/10 Hardonize #29 -10th Anniversary-
祝10周年!!!!! 細分化する「ハードテクノ」を様々な周辺ジャンルも内包し 各々のDJによる解釈でフロアにお届けするハ...
02月10日まであと2週間程。
ゲストDJにTAKAMI氏、本間本願寺氏、Yamajet氏、更にゲストVJにcoda氏をお招きして皆様のお越しを心よりお待ちしております。

それに伴って前回のワタクシ担当回では10年前のテクノ、ハードテクノシーンについて触れました。

今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/01/11
こんばんは。TAK666です。 レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、 3週間ぶりにワタクシが担当致します...
音のスタイルは勿論のこと、楽曲入手方法や情報発信の場所など様々なものが転換期を迎えた時期であったことがお分かり頂けたかと思います。

その中でレコードショップの撤退について記しましたが、これを書いた後で衝撃的なニュースが耳に入ってきました。


GUHROOVYの実店舗閉店。
渋谷宇田川町で90年代よりハードコアのヴァイナルやCDを中心に取り扱っていたショップで、現行の日本のシーンの形成に間違いなく一役も二役もかってた存在でした。
シュランツにもかなり早くから目をつけて海外からインポートを行ってたり、アーリーレイヴやハードダンスの作品も並んでいたので、テクノに於いても目利きのある方は利用したことがあると思います。
Hardonize的には2016年10月08日にゲストでお招きしたDJ DEPATH氏が所属しているのもここです。

何せ自分が初めてヴァイナルを買ったのがこのお店だったこともあって大変思い入れが深い。
それだけに今回の報せは青天の霹靂と云うか、『あぁまた1つ時代が終わってしまうんだな。』と云う感が拭えません。
閉店は01月31日だそうなので今週末にでも足を運んでみてください。
http://guhroovy.shop-pro.jp/

話を10年前に戻しまして、前回記事で触れたのは主に世界的にこうなってましたと云う流れでした。
ではその頃日本では何が起こっていたのか?と云うのが今回のテーマになります。

題して10年前の日本のテクノ事情、いってみましょう。

度々前回からの引用で恐縮ですが、2008年と云えば世界的に攻撃的なエレクトロテイストの曲が流行した時期でした。
それは日本も例外ではなかったわけです。
中田ヤスタカは例に及ばず(capsule、Perfumeはこの時既にデビュー済)、80KidzやDexpistolsと云ったアーティストが日本のクラブシーンを牽引する存在として知られるようになっていきます。

その爆発力は本当に凄まじく、同じジャンルでもこの時代の前後で曲を聴き比べると全然音の質感が違うものが多々あります。
ダブステップ、ハードコア、ドラムンベース、トランス・・・あらゆるジャンルに影響を及ぼしたターニングポイントとなる出来事でした。

さて、テクノに於いてはミニマルの隆盛期であり、むしろこういった派手な音の流入には否定的な意見も少なからずあったように記憶しております。
但し元からファンクやディスコに慣れ親しんだ層にとっては格好の遊び道具として捉えられたようで、自身のスタンスと合わせて更に尖ったサウンドへ転化させたアーティストもいました。
ご存知、Kagamiです。

Kagami / Guardians Hammer

90年代よりファンキーなテクノを一貫して作り続け、石野卓球氏が主宰していた屋内型テクノフェス、WIREにも数多く出演していたアーティスト。
Tokyo Disco Music All Night Longは今尚名高いテクノアンセムとして不動の位置にいたり、アニメ『交響詩篇エウレカセブン』に使われたTiger Trackもテクノ、アニソンの枠を超えて未だに耳にします。
トライバルリズムに反復リフと云うところまではそれらの曲と共通しているのですが、ディスコ特有のデケデケベースを当時最新鋭のエレクトロサウンドに、ついでにサビのシンセもインパクト重視に置換したところ、音の厚みが大変なことになってます。
ブレイク明ける手前のやたら太いキックの連打部分とかも『何これ!?』って感じでした。
今聴いてもただ楽しく遊んでいるようにしか聴こえないですね。
これがリリースされたCarizmaと云うレーベルは日本のレーベルで現在も活動継続中であり、時代の変化に合わせてテクノとハウスの合間を縫うようなトラックを多く輩出しています。
クロスオーバー系にはもってこい。

余談ですが丁度10年前の2008年01月25日にコールドスリープパーティーを行い、自らの活動に終止符を打った国産テクノレーベル、Frogman Recordsの最後の作品がKagamiのベスト盤でした。
セパレートだけなら各配信サイトから購入できますが、CD版にはラジオ番組仕立てのMIXが収録されており、それがまたユルくも大変ユニークなので断然CD版がオススメです。
Amazon | Better Arts [豪華デジパック仕様 / 2CD] (KGMO001)

残念ながらKagamiは2010年に急逝。これも大事件でしたね・・・。

もう1つ当時のテクノシーンで目立っていた出来事としてビートミュージックとの邂逅があったように思います。

DE DE MOUSE / baby’s star jam

テクノの音使いでありながら4つ打ちではなく、メロディーはポップスに近いと云う異形の音楽の生みの親。
あまりに独特過ぎる楽曲はダンスミュージック好きには勿論のこと、ロックやエレクトロニカ層からの支持も集め、フジロックフェスティバルやカウントダウンジャパンなどの国内大規模フェスへ次々と出演するに至ります。
そんなDE DE MOUSE氏がAvexからのメジャーリリースを果たしたのが2008年でした。

この手のテクノ×ブレイクビーツに関する2008年の出来事として、他にも現在block.fmでCLOUDCASTLE RADIOを運営しているBroken Haze氏がRaid Systemと云うファーストアルバムをリリースしたり、Flying LotusがレーベルBrainfeederを立ち上げ、Warp RecordsからアルバムLos Angelesをリリースしたりと色々挙げることができます。
bandcamp – BROKEN HAZE / raid system
iTunes – Flying Lotus / Los Angeles

あと忘れて欲しくない人としてテクノ×ポップセンスと云う点でこの人の存在があったことを載せておきたい。

imoutoid / はなはず☆じぇーむす!! OP[そうあい?4Seasons]

『アニソンがテクノになる時代なのに何でテクノがアニソンにならないんだ!』と云う突拍子もない発言と共に繰り出されたのがこの曲。
Maltine Recordsより彼の代名詞ともなるEP、ADEPRESSIVE CANNOT GOTO THECEREMONYが出たのは2007年ですが、変名義で更に前から楽曲制作を行っており、17歳の時点で既に正確な作品数は分からない程になってました。
ひょっとしたらSangoさんとか774Muzikさんはその頃に見かけていた可能性がありますね。
Maltine Records – imoutoid / ADEPRESSIVE CANNOT GOTO THECEREMONY

何と云うか、若くして音楽理論の鬼でした。
アニメのセリフ1つ切り出し、その通りに音階を当て嵌め、更に和音にしてフレーズを作ると云うのがあったんですが、あまりにクレイジー過ぎて笑うしかなかった覚えがあります。
しかもそれをあえてオタク的要素を散りばめた電子音楽で表現するアンバランスさは痛快以外の何物でもない。
以下のサイトに彼の作った作品群が並んでおりますので是非辿ってみてください。
imoutoid不完全トラック集

個人的に2008年に彼とパーティーを共にしたことがあり、未だにその記憶が残っているので挙げさせて頂きました。
彼も若くしてこの世を去ってしまったなぁ。

さていよいよ2008年の日本のハードテクノに目を向けてみましょう。

この少し前に当たる頃、それまで日本でハードテクノをプレイしている人たちが結構揃って舵を切った瞬間がありました。
テクノの潮流に沿うようにミニマルを手掛けるようになった人、音楽活動そのものから手を引いた人、理由は様々ですが、前回挙げたThe Adventよろしく全くブレなかった人も存在します。

Go Hiyama / D

九州出身のアーティスト。
ノイズと金属音が入り混じるヘヴィーなハードミニマルを武器にヨーロッパ、アジアなどでギグ経験を持つ、アンダーグラウンドテクノの筆頭的存在です。
この曲も初期Jeff Millsを彷彿とさせる荒削りさを持ちながら圧のあるボトムが鬼気迫る仕上がり。
ストレートな4つ打ちとも言えない曲もかなり多く、前回記事のDJ Boss / 1st Renderedや、前述のテクノ×ビートミュージックに近いものがあります。

ちなみにJin Hiyamaと云う同じ苗字のテクノアーティストがおりますが、この2人は兄弟。
弟のGo Hiyama氏がこのようにハード路線を貫いているのに対し、兄のJin Hiyama氏は綺麗なメロディーを持つ曲を得意としているフシがあります。

更に余談ですが来週地元九州にFrank Muller aka Beroshimaを招いてパーティーを行うんだとか。
Ourd feat Frank Muller & Go Hiyama
近郊の方は是非。

ベテランがシーンを離れる一方、時を同じくして後にシーンの中心となる人物が現れ始めた、いわば新陳代謝の真っ只中と云うのもこの時代の特徴と言えるでしょう。
ちなみに次回Hardonizeにご出演頂く本間本願寺氏も2009年デビューだそうなのでこの中に入りますが、ピタリ2008年デビューとなるとこの人が該当します。

Asagaoaudio / Ring And Portrait

『鈍器で殴ったような音』をコンセプトにKazuya Kawakami氏によって始まったプロジェクト。
重厚で無機質な音の反復はインダストリアルテクノと云う音楽を世に知らしめ、海外でも多くのDJによってプレイされるに至ります。
何より昨年、Aphex TwinがこのRing And Portraitをプレイしたのはかなり話題になりました。
こんな記事も出来上がってたんですね。
letter music – Aphex Twinが国内レーベル「AN」からリリースされたasagoaudioの曲をプレイ

音の質感的に前述のGo Hiyama氏と近いものがあり、Audio Assault、ANなど参加作品に共通点を見出すことができます。
最近だと秋葉原重工のコンピレーションにも楽曲提供を行っており、主宰のTakayuki Kamiya氏曰く、『なかなか悪趣味なトラック』。

勿論、前出のような重たくて暗いハードテクノばかりがハードテクノではありません。
それこそ前置きのIncidentのように綺麗目メロディーを従えたハードテクノも当時からありました。
後にハードグルーヴと呼ばれるファンキーなトラックをこの時既に作っていた方としてはやはりこの人が挙げられます。

Satoshi Imano / Epicurean

過去Hardonizeにもご出演頂いた経験がありますが、その後ELLEGARDENの細美武士が立ち上げたバンド、the HIATUSのリミックスコンテストでグランプリを受賞されたそうです。
Beatport – the HIATUS / Thirst (Satoshi Imano Remix)
テクノのみならず多方面で活躍されているSatoshi Imano氏ですが、ファーストアルバムがこちら、TELEKINESISです。
Take it backのようにトライバルテクノ感を前面に押し出した曲や、Laia Swinging Crowbarのようなキャッチーな反復トラックを経て壮大なシンセがフィルターと共に広がっていく最後のこのEpicureanへ繋がっていく並びはテクノの自由度が何であるかを改めて感じさせてくれます。

今回のHardonizeに絡めると少し前のものになりますが、Surviving An Affairと云う曲の本間本願寺氏によるリミックスが使いどころ満点なので是非押さえておきましょう。
Beatport – Satoshi Imano / Surviving An Affair (Homma Honganji Remix)

最後にご紹介したいのは自分と10年以上縁のある近い人。

yousuke kaga / Setsuna

千葉出身、都内在住のアーティスト。
確か初めて会ったのは茶箱だったような気がします。
今でこそテックハウス、ミニマルの作り手と云う感じがしますが、最初に見たときはブレイクスとハードテクノのライブを行っていました。
その時に頂いたプロモーションCDは家宝の1つにしておりますが、その中に入っていたこのSetsunaと云う曲は140BPMのアレンジでした。
後の2008年にFountain Musicからリリースされたバージョンではこの128BPMにテンポダウンしたものが収録されていたのですが、良い曲はどちらで聴いても良い曲だと思い知らされますね。
今の作風に繋がる繊細な音使いを大胆にこなす、と云うスタンスは当時から発揮されていたように思えます。

ちなみにこのファーストアルバムは現在配信中止となってしまっているのですが、SetsunaだけはHIROSHI WATANABE氏のMIXに収録された経緯から各配信サイトで購入可能です。
recochoku – Developing Vol.3 HIROSHI WATANABE SELECTION

以上、2008年の日本のテクノを振り返る回でした。
懐かしい出来事もあれば、とても10年前とは思えないような発見もあったと思います。
おそらく10年後に2018年を振り返るときも似たようなことを言っているような気がするので、気を引き締めて多方面に注意を払っていきたいと思う次第です。
あわよくば目と耳がもう2~3倍欲しいところですね。脳はただでさえ不足気味なので10個くらい所望したい。
そういうお年玉、お待ちしております。

次週01月30日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/01/11

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
3週間ぶりにワタクシが担当致します。

若干遅ればせながら明けましておめでとうございます。
本年もハードテクノとHardonizeをよろしくお願い致します。

既に告知の通り、Hardonizeは今年で10年を迎えます。
それに伴い、02月10日に行う次回パーティーはそれに相応しい方々をお招きしてお送りする運びとなりました。

2018/02/10 Hardonize #29 -10th Anniversary-
祝10周年!!!!! 細分化する「ハードテクノ」を様々な周辺ジャンルも内包し 各々のDJによる解釈でフロアにお届けするハ...
ゲストDJにはTAKAMI氏、本間本願寺氏、Yamajet氏、更にゲストVJにcoda氏と云う強力な布陣でストイック、ファンキー、キャッチー、エクスペリメンタルなど各種ハードテクノを6時間打ち鳴らします。
各々にスポットを当てた紹介も追って行う予定ですので当連載も引き続きよろしくお願いします。

しかしまぁ10年って相当な年月だなと我ながら感じております。
パーティーが始まった当初である2008年がどんな年であったかパッと語れる人はどのくらいいらっしゃいますかね?
北京オリンピック開催とか、iPhone 3GSが発売されたとか、Sangoさんと僕にとってはストリートファイターIVが稼働した年として印象深い一方、ウチのボスなんかはとらドラ!について嬉々として語り始めそうです。
挙げれば挙げる程それなりに懐かしく思える単語が並びます。

余談ですが先日774Muzikさんが10年前の我々をTwitterに挙げておりました。


みんな若ぇ。

ではハードテクノに的を絞るとこの時期に何があったでしょうか、と云うのが今回のお題目であります。
当連載が『今週のオススメハードテクノ』と銘打っている上で非常にアレなのですが、(オマケに年明けてしまった以上、忘年って時期でもないですが、)こういう時しかできないテーマだと思うので、たまには昔を振り返ってみましょう。

最初に当時のハードテクノを取り巻く環境についてざっくりと。
まず、東京渋谷のレコードショップ衰退はこの時期から始まりました。
象徴的だった出来事と云えば何と言ってもCISCOの閉店でしょう。

2007年12月10日、最終日の様子がこんな感じでした。

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マジで懐かしいですね。
一時期は50店舗以上あると言われた渋谷のレコード屋もこれを皮切りにどんどん減っていきます。
Spice Records、DMR、warszawa・・・どこも大変お世話になりました。
そんな時期にHardonizeは産声を上げたワケです。初っ端から後ろ暗いな!

一方で音楽配信はと云うと2008年時点ではMyspaceが主流。
BandcampやSoundcloudもローンチされていましたが、まだ知名度は低かったように思います。

Beatport、Juno Download、Trackitdownと云ったデータ販売サイトは存在しており、DJのスタイルがアナログからデジタルに変わる丁度真っ只中と云う感じがしますね。
Hardonizeも当初ラップトップでDJしていたの僕1人でしたからね。
これらに追随するように大なり小なりデータ販売サイトが生まれては消えたりもしてました。

Youtubeもありましたがパーティーレポートが殆どで、今みたいにレーベルがアカウントを持って新曲をアップロードと云うのは珍しかったと思います。
片やニコニコ動画ではVocaloid楽曲が頻繁に投稿されており、現在のトップクリエイターの足がかりとなった時代でもあります。
去年が丁度初音ミク10周年でしたね。

そんな感じで、とにかく色々なものが黎明期と成長期の間くらいで揺らいでいた不安定な時代だった気がします。

少し近付いてクラブミュージックに目を向けてみると、Daft Punk時代が帰ってきたかのようなエレクトロの潮流がありました。
当時脚光を浴びていたJustice、Boys Noize、Crookersなどの生音よりもっと露骨な電子音を軸としたサウンドが今のEDMに繋がっているもんだと思っております。
ドラムンベース・バンドであるPendulumがIn Silicoで全英2位のセールスを成し遂げたのも丁度2008年であることも考えると、やっと一般層にクラブミュージックが浸透してきた年と言えなくもないですね。

さて、テクノはと云うとシーン全体が激渋なミニマルに傾倒しておりました。
ハードテクノはその中に於いて最早前時代的な音であると揶揄されたかなり不遇の時代です。
別の見方をするならばそれまで境界が曖昧だったテクノとハードテクノの方向性が乖離を始めた時期と言っても良いかもしれません。

その間で揺れ動いていたリリースとして取り上げたいのがEric SneoとFelix Krocherと云う2大ハードミニマリストの共作アルバム、Connectedです。

Eric Sneo, Felix Krocher / Peaktime

WIRE世代からするとFelix Krocherはシュランツと云う高速ハードテクノを持ち込んだ言わば戦犯のような存在として語り継がれているアーティストであり、本作に於いてもその攻撃性が発揮された曲を書き下ろしているものの、彼らにしては珍しいエレクトロテイストの曲も数曲収録されており、全体を通して聴くとかなり変な(良い意味で)アルバムです。
この手の実験的な音は大好きなこともあって結構印象に残ってますし、ハードテクノとの橋渡しとして使いやすい辺りは流石の一言。
アルバムごとオススメの1枚です。
Connected by Eric Sneo, Felix Krocher on Beatport

もう1つアルバム単位で取り上げたいのがコチラ。こっちはファンキー路線です。

Deckmonsters / Circuito

Christian FischerとDJ Murphyによるユニット、Deckmonstersのアルバム。
Christian Fischerについては過去に連載で触れておりますが、とにかく好きなアーティストです。

今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/06/29
こんばんは。TAK666です。 レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、 2週間ぶりにワタクシが担当致します...
ほぼ全曲に渡ってパーカッションリズムが打ち鳴らされ、そこに彼らが得意とするスペーシーなシンセやラテン系サンプリングがふんだんに持ち込まれたカラーに富んだ一作。
通して聴くとこれはこれで混沌としてますが、より時代の変化を楽しんでいる感じが伝わってきます。

ちなみにこのアルバムが出たのはハードグルーヴ好きにはご存知、Petterns。
この頃ハードグルーヴと云う単語はまだ世に出ていなかったと思いますが、Soul AccessやNaked Lunchと共にレーベルの特色を生かしたリリースを行ってました。
Patterns Presents – Deckmonsters by Deckmonsters on Beatport

上述の通り、時代遅れと揶揄されながらも評価されるくらいにはまだまだハードテクノのリリースはありました。
とりわけストイック路線に於いて評価が高かったのがコチラ。

DJ Boss / 1st Rendered

当時のチャートやトラックリストを漁ってみると結構な確率で見かけます。
キレッキレの金物に変則的なキックのリズムが印象的な怪しいハードミニマル。
DJ Bossは2000年のデビュー当初からこのような『4つ打ちっぽい別の何か、但し音はハードテクノ』と云うトラックを作り続けている変態です。
終わり方も何の仕掛けもなしにバツッと全部の音が消える潔さ。今では考えられませんね。

現在はBandcampに活動場所を移して積極的に曲を配信中。
ヒネくれたハードテクノをお探しの方に大変オススメです。
https://dolegate.bandcamp.com/

上述のDeckmonstersよろしく他ジャンルとのハイブリッドものも結構ありまして、これもそこに含めることができるでしょう。

Odessa SoundFreaks / Barrel Of A Gun

太いビートやメインリフ、そして汗臭い声ネタが肉感的なボディミュージックの香り。
Odessa SoundFreaksは初期ハードグルーヴを支えたクリエイターの1人で、この後もファンキーなハードテクノのリリースに尽力します。
とはいえ、こういう黎明期ならではのフォーマットが確立されてない自由なアイディアはとても好きですね。

また、古くからハードテクノをやっていた人がこの時代に何をリリースしていたかと云うのも気になるところですが、ブレずにハードテクノを作った人、テクノやハウスに舵を切った人、両方いました。
Adam BeyerやUmekなんかは結構ハンドル捌きが早かったような覚えがあります。
そしてブレなかったのがこの人。

The Advent / Blimey

ほぼイメージ通りのThe Adventサウンドと云うかむしろハードダンスに近付いている感さえあります。
重厚感と疾走感のあるボトムに延々と繰り返されるリフ、ブレイクではオールドスクールライクなシンセが鳴り響くなど荒削りなこれぞハードミニマルと云った仕上がり。
シンプル且つインパクトもあって使いやすい。三重丸です。

そして忘れてはいけない、ハードダンス・ミーツ・ハードテクノと云えばコチラ。

Yoji / Techy Techy

制作者自らテックダンスと呼称したこの音楽、前年に当たる2007年に出たSix Hoursに次ぐシングルとしてリリースされました。
タイトルも相まってテックダンスと云う名前が国内で認知される切欠となった曲であるようにも思えます。
PVも謎のインパクトありましたしね。

ちなみにこの曲を含む昔のYoji氏のトラックは長いことデジタル配信されていなかったのですが、去年末に自身の音楽活動25周年を総括したベストアルバムがリリースされたため、ようやく誰でも買えるようになりました。
合計81曲と云う凄まじいボリュームですが、日本のダンスミュージックを語る上で避けて通れない人なのでこれを機に是非。
A Quarter Century Of Yoji Biomehanika [Legacy : Early works 1992-1999] by Yoji Biomehanika on Beatport
A Quarter Century Of Yoji Biomehanika [The Era of Hard Dance 2000-2005] by Yoji Biomehanika on Beatport
A Quarter Century Of Yoji Biomehanika [The Era Of Tech Dance 2007-2013] by Yoji Biomehanika on Beatport

以上、10年前である2008年を振り返る回でした。
今に通じるものもある一方で変化したものもある、そんな10年だったと思います。
なんやかんやでHardonizeが続けてきていられるのも皆様のおかげだと実感しております。ありがとうございます。
それを次回の10周年でバシッと提示できるように望む所存ではありますが、


・・・やはり変化と云うか老化には抗えないので各自筋トレなど欠かさぬように。

次週01月16日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。