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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/10/19

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

2017/11/04(Sat) Hardonize#28
「ハードテクノ」を様々な周辺ジャンルも内包し 各々のDJによる解釈でフロアにお届けするハードグルーヴパーティ! 10周年を目...

Die氏、Bee.Bee.氏をお招きしてお送りする次回Hardonizeまであと半月程。
その間にもDie氏は先日のオランダ凱旋の模様をお伝えするトークイベントに出演されたり、

Bee.Bee.氏はハードスタイル、ハードダンスのビッグゲストを招いてのレジデントパーティーを開催されたり、

同人音楽即売会M3-2017秋の開催も控えていたりします。
当日までバッチリハードテクノ成分を補給した上で臨めば尚楽しい筈。是非各所参加をご検討ください。
Dieさんオランダで買ったガバ流そうかなと申しておりましたが、はてさてどうなることやら。

本連載でもHardonizeで流れそうなトラックをレジデント各々ピックアップしておりますが、先日テクノの新しいスタイルについて知ってしまったので、今回は忘備録的にそちらを取り上げたいと思います。
ハードではないんですが、これが自分のクロスオーバーなスタンスとしてもなかなか興味深かったもので、特に変ミュージック好きの方にご一読頂けると幸いです。

切欠は先日ワタクシが出演させて頂いたDEAD SECT10Nと云うパーティーでした。
暗い、深い音楽にスポットを当て、煌びやかな音は一切排除と云うアンダーグラウンドならではのコンセプトを基に毎回コアなメンバーが集められており、ある人はひたすら渋いドラムンベースを、ある人はエッジのきいたハードコアを流す、まぁ普段聴くことのできないような音楽目白押しで大変楽しかったのであります。
自分はというと最近メインストリームテクノとベースミュージックの交配を行うのが楽しいと思っていたところだったので、BPM100くらいのエレクトロニカからテクノ、グライム、ダブステップと云ったセットで臨みました。
何回か曲名を覗き込まれたりひたすらShazamされたり、しめしめと云った感触。

で、その日の共演者にga_ck_ieさんと云う方がおりまして、その方のセットが大変面白かったのです。
彼は当Hardonize開催場所である早稲田茶箱にてAQUANAUTSと云うドラムンベースのパーティーを行っている方で、DJもジュークやダウンテンポを織り交ぜつつ清涼感溢れるMIXを得意とする印象があります。
ちなみに一般的なドラムンベースのBPMは170~180くらいでして、テクノとは大幅な差異があります。ここまでが前情報。
ga_ck_ieさんはこの日も序盤は音数の少ないドラムンベースを鳴らしていたのですが、これが徐々にBPM130辺りのテクノに変わっていくわけです。それも大幅なテンポシフトをしている感じもなく、シームレスに変わっていく。
その後あろうことかテクノとドラムンベースを行ったり来たりする。やっぱり違和感なく。
前述の通り両者はBPMが大幅に異なるため、DJのセオリーに則って考えれば繋ぐことはできません。

パーティー終了後、ドラムンベースとテクノがMIXできたカラクリを語ってくれたところによると、これらは『グレイエリア』と云うスタイルの音楽なんだそうです。
アルファベットで書くと『Grey Area』。
名前の由来を説明するより先に以下のMIXを聴いて貰った方が良いと思います。

Sam KDC / Samurai Music Official Podcast 27

パッと聴いた感じアンビエントっぽい静かさを持つテクノと云う印象を受けると思います。
ビートパターンがシンプルな4つ打ちでないこともすぐ分かりますが、少し踏み込むと3拍子のパターンになっていることに気付きます。この時点で普通のテクノではありませんね。
で、そこに意識を払いながら聴いていくと中盤でドラムンベースのリズムに切り替わります。ウワモノの速度は変わらず、そして4拍子にシフトするのです。
つまり4拍子ドラムンベースのBPMである170を3/4でとった速度が127.5であり、同じ小節のスケールでビートパターンが展開しているユエに違うBPMの曲同士が繋がる、ドラムンベースとテクノのテンポや要素をクロスオーバーさせながらもどちらともつかない『灰色の領域』、これがグレイエリアの特徴です。

このスタイルの音楽は少なくとも2014年には構成理念が出来上がっていたようです。
発起人については探り当てることができませんでしたが、現在のシーンの中心にいるのはドラムンベースのプロデューサーDJ PreshaとクリエイターASCの両名でしょう。
https://www.facebook.com/preshasamurai
https://www.facebook.com/ASC77
https://soundcloud.com/asc
共にドラムンベースシーンで20年近いキャリアを持ちながらテクノも聴いてきた(DJ Preshaは好きなアーティストにSurgeonを挙げています。)と云う彼らは2015年に合流し、名前もそのままにGrey Areaと云うレーベルを立ち上げます。

grey area
Grey Area Releases & Artists on Beatport

リリース名、トラックタイトル、アーティスト全て匿名と云うある種の哲学を感じさせるようなスタンスをとっており、上記のような特性から手を出しづらい感じも否めませんが、実際に聴いてみるとビートのハッキリした(4拍子ではないので4つ打ちとは呼べないけれど)等間隔リズムもの、ミニマルドラムンベースの名残が見えるもの、アシッドシンセに焦点を当てたものなど、意外と曲調の幅が広いことに驚きます。
中にはテクノとドラムンベースの交配を露骨に意識した曲もありますので1曲だけ取り上げます。

Grey Area 05 / Grey Area 05 #2

試聴部分は3拍子地帯しかありませんが、この後4拍子とも取れる完全な等間隔リズムに変わります。
従ってBPM170のドラムンベースから同リズムスケールでこの曲の3拍子地帯に繋ぎ、等間隔地帯で4拍子メインストリームテクノにシフト、と云ったことが可能になるトラックです。
ワタクシのようなクロスオーバーに重きを置くものとしては願ったり叶ったりのようなシロモノでして、ホント妄想が広がります。

その他グレイエリアのアーティストとして挙げられるのはFelix K、Sam KDC、Lemnaなど。
レーベルとしては前述のDJ Preshaが運営するHoroや、ASCの運営するAuxiliaryなどからリリースされています。
Horo Releases & Artists on Beatport
Samurai Horo Releases & Artists on Beatport
Auxiliary Releases & Artists on Beatport
それまで距離があったように思えたテクノとドラムンベースによる1つの形であると云う印象を受けました。
しかしサウンドサイエンティストたちによる実験の手は緩まず、尚変則的なビートを提示しては『BPMとは何ぞや?』と云う問いを我々に投げかけてくるのです。

その他グレイエリアのオススメはこちら。

ASC / Night Clouds

Sam Kdc / Feardom

Es.tereo, Marlyn / Cutting You Loose

SNTS / Ancestral Reflection

加えて、DJ Preshaがイチオシとして挙げているアーティストに毎月Club Asiaにて行われている老舗ダブステップパーティーBack To Chillのメンバーである日本のEna氏の存在があります。
https://www.facebook.com/enamusictokyo
https://soundcloud.com/ena-iai
速いようにも遅いようにも聴こえるドープなベースミュージックにDJ Preshaから進んでコンタクトを取り、結果自身のレーベルHoroよりBinauralと云うアルバムをリリースするに至ります。

ENA / Antenna

今年08月にもEPがHoroから発表されており、それもまた突然変異的な深度を誇るハーフステップ。

もっとグレイエリアについて知りたいと云う方は以下のFelix Kのインタビューを読むことをオススメします。
複雑なリズムを持つプロデュース楽曲を全てハードウェアで構築していると云う変態。

RA: Machine Love: Felix K

次週10月24日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/10/05

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

Hardonize28_Omote800
次回Hardonizeのゲストが発表となりました。
2017/11/04(Sat) Hardonize#28

Die氏はHONDALADY及びアシッド田宮三四郎として90年代アシッド、レイヴに影響を受けまくったトラックを提供し続けている方です。
DJもまた懐かしくもマニアックでありながらハッピーでアグレッシヴな選曲が強みで、最近のカッチリしたテクノでは味わえない音。
尚、つい最近までベルギー~オランダを巡る『テクノ武者修行』を敢行しており、レコードバッグいっぱいヴァイナルを買ってきたそうで、写真を見るとKLFとかWESTBAMとか往年のジャーマンテクノ、トランスっぽいものがずらり。
テクノの長い歴史の片鱗が窺えそうなプレイに期待が高まります。

片やBee.Bee.氏はハードダンスを軸にギラギラした硬い音を強みとするDJ/クリエイター。
ハードダンスクリエイター集団exbit traxに所属している一方で秋葉原重工のEPにリミキサーとしての参加経験もあり、テクノとハードダンスの融合体のようなトラックが目立ちます。
中心軸としてではなく、エッセンスとしてテクノを取り入れたときにどう出力されるのか、と云ったところでこちらも要注目なゲストとなりました。
あと酔うと面白いことが最近分かりました。

尚、Hardonizeの前週にM3と云う同人音楽即売会があり、両者共何度か出展経験があります。
もしかしたら彼らの最新音源が手に入る機会になるかもしれませんので是非足を運んで作品を手に取ってみてください。

さて、気が付けばもう10月、2017年も残り1/4となりました。
朝は暗く、夜が早く訪れるのを実感するようになってきたこの頃。
こうなるとド派手ファンキーって感じではなく、エモーショナルな音が似合う季節だなぁと思うわけなので、前回のフリーダウンロード回でも取り上げたこの人をご紹介します。

【Norman Andretti a.k.a. Quarill】

Norman Andretti aka Quarill

https://www.facebook.com/quarillakanormanandretti
https://soundcloud.com/quarillakanormanandretti

ハンガリー、ブダペストのDJ/クリエイター。
DJを始めたのは13歳の頃だそうですが、最初はガバ、ハードコアなどの音楽を主にかけていたそうです。
その後テクノに触れ、2011年よりトラック制作を開始。
それまで触れてきたハードコアやシュランツなどのハードビートを糧に新しいテクノのシーンを作りたいと云う目標の元、ファンキーテクノやハードグルーヴをリリースし続けています。
Corrupted Data、Unaffected Recordsなどその界隈では代表的なレーベルからもリリースしており、チェコ、スロベニア、オーストリアなどの周辺東欧からイギリスまでギグをこなすシーンに於ける若手の筆頭みたいな存在です。

また、平行してQuarillと云う名義でも活動しており、こちらはテクノとなぜかドラムンベースをプロデュースする際の名前としている印象です。
テクノについては現行のトレンドを意識するためと云う側面もあるようで、本人曰く最小限の音で構成されたようなテックハウス、ミニマルに寄っているとのことですが、メインストリームの音よりは結構パーカッシヴな要素が強いような気もします。
何だかんだでハードな音楽は好きな様子。

彼が登場した2011年と云うのは丁度ハードグルーヴと云う名称がシーンに定着しつつあった時代でした。
私も当時からハードテクノに触れていたこともあってデビュー作からほぼほぼ通して彼のトラックは聴いてきましたが、メロディアスな曲を作る人が出てきたなと思ったのを覚えています。
トライバルテクノが現行のハードグルーヴの礎となった背景があるので、チャカポコしたリズムに合わせてリフもラテンだったり民族音楽、ディスコっぽいものが当時のトレンドだった分、まるで2000年前後のデトロイティッシュなシンセを想起させるような彼の音使いはかなり新鮮でした。
勿論彼のワークスの中にはディスコサンプリングもあったりしますが、その下に薄くトランシーなシンセが重なっていたりしてどこか哀愁があります。
ざっくばらんに言うとセットの後ろの方で〆に向かう時に凄く向いてます。

こういった曲を作る経緯と云うのは2014年にInjected FusionがNorman Andrettiにインタビューした際に語られています。

Cross Tempos: Artist Interview: Norman Andretti a.k.a Quarill
http://www.crosstempos.com/2014/05/artist-interview-norman-andretti-aka.html

記事の中ではハードグルーヴ、ファンキーテクノを作る時、テックトランスなど他の音楽の要素を加えることに恐れていないと云った発言があり、同時に活動を続けるために新しい世代を意識した上でリスナーの趣味に合わせ、興味を引きつけることも重要であることが語られています。
その表現方法としてハードテクノに要素をプラスする形がNorman Andrettiであり、逆にそこから出来る限り音を削ぎ落としていくのがQuarillとしての活動であるとも語っています。

また、ハンガリーのクラブシーンについても興味深い記述があって、数々の独立したコミュニティが互いに成長を妨げている、みたいな閉塞感を抱えているそうです。
なんでしょうね、本当に90年代のデトロイトテクノそのまんまだなと思ってしまいました。
あの音楽もデトロイトと云う工業地帯に於けるやり場のない鬱憤を発散させるために、ファンクやR&Bの影響を受けたあのようなメロディアスな音楽になったので。
ハンガリーも工業国であり、またユーロに加入できない財政赤字を抱えていると云った事柄も共通しています。

そこに生きるNorman Andrettiが先人たちと同じならば彼もまた反骨精神の塊であり、きっと既存のクラブシーンに風穴を開けてくれる筈です。
上記の通り、テクノ以外にもハウス、トランス、ドラムンベースなど様々な音楽を吸収することに貪欲であるので、きっとまた私たちを驚かせるような曲を聴かせてくれることでしょう。

そんなNorman Andretti a.k.a. Quarillのオススメはこちら。

Norman Andretti aka Quarill / Timewarp

Norman Andretti, Quarill / Heads On Swivel

Mark Rey / Play With Me (Norman Andretti aka Quarill Remix)

Norman Andretti aka Quarill / Rock Tronik

Alejandro Roman / Yeah Baby (Norman Andretti Remix)

先日ご紹介したように彼のSoundcloudアカウントにもフリーダウンロード曲がアップロードされているので、こちらもお見逃しなく。

また、最近彼のYoutubeチャンネルにてDJMIXのスタジオ録画がアップロードされるようになったのでこちらもご紹介。
Quarill名義によるもので、テクノとドラムンベースのMIXがそれぞれ2本ずつあります。

Quarill’s Broadcast Series – Episode 1. (Techno) (02.04.2017)

次週10月10日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。