こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
来週はHardonize本編が行われる週末となります。
予てよりお伝えの通りパーティーインフォメーションはこちら。
Shinichi SasakiことLZDさんを外部客演とし、Hardonizeの原点に立ち返るメンバーでお送り致します。
何卒よろしくお願い致します。
余談ではございますが、翌日は当連載でも度々取り上げている同人音楽即売会、M3が控えております。
回顧も良いけど新譜もねってコトで是非足を運び、多種多様な気鋭の国産音楽に触れて頂きたいと願っております。
と云うことは次のワタクシの担当回はその直後になるワケですね。
なーに、深い意味はありませんよ?
それはさておき、今回のゲストであるLZDさんのDJについて少し触れましょう。
ワタクシが初めて拝見したのは2005年だったと記憶しておりますが、その頃から今に至るまでハードテクノ、それも反復を軸とするハードミニマルと呼ばれる音楽に傾倒しています。
少し前まで自他共に認めるヴァイナル主義で、20年近いキャリアの中から厳選したヴァイナルをターンテーブルに乗せることを至上としていたフシがありました。
それがつい最近、遂にラップトップを使うようになったと本人から聞いたときはビックリしたものです。
恥ずかしながら彼のラップトップスタイルは未見であり、今回のHardonizeで初めて見ることになります。
彼のMixcloudアカウントに当時の録音音源がそのままアップロードされておりました。
RESPONSE by Shin’ichi Sasaki | Mixcloud
当時ワタクシはテクノについてロクに知らない身分であったので、『世の中にはこういう音楽もあるのだな。』と勉強させて頂く構えで聴いていたのを覚えています。
今こうしてテクノについてある程度語ることができるようになったのは毎度聴きに行っていたLZDさんのプレイと、音源を紹介してくれたHardonizeレジデントの774Muzikさんのおかげと言って良いでしょう。
ハードミニマルと呼ばれる音楽が世界的に流行していたと言えるのはせいぜい2005年までのことで、現在はテクノに於けるメインストリームではなくなりましたが、リリースが途絶えることはありません。
アシッドテクノ界隈でヘヴィーウェイト且つ速いリズムは未だにスタイルの1つとして受け継がれていますし、インダストリアル、ノイズ方面に於いても近いものを見出すことができます。
シュランツもハードコアテクノ関連のフェスでしばしばエリアの1つを昼夜ジャックすることも珍しくない程高い人気を誇っています。
逆に、当時ハードミニマルを手掛けていた人がメインストリームテクノを手掛けるとなった際に、その影響を色濃く残した楽曲に仕上がることもままあります。
先日取り上げたハードミニマルの名門Drumcodeからリリースされた新作コンピレーションなんかはその具体例として挙げておきます。
ではそんなLZDさんに因んでハードミニマルの大御所を取り上げるなら誰になるだろうかと考えた時、自分の趣向と相まってうってつけな人物に思い当たってしまいました。
この人の作品はLZDさんや774Muzikさんからテクノについて教わった後、レコード屋に行って掘っているうちに探し当てたもの。
詰まるところワタクシのハードテクノライブラリーの中でも初めて買ったものに近いのです。
そう思ってmp3のファイル情報見たら作成日が2006年になってました。うへぇ。
http://www.ericsneo.de/
https://www.facebook.com/EricSneo
https://soundcloud.com/ericsneo
ドイツ、フランクフルト出身のアーティストであり、20年以上音楽に携わっている大ベテラン。
現在彼が率いているレーベルはMudra Audioで、Axel KarakasisやPeppelinoと云ったハードグルーヴに縁のあるアーティストも所属しております。
彼のキャリアを紐解いていくと、発端に当たる1990年代初頭に彼がやっていたのはDJでもアーティスト活動でもなく、スタジオエンジニア。
つまり音楽が仕事になったわけではなく、仕事として音楽に従事していた側です。
そのため、テクノとは直接関係のない楽曲の制作に関わっていたこともあったワケなのですが、その中で最もインパクトのある作品がコチラです。
ご存知ですか?ご存知ですね。
日本でも音楽ゲームDance Dance Revolution 3rdMixに収録されたことで爆発的ヒットとなったユーロポップの金字塔的作品です。
この、と云うかCaptain Jackの作品全てに於けるサウンドデザインにEric Sneoが勤務していたBeatdisaster Studioがガッツリ関わっています。
これだけでも相当異色の経歴持ちだと云うことが伝わったでしょうか。
完全に余談ですが、Captain Jackっておどるポンポコリンのカバーとかやってたんですね。
今知って笑ってしまいました。
更に余談を重ねるとこの曲の木村カエラによるカバーのバックトラックを手掛けたのは石野卓球で、フィーチャリングにスチャダラパーを起用していると云うものです。謎に豪勢。
おどるポンポコリンは何かしらテクノに通じるものがある模様。
話をEric Sneoに戻しましょう。
彼が本格的に1人のアーティストとして活動を開始したのは1995年からです。
上記のCaptain Jack然り、当初からダンスミュージックを作ることには長けていたようで、最初期のリリースはジャーマントランスでした。
何故かiTunesで買えます。
この頃からこのくらいの速いBPMにアシッドシンセを織り交ぜてみたり、ヨーロピアンレイヴ直系のアップリフティングな作品が多く、程なくしてドイツの有名クラブ、PalazzoのレジデントDJを任されることになります。
以来2016年のPalazzo閉店まで20年間、彼はここでパーティーを続けておりました。
クロージングパーティー後の店内の様子を紹介している動画がこちらです。
こういうのを見るとなかなか切なくなるものがありますね。
2000年に入ると煌びやかな音に対するアプローチは目立たなくなり、リズムをより重くした硬質なトラックの作り手として存在感を強めていきます。
音楽活動を本格化させるようになったのもこの時期からで、その1歩としてこれまでレーコディングスタジオであったBeatdisaster StudioをレコードレーベルBeatdisaster Recordsとして運営するようになりました。
元々プロデューサー気質だったこともあってか、The AdventやChris Liebing、Hertzと云った当時勢いのあったハードテクノ勢を次々招聘、そして自身の楽曲Ciao Bellaがドイツのテクノチャートにランクインさせるなど目覚ましい活躍を見せます。
レゲエのようなアーバンなリフに前のめりなリズムがひた走るハードテクノ。
初出は2003年で、この頃はテクノとトランスが互いの共存点について探り合っていたような印象があります。
その点に於いてEric Sneoはジャーマントランス出身と云う経歴から大きな強みを発揮しており、このような別ジャンルの要素を融合させたような曲が映えたのだと思います。
ちなみに同時期にトランスシーンからテクノに目を付けたアーティストとして大御所Mauro Picottoの存在があります。
1990年代からBXRやNukleuzなど大手レーベルを通して世界中のトランスの発展に寄与してきた彼が、2004年にRiccardo Ferriと組んでリリースした曲は、それまでのトランスのイメージを覆す何とも奇妙なものでした。
New Time New Place (Original Mix) by Mauro Picotto, Riccardo Ferri on Beatport
シーケンスとサウンドの双方に於いてテクノとトランスが混然一体となった賜物。
石野卓球のMIX CD、IN THE BOX ~Live at WOMB Tokyo~ではラストを飾るトラックでもあり、これで知った人もいらっしゃるのではないかと思います。
(当時のCISCOでも盛んにプッシュされていたのを覚えています。)
個人的には大傑作と認識しております。
で、このリミキサーとして起用されたのが紛れもなくEric Sneoでした。
適材適所と云う他ない。
原曲のリフそのままにアグレッシヴなハードミニマルアレンジ。
ヘヴィーウェイトなキックと地を這うベースはEric Sneo節として以降のリリースにもしっかり引き継がれていきます。
余談ですが冒頭で述べた初めて買ったハードテクノの作品はコレでした。
また、Eric Sneoの特筆すべき点としてライブパフォーマンスが挙げられます。
スタジオエンジニアのキャリアが成せる技なのか、彼は多種多様な楽器を演奏することができます。
最も代表的なのはエレクトリックドラムですが、その他にもアコーディオン、パーカッション、ディジュリドゥ、ピアノなど枚挙に暇がありません。
驚くべきはそれらを自身のライブセットに於いて次々に披露するのです。
最も有名な映像はこちらですね。
2011年に出たライブ映像集、Art Of Live @ Nature Oneに収録された一部分をEric Sneo自らYoutubeアカウントで公開したものです。
見ての通り、ハードミニマルの上でドラム叩きまくり、アコーディオン弾きまくり。
バックトラックのコントロール含めて全て1人で行っているのが分かります。
かつてハードテクノに於いてここまでインタラクティヴな演奏をしているアーティストがいたでしょうか。
少なくともワタクシは知りません。
ちなみにこのArt Of Live @ Nature Oneには2010年にWIRE10で来日した際のライブも収録されております。
1時間に満たない短い演奏時間でありながら、やはり多数の楽器を駆使したスタイルだったようで実際に見た人が羨ましい。
レジデント各位は見たんでしょうかね?全員WIRE世代の筈ですが。
現在彼が手がけるトラックはと云うとテンポを落としたメインストリーム系テクノが主流ではありますが、深く硬質なリズムは彼の持ち味として未だ健在です。
加えて上記のインタラクティヴなライブスタイルも継続中であり、4デッキでDJをしながらパッドを叩きまくると云うやはり忙しい演奏を見ることができます。
実は先述のWIRE10の後にも先にも来日経験がないアーティストだったりもします。
ギグのロケーションもヨーロッパに集中しているので、拝見が叶う日は来るのかイマイチ分かりません。
それでもワタクシにとっては実際にテクノに触れる機会を与えてくれたアーティストとして敬意を払っており、また起伏のない音楽として捉えられがちなテクノと云う音楽に分かりやすく波を作る演出に心血を注ぐスタンスには大いに共感します。
今後もユニークな演奏方法や楽曲を以って我々の視覚、聴覚を存分に震わせてくれることでしょう。
そんなEric Sneoのオススメはこちら。
ゲットースタイルのテクノを多く手掛けたことで知られるDJ Rushとの共作。
DJ Rushらしいボイスループに対して淡々とビートが進行するシンプルな作りですが、当時のハードミニマルを体現する曲として最適。
Zafra NegraのSufriendo Por Ellaを元ネタとするMonika Kruseの代表曲をEric Sneoがリミックス。
タイトル通りラテンフレーバーのウワモノに対してボトムが極太のハードミニマル。
今回余談が多くて本当に申し訳ありませんが、つい先々週、土日2日間共出演があった際、何故か両方のパーティーでプレイしてしまいました。
魔が差したとしか。
これも先述のNew Time New Placeよろしく、テクノらしからぬ音が鳴っているハードミニマル。
疾走感のあるハイハットはハードグルーヴに通じるところもあり、ウワモノも相まって用途は富んでいるのではないかと思われます。
最後に最近のメインストリームスタイルの曲を1つ。
リズムに対して3連符で進行するリフが気持ち悪いですね。
全体的に音の重心が下に寄っている辺りがハードミニマル時代の名残を感じさせて、曲調に反してエモくなったりします。
別にワタクシの名前に獣の数字があるからって理由で選んだわけではないですよ。
次週10月23日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。