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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/10/18

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

来週はHardonize本編が行われる週末となります。
予てよりお伝えの通りパーティーインフォメーションはこちら。

2018/10/27 Hardonize #31 -Back to Basic Special-
「ハードテクノ」を様々な周辺ジャンルも内包し 各々のDJによる解釈でフロアにお届けするハードグルーヴパーティ。 10年の...

Shinichi SasakiことLZDさんを外部客演とし、Hardonizeの原点に立ち返るメンバーでお送り致します。
何卒よろしくお願い致します。

余談ではございますが、翌日は当連載でも度々取り上げている同人音楽即売会、M3が控えております。
回顧も良いけど新譜もねってコトで是非足を運び、多種多様な気鋭の国産音楽に触れて頂きたいと願っております。

と云うことは次のワタクシの担当回はその直後になるワケですね。
なーに、深い意味はありませんよ?

それはさておき、今回のゲストであるLZDさんのDJについて少し触れましょう。
ワタクシが初めて拝見したのは2005年だったと記憶しておりますが、その頃から今に至るまでハードテクノ、それも反復を軸とするハードミニマルと呼ばれる音楽に傾倒しています。
少し前まで自他共に認めるヴァイナル主義で、20年近いキャリアの中から厳選したヴァイナルをターンテーブルに乗せることを至上としていたフシがありました。
それがつい最近、遂にラップトップを使うようになったと本人から聞いたときはビックリしたものです。
恥ずかしながら彼のラップトップスタイルは未見であり、今回のHardonizeで初めて見ることになります。

彼のMixcloudアカウントに当時の録音音源がそのままアップロードされておりました。

Shin’ichi Sasaki / RESPONSE


RESPONSE by Shin’ichi Sasaki | Mixcloud

当時ワタクシはテクノについてロクに知らない身分であったので、『世の中にはこういう音楽もあるのだな。』と勉強させて頂く構えで聴いていたのを覚えています。
今こうしてテクノについてある程度語ることができるようになったのは毎度聴きに行っていたLZDさんのプレイと、音源を紹介してくれたHardonizeレジデントの774Muzikさんのおかげと言って良いでしょう。

ハードミニマルと呼ばれる音楽が世界的に流行していたと言えるのはせいぜい2005年までのことで、現在はテクノに於けるメインストリームではなくなりましたが、リリースが途絶えることはありません。
アシッドテクノ界隈でヘヴィーウェイト且つ速いリズムは未だにスタイルの1つとして受け継がれていますし、インダストリアル、ノイズ方面に於いても近いものを見出すことができます。
シュランツもハードコアテクノ関連のフェスでしばしばエリアの1つを昼夜ジャックすることも珍しくない程高い人気を誇っています。

逆に、当時ハードミニマルを手掛けていた人がメインストリームテクノを手掛けるとなった際に、その影響を色濃く残した楽曲に仕上がることもままあります。
先日取り上げたハードミニマルの名門Drumcodeからリリースされた新作コンピレーションなんかはその具体例として挙げておきます。

ではそんなLZDさんに因んでハードミニマルの大御所を取り上げるなら誰になるだろうかと考えた時、自分の趣向と相まってうってつけな人物に思い当たってしまいました。
この人の作品はLZDさんや774Muzikさんからテクノについて教わった後、レコード屋に行って掘っているうちに探し当てたもの。
詰まるところワタクシのハードテクノライブラリーの中でも初めて買ったものに近いのです。
そう思ってmp3のファイル情報見たら作成日が2006年になってました。うへぇ。

Eric Sneo

Eric Sneo
http://www.ericsneo.de/
https://www.facebook.com/EricSneo
https://soundcloud.com/ericsneo

ドイツ、フランクフルト出身のアーティストであり、20年以上音楽に携わっている大ベテラン。
現在彼が率いているレーベルはMudra Audioで、Axel KarakasisPeppelinoと云ったハードグルーヴに縁のあるアーティストも所属しております。

彼のキャリアを紐解いていくと、発端に当たる1990年代初頭に彼がやっていたのはDJでもアーティスト活動でもなく、スタジオエンジニア。
つまり音楽が仕事になったわけではなく、仕事として音楽に従事していた側です。
そのため、テクノとは直接関係のない楽曲の制作に関わっていたこともあったワケなのですが、その中で最もインパクトのある作品がコチラです。

Captain Jack / Captain Jack

ご存知ですか?ご存知ですね。
日本でも音楽ゲームDance Dance Revolution 3rdMixに収録されたことで爆発的ヒットとなったユーロポップの金字塔的作品です。
この、と云うかCaptain Jackの作品全てに於けるサウンドデザインにEric Sneoが勤務していたBeatdisaster Studioがガッツリ関わっています。
これだけでも相当異色の経歴持ちだと云うことが伝わったでしょうか。

完全に余談ですが、Captain Jackっておどるポンポコリンのカバーとかやってたんですね。
今知って笑ってしまいました。

更に余談を重ねるとこの曲の木村カエラによるカバーのバックトラックを手掛けたのは石野卓球で、フィーチャリングにスチャダラパーを起用していると云うものです。謎に豪勢。
おどるポンポコリンは何かしらテクノに通じるものがある模様。

話をEric Sneoに戻しましょう。
彼が本格的に1人のアーティストとして活動を開始したのは1995年からです。
上記のCaptain Jack然り、当初からダンスミュージックを作ることには長けていたようで、最初期のリリースはジャーマントランスでした。

DJ Eric Sneo / Forces Of Nature


何故かiTunesで買えます

この頃からこのくらいの速いBPMにアシッドシンセを織り交ぜてみたり、ヨーロピアンレイヴ直系のアップリフティングな作品が多く、程なくしてドイツの有名クラブ、PalazzoのレジデントDJを任されることになります。
以来2016年のPalazzo閉店まで20年間、彼はここでパーティーを続けておりました。
クロージングパーティー後の店内の様子を紹介している動画がこちらです。

こういうのを見るとなかなか切なくなるものがありますね。

2000年に入ると煌びやかな音に対するアプローチは目立たなくなり、リズムをより重くした硬質なトラックの作り手として存在感を強めていきます。
音楽活動を本格化させるようになったのもこの時期からで、その1歩としてこれまでレーコディングスタジオであったBeatdisaster StudioをレコードレーベルBeatdisaster Recordsとして運営するようになりました。
元々プロデューサー気質だったこともあってか、The AdventChris LiebingHertzと云った当時勢いのあったハードテクノ勢を次々招聘、そして自身の楽曲Ciao Bellaがドイツのテクノチャートにランクインさせるなど目覚ましい活躍を見せます。

Eric Sneo / Ciao Bella

レゲエのようなアーバンなリフに前のめりなリズムがひた走るハードテクノ。
初出は2003年で、この頃はテクノとトランスが互いの共存点について探り合っていたような印象があります。
その点に於いてEric Sneoはジャーマントランス出身と云う経歴から大きな強みを発揮しており、このような別ジャンルの要素を融合させたような曲が映えたのだと思います。

ちなみに同時期にトランスシーンからテクノに目を付けたアーティストとして大御所Mauro Picottoの存在があります。
1990年代からBXRNukleuzなど大手レーベルを通して世界中のトランスの発展に寄与してきた彼が、2004年にRiccardo Ferriと組んでリリースした曲は、それまでのトランスのイメージを覆す何とも奇妙なものでした。

Mauro Picotto & Riccardo Ferri / New Time New Place


New Time New Place (Original Mix) by Mauro Picotto, Riccardo Ferri on Beatport

シーケンスとサウンドの双方に於いてテクノとトランスが混然一体となった賜物。
石野卓球のMIX CD、IN THE BOX ~Live at WOMB Tokyo~ではラストを飾るトラックでもあり、これで知った人もいらっしゃるのではないかと思います。
(当時のCISCOでも盛んにプッシュされていたのを覚えています。)
個人的には大傑作と認識しております。

で、このリミキサーとして起用されたのが紛れもなくEric Sneoでした。
適材適所と云う他ない。

Mauro Picotto & Riccardo Ferri / New Time New Place (Eric Sneo Remix)

原曲のリフそのままにアグレッシヴなハードミニマルアレンジ。
ヘヴィーウェイトなキックと地を這うベースはEric Sneo節として以降のリリースにもしっかり引き継がれていきます。

余談ですが冒頭で述べた初めて買ったハードテクノの作品はコレでした。

また、Eric Sneoの特筆すべき点としてライブパフォーマンスが挙げられます。
スタジオエンジニアのキャリアが成せる技なのか、彼は多種多様な楽器を演奏することができます。
最も代表的なのはエレクトリックドラムですが、その他にもアコーディオン、パーカッション、ディジュリドゥ、ピアノなど枚挙に暇がありません。
驚くべきはそれらを自身のライブセットに於いて次々に披露するのです。
最も有名な映像はこちらですね。

Eric Sneo presents ART OF LIVE @ Nature One 2009

2011年に出たライブ映像集、Art Of Live @ Nature Oneに収録された一部分をEric Sneo自らYoutubeアカウントで公開したものです。
見ての通り、ハードミニマルの上でドラム叩きまくり、アコーディオン弾きまくり。
バックトラックのコントロール含めて全て1人で行っているのが分かります。
かつてハードテクノに於いてここまでインタラクティヴな演奏をしているアーティストがいたでしょうか。
少なくともワタクシは知りません。

ちなみにこのArt Of Live @ Nature Oneには2010年にWIRE10で来日した際のライブも収録されております。
1時間に満たない短い演奏時間でありながら、やはり多数の楽器を駆使したスタイルだったようで実際に見た人が羨ましい。
レジデント各位は見たんでしょうかね?全員WIRE世代の筈ですが。

現在彼が手がけるトラックはと云うとテンポを落としたメインストリーム系テクノが主流ではありますが、深く硬質なリズムは彼の持ち味として未だ健在です。
加えて上記のインタラクティヴなライブスタイルも継続中であり、4デッキでDJをしながらパッドを叩きまくると云うやはり忙しい演奏を見ることができます。

実は先述のWIRE10の後にも先にも来日経験がないアーティストだったりもします。
ギグのロケーションもヨーロッパに集中しているので、拝見が叶う日は来るのかイマイチ分かりません。
それでもワタクシにとっては実際にテクノに触れる機会を与えてくれたアーティストとして敬意を払っており、また起伏のない音楽として捉えられがちなテクノと云う音楽に分かりやすく波を作る演出に心血を注ぐスタンスには大いに共感します。
今後もユニークな演奏方法や楽曲を以って我々の視覚、聴覚を存分に震わせてくれることでしょう。

そんなEric Sneoのオススメはこちら。

Eric Sneo, DJ Rush / Beatboxx

ゲットースタイルのテクノを多く手掛けたことで知られるDJ Rushとの共作。
DJ Rushらしいボイスループに対して淡々とビートが進行するシンプルな作りですが、当時のハードミニマルを体現する曲として最適。

Monika Kruse / Latin Lovers (Eric Sneo Forward Mix)

Zafra NegraのSufriendo Por Ellaを元ネタとするMonika Kruseの代表曲をEric Sneoがリミックス。
タイトル通りラテンフレーバーのウワモノに対してボトムが極太のハードミニマル。

今回余談が多くて本当に申し訳ありませんが、つい先々週、土日2日間共出演があった際、何故か両方のパーティーでプレイしてしまいました。
魔が差したとしか。

Eric Sneo / Morgasm

これも先述のNew Time New Placeよろしく、テクノらしからぬ音が鳴っているハードミニマル。
疾走感のあるハイハットはハードグルーヴに通じるところもあり、ウワモノも相まって用途は富んでいるのではないかと思われます。

Eric Sneo / Number Of The Beast

最後に最近のメインストリームスタイルの曲を1つ。
リズムに対して3連符で進行するリフが気持ち悪いですね。
全体的に音の重心が下に寄っている辺りがハードミニマル時代の名残を感じさせて、曲調に反してエモくなったりします。
別にワタクシの名前に獣の数字があるからって理由で選んだわけではないですよ。

次週10月23日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/10/04

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

10月に入りました。
と云うことはHardonize本編まであと1ヶ月切ったことになります。
パーティーインフォメーションはこちら。

2018/10/27 Hardonize #31 -Back to Basic Special-
「ハードテクノ」を様々な周辺ジャンルも内包し 各々のDJによる解釈でフロアにお届けするハードグルーヴパーティ。 10年の...

設立時にメンバーだったShinichi SasakiことLZDさんをゲストに迎え、Hardonizeの10年間を総括する回になります。
ハードテクノに魅せられた男たちによる6時間、是非お楽しみください。

話変わって、先日「錦糸町音ゲーナイト」&「深夜テクノ-電子音と酒-」番外編と云うパーティーに出演致しました。
錦糸町にあるLITTLE SAKE SQUAREと云う日本酒バーでたまに行われているパーティーの出張版と云う名目で東京のテクノ界隈(且つ酒好き)の面々が集まった、までは良かったのですが、生憎この日は猛烈な台風が日本を直撃した日でもあり、本来の枠よりパーティー時間が短縮することになってしまいました。
そうなると短時間で1人ずつプレイしても面白くないとのことで急遽出演者7人で3時間のB2Bを行うことになりまして。

これが大変楽しかったです。

元よりB2B大好き人間ではあるのですが、予期せず流された曲に対してどう対応するかと考えるのが面白くて仕方ないですね。
しかも今回は自分以外に6人もいて、それぞれ別のアプローチでテクノに向き合っているので、その分広い選曲脳で構える必要があり、それに対してバチッとハマった選曲ができた時は満足感もひとしお。
自分の番以外はブース内と云う特等席で他の人のプレイを見続けられると云うのも堪らなく、開始数分で高まってしまった結果、自分の番まで余裕があってグラスが空の時は必ずおかわりを買いに走ると云う行動を取り続け、気付いたら結構な量を飲んでおりました。

当日の模様について茶箱店長のエージさんがこのようなツイートをしておりました。


言いえて妙ですね。

ちなみにブース内から見るとこんな感じでした。


デイトレーダーではない。

天候にこそ恵まれませんでしたが、是非またやって欲しいパーティーでした。
良い経験になりました。

さて、今回はちょっと変わり種、と云うか遊び心が過分に含まれたテクノを多く手掛けているアーティストにスポットを当てます。
先のパーティーに於いてもこの人の作った曲はプレイしたのですが、あのような乱戦の場に於いては相当映えるものと思っております。
昔気質のようでいて音は現行のテクノに沿っている、それなのにリズムやウワモノが独特のチョイスで聴いてて面白い。
個人的趣味も相まって大変オススメの人なので、是非お見知りおきを。

Atix

Atix
http://www.atix.fr/
https://www.facebook.com/Atix.fanPage
https://soundcloud.com/atix-f

フランス、リヨン出身のアーティスト。
Division Virtuelと云うテクノレーベルのボスで、地元フランスのクリエイターのフックアップを積極的に行いつつ、自身もDJ、及びクリエイターとしてフランス国内で活動しております。
DJを開始したのは1994年で、当時はヒップホップとハードコアの2足の草鞋で活動していたようです。
とはいえ、当時のヨーロッパはレイヴカルチャーの真っ只中にあり、それを通じてブレイクビートやジャングル、ドラムンベース、そしてテクノと様々な音楽から影響を受けることになります。
ちなみに当時から熱心な機材オタクでもあったようで、アーティスト名Atixは1981年にRolandから発売されたドラムマシーン、TR-606 Drumatixが由来となっているそうです。
彼のYoutubeアカウントには100%ハードウェアで構成されたショートテクノライブの模様がアップロードされています。
クリエイターでなくとも参考になる映像です。

Atix Training #3 Live Techno 16/10/2017

リリースに関しては1999年に2作品をリリースしたのちに一旦休止、2006年にDivision Virtuelを立ち上げ、その第1作目で復活を遂げ、今に至ります。
当時のテクノシーンはミニマル、クリックと呼ばれる微弱な音のスタイルがトレンドとなっており、Atixも復活後しばらくの間はこの手の曲を中心に手掛けておりました。
但し活動初期の頃に受けた影響は引き摺っており、なんとか自分の作風に取り入れようと機会を窺っていたフシがあります。
それが具現化するのはCrash Tune Recordingsと云う同じフランスのレーベルから外部客演として招かれた際に提供したトラックでした。

Atix / Bread Bag

一聴して分かるレイヴオルガン。
それが規則的なグルーヴの上で延々と続くこの曲は、当時の彼の作品群の中で1番目立って実験的でした。
このフュージョンに一定の感触を見出した彼はそれまで培ってきたミニマル、テックハウスの技術に別の音楽の要素を融合させていくようになります。
エレクトロ、グライム、プログレッシヴ、ブレイクビートなど、翌年2012年のAtixのリリースは、同じ人が作っているとは思えない程多様性に富んでいます。

そしてその結果彼が出した答えは『アシッド』でした。
多くのジャンル同士の交配を繰り返し続け、2014年ともなると彼の音楽はリズムも一回り太くなり、ウワモノもインパクトの強いものを多用するようになるなど、ミニマルとは全く別のものに変貌していたのですが、そこに対して更にTB303の独特な音を加えるようになっていきます。
それはレイヴ回帰のようでいてそれだけに留まらない、現行のテクノも見据えつつもハードでアグレッシヴな音を奏でており、ある意味で多くの人を戸惑わせるものとなっておりましたが、中にはそれを魅力と捉える人もいたようです。
その1人がかつてドイツから世界中のエレクトロシーンを引っ掻き回し、同じく2014年頃にレイヴにも傾倒するなど型に嵌らない活動を展開していたBoys Noizeです。
彼の運営するBNR TraxからAtixに白羽の矢が立ち、期待に応えたトラックは世界中のアーティストとレーベルから賞賛を受け、数ヶ月間に渡ってトップセールスを記録しました。

Atix / Drop Zone

エレクトロの太いベースがゲットーめいた声ネタとリズムと共に打ち鳴らされるタイトルトラック。
後にBoys NoizeのオフィシャルMIXにも使用されるなど、彼の代表曲として知られるようになりました。

そしてAtixの実験はここで終わりませんでした。
むしろ一層ハードさを増し、更に90年代レイヴのエッセンスを取り入れることで、新たな境地へ足を踏み入れようとしています。
個人的に大きく取り上げたいのは今年の夏に出たこの曲です。

Atix / Circles

これもまたレイヴオルガンものですが、より前面にフィーチャーしている上にボイスサンプリングも当時よく使われていたもの。
そしてビートの鳴りがエグい、且つ4つ打ちではない。
と云った具合に変ミュージック好きの心を2重3重に掴むものとなっております。
こんな曲が2018年に出るんだなと感動すらしてしまいます。
ちなみにこのEPまるごとこんな感じなので、願わくばEPごとチェックして頂きたい逸品です。
The Dome EP from Tripalium Records on Beatport

先述のパーティーで使ったのはコレでした。
と云うか今後も積極的に使っていくものと思われます。

過去のAtixのインタビューに於いて、彼は興味深い発言をしています。
それは、

今後電子音楽は増々使い捨てになる。
つまり、いくつかの曲は僅か数ヶ月しか生きることができない。

そのため自分が曲を演奏したり制作したりするとき、それがどのように古くなるか想像している。

と云う趣旨のものです。

おそらく音楽の消費速度のことについて言及しているものと思われますが、どのように古くなるのか、或いは古くなるとどうなるのかと云うことについて考える人と云うのは珍しいような気がします。
その考えの発端にあるのは彼が最も影響を受けた90年代レイヴであることは想像に難くありません。
あの音楽が今現在どのように受け止められているのか、その延長線上に何があるのか、と云うことについてAtixは真剣に向き合っています。
これまでの実験トラックの多さから考えると必ずしもあの頃と同じ音で勝負するとも思えませんが、レイヴのような熱狂的な音楽の再来を望み、且つそのための努力を惜しまないアーティストです。
僕のようにリアルタイムで90年代を味わえなかった年代からすればそれは悲願でもあるため、大いに期待してしまう存在、それがAtixです。

そんなAtixのオススメはこちら。

Atix / Chromatic

現行テクノに沿ったトラック。
シンセから仄かなレイヴの香り。
ストレートな4つ打ちではない辺りがヒネくれててまた良い。

Atix / Animate

ベースハウスとジャックハウスの合いの子。
テックハウスにも使えそうですし、相互間の繋ぎとしても使えるであろう万能型。

Atix / Sound Phrases

プログレッシヴ~ディープめの曲。
リリース年度が古いことからも分かる通り、初期の作風に近い感じです。

ちなみに、Atixは別名義でSQNCR69と云う名義も持っており、こちらでも精力的にリリースを敢行しております。
トラック名は全て匿名。これは以前紹介したASCの手法に近いものを感じます。
音的にはニアBPM135のハードミニマルが多いため、Hardonize的に紹介すべきはこっちだったかもしれませんね。

SQNCR69 / 180524B

次週10月09日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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