こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
前回担当直後、774muzikさんがap bank fesに行き、SangoさんがRe:animation 12に出演していたタイミングと同時期にワタクシはワタクシでruralと云うフェスに遊びに行っておりました。
卓越した審美眼で選ばれたテクノを中心とするラインナップにより、山頂のキャンプ場で三日三晩、音楽が鳴り続けるパーティー。
Resident Advisorが毎度発表している世界のベストフェスティバル (2018年07月版)にもランクインするほどその支持は厚く、今回で開催10年目を迎える記念すべき回でもありました。
延々と同じ音がかかっていると思いきや、朝方はアンビエントやエレクトロニカがかかり、昼から夕方にかけてはテックハウスのようなグルーヴ感のある選曲を持ち味としたDJが腕を振るい、日が暮れるとメインストリーム系テクノの硬質な音が山に鳴り響くのでそれぞれに特色がありましたし、何より日の出~日の入りと云う大自然の映像演出が格別。
2日目の深夜帯なんか霧まで発生してスモーキーなフロアになってましたし、そこにAkiko Kiyama氏、ENA氏の極めて低音に寄ったベース系エレクトロニカは、まるで宇宙との交信か世界の終焉。
キャンプエリアがステージに近いところにあり、持ち寄った食材を調理しながらテクノを聴く、と云うのもなかなか現実離れしており、週明け日常に戻るのが大変でした。
ほぼ出演者に関する前調べをせずに行ったので、ハードテクノ的に重要人物であるOliver Hoのプレイとか見逃してしまったのですが(後で聴いたらハードミニマルとかかかっていたらしいですね。)、完全初見で非常に印象に残っているのはRNSTと云う3人組バンドの演奏でした。
2012年結成。
リズムマシン、ギター、ベースをそれぞれ1人ずつ担当し、ミニマルやエレクトロニカを軸とした楽曲を展開しており、ruralや秘境祭など野外フェスにも参加経験のある気鋭のアーティスト。
これだけ読むと何となく難解なイメージを抱きがちですが、聴いてみると意外にポップと云うか、音の1つ1つが綺麗で爽やかな感じを受けます。
最近リリースされた新作EPにはHiroshi Watanabe氏とKoyas氏をリミキサーに起用しており、テクノの側面から見ても重要なバンドであることが窺えるでしょう。
(余談ですがマスタリングにROVO及びDub Squadの益子樹氏が関わっていて、ジャムバンド好きとしては大いに納得してしまいました。)
こちらのBandcampのページから購入が可能となっております。
大変オススメです。
さて、そんな最新のメインストリームテクノにどっぷり浸かった沼からまだ抜け出せていないので、せめてハードテクノとの親和性があり、且つレイヴの残り香もあるようなアーティストを紹介したいと思います。
どうでも良いことですが、荒御霊のKouki Izumi氏もイチオシの人だったりします。
https://www.facebook.com/officialalanfitzpatrick
https://soundcloud.com/alanfitzpatrick
イギリス南部、サウサンプトンのDJ/クリエイター。
2008年に彗星の如くテクノシーンに現れ、その後立て続けにEPのリリースを行ったことで急速に知名度を上げることに成功します。
その間にサインしたレーベルはJohn DigweedによるBedrock Records、Len Fakiが長を務めるFigure、そしてAdam Beyerが率いるハードミニマルの名門Drumcodeなど、どれも大物。
自身でもWe Are The Braveと云うレーベルを運営することになるのですが、かつてダブステップに変化を齎し、世界中に拡散させた存在であるSkreamのリリースをプロデュース(しかも最近)すると云う、こちらも大物食いを成し遂げます。
彼の音楽性については彼自身がスキマ産業であることを明言しています。
Alan Fitzpatrickの特徴とも言える重く肉感的なビートに、ファンキーなベースラインやオールドスクールレイヴのリフを融合させた大胆な楽曲群は新規のファンを獲得するだけに留まらず、旧来のテクノヘッズをも魅了し、世界中の名高いクラブ、フェスに招聘されることになりました。
ヨーロッパは元より北米、南米、アフリカ、そしてアジアと忙しくギグをこなしております。
日本にも2012年に日本ツアーと云う形で1回、2013年にも1回、来日を果たしております。
特に2013年はBen Simsと並んでの出演だったこともあり、広く話題になったのを覚えております。
なぜここまでダイナミックなトラックを生み出すことができるのか、と云うことについて昨年のインタビューでAlan Fitzpatrick自身が回答しておりました。
(記事の表題が『We Are The Rave』なのが個人的にグッときますね。)
彼はイギリス生まれと云うことで、やはり1990年代初期のオールドスクール・レイヴ文化から受けた影響が今も残っているそうです。
SlipmattのMIXに触発され、Aphex TwinのSelected Ambient WorksやGoldieのTimelessなどは電子音楽として完璧であると評しているのが意外と言えば意外ですが、この辺りの音楽が当時どれほど斬新な音楽であったか窺い知ることができるとも言えます。
自分の青春時代に聴いた曲はいつ聴いても気持ちが洗われる、と云う人がいますが、どうやら彼もそう云ったタイプのようでした。
しかし彼が有名になった頃にはリスナーにも若い層が増えており、当時のロンドンレイヴシーンがどれほど(良い意味で)ショッキングなものであったのか知らない世代が大方であることに気付きます。
それを逆手に取って彼らにとって斬新であるよう、且つ自身の趣味も兼ねたスタイルを追求していく道を選んだのだそうです。
テクノに於いて大袈裟なドロップやレイヴ・スタブ、シンセサイザーのメロディーなどは時に敬遠されることもあります。
なぜならそれはテクノと云うよりトランスの要素が強く出てしまうためです。
彼自身その点は自覚していましたが、同時に新しい音や新しいアイデアを出し、定型的なパターンに固執していないものを作ることの重要性も分かっていたため、あえてDrumcodeからのリリースで派手な展開を見せる曲の着手に乗り出しました。
これが後にPrometheusのような壮大なスケールのテクノの誕生に繋がったのだと語っています。
当時この手のサウンドを作っていたのはAlan Fitzpatrick以外見当たらなかったそうですが、今では多くの後に続くクリエイターが出てきており、それは彼のプロデュースに於いて最も誇らしいことだそうです。
Alan Fitzpatrickはまた、自国イギリスのクラブミュージックカルチャーの保護にも尽力してきました。
国営ラジオプログラム、BBC Radio 1 Essential Mixや、名門クラブfabric営業再開のためのパーティーに参加するなどがそれに当たります。
一時期は2005年から(今も)続いているJadedと云う老舗パーティーの4半期ごとに呼ばれる準レギュラー的なポジションにいたこともあり、ロンドンの耳の超えたリスナーに向けて特別なロングセットを披露すると云う試みも行っていました。
勿論Drumcodeのレーベルパーティーにも数多く出演し、ボスであるAdam Beyerと共にイギリスのテクノを全世界に向けて今も発信し続けています。
作り上げるリズム同様のタフな精神を武器に古きに対して経緯を払い、新しきに対して果敢に挑戦するアーティストと言えるでしょう。
独創的であり、独走的でもある彼の音楽、是非触れてみてください。
そんなAlan Fitzpatrickのオススメ楽曲がこちら。
オールドスクールレイヴと現代テクノのフュージョン。
彼の作曲群の中でもズバ抜けて尖っている印象があります。
一聴して分かるレイヴクラシックサンプリング。
サイドMCの入ったテクノと云う意味でも大変貴重なトラックです。
ちなみに去年のリリース。
Drumcodeの人とくればこれは取り上げないとって感じのリミックスです。
原曲要素はほぼフィルの部分だけのような気がしなくもない、ある意味ストレートなアレンジ。
レトロなシンセリードがゲームっぽい印象を受ける彼の初期作品。
以前紹介したFilterheadzに近いものがありますね。
かなり意外な印象を受けるプログレッシヴ風トラック。
本当にたまにですけど、こういう曲も作ってたりします。幅が広い。
パーティー終わり付近で流れると良い感じになれそう。
次週07月31日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。