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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/06/29

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

Hardonize#27も来週に迫ってまいりました。ゲストに五条狐萩氏、かわくぼ氏をお招きし、6時間たっぷりハードテクノをお届けします。
そしてその前週となる07月01日、及び07月02日には私20代最後となるセルフオーガナイズパーティー、#20代最後のロングアワーズが控えておりまして、選曲にてんてこまいと云うのが近況でございます。

こういうことを企画するとつい自分の経歴を振り返ってしまうのですが、私がハードテクノと云う音楽を知ったのは当Hardonizeレジデントの774muzikさんに色々音源を聴かせて貰ったのが切欠です。
確か当時のハードテクノはトライバル系が結構トレンドになっていて、CaveのStreet Carnivalとかが大流行した余波がまだ残っていた時期に当たります。
一方でトランスやハードダンスのDJ達が派手なテクノを自身のプレイに取り入れたりと云ったこともあり、テクノを専門としないレコード屋にもハードテクノが置かれていると云う、考えようによっては幸運な時代でした。
これらトランス的なウワモノやグルーヴを重視したこれらの音楽が後にハードグルーヴと名が付くわけですが、今回スポットを当てるのはその時代からファンキーなハードテクノを作っていた人です。

【Christian Fischer】

Christian Fischer

https://www.facebook.com/DJChristianFischer
https://soundcloud.com/bryzant

テクノ大国ドイツ、ライプツィヒのアーティスト。
1999年にクリエイターとしてデビューし、翌年にはDefinition Recordsを創設。
Thomas P HeckmannやArkus P.など現在も活動を継続しているアーティストが集うハードミニマルのレーベルとして注目されるようになります。
ちなみに彼がデビューしたStatik Entertainmentと云うレーベルは後年、彼が新しく立ち上げるBryzantの傘下に入ると云う下剋上みたいなことが起こります。
Bryzantについては後述します。

上述の通り、当初はハードミニマルのクリエイターとして登場しました。
当時の音源だとこんな感じですね。

Christian Fischer / Bloodshedding

バウンシーなベースに怪しげなリフ、伸び気味ハイハットも小気味良いトラック。
90年代テクノのエッセンスを踏襲しつつ、テクノのカテゴリーとして定着しつつあった『ハード』と云うキーワードも取り入れた彼の作品は多くのトップクリエイターの支持を集め、
後年HertzやEric Sneoらのリミックスを手掛けることに繋がります。
また、自身のレーベルDefinition Recordsによるパーティー、Definition Nightを行っていたのもこの頃からであり、
Dave Clarke、Mark Broom、Renato Cohenなど錚々たる面子を招聘して4年以上に渡り定期開催されていました。

Christian FischerはDJに対しても貪欲で、Final Scratch(後のTRAKTOR SCRATCH)と云ったPCDJの分野にもかなり初期の段階から目をつけていた1人でした。
また畑は違えど世界的流行となっていたハウスやエレクトロと云った新しい音楽も次々と吸収し、2006年にリリースした2枚のEPがその後のハードテクノと彼の音楽の未来を予言する決定打となります。

片方がこちら。

Hybrid Players, Christian Fischer / Hit Me

ギターリフに密度の濃いパーカッションリズム、ディスコネタのサンプリングと聞き覚えのある要素ばかり。
後世ハードグルーヴと呼ばれる音楽をこの時点で確立しています。
それまでのハードミニマルよりはメロディアスである一方、ボトムはハードミニマルクラスのドライブ感を兼ね備えたこの手のトラックこそ
冒頭で述べたようにトランス、ハードダンスのDJにも使われた曲となりました。
とりわけブラジルのアーティスト、Wehbbaとの共作が根こそぎこんな感じなので、初期ハードグルーヴを追ってみたい方は是非参考にしてください。

もう1作がこちら。

Christian Fischer, DJ Murphy / Miss You

一聴して分かると思いますが、ハードテクノではないです。
ロックとエレクトロを足したようなリズムにエモさ満点の男性ボーカル。プログレッシヴハウスっぽくもありますね。
それまでゴッツイ硬派なハードテクノを作っていた人がいきなりこのような真逆の曲を作ると云うのは並大抵のことではありません。
世界的流行もしっかり見据えた上で自身の培ってきた知識を総動員し、並み居る楽曲群になんら引けを取らない技術力と柔軟性は驚愕に値します。
この曲以降、彼はDJ MurphyとDeck Monstersと云うユニットを組み、名門ハードテクノレーベルPatternsからアルバムをリリースしたり、大手フェスに出演したりと大きな実績を重ねます。


参考映像としてNatureOne 2006出演時の2人のプレイカットがこちら。
スクラッチが入るテクノユニットと云うのもなかなか珍しいのではないかと。

余談ですが僕はこの2枚からChristian Fischerを知り、ファンキーなテクノの魅力に気付いたクチです。
未だに好きで使うこともしばしば。

彼はこのリリースでテクノを軸としたミクスチャーな音楽に可能性を見出し、2008年に『Bryzant Games』と云うアルバムをリリースします。
ハウス、ミニマル、エレクトロ、プログレなどあらゆる要素が詰め込まれたこの作品はChristian Fischerにとっても『非常に特別』であるようで、
後年の彼の作風にも大いに影響を及ぼした1枚となりました。
全曲使いどころアリな上、1曲目から連続再生してもDJプレイを聴いているような曲順になっているためリスニングとしても良い感じです。

Christian Fischer / Bryzant Games

Christian Fischer - Bryzant Games

https://www.beatport.com/release/bryzant-games/138866

またこのリリースの翌年、このアルバム名を冠としたラジオ番組、Bryzant Radioを週2回のペースで開始しました。
これはイビザからカナダ、フィリピンからハンガリーまで、世界各地のラジオ局を通じて放送されており、Renato CohenやAlan Fitzpackをゲストに迎えた回もあります。
これらはChristian FischerのSoundcloud
でアーカイブされておりますのでこちらも是非。

あと、実はこの人過去に来日してます。それもHomma Honganjiさんのパーティー、tourismで。
その時見に行ったのですが、音響トラブルもあってちょっと残念な感じでした。
願わくばもう1回見たい!Homma Honganjiさんマジでよろしくお願いします!!!何でしたらその・・・Hardonizeで・・・。

その他オススメはこちら。

Christian Fischer / At Saturday Night (Vocal Mix)

Druckwerk / Phobia (Christian Fischer & DJ Murphy Remix)

Christian Fischer, DJ Murphy / Discovering The Real Face

次週07月04日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/06/15

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

先日、次回Hardonizeの全情報が公開となりました。
2017/07/08(Sat) Hardonize#27
ここで発表となりましたが、此度のゲストには五条狐萩氏、かわくぼ氏をお招き致しました。
両名のプロフィールをご覧頂きたいのですが、両名ともテクノをコアとしつつ、それ以外にも裾野が広いと云った面で共通している気がします。
なんだかんだでここ数回のHardonizeでは珍しく、所謂昔ながらのハードテクノにスポットが当たる回なのかもしれないなと予想しつつ、でもやっぱり我慢できなくなった誰かがいきなり変わり種ブッ込んでくる可能性も否定できません。
そういうハプニング大好き人間としてワクワクしながら当日を迎えたいと思います。

さて、それとは全く関係ございませんがワタクシの近況報告と致しまして世界的ベースミュージックのフェス、Outlook Festivalの日本版、OUTLOOK JPのDJコンテストにSYNDROMEとのユニットVice Creamでエントリー致しました。
そのエントリー時のMIXがこちらですのでご興味がありましたらお聴き頂けると幸いです。
ROAD TO OUTLOOK JP 2017 by Vice Cream | Free Listening on SoundCloud
ちなみにコンテストの流れとしては運営側で選考のち、一般リスナーによる投票がFacebook上で行われ、上位組が本戦進出となっております。
ひとまず選考結果次第ではございますが、ごゆるりと見守って頂けると嬉しいです。

さて、今回ご紹介するのはそんなベースミュージックとテクノの中間点をひた走るクリエイターです。
最近ではメインストリームテクノがベースミュージック寄りになり、ダブテクノと云うジャンルもすっかり定着した感もあったり、逆にベースミュージックのクリエイターがディープテクノを作ることも珍しくなくなってます。
しかしそれが一般層に普及するより前に、しかもディープ/ミニマルよりもっとフィジカルなダンスミュージックとして提示していた奇特な男がいました。
ご紹介しましょう。

【Dismantle】

dismantle

https://www.facebook.com/dismantleofficial
https://soundcloud.com/dismantlemusic

イギリス、ブライトンの若きアーティスト。
DJを始めた時何と彼は13歳。そしてその頃から多くのクラブミュージックを研究し、文化や世代を超えた音楽に精通するようになっていました。
クリエイターとしてデビューしたのは2011年。
ちなみに当時のベースミュージックシーンはそれまで実験音楽の要素が強かったダブステップが1つのシーンとして商業的な発展を世界的に見せ始めていた頃に当たります。
(あの名高いSKrillexのScary Monsters And Nice Spritesが2010年リリース。)
片や4つ打ち方面は過度に強調されたベースがうねりまくるベースラインハウスの波がありましたし、UKガラージも一定層の支持を得ていた時期でもあります。
そこにDismantleがリリースした曲はそれらのどれともつかない、それでいてそれらの影響を受けているユニークなものでした。

Dismantle / Word Dance


それがこれです。
4つ打ちのキックとパーカッシヴなリズムはテクノやハウスを彷彿とさせますが、ベースはグライムやガラージに近い鳴り、何よりそれら全てを台無しにするかのようなアホっぽいピッチベンドのボイスサンプルは当時誰も聴いたことがありませんでした。
この電子音楽としか形容できない何かはジャンルが枝分かれする前の90年代初頭に『全部まとめてテクノと呼んでいた』感覚に近いものがあると思います。
これはDiploやCaspaと云った彼と同じく先鋭的なものに対するアンテナを広く張り巡らせていたアーティストによって多くプレイされました。

翌年にはジャングル界のリビングレジェンド、Shy FXのレーベル、Digital Soundboy Recordingと契約を結び、この『名前のない音楽』は更に前人未到のサウンドへと突き進みます。

Dismantle / Witch


ワタクシとしてはこれが本当に未だに好きで、先に挙げたROAD TO OUTLOOK JP 2017のMIXでも使用しております。
確かHardonize本編でも何度か使用したことがあった筈です。
ほぼ声ネタとパーカッションとベースと云うシンプルな構成はどんな音楽にも相性が良い一方で、そもそもこのような音を組み合わせた曲自体が大変珍しいことからインパクトも稼げる、DJにとっては願ったり叶ったりなトラック。
『何は無くともとりあえず持っておけば安心』と云う感じはあります。
ちなみに同じEPに収録されているMore Funkと云う曲もドライスネアとベースの珍妙な仕上がりになっており、とてもオススメ。
Dismantleはこの時期からIbiza Rocks、Outlook Festival、BBC 1Xtraと云った大きなフェスやプログラムに多く出演を果たすようになります。

直近のニュースとしては丁度先週リリースがありました。

Dismantle / Squash


FineArt & My Nu Lengによる新興レーベル、Maraki Recordsの2番目となります。
前2曲と同じように民族系のパーカッションは今も健在。
例えるならジャングルテラーを通過した後のラテントライバルハウスと云った感じでしょうが、相変わらず深いベースが鳴っております。
尚、当該リリースについてSkrillexの運営するNEST HQにも記事が掲載されておりました。
Dismantle Channels Latin Percussion on “Squash” Premiere – NEST HQ

リリースペースはそんなに早くないものの、出す曲出す曲が唯一無二であるため、変な曲スキーとしては見逃せないアーティストの1人です。
もしこれを聴いたあなたもDJならば、彼の曲をどのように使うか思考し、実践してみるときっと面白いプレイができると思います。
その他オススメはこちら。

Dismantle / Detonate

Dismantle / D Riddim

Breakage, Dismantle / Ass Up

次週06月20日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。