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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/09/07

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

Crate Diggers Tokyo
Crate Diggers Tokyoに行ってきました。
http://cratediggers.com/events/tokyo2017/
http://www.contacttokyo.com/schedule/crate-diggers-tokyo/
音楽データベースサイトのDiscogsが主宰するレコード市で、disk unionやHMVなど大手を含む国内のレコードショップ、DJが各々選りすぐったレコードを販売すると云ったイベント。
今回日本初開催だったそうです。
会場は渋谷のクラブ、Contact。
ここはよくテクノのパーティーも開催されているので、本連載をお読み頂いている方の中には遊びに行ったことのある方も多いと思いますが、700人規模の所謂中箱に当たります。
そこに所狭しとレコードが並んでおり、もう圧巻でした。
Discogsが主宰しているだけあってヒップホップ、R&B、ハウス、テクノなどのクラブミュージックは元よりジャズや歌謡曲、ワールドミュージックなども揃っており、DJもレコードコレクターもあの場所に集っていたような気がします。

で、私の収穫としてはこんな感じです。
Crate Diggers TokyoCrate Diggers Tokyo
コレクション的に買ったものもちらほらありますが、やはり未だにレコードでしか手に入らない曲と云うものは存在するので、その辺を狙ったチョイスとなってます。
また開催された際には足を運びたいと思います。年イチくらいで開催してくれると丁度良いんですけどねー。

さて、上の写真はなんとなくジャンル分けされておりまして、右の写真の2枚目に写っている9枚はディスコものに該当します。
私事で大変恐縮ですが、ファンキーなミドルテンポの4つ打ちダンスミュージックを語る上で欠かせない要素がこのディスコでありまして、見かけたら有無を言わさず買ってしまう病気にかかっています。
突き抜けて陽気な曲風に魅せられたと云う点もあるのですが、ある1人のDJプレイに感化され、今尚目標と掲げている存在があることも大きいと感じています。
今回ご紹介するのはそんな方でございます。

【Bad Boy Bill】

Bad Boy Bill

https://www.badboybill.com
https://www.facebook.com/BadBoyBill
https://soundcloud.com/djbadboybill

アメリカ、シカゴのDJ/クリエイター。
1970年代初頭の生まれで、1985年にDJデビュー、1987年にトラックリリース開始と大ベテランです。
作曲ジャンルはデビューから今に至るまでハウスとその周辺音楽ではあるものの、DJを開始した当初はヒップホップに傾倒しており、1988年、1989年と2年連続であのDJバトル大会、DMCの全米トップ3に輝いております。
参考映像がこちら。

Bad Boy Bill – 1989 DMC DJ Battle

今聴いても普通に上手くて見ごたえありますし、これが後年ハウスDJとしてトップの座に君臨すると云うのは中々信じ難いものがあります。
ちなみに途中で33回転を45回転にスイッチする手法はこの年の世界チャンピオン、Cutmaster Swiftもやっていた手法ですね。

また、Bad Boy Billが当時から行っていた革新的なプロモーションがHot Mixシリーズと呼ばれるものです。
これは彼がこのために設立したStreet DJ Promotionsと云うレーベルを通して配布されたMIX音源で、1988年から1994年の間に17番まで作られました。
オールドスクールブレイクスからシカゴハウス、レイヴ、テクノ、ディスコまで詰め込まれた内容もさることながら、これらは他のMIXテープと一線を画した要素がありました。
それは収録された楽曲のライセンス取得を行っていたと云う点です。
そしてそれはアメリカのレコード産業協会認可の元、合法的にレコード店やマーケット流通に乗せることが可能になることを意味します。
この動きは数々のレコードレーベルの支持と注目を集め、Bad Boy Billは法的に認可されたMIXを制作する最初のシカゴDJとしてその名を一気に全米に広めます。

その後、Bad Boy BillはDJとして、またクリエイターとしての活動拠点となるMix Connection Multimediaを設立。
地元シカゴのAngel Alanis、CZR、Fast Eddieらを所属アーティストとして迎え入れたほか、Hatirasのデビューを手伝ったりとプロモーターとしての活動にも力を入れ始めます。
その中で彼の代表作となるのがBangin’ The Boxシリーズ。そしてこれこそ僕が彼を偉人と崇める理由となった作品です。

Bad Boy Bill – Bangin’ The Box Vol. 4 (1999)

BPM140近辺と云うハウス、テクノにしては速いビートにグルーヴ感のあるベースと忙しないリズム、トラックの繋ぎ目に合わせてシンセの表情も多種多様に展開するその上にスクラッチや声ネタまで重ねると云う、満漢全席みたいなMIXです。
その上、60分そこらで30曲以上繋いでいるのが凄い。これは先のHot Mixシリーズもそうでしたが、ヒップホップ仕込みのクイックミックス技術が大いに反映されています。
最大で6台のデッキを駆使することもあるんだとか。6台って。

また、Bangin’ The BoxはCD媒体として頒布されてましたが、並行して始められたポッドキャストにBehind The Decksと云うシリーズがあり、こちらは2017年になった今でも継続して更新されております。
Soundcloudにアーカイヴが上がっておりますので最近の動向の一貫として是非。
https://soundcloud.com/btdradioshow

ちなみに2004年にはWIRE04出演のため来日しております。
その時の映像がこちら。

Bad Boy Bill Live At WIRE04

ストイックなものもファンキーなものも含めて電子楽器を使った音楽=テクノであった時代の、良い意味でざっくばらんとした雰囲気がこの映像からも伝わると思います。
あらゆる音楽、培ってきた技術、そしてマーケティング手法を駆使しながら、如何にDJとして楽しいプレイを聴かせられるかと云った意思の権化みたいな存在、それがBad Boy Billだと思います。
本当にカッコいい。

そんなBad Boy Billのオススメはこちら。

Bad Boy Bill Presents White Boy Mike And The Strength / How Do Ya Feel


1988年リリースの初期作品です。これまでのキャリアと将来を見据えた音の融合のようなファンキーヒップハウス。

Bad Boy Bill (feat. Kevin Irving) / Happy

Hatiras, Bad Boy Bill / Rokstar

Bad Boy Bill feat. Alex Peace / Everybody


個人的3部作。チューンアップされたディスコのドライブ感がとにかく強烈。使いどころ多し。

Bad Boy Bill / Re-conditioned


未配信化音源。Joey BeltramのMIXにも使われたアグレッシヴなリフが特徴の曲。

Bad Boy Bill, Gettoblaster / Balls & Lick


ここ数年はEDMの人として大型フェスに多数招かれておりますが、最近シカゴハウスっぽい曲がちらほら出てきました。
原点回帰でしょうか。だとするともう少し時が進めばディスコに戻ってくるかもと淡く期待を寄せてしまいますね。

次週09月12日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/08/24

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

前回コミックマーケットに因んで(因んだのか?)トライバルテクノの雄であるCAVEをご紹介したところ、まんまと次の回で774Muzikさんがトライバルテクノ大特集をやってくださいました。
本連載屈指の分量となっており、2017年にもなってここまで念入りにトライバルテクノについて語った記事もそうそうないでしょう。ありがとうございました。
その一方でSangoさんやYudukiボスは淡々と自分の得意フィールドの音楽を紹介しており、新しきも古きも変なものも紹介しているこの連載、気付けば2年目突入してました。先月。気付くの遅え。と云うか誰も気付いてないっぽい。

20170824
ちなみにコミックマーケットはこのくらい買ったんですが全然リッピングが追い付いておらず、一昨日のボスの振りには応えられそうにありません。ごめんボス。

始めに、今週頭に私のMIXが公開されましたのでご報告致します。

AHI COMPILATION 07 – Exclusive Mix 1 – mixed by TAK666

毎度お世話になっているテクノレーベル、秋葉原重工のプロモーション企画と云うことで同レーベル音源だけ用いた内容です。
メロディアスな曲からミニマルへ移行して最後はハードと云うように一口にテクノと言えど様々なスタイルがあり、その国内最前線に立つ方々をフィーチャーしつつインディーズならではの尖った楽曲も目白押しと云った点で大変面白いレーベルです。
パーティーも定期的に秋葉原MOGRAにて開催しており、次回は09月23日を予定されています。是非足を運んでみてください。
http://www.ahiweb.info/

さて、日本の地下テクノシーンを支えているのは勿論秋葉原重工だけではありません。
彼らのようにフィジカルリリースを主体とした団体もあったり、クラブパーティーを主眼に置いた集団(おこがましくも我々のような)もある一方で、インターネットを主な活動場としている方々もいらっしゃいます。
所謂ネットレーベルですね。
過去に何度かフリーダウンロード公開されているハードテクノ音源のレビューをしてきたように、ネットレーベルにはフットワークの軽さやアイディアの豊富さなどを生かしたネットレーベルならではの面白さがあると思っております。
そんなわけで本日はアーティストではなく、界隈的にも決して遠くないこちらのレーベルをご紹介。

【OmanticRecords】

OmanticRecords

http://omantic.me
https://facebook.com/OMANTICRECORDS
https://omanticrecords.bandcamp.com

カタカナで書くとオマンティックレコード。何とも卑猥さを感じるネーミングですが、概要のところで

オマンティックレコードはインターネット勃起テクノレーベルです。

と堂々謳っているので致し方なしと云う塩梅。言っている意味はサッパリ分かりません。
2010年11月に設立され、2011年05月に最初のリリース『Goats Gone Wild』を発表。
この頃って丁度『NetLabel Warfare』があったりしてネットレーベルと云うものが一定の注目を集めていた時期ですね。
現在も活動継続中で、最新作『Chiba-city ACID』はつい先日出たばかりの50作目。かなり長期間に渡ってリリースを重ねております。
一部を除いてほぼBandcampを介した投げ銭システムにて楽曲の配布がされているので文無しにも優しい。
また、Tシャツの受注やVSTプラグインの開発なども行っておりますが、総じてデザインがいかがわしいのも特徴。(褒め言葉)

主宰はksd6700氏。
http://ksd6700.net
https://soundcloud.com/ksd6700
千葉のINAGE(読み方は『インエイジ』)所属のクリエイター。
ちなみに同レーベルにはマッシュアップチーム、コバルト爆弾αΩも在籍しております。
(更に余談ですが昔INAGEのフリーペーパー頂いた記憶があります。)
作曲はテクノ、ハウスからブレイクビートまで幅広くこなし、時にハードウェアを用いたライブを行うこともあるのですが、その時のプレイ内容はゴリゴリのアシッド~ハードテクノだったりします。
参考映像がこちら。

[20140112] Aki-Bug SuperS – ksd6700(前々夜祭, 本祭)

そう、Hardonizeを行っている会場、茶箱と縁深い方々が集った秋葉原屋内フェス、『Aki-Bug』に出演されていたんですね。
大胆にサンプリングを織り交ぜつつ繰り広げられるアシッドテクノの世界、開催場所を考えると大分通好みのライブですが、盛り上がってますね。
茶箱にも出演経験があり、個人的にはこちらの方が記憶に残っていたりします。

2008/04/18 – 実験教室 第7回 – ksd6700

図らずしも先週ご紹介したようなトライバルテクノが鳴り響いてます。
これ私が撮ったものなのですが、暗過ぎて何も見えませんね。

このようなライブの音が反映されたトラックがOmanticRecords最新作、『Chiba-city ACID』だと思います。

ksd6700 / Chiba-city ACID

カッチリしたキックを始めとする機械然としたリズムパターンの上で鳴らされるアシッドシンセ。
テックハウスからテクノに持ち上げたり、逆にテクノにベースのグルーヴ感を与えたい時など重宝しそうな1曲です。

一方でテクノとそれ以外の要素を混ぜ合わせたような曲がこちら。

ksd6700 / JupiterStep

一聴して分かるUnderground Resistanceのサンプリングにグライミーなベースライン。
4つ打ちともブレイクビートともつかない構成でありながらインパクトの大きい変な曲となっており、大変ツボです。

ちなみに個人のSoundcloudアカウントでもいくつか曲をアップロードしており、中でも取り上げたいのがこれ。

ksd6700 / MEGATECH PRAYER MP3

ジャケットイラスト通りのアレネタです。正確にはPSゲーム版のステージBGMがハードミニマルにアレンジされております。
エグめの楽曲と相性良さそうですし、ネタありきじゃなくても使える仕上がりが大変素晴らしい。

公式サイトによるとOmanticRecordsは主宰のksd6700氏以外にも11組のアーティストが所属しております。
個人的に驚いたのはHASEGAWA-4200氏の名前があったことでした。
完全にジュークの印象しかありませんでしたが、改めて聞き直すとテクノも作っていたんですね・・・認識を改めます。

ハードテクノ的な観点でもう1名取り上げるならthe percussionz氏はオススメです。
https://soundcloud.com/the-percussionz
OmanticRecords参加作品としてはこの辺りです。

the percussionz / dance! tokio! dance! (2020 Cristal Tokio mix)

the percussionz / 銀河の渡り鳥

両方ともアシッドシンセを用いたディスコ調トラック。分かりやすく言うとKAGAMIっぽい感じ。
詰まるところHardonizeでよく流れるようなファンキーテクノに大変近い曲を作っておられます。アリガタヤ。
加えてthe percussionz氏のSoundcloudアカウントにて大量にブートレグが公開されており、往年のテクノアンセムやJ-POPがアッパーなダンスミュージックに変貌を遂げてます。
BPM130近辺の4つ打ちもあり、ダウンビートやドラムンベースもあったりと、こちらはこちらで多才。

所属アーティスト以外にも外部クリエイターを起用したリミックス作品なんてのもございまして、こちらは冒頭の秋葉原重工にも参加されている909state氏の作品。

DERTHXY / poh (909state remix)

ほぼキックとスネアとハイハットとシンセしか聴こえない男前なハードアシッド。
ksd6700氏と同様、ハードウェア構成でライブをやるクリエイターの筆頭格らしい作品です。

楽曲だけでなくMIXもナンバリングを重ねておりまして、中でもこちらはトライバルテクノを軸にJ-POPの要素を混ぜこぜにしたアグレッシヴな内容でオススメです。

ZAIBATSU / GeneralMeeting at InterNets Mar2017

尚、公式サイトによるプロフィールでは

「 ZAIBATSU(財閥)」は、「DJ Mitsubishi(DJ 三菱)」「DJ Mitsui(DJ 三井)」「DJ Sumitomo(DJ 住友)」「DJ Yasuda(DJ 安田)」らから成る覆面DJユニットです。

と紹介されており、ふざけっぷりが秀逸。こんな文章、逆立ちしても出てきません。

と云った感じでアンダーグラウンドならではのアヤしさとインディーズならではの豊富なアイディアを詰め込んだネットレーベルがOmanticRecordsです。
ダンスミュージックに於けるテクノと言うとどうしてもインテリジェンスだったりストイックな部分ばっかり目がいきがちですが、もう少し肩の力を抜いて聴けるような側面もあると云うことがお分り頂ければ幸いです。

尚、OmanticRecordsとしてはネット上でのリリースを行っておりますが、上で挙げたksd6700氏所属のINAGEに於いてはフィジカルリリースも行っており、コミックマーケットやM3と云った即売会を通して購入することが可能です。
親交レーベルとしてOmanticRecords所属のクリエイター楽曲も多数収録されているので是非お手に取ってみてください。
http://inage.info

次週08月29日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。