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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/08/10

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

明日から3日間コミックマーケットでございますね。
何度か取り上げておりますようにこういった即売会で頒布される同人音楽の中にもハードテクノと親和性の高い音楽が多数存在しているわけでありまして、紳士淑女に於かれましてはそういった鼓膜を刺激する作品を求めに・・・或いは別の部位を刺激するためのナニかを求めに赴くであろうと推察されます。
本来であれば出展者の情報なども載せていきたかったタイミングではありましたが、私は事前下調べをせず直感で買い物をすることが楽しかったりするので今回は特集的なことはせず、粛々と通常連載の形を取りたいと思います。
もしHardonize的に取り上げたいナイス作品と出会えたら次回ご紹介させて頂きますユエ。

それにしても最近暑い。
毎年のことにも関わらず全く慣れる気配がなく、人間は本当に環境適応できるような進化を遂げているのか不安になる程です。
所感として、夏で褒められる点と言えば賑やかな音楽が似合うことぐらいのものです。サンバとかカーニバル的なやつ。
その手のトライバル的要素がハードテクノと相性が良い点については当連載でも色々な回で触れられておりますが、中でも爆発的ヒットを生み出したアーティストと言われると我々世代のテクノスキーであれば少なくとも半数は共通の回答を述べる筈です。
上述の『カーニバル』で察した方がいらっしゃったら大正解。

【CAVE】

cave

ノルウェー、オスローのDJ/クリエイター。
1998年からDJを開始し、2001年からテクノ~ハウス楽曲のプロデュースも兼ねる。
デビュー作はBen SimsのレーベルIngomaからのリリースと初手から大物に見出されていた感がありますが、このデビュー作がハードテクノに於いてとにかく重要な作品となります。理由は後述。
その後もPrimevil、Intec、Hz Traxなど実力派レーベルは元より、UniversalやMinistry Of Soundと云った大手メジャーレーベルからも次々と作品を輩出し、2005年から2009年にかけてはSpilo Recordsのレーベルオーナーも務め、Boriqua TribezやOrtin Camらと共に2000年代のテクノシーンを牽引しました。
DJとしてもDance ValleyやSonarなど大規模フェスへの参加経験もある傍ら、Fabrik Madrid、Florida 135などの有名クラブにゲストとしても招かれるなど40か国以上でのプレイ経験があります。
尚、2006年にはPaul Mac、Ortin Camらと共に来日もしています。
DJスタイルも3台のターンテーブルを駆使しつつ、エフェクトやDJ用サンプルトラックを重ねることでハードなサウンドを奏でる技巧派ぶり・・・と見ての通りかなりの経歴をお持ちの方です。

さて、上で触れたCAVEのデビュー作にして出世作がこれだったわけです。

Cave / Street Carnival


https://play.google.com/store/music/album?id=B4kuoitw4gjjzplmqwjkkxdg34y&tid=song-Tckxcrvk6hppjgnk4mycavwslfi&hl=en

2003年リリース。
粗っぽいハードミニマルのリズムにパーカッションループが延々続き、極め付けと言わんばかりにパーカッションしか鳴らなくなる特大のインパクトを誇るブレイク。
前出のBen SimsやPaul Macがそれまで行っていた生音っぽいリズムのテクノを更に先鋭化させたこの曲は、新しいスタイルの音楽としてジャンルの垣根を越えて大ヒットを記録します。

具体例を出すとトランスの大御所Tiestoや、

(最初にかかります。)

Armin van Buurenまでもがプレイした程です。

(最後にかかります。)

また、この曲の大流行を受けてこれまたジャンルの垣根を越えてリミックス、ブートレグが出回りました。
ハウス、トランス、シュランツ、果ては同人音楽まで把握できているものだけでも相当な数に上ります。
1つ1つ挙げるとキリがないので割愛しますが、明日がコミックマーケットであることを踏まえて1曲だけご紹介。

DJ TECHNORCH / 復活富士山頂大回転 ~Fujiyama Panic~

国内きってのキワモノハードコア生産者、DJ TECHNORCH氏の2007年の作品。
『ガバ・ミーツ・何か』と云うコンセプトの元に作られたアルバム、『BOSS ON PARADE ~XXX meets GABBA~』に収録されているだけあってあのパーカッションの部分が全部ガバキック。
こういう面白音楽がリリースされるのも同人音楽の強みでございます。

ちなみにこの曲には元ネタがあります。

Sergio Mendes / Fanfarra (Cabua-Le-Le)


https://play.google.com/store/music/album?id=Bmftqejdjvwpvgg2ndgxf7mqruq&tid=song-T4igmyjwwqxdmilkhyc7norji5m

ボサノヴァの火付け役として知られるSergio Mendesによる1992年の曲。
あのブレイクは元は冒頭の部分に当たっていたんですね。
中盤からメロディーが入ってきて大分イメージしやすいサンバっぽくなりますが、打楽器だけの編成は『バトゥカーダ』と云うサブカテゴリーで呼ばれているそうです。
この曲に関しては100名を越える打楽器バンドによって演奏されているとのこと。道理で厚みのあるリズムに聴こえるわけですが、流石ブラジル、サンバにかける情熱がハンパではない。

大分Street Carnivalに関する情報が長くなってしまいました。
ともあれこの曲の出現によってハードテクノはトライバルパーカッションと相性が良いことが世界的に認知され、機械音然とした無機質なハードミニマルとは別のスタイルとして発展していきます。
その1種こそHardonizeでもよくプレイされるファンキーなハードテクノ、ハードグルーヴへと繋がったことは間違いありません。
CAVEはハードテクノの歴史に於いてその進化をアシストしたクリエイターでもあるわけです。

その後CAVEはSpilo Recordsが活動を停止する2009年辺りまでトライバルハードテクノの最前線に立っておりましたが、後年はテックハウスへとシフト、現在は既に音楽活動から完全に身を引いております。
では何をしているのかと云うと、航空会社やビジネススクールの講師を経て自国ノルウェーの広告代理店で事業部長とのこと。超キャリアマン。
上記のように世界的スマッシュヒットを記録し、自身でレーベルを運営する程音楽で成功した人がスパッと活動を終えることは大決断だったように思えますが、その後の事業で更に社会的地位を確立していることは更に驚きですね。
未だに音楽が好きでいる身としては若干の寂しさを覚えますが、彼がハードテクノに与えた功績は大きく、引き継がれた要素は今尚聴くことができます。
様々な意味を込めて偉大なアーティストの1人であることは疑うべくもないでしょう。

そんなCAVEのオススメはこちら。

Hertz / By Myself (Cave Remix)

Cave / Speleon

Balthazar, Jackrock / Rockin’ Dancefloor (Cave Remix)

Cave / Charion

次週08月15日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


大分余談ですが、CAVE同様トライバルテクノの重要人物として挙げられるアーティストにDJ Deroと云う方がおりまして、その方の2作目に当たる作品が上記のFanfarra (Cabua-Le-Le)をサンプリングしたその名もBatucadaと云う曲があります。そのまんまですね。

DJ Dero / Batucada

こちらは1993年リリースとStreet Carnivalより大分前の作品です。
お聴きの通りハードテクノと言うよりはトライバルハウスと分類した方がしっくりくる曲ですが、このBatucadaと云う曲もまたリリース直後から大ヒットとなり、数々のコンピレーションやMIX CDに収録され、挙句DJ Dero本人によるリミックスも大量に作られた代表作でもあります。
その中でStreet Carnivalと同時期である2003年に発売されたTechnobatucadaと云うリメイク作品があり、こちらは大分ハードテクノと親和性の高い仕上がりとなっております。
残念ながら試聴が見つからなかったのでここでは紹介できませんでしたが、もし中古市場で見かけることがありましたら是非入手してみてください。
尚、その後DJ Deroはエレクトロハウス方面へと活動の舵を切っていくのですが、やはりBatucadaは度々リミックスされています。
中でもこの曲のブレイク~明けてからのリフが吹っ切れてアホっぽくて好きです。

Rivera, Dero / I Love Batucada (Dero Animal Drums Mix)

やはりトライバルテクノに関してはその筋に詳しい774Muzikさんに思いっきり解説して欲しいなぁと思うところ。
実はこの人もStreet Carnivalを受けて曲を・・・いや、これ以上僕の口からは言うまい。
別に次週でなくても結構ですので、もし興が乗ったら何卒お願いします。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/07/27

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。


冒頭から全くテクノと関係ない話題で恐縮ですが、今更『ストレイト・アウタ・コンプトン』拝聴致しました。
80年代末期~90年代初頭にかけてアメリカ、コンプトンで活動していた伝説的ヒップホップグループ、N.W.Aの伝記映画。
あのヘッドホン、Beatsシリーズを手掛けたDr.Dre、そして俳優としても活動しているIce Cubeの名前はヒップホップを知らないと云う人でも聞いたことがあるのではないでしょうか。
その2人が在籍し、当時エレクトロやファンクの要素が強かったヒップホップ界に強烈な内容の歌詞と云う新しい要素を持ち込み、今現在まで引き継がれているカテゴリー、ギャングスタ・ヒップホップを確立しました。
のちにFBIから警告される程世界を熱狂させたN.W.Aの結成から成長、メンバー脱退、その後の対立からメンバーの死去までを綴った作品です。
2015年の映画ですが、全米で記録的興行収入を叩き出し、同じく伝記ヒップホップ映画であったEminem主演の『8マイル』を打ち破ったそうです。

ワタクシ、ヒップホップに関しては完全に後追いで、特に黎明期の部分に関してはまだ掘り下げきれてない部分があるので、『なんで彼らは暴力的な歌詞を歌い上げるのか』と疑問に思っていたところもあったわけですが、背景には考えられないような貧困だったり人種間差別だったり暴力だったりが本当にあって、その抑圧から生まれた音楽だったんだと云うのがこれを見ると少し分かりました。
そんなヒップホップ門外漢でも楽しめるストーリーになっていますし、マニアなら尚一層楽しめるのではないかと思います。
オススメです。

ちなみに映画でもコンプトンと云う町はアメリカ屈指の犯罪都市であると描かれておりますが、これは現在も改善されていないようで、VICE Japanが去年公開した『noisey Bompton 犯罪都市コンプトン・ヒップホップ・シーンの現在 ①』と云う動画にてKendrick Lamarを始めとした今のコンプトンを生きる人たちへのインタビューから窺い知ることができます。

なかなか日本にいると実感湧かない話です。

さて、前置きがアメリカに関する話だったので今回はアメリカ出身のハードテクノアーティストを紹介します。
と言ってもテクノは現在でもアメリカよりヨーロッパがシーンを牽引しているフシがあり、音楽と云う広い括りでアメリカが強いとされているのは上で挙げたヒップホップや、ポップス、ハウスなどです。
勿論一時期はJeff Millsを筆頭とするデトロイトテクノが脚光を浴びていた歴史もありますが、現行のハードテクノともなると本当に稀。
ワタクシも数えられる程度しか存じておりません。もしUSハードテクノ事情に精通している方がいらっしゃったら是非お話を聞かせて頂きたいところです。
そんな中からハードグルーヴ成長期よりシーンにトラックを作り続けていたこの人を紹介します。

【Steel Grooves】

steel grooves

https://www.facebook.com/steelgrooves
https://soundcloud.com/steelgrooves

アメリカ、テキサス出身のアーティスト。
1996年に15歳だった頃からDJを始め、プロモーターとして数々のゲストを自身のパーティーに招聘。
その腕が認められ、地元テキサスの大箱Kingdom NightclubやEthics Music Loungeでレギュラーパーティーを担当するようになります。
現在はHypersonic RadioにてJason Jenkinsと共に番組を持つなどパーソナリティとしても活動中で、定期的に世界中のテクノを発信し続けています。

その活動拠点となっているのが彼がプロデュースを務めるレーベル、Capital Techno Recordingsです。
元は1つのパーティーとして始まり、彼はその中のレジデントと云う立ち位置だったそうですが、リリース拠点とするに当たりSteel Groovesが主宰となることに。
Fer BR、G8、Goncalo Mなどハードグルーヴのキーマンとなるアーティストが多く携わり、国際的に評判の高いレーベルとなりました。
(本間本願寺氏も何枚かCapital Techno Recordingsからリリースされてますね。)

トラックメイクは2008年からスタートとDJに比べると遅咲きの感はありますが、Keep On Techno Records、Unaffected Records、Toyfriend Musicなどハードグルーヴシーンの核となったレーベルに次々と参加。
その音も反骨心の塊と云うか、テクノのイメージのない国から生まれたとは思えない程ハードでアグレッシヴなものだったため、一躍トップクリエイターへの仲間入りを果たします。
その背景にはやはりアメリカでテクノを続けてきたと云う20年来のDJ経験があり、常に『地下の音を表現する』ことを使命としているからでしょう。

その挑戦的とも言えるプロダクションはSubforceやSingle Cellと云った別名義を経て現在にも引き継がれています。
本名義であるSteel Groovesとは別にこれらの名義で作っていたのはざっくり説明するとテンポを落としたハードミニマルだったのですが、最近はSteel Grooves名義に於いてもこの手の楽曲が多く見受けられます。
ハードグルーヴが彼の主軸から変わってしまったことに対する賛否はあるかもしれませんが、このハードミニマルもなかなかのクセモノ揃い。
全体的に金属音丸出しな音をフィーチャーしており重厚な側面を持ちながら、思いっきり前に出た前のめりなベースは実際のBPM以上に速い印象を与え、まさに『Steel Grooves』の名前に相応しいトラックが揃ってます。

ファンキーな曲が好きな人にもダークな曲が好きな人にもオススメしたいアーティスト。
折角ですので双方半分ずつ列挙します。

Steel Grooves feat. St. Jae / Hold It Down

Steel Grooves, Alexey Kotlyar / Motus

Kev D, AKA Carl / Breaking Out of the Box (Steel Grooves Remix)

Vegim, Steel Grooves / Under The Steel

SubSight / Cabarete (Steel Grooves Remix)

Steel Grooves / Phobia

次週08月01日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。