こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
明日から3日間コミックマーケットでございますね。
何度か取り上げておりますようにこういった即売会で頒布される同人音楽の中にもハードテクノと親和性の高い音楽が多数存在しているわけでありまして、紳士淑女に於かれましてはそういった鼓膜を刺激する作品を求めに・・・或いは別の部位を刺激するためのナニかを求めに赴くであろうと推察されます。
本来であれば出展者の情報なども載せていきたかったタイミングではありましたが、私は事前下調べをせず直感で買い物をすることが楽しかったりするので今回は特集的なことはせず、粛々と通常連載の形を取りたいと思います。
もしHardonize的に取り上げたいナイス作品と出会えたら次回ご紹介させて頂きますユエ。
それにしても最近暑い。
毎年のことにも関わらず全く慣れる気配がなく、人間は本当に環境適応できるような進化を遂げているのか不安になる程です。
所感として、夏で褒められる点と言えば賑やかな音楽が似合うことぐらいのものです。サンバとかカーニバル的なやつ。
その手のトライバル的要素がハードテクノと相性が良い点については当連載でも色々な回で触れられておりますが、中でも爆発的ヒットを生み出したアーティストと言われると我々世代のテクノスキーであれば少なくとも半数は共通の回答を述べる筈です。
上述の『カーニバル』で察した方がいらっしゃったら大正解。
ノルウェー、オスローのDJ/クリエイター。
1998年からDJを開始し、2001年からテクノ~ハウス楽曲のプロデュースも兼ねる。
デビュー作はBen SimsのレーベルIngomaからのリリースと初手から大物に見出されていた感がありますが、このデビュー作がハードテクノに於いてとにかく重要な作品となります。理由は後述。
その後もPrimevil、Intec、Hz Traxなど実力派レーベルは元より、UniversalやMinistry Of Soundと云った大手メジャーレーベルからも次々と作品を輩出し、2005年から2009年にかけてはSpilo Recordsのレーベルオーナーも務め、Boriqua TribezやOrtin Camらと共に2000年代のテクノシーンを牽引しました。
DJとしてもDance ValleyやSonarなど大規模フェスへの参加経験もある傍ら、Fabrik Madrid、Florida 135などの有名クラブにゲストとしても招かれるなど40か国以上でのプレイ経験があります。
尚、2006年にはPaul Mac、Ortin Camらと共に来日もしています。
DJスタイルも3台のターンテーブルを駆使しつつ、エフェクトやDJ用サンプルトラックを重ねることでハードなサウンドを奏でる技巧派ぶり・・・と見ての通りかなりの経歴をお持ちの方です。
さて、上で触れたCAVEのデビュー作にして出世作がこれだったわけです。
2003年リリース。
粗っぽいハードミニマルのリズムにパーカッションループが延々続き、極め付けと言わんばかりにパーカッションしか鳴らなくなる特大のインパクトを誇るブレイク。
前出のBen SimsやPaul Macがそれまで行っていた生音っぽいリズムのテクノを更に先鋭化させたこの曲は、新しいスタイルの音楽としてジャンルの垣根を越えて大ヒットを記録します。
具体例を出すとトランスの大御所Tiestoや、
(最初にかかります。)
Armin van Buurenまでもがプレイした程です。
(最後にかかります。)
また、この曲の大流行を受けてこれまたジャンルの垣根を越えてリミックス、ブートレグが出回りました。
ハウス、トランス、シュランツ、果ては同人音楽まで把握できているものだけでも相当な数に上ります。
1つ1つ挙げるとキリがないので割愛しますが、明日がコミックマーケットであることを踏まえて1曲だけご紹介。
国内きってのキワモノハードコア生産者、DJ TECHNORCH氏の2007年の作品。
『ガバ・ミーツ・何か』と云うコンセプトの元に作られたアルバム、『BOSS ON PARADE ~XXX meets GABBA~』に収録されているだけあってあのパーカッションの部分が全部ガバキック。
こういう面白音楽がリリースされるのも同人音楽の強みでございます。
ちなみにこの曲には元ネタがあります。
ボサノヴァの火付け役として知られるSergio Mendesによる1992年の曲。
あのブレイクは元は冒頭の部分に当たっていたんですね。
中盤からメロディーが入ってきて大分イメージしやすいサンバっぽくなりますが、打楽器だけの編成は『バトゥカーダ』と云うサブカテゴリーで呼ばれているそうです。
この曲に関しては100名を越える打楽器バンドによって演奏されているとのこと。道理で厚みのあるリズムに聴こえるわけですが、流石ブラジル、サンバにかける情熱がハンパではない。
大分Street Carnivalに関する情報が長くなってしまいました。
ともあれこの曲の出現によってハードテクノはトライバルパーカッションと相性が良いことが世界的に認知され、機械音然とした無機質なハードミニマルとは別のスタイルとして発展していきます。
その1種こそHardonizeでもよくプレイされるファンキーなハードテクノ、ハードグルーヴへと繋がったことは間違いありません。
CAVEはハードテクノの歴史に於いてその進化をアシストしたクリエイターでもあるわけです。
その後CAVEはSpilo Recordsが活動を停止する2009年辺りまでトライバルハードテクノの最前線に立っておりましたが、後年はテックハウスへとシフト、現在は既に音楽活動から完全に身を引いております。
では何をしているのかと云うと、航空会社やビジネススクールの講師を経て自国ノルウェーの広告代理店で事業部長とのこと。超キャリアマン。
上記のように世界的スマッシュヒットを記録し、自身でレーベルを運営する程音楽で成功した人がスパッと活動を終えることは大決断だったように思えますが、その後の事業で更に社会的地位を確立していることは更に驚きですね。
未だに音楽が好きでいる身としては若干の寂しさを覚えますが、彼がハードテクノに与えた功績は大きく、引き継がれた要素は今尚聴くことができます。
様々な意味を込めて偉大なアーティストの1人であることは疑うべくもないでしょう。
そんなCAVEのオススメはこちら。
次週08月15日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。
※
大分余談ですが、CAVE同様トライバルテクノの重要人物として挙げられるアーティストにDJ Deroと云う方がおりまして、その方の2作目に当たる作品が上記のFanfarra (Cabua-Le-Le)をサンプリングしたその名もBatucadaと云う曲があります。そのまんまですね。
こちらは1993年リリースとStreet Carnivalより大分前の作品です。
お聴きの通りハードテクノと言うよりはトライバルハウスと分類した方がしっくりくる曲ですが、このBatucadaと云う曲もまたリリース直後から大ヒットとなり、数々のコンピレーションやMIX CDに収録され、挙句DJ Dero本人によるリミックスも大量に作られた代表作でもあります。
その中でStreet Carnivalと同時期である2003年に発売されたTechnobatucadaと云うリメイク作品があり、こちらは大分ハードテクノと親和性の高い仕上がりとなっております。
残念ながら試聴が見つからなかったのでここでは紹介できませんでしたが、もし中古市場で見かけることがありましたら是非入手してみてください。
尚、その後DJ Deroはエレクトロハウス方面へと活動の舵を切っていくのですが、やはりBatucadaは度々リミックスされています。
中でもこの曲のブレイク~明けてからのリフが吹っ切れてアホっぽくて好きです。
やはりトライバルテクノに関してはその筋に詳しい774Muzikさんに思いっきり解説して欲しいなぁと思うところ。
実はこの人もStreet Carnivalを受けて曲を・・・いや、これ以上僕の口からは言うまい。
別に次週でなくても結構ですので、もし興が乗ったら何卒お願いします。