こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。
ほぼ2週間経ってしまいましたが、Hardonize 35回目が無事に終了致しました。
お越し頂いた方々、本当にありがとうございました。
自分はこの日、別パーティーとダブルブッキングだったため、途中抜けしてしまいましたが、前後編でくっきりと音のコントラストが出た回だったのではないでしょうか。
というのも今回のゲストであるDJ RINNさんもgekkoさんも割とアッパーなハードテクノを好む方々であることが事前に分かっていたため、前半を務めた774Muzikさんと、Yudukiさん、そして自分の間で『明るい音はあの人たちに任せれば良いんじゃない?』という見解一致があったのです。
実際序盤はかなりストイック進行が多く、音に緊張感のある空間が出せたと思います。
これもテクノの醍醐味の1つだと個人的には思うのですが、トリを担うSangoさんは『え、今回みんなこんな感じ?』と途中まで内心ヒヤヒヤしていたそうな。
そしてゲスト2人を含む後半もその思惑通りというか、一転してアッパーな選曲が繰り広げられたようで、やはりこれもハードテクノの魅力の1つだと思うわけです。
gekkoさんのプレイに関しては全く見られないまま会場を後にしてしまいましたが、重ね重ねゲスト両名には感謝をお伝えしたいところです。
あとテックハウス、メインストリームテクノからビルドアップしていってハードミニマルに着地させる774Muzikさんのプレイはやっぱり個人的に好みでした。
近年のテクノにもしっかりリスペクトを払いつつ、自分のコアを通していくスタイルはトップバッターというポジション的にもバッチリハマっていたように思えます。
さて、自分のプレイも上記の通り、かなりストイック方面に寄せた内容となりました。
レジデントメンバーを含む他の方々があまりやらないであろうダークテクノやベースミュージックなど、『深度』に重点を置いたアングラ選曲。
決して万人受けするような音ではないと認識しておりますが、万が一お気に召した内容であったなら幸いです。
というのも、ここ数年でベースミュージックからテクノに手を広げたクリエイターやDJが一定数いる、ということについては以前から当連載で触れている通りであり、両音楽に於ける最近のトラックは相性の良いポイントが存在する点は個人的にはかなり面白いと感じております。
且つ、ここ数か月で買ったトラックの中にテクノの質感を持ったドラムンベースが増えつつあり、中にはドラムンベースからテクノにシフトする曲という曲まで現れ始めており、これは結構大きな衝撃でした。
その1つは実際に今回使用しているのですが、こういうクロスオーバー冥利に尽きるトラックは自分のプレイの幅を広げてくれるので堪らなく愛おしいです。
そんなワケで今回はHardonize #35にてプレイした楽曲の中からピックアップしてお送り致します。
全容はこちら。
テクノ~非4つ打ちテクノ~ベースミュージック~テクノ~ドラムンベース~テクノ
大体2~3曲括りで1タームとし、別ジャンルへと遷移していくイメージです。
No | Artist | Trackname | Link |
---|---|---|---|
01 | Ernst Mantel | Party Bis Es Dach Lupft (Absolution Bootleg) | SoundCloud |
02 | Leonard De Leonard, La Fraicheur | Sang froid (Caravel Remix) | Beatport |
03 | Reinier Zonneveld | For The People | Beatport |
04 | Kenji Kawai | Ghost in the Shell (SIRO Remix) | SoundCloud |
05 | Dahryl | You Don’t Always Have to Win | Beatport |
06 | Freiheit | My House (Scorpion Mix) | Beatport |
07 | DJ Ogi | Off Da Beat | SoundCloud |
08 | Militia | Authority | Beatport |
09 | Pinch & Kahn feat. Killa’s Army | Crossing the Line | Beatport |
10 | Ill_K feat. Chad Dubz | Ninja Technique | Beatport |
11 | Teffa | Old Days | Beatport |
12 | Radio Slave, SRVD, Patrick Mason | Nasty | Beatport |
13 | WLDERZ | Freeze | Beatport |
14 | Tensal | Opticon | Beatport |
15 | Sam Kdc | Lead Me into Temptation | Beatport |
16 | Sinecore | Lazy Bloody Eyes | Beatport |
17 | Abstract Elements | Tenderness | Beatport |
18 | Exept & OaT | Broken Mechanics | Beatport |
19 | Rave Creator & The Mover | Atmos-fear (Andy Lane Techno Remix) | SoundCloud |
20 | Dino Maggiorana, T78 | I Got What U Need | Beatport |
いつもならここから数曲かいつまんでご紹介するところですが、今回曲数もそこまで多くなく、Sangoさんも774Muzikさんも全曲プレビュー付きで自身のトラックリストを紹介しているため、今回は自分も全曲コメント載せます。
結構お気に入りが多くて絞り切れなかったという理由もあります。
ドイツのクリエイターAbsolutionによるハードミニマル。
牧歌を思わせる、のほほんとしたギターと歌が入ったと思ったらそれと相反するかのようなヘヴィーなリズムが追従する完全飛び道具トラック。
冒頭から笑いを取れたので大変満足です。
尚、フリーダウンロードなので同じように笑いを取りたい方は是非お持ち帰りください。
ちなみに元ネタはドイツのコメディアン兼ミュージシャンであるErnst Mantelという人のPartyという曲。
更にこれを同じくドイツのテクノクリエイターTimo MandlがサンプリングしたPardy bisses Dach Lupftという曲があり、これに影響を受けたAbsolutionをはじめとする新興のテクノクリエイターたちが2018年から2019年にかけて、このネタでトラックを作りあっていたという経緯がありました。
Soundcloud上でこのタイトルを検索するとその中のいくつかについては確認することができますが、発端となったTimo Mandlの曲も含め、手法としてはどれもほぼ同じです。
Sang froid (Caravel Remix) by Leonard De Leonard, La Fraicheur on Beatport
フランスのクリエイターCaravelによるアシッドテクノ。
シンプルなアシッドシンセのリフに太いベース、そしてハイハットとクラップの走る感じが重厚さを醸す硬めな仕上がり。
テクノシーンあるあるとして女性の方が攻め気のある作品が多いというジンクスがありますが、Caravelもまた女性ということでそれを裏付ける曲といえるのではないでしょうか。
For The People (Original Mix) by Reinier Zonneveld on Beatport
オランダのクリエイターReinier Zonneveldによるテクノ。
近年のレイヴリバイバル系テクノに於いて欠かせないアーティストであり、本作もそんな彼の十八番が遺憾なく発揮されております。
肉厚なボトムとインパクトのあるレイヴシンセのリフのユニゾンはド直球に好み。
[FREE DL] Kenji Kawai – Ghost in the Shell [SIRO BOOTLEG] by SIRO | Free Listening on SoundCloud
ドイツのクリエイターSIROによるダークテクノ。
タイトル通り、GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊の劇中曲川井憲次 / 謡I – Making of Cyborgが元ネタ。
そのオリエンタルなサンプリングが深いテクノのビートに乗ることである種の不穏感が演出できており、元ネタ抜きにしてもお気に入りのトラック。
勿論、フリーダウンロードでございます。アリガタヤ。
You Don’t Always Have to Win (Original Mix) by Dahryl on Beatport
イギリスのクリエイターDahrylによるインダストリアルテクノ。
歪んだビートとドライな金物リズム、スモーキーなFXと全てが無機質でシリアス。
近年のメインストリームテクノに於けるハードテクノ要素の流入といった辺りも取り上げたかったので。
My House (Scorpion Mix) by Freiheit on Beatport
イタリアのクリエイターFreiheitによるダークテクノ。
1990年にリリースされたレイヴクラシックとしても名高いThe Break Boys / My House Is Your House (And Your House Is Mine)のボイスサンプリングを使い倒したもの。
テクノ、ハウスに於いてはあらゆるリミックス、ブートレグが量産されたため、この声ネタは聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか。
こちらもひたすら硬いビートが狂暴でストイック。
ドライクラップの感触とか、治安の悪さも加わっている感が◎。
DJ Ogi – Off Da Beat – Techno Factory 8FREE DOWNLOAD) by DJ Ogi | Free Listening on SoundCloud
クロアチアのクリエイターDJ Ogiによる非4つ打ちテクノ。
01月に執筆した【特集】フリーダウンロード2019 (後編)でも取り上げた通り、昨年にフリーダウンロードで公開されたトラックなのですが、2016年にEPでリリースされていたものだったことは後に知りました。
ハードテクノ、シュランツクリエイターとしてのキャリアに裏打ちされた硬質なビートが非4つ打ちで進行する変わり種。
こういったインダストリアル・ミーツ・ブレイクスみたいなテイストも飛び道具感あって好き。
Authority (Original Mix) by Militia on Beatport
イギリスのクリエイターMilitiaによる非4つ打ちテクノ。
こちらも同系統のインダストリアル・ミーツ・ブレイクススタイルのトラック。
ちょっとヒプノティックなウワモノが特徴的ですかね。
で、このMilitiaは去年デビューしたばかりという最若手の部類なのですが、本作の1つ前に出たEPが全曲インダストリアル・ミーツ・ブレイクスという、個人的にちょっと侮れない存在感があります。
この調子でテクノの垣根を壊して回っていって欲しいところです。
Crossing the Line (feat. Killa’s Army) (Original Mix) by Kahn, Pinch, Killa’s Army on Beatport
イギリスのクリエイターPinch、Kahnのタッグに加え、Killa’s ArmyがMCを務めたグライム。
この激硬いキックは絶対にインダストリアルと相性が良いと思ったのでこういう形でジャンルシフト。
硬質なビートにMCが入るとちょっとギョッとする感じも込みで、こういう異物感は追求していきたいですね。
Ninja Technique (Original Mix) by Ill_k, Chad Dubz on Beatport
ドイツのクリエイターIll_KとイギリスのクリエイターChad Dubzという国境を越えた組み合わせでありながらタイトルがニンジャという、更に異国を増しているダブステップ。
引き続きビートは硬い音を維持しながら音の隙間を開けていく試み。
深度のあるベースもこの手のジャンルならでは。
Old Days (Original Mix) by Teffa on Beatport
イギリスのクリエイターTeffaによるディープダブステップ。
ベースの深さはそのままに浮遊感のあるウワモノと、複雑なキックの配置が独特です。
こういうミニマルな感じはテクノにも通ずるところがあると思うのです。
Nasty (Original Mix) by Radio Slave, SRVD, Patrick Mason on Beatport
イギリスのクリエイターRadio Slaveとドイツのボーカリスト、パフォーマーPatrick Masonのユニット、SRVDによるヴォーグハウス。
我々世代だとRadio Slaveは2000年代の新世代テクノスターという印象が強いのですが、そのヒトクセあるトラックは時にテクノの枠組みを大きく超える瞬間があり、それが現行の彼のプロダクションにも表れている、という好例でもあります。
ヴォーグハウスについては2014年のこの記事なんかが分かりやすくまとめられておりますが、ベースミュージックのリズムやベースを取り入れたハウスの亜種です。
昨今のテクノとベースミュージックの接近というトピックからもそう縁遠い存在ではないため、是非お見知りおきを。
Freeze (Original Mix) by WLDERZ on Beatport
フランスのデュオユニットWLDERZによるヒプノティックテクノ。
ザラついたビートにアラームっぽいシンプルなリフがひたすら反復するという、ミニマルテクノの現代版ともいえるスタイル。
最近、Beatportの新カテゴリーにTECHNO (RAW / DEEP / HYPNOTIC)が加わったことが話題になりましたが、その恩恵としてこういった曲が探しやすくなることになることについては期待したいところ。
Opticon (Original Mix) by Tensal on Beatport
スペインのクリエイターTensalによるヒプノティックテクノ。
終始ノイズっぽいサウンドが鳴り響いていたり、同周期で延々と繰り返されるリズムなど、こちらもかなりミニマル指向の強い作品です。
Tensalはこの手のトラックに於いて抜群の信頼性があると勝手に思っております。
Lead Me into Temptation (Original Mix) by Sam Kdc on Beatport
スペインのクリエイターSam Kdcによるグレイエリア。
『グレイエリアとは何ぞや?』という方は以前執筆した【特集】グレイエリアをご参照ください。
リズムが複数の間で同時に進行するエクスペリメンタル音楽で、この曲も3拍子のテクノと4拍子のブレイクビートのリズムが並走しております。
それを利用して今回もテクノからドラムンベースにシフトさせました。
このSam Kdcと以前特集したアメリカのASCというアーティストはこのジャンルの第1人者ですね。
最新鋭にして極北を走るクリエイターとして是非ご留意の程。
Lazy Bloody Eyes (Original Mix) by Sinecore on Beatport
ベルギーのクリエイターSinecoreによるドラムンベース。
深いながらも主張のあるベースとテンポに対して半分の間隔で組まれたリズムが特徴的。
こちらもかなりミニマル且つストイックなテイスト。
Tenderness (Original Mix) by Abstract Elements on Beatport
ロシアのクリエイターBopとDiagramによるユニットAbstract Elementsによるドラムンベース。
漫画チックなジャケットや優しさというタイトルからは到底想像できない変なリズム、というか中盤以降完全に4つ打ちになる突然変異系トラック。
アシッドシンセが入ってくるパートもわけが分からな過ぎて本当に大好き。
既に今年に入ってから出演したパーティーで3回使っているくらい、お気に入りです。
実は未リリースの時から耳にしており、『何だこれは!?』と思ったこともあってずっとリリースを待っていた作品。
それが数年経ってようやく発売となったのが去年だったのですが、個人的には2019年の最大問題作だと思っております。
異端にして最新鋭。
Broken Mechanics (feat. OaT) (Original Mix) by Exept, OaT on Beatport
イタリアのクリエイターExeptとドイツのクリエイターOaTによるドラムンベース。
でありながら後半はテクノにシフトチェンジする、クロスオーバーにもってこいのトラック。
両パートともカッチリ作ってあって大変使いやすいというのも良ポイント。
冒頭で触れたように、この手のドラムンベース⇔テクノの遷移トラックが結構出てきたように感じます。
グレイエリアの存在もそうですが、こうやってジャンルの垣根を積極的に乗り越えていく風潮が出ているのはとても良いことだと思っております。
オランダのクリエイターAndy Laneによるテクノ。
実は原曲はこの通り、1994年にリリースされたガバだったりします。
あまりガバっぽさのないアレンジに聴こえますが、よく注意するとブレイクでうっすらガバキックが入っていたりする辺り、原曲に対するリスペクトが感じられます。
その一方、異ジャンルアレンジの不和のようなものもなくテクノに落とし込めているのが良アレンジ。
これもフリーダウンロードなので是非お持ち帰りください。
I Got What U Need (Original Mix) by Dino Maggiorana, T78 on Beatport
最後はイタリアのクリエイターDino MaggioranaとT78によるテクノ。
やはりというか何というか、レイヴもの大好き。
オルガンシンセとレイヴスタブの連打がド派手で高まります。
これも両者ともこのスタイルのテクノのトップなので、引き続きチェックを欠かせない2人。
いずれここにもスポットを当ててご紹介する予定です。
以上、Hardonize #35のトラックリストをお送り致しました。
所謂ハードテクノという言葉からは連想できないような曲も使っておりますが、2020年現在のハードテクノの解釈を広げていくとその延長線にはこういった音楽も上がってくるということでひとつ。
音楽の進化は日進月歩なので、パーティーが続く限りはレガシーの部分だけでなく、新興的な側面にも光を当てていきたいところです。
また、それらの情報についても引き続き当連載では積極的に触れていきたいと思っております。
今後ハードテクノとその周辺音楽がどういった進化を辿っていくのかについては、そこそこの期間聴いててパーティーを行っているということを差し引いても十分に興味がありますので。
あ、次回のワタクシ担当回は恒例のM3特集回になります。
国内インディーズテクノ情報をお求めの方は何卒よしなに。
次週03月10日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。