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新作テックダンス / テックトランス特集 (2020年04月版):今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/04/02

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

04月に入り、本来なら新しい学校や職場に通う方もいる季節です。
とはいえ、世間の混乱が未だ収束しきっていない状況でもあり、なかなか華やかなムードで迎えることもできないのが歯痒いところ。
直近で開催予定となっていたパーティー、イベントの中止や延期の報も毎日のように流れているのを見るのもなかなかにツラいので、早く元の日常に戻って欲しいと願うばかりです。

これによって打撃を被っている業種も多数あり、我々Hardonizeを行っている茶箱も例外ではないため、先日このようなお知らせが公開されました。
コロナウィルス感染症によるお店の運営ご支援のお願い | 音楽喫茶 茶箱 sabaco music&cafe
茶箱で使える20杯分のドリンクパスを通販もしくは店頭で購入すると、購入枚数によってリターンが得られるというもの。
このパスによって通常料金より安くドリンクが頼めるようになるため、同店に数回足を運べば元が取れます。
今後茶箱のパーティーに足を運びたいと考えている方がいらっしゃいましたら何卒よろしくお願いします。

この件については以前Hardonizeにご出演頂いたR-9さんがnoteで詳細に纏めてくださっているので合わせて紹介します。
茶箱を支援しよう|R-9|note

あと茶箱に関連するトピックとして、今週末に北海道、東京、福岡などのクラブが連携してストリーミングを行うという企画が立ち上がり、この中に茶箱も含まれております。
4月4日、日本全国に存在するミュージックヴェニューが協力するストリーミングフェスの第一歩が始動 – MOGRA 秋葉原
特にHardonizeは絡んでおりませんが、こちらもお時間がありましたら是非ご視聴ください。
すぐに日常の通りとはいかないまでも、仮想的に以前の日常に近い生活は継続していきましょうというお話でした。


しっかりね。

さて、今年からワタクシの回はハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていくものとなっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

特別連載:ハードテクノとは何か? – 第1回:黎明期編


ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

今回取り上げるサブジャンルは

テックダンス / テックトランス

です。
特別連載に於いては9回目に取り上げたテクノの質感を含んだトランス、ハードダンスのスタイルです。
煌びやかなメロディーやシンセサウンドは現行のテクノと縁遠いようでいて、その硬質なリズムはハードテクノとも相性が良いため、Hardonizeメンバーの場合はセットの終盤などに持っていきがち。
シリアスで緊張感のある音も好物ですが、なんだかんだでアップリフティングなものも未だに好きなのです。

リリースペースとしてはテックダンス発展期である2010年頃と比べると減少傾向にある、と云う点については前述の特別連載内に於いて触れた通りではありますが、完全に途絶えたわけではなく、
その一方でテクノの含んだトランスであるテックトランスが再注目を浴びており、それらの中にもテンポの速いスタイルの曲が多々存在するため、ここでまとめて紹介しようという魂胆です。

一応、Hardonizeがハードテクノのパーティーであることを念頭に置いて(分かっていますボス。本当です。)、ハードテクノとの相性が良さそうなトラックをピックアップしてお送りします。
先の特別連載期間中にリリースされたトラックも紹介したいので、今回は2019年~2020年とやや幅を広げた期間から選定しました。
ギリギリニューリリースと呼べるかな、できれば目を瞑って頂けると幸い。

あと、どうしても配信サイトの試聴ではブレイクの部分しか含まれていないケースも多々あったため、長い尺で音源が公開されているYouTubeリンクを埋め込み音源として貼り付けます。
その下にbeatportへのリンクを記載しておきますので、購入はそちらからどうぞ。

では、新作テックダンス / テックトランス紹介いってみましょう。

Everlight, Smith & Brown / Reprobate

30/03 – EVERLIGHT VS SMITH & BROWN – REPROBATE – YouTube

Reprobate (Extended Mix) by Everlight, Smith & Brown on Beatport

Reece SmithとAndrew BrownによるイギリスのプロデューサーユニットSmith & Brownと、同じくイギリスのプロデューサーEverlightとの合作曲。
これぞテックダンスと言わんばかりの王道系。
ちなみについ数日前にリリースされたばかりです。

半拍ズラしで重ねられたややクセのあるビートに疾走感のあるハイハット。
メインとなるリフはアラームのような長いスケールの音で、存在感もありつつタフさも感じさせます。
序盤から中盤、そして終盤のどのタイミングでも使えそうな優等生トラック。

Stoneface & Terminal / Rupture

Stoneface & Terminal – Rupture (Original Mix) – YouTube

Rupture (Extended Mix) by Stoneface & Terminal on Beatport

ドイツのプロデューサーユニットStoneface & Terminalによるテックトランス。
この曲に限ってはトランス特有の派手なシンセサウンドがあるわけではなく、むしろ際立つのはベースのループ感だったり、パーカッションリズム。
細かいエフェクトサウンドの配置は確かにトランスの手法ではあるものの、これはトランスというよりハードグルーヴに近いと言わざるを得ません。

音の1つ1つも非常にソリッドで洗練された印象を受けます。
これまたシーンを問わず機能しそうな出来る子といった感じ。
というわけでアッパー系ハードグルーヴが見つからないと嘆くSangoさんやその他テクノヘッズの皆さん、時代はテックトランスです。

Paul Denton / Mosquito

Paul Denton – Mosquito (Original Mix) – YouTube

Mosquito (Original Mix) by Paul Denton on Beatport

アイルランドのDJ/クリエイターPaul Dentonによるテックトランス。
こちらも派手さを削いだミニマル志向の強いボトム寄りトラック。
というかこれもメインパートで定期的に鳴っている音がハードミニマルを彷彿とさせます。

やや重心を後ろに置いたベースがテクノにしては異色かもしれませんが、全体通して無機質な感じはハードテクノに向いている筈です。
これをキーに色々なジャンルへの橋渡しができそうなトラック。

T78 / Darron (2K20 Rework)

Darron (2K20 Rework) – YouTube

Darron (2K20 Rework) by T78 on Beatport

イタリアのDJ/クリエイターT78によるテックトランス。
現行テクノシーンの一端を担うレイヴリバイバルスタイルの筆頭格でもあるT78が2020年に入ってからテックトランスにスポットを当て始めており、本作もそんな今年にリリースされたもの。

実は最近知ったのですが、T78は昔Activatorという名義で主にハードスタイルを手掛けていたアーティストでした。
1997年より現在まで続いているハードダンスの名門Activa Recordsの看板アーティストにまで上り詰めたActivatorですが、その一方でハードスタイル以外の音楽も実験的に制作していた時期がありました。
その1つが2011年に自身で設立したレーベルSubgroundの第1作目としてリリースされたActivator / Darronであり、これがアップデートされたものが本作に当たるわけです。
ちなみに現在はT78としての活動に専念するとしてActivator名義での活動は完全に休止しております。

原曲と比べると音の太さが段違いですね。
トランス由来のシンセは使われているものの、肉厚なリズム帯を軸としたかなりストイックな展開が続く曲。
黎明期のハードスタイルを遅くしたらこういう音になりそうと思わせる辺り、上述の出自にも納得です。

Hagane Shizuka / #D3Nd1

#D3Nd1 (Original Mix) – YouTube

#D3Nd1 (Original Mix) by Hagane Shizuka on Beatport

ハンガリーのDJ/クリエイターHagane Shizukaによるテックダンス。
特別連載でもご紹介しておりましたが、振り返って2019年にリリースされたテックダンスの中でも特に強烈だったなと思ったので改めてご紹介します。

国内コンピレーションへの参加経験もあるのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、このHagane Shizukaというアーティストはテックダンス、ハードハウス、ハードスタイルを含むハードダンスに対する造詣が深く、これまでに様々なサブジャンルのハードダンスを世に放ってきた凄腕利き。
その叡智が1か所に集約されるとどうなるか、という問いに対する1つの答えがこのトラックになります。
歪んだベースを核とする重厚なリズムにピアノ連打というメインパート、リズムの種類もパターンもコロコロ変わる展開とアグレッシヴ一直線。

特別連載の際はインダストリアル・ミーツ・ハードダンスとご紹介しましたが、端的に少ないワードで説明するにはこれがドンピシャだと思っております。

Lost In Noise / Heeding The Call

Heeding The Call (Extended Mix) – YouTube

Heeding The Call (Extended Mix) by Lost In Noise on Beatport

ドイツのDJ/クリエイターLostlyとポーランドのDJ/クリエイターIndecent NoiseのプロデューサーユニットLost In Noiseによるアシッドトランス。
お互いソロで作っている曲に関してはトランス全般に渡って手広く活動している印象を受けるのですが、組んだ際は今のところアシッドトランス1点絞り。
理由はよく分かりません。

アシッドトランスとはその名の通り、アシッドテクノと同様のアシッドシンセを用いたトランスです。
この曲もブレイクでこそ壮大なシンセが使われているものの、イントロとブレイク以外に於いては最後までアシッド鳴りっ放し。
そしてハードアシッドに負けず劣らず、ボトムが太い。
1つ1つのパートが長いという点も、テクノとの間に近似性を見出せます。

ちなみにこの曲がリリースされているWho’s Afraid Of 138?!というレーベルは個人的にオススメです。
『誰が138を怖がるんだ!?』という名前の通り、BPM138前後の曲、すなわちハードテクノに近いテンポの曲が大半を占めております。
リリーススパンも早く、1週間に1作品くらいのペースで現在まで活動が続いているので定期的なチェックが欠かせません。

Richard Lowe / Razorback

Razorback (Original Mix) – YouTube

Razorback (Original Mix) by Richard Lowe on Beatport

アイルランドのDJ/クリエイターRichard Loweによるテックトランス。
前述のRuptureやMosquitoに近いシリアス調トラック。
ドライブ感のあるリズムはやはりハードグルーヴと親和性高め。

最大の特徴はブレイク以降で差し込まれるカウベルっぽい音のメインリフ。
ハード系4つ打ちに於いてはあまり聴くことのない音なので、初めて聴いたときちょっと笑いそうになりました。
そういうアンバランスさにも魅力を感じるトラック。

Commander Tom / Are Am Eye? (John Askew Remix)

Are Am Eye? (John Askew Remix) – YouTube

Are Am Eye? (John Askew Remix) by Commander Tom on Beatport

1995年にリリースされたハードハウス、ジャーマントランスの傑作Commander Tom / Are Am Eye?をイギリスのクリエイターJohn Askewが2014年に非公式リミックスしたという経緯がありまして。
それはJohn AskewのSoundcloud上でフリーダウンロード公開されていたのですが、ある時を境に配布中止。
(ページそのものは今でも現存しております。)
その後時が経ち、2019年にオリジナルがリリースされていたのと同じNoom Recordsより正式に販売されたという、なかなかのストーリーを持った曲です。

原曲に倣ってアシッドあり、フーバーありという往年のトランスのフレーバーが遺憾なく発揮されている曲。
その一方でJohn Askewお得意の肌理細かいリズムは綺麗というほかなく、元ネタに頼りきりではない、ちゃんと聴かせるアレンジになっております。

完全に余談ですが、先程久しぶりにJohn AskewのSoundcloudページを見たらDave Clarke / The StormFutureshock / Sparcといったテクノ/ハウスを元ネタとするブートレグがつい数日前に公開されていたことを知って驚き嬉しくなりました。
サイケデリックトランス出身としては同じく公開されたばかりのAstrix / FeeL.S.Dアレンジにも懐かしさを覚えました。

Felix R / Danger

Danger (Original Mix) – YouTube

Danger (Original Mix) by Felix R on Beatport

オーストラリアのDJ/クリエイターFelix Rによるテックトランス。
曲名とは裏腹にエコー+ディレイによるエモーショナルなリフ回しを前面に押し出した綺麗系トラック。
その一方でハイハットをはじめとする金物リズムの重なり方はかなりテクノっぽい。
セットの終盤とかに使いたくなる感じ。

実はこの人も過去のある人で、以前の名義はDark Electric
テックダンス誕生直後の2008年にレーベルElectric Releasesを立ち上げ、テックダンスの発展に一役買ったのでした。
更にここのアーティストページを見るとni-21さんやBee. Bee.さんの名前が所属アーティストとして並んでおり、以前から日本と交流のあったアーティストでもあったわけです。

Nhato / Enigma

[OTO-055] Nhato – Enigma – YouTube

Enigma (Original Mix) by Nhato on Beatport

最後はこちら。
日本のDJ/クリエイターNhatoさんによるテックトランス。
とにかくリズム帯が厚い。
アップリフティングなシンセ層も絡まってグイグイブレイクまで引っ張っていきます。
そんでもってブレイクのユーフォリックなノンビートパートを経てNhatoさんの武器であるスケールの長いメロディーが炸裂する、神秘的サウンドスケープと銘打たれた次世代型トランス。

複数種類のベースシンセをスイッチしたり、シンセの重ね方だったりとテクニカルな部分も光るトラック。
毎度何食ったらこんな曲を思いつくのだろうと思わずにはいられません。

以上、テックダンス / テックトランスにスポットを当ててお送りしました。
過去2回サブジャンル特集を行ってきた中で早速最大分量となってしまいましたが、本連載で大々的にスポットが当たる機会もなかったなと思ったのでここぞとばかりに。
なんだかんだで我々Hardonizeクルーも多かれ少なかれ、トランスに触れて育っている部分もあるため、それがテクノと結びついた産物も同じくらい好みだったりするのです。
これらのスタイルの曲も引き続きフォローしていきたいと思っております。

と云った辺りで今回のサブジャンル特集はここまで。

次週04月07日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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【特集】『M3-2020春』同人テクノ:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/03/19

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

先週のSangoさんのエントリー、及び一昨日のYudukiボスのエントリーで告知されている通り、今週末21日の土曜日に我々3人でパーティーを執り行います。

【3/21】早稲田音泉 厳選かけ流し – twinvite

普通のクラブパーティーと異なり、B2Bとトークを通して各個人オススメの音楽を紹介しようという催しです。
当連載に於いて毎度テクノ、ハードテクノに絞って楽曲紹介を行っておりますが、そこそこ長いこと我々もDJをやっており、それら以外の音楽にも片足を突っ込んでいるワケでして。
なのでHardonizeのメンバーが主宰という形ではありますが、テクノ、ハードテクノ以外の音楽もバンバン取り上げられると思われます。
というか、取り上げます。

そして我々もまた新しい音楽を知りたい、ということでB2Bとトーク、どちらも来場者の乱入大歓迎です。
イチオシの音源を携えて(※)お越し頂けると大変嬉しいです。
入場料も1000円とかなり安めの設定としておりますユエ。
(※持参方法につきましてはリンク先告知ページをご確認ください。)

また、当パーティーは茶箱のYoutubeチャンネルにて最初から終わりまで配信されます。
体調に不安のある方や外出を控えたい方はそちらからご覧頂くことも可能となっておりますので、そちらも是非ご検討ください。

雰囲気としてはユルい感じの催しになると思われますが、好みの音楽を発見する機会になれれば嬉しいです。
21日の15時よりいつもの早稲田茶箱にて開催。
現地と画面越しの参加をお待ちしております。

さて、前回担当回の直後の週末は同人音楽即売会M3でした。
世間を騒がせている流行り病の影響で出展ブースの半数近くが空席という、十数年この即売会に通ってきて初めて見る光景がありました。
自分の周囲でも開催を延期/中止するパーティーがあったり、余波が極めて身近なところにも及んでいることをまざまざと実感した次第です。
先日コメントが発表になりましたが、05月に開催を控えているコミックマーケット現時点では開催の見通しが立っていないようですね。

そんなわけで、釣果もいつもに比べるとかなり少なめ。



状況が状況なので致し方なし。
内訳はテクノ、ハードコア、その他音楽で等比率くらいといった感じです。

とはいえ、購入したもののクオリティについては期待通りというか、中には良い意味で期待を裏切るものもあり、インディーズ音楽の面白さここにありといった塩梅でした。
と云うわけで予告通り、当連載に於いて7回目となるM3特集を行います。

前回『M3-2019秋』特集はこちら。

【特集】『M3-2019秋』同人テクノ:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2019/10/31

それより以前の特集はこちらになります。
2019春 / 2018秋 / 2018春 / 2017秋 / 2017春

これまでと同様、表記順は『【アーティスト名】 / 【リリース名】 [【サークル(レーベル)名】]』でテクノ的オススメを挙げていきます。

それでは

『M3-2020春』で買った同人テクノ

いってみましょう。

本間本願寺 / 源氏香5 [ビッグファイア]

Genjiko5_preview – YouTube

当連載的には何を置いてもまずこちら。
これまでに行ったM3特集の全ての回で取り上げているHomma Honganjiさんのフルアルバム、源氏香シリーズの第5段。

今回はハイエナジー/ユーロビート篇という本人の弁もあり、ディスコミュージック好きとしては大いに期待していたものでしたが、往年の80年代ユーロビートのリフが現代ハードグルーヴのビートにドッキングしたトラックが10曲も収録された内容にはただただ平伏するばかりでした。
お腹いっぱい感が凄い。
このハイエナジー/ユーロビートという音楽が現行のテクノから見ると音使いやテンション的に異質な要素であり、その2つが合わさることで現行のテクノにはないグルーヴが生みだされているのがよく分かります。
ハードハウスとかテックダンスにも通用しそうな辺り、昔のBootekを彷彿とさせますね。

個人的な好みは大ネタ、Green Olives / Jive Into The Nightサンプリングの卑怯且つド級にファンキーな4曲目、本間本願寺 / 御法

http://bigfire.info/

MAREAM / 0 TO X [SPECTRA]

0 to X from SPECTRA on Beatport

現行ジャパニーズテクノシーンの先鋒Hiroyuki Arakawaさんのレーベル、SPECTRAよりリリースされたMAREAMさんのデビューアルバム。
厳密にはM3の少し前にリリースとなっていたようで、現時点ではこうしてBeatport経由でも購入が可能となっております。

規則的且つ無機質なビートを軸にした重く冷たい雰囲気を纏ったトラックにスポットを当てたストイックな作品。
現行のテクノを語る上で欠かせないキーの1つであるダーク/インダストリアルをしっかり押さえた楽曲群はどれもDJユースに富んでいます。
一口にダークテクノといっても、ものによってサウンドがヒプノティックであったりスモーキーだったり、果てはハードミニマルの速度に踏み込んだりと色々な切り口があることを伝えてくるものとしても逸品。

個人的な好みは同名のテクノアンセムを彷彿とさせるリフでありながら派手さを完全に削いだシリアスな音使いが聴ける4曲目、MAREAM / Bells

http://spectra-label.com/

V.A. / M3 Exclusive [Charterhouse Records]


Charterhouse Records@M3春第一展示場K-14b / Twitter

過去にご紹介したこともあるテクノ、ハウスをカセットという媒体でリリースすることをメインスタンスとしているレーベル、Charterhouse Records
bandcampbeatportにレーベルページがあるのでバックナンバーの購入はフィジカル、デジタル共に比較的容易ではあるのですが、前回秋のM3から会場限定で未発表曲の収録されたEPをリリースしており、それが本作となります。

レーベル全体の強みである硬め且つグルーヴィーなリズムを前面に押し出したテックハウスはどれも即戦力間違いなし。
アシッドシンセあり、スペーシーなパッドあり、アーバンなブラスリフありという個性に富んだ4曲で、テックハウスの枠外に向けても十分通用すると思われます。
国内ハウスレーベルとしても重要度の高いCharterhouse Recordsのレアトラックス、是非何かしらの機会でゲトってください。

個人的な好みは暗過ぎず明る過ぎずの丁度良い塩梅のミニマルなリフとビートがBPM130オーバーの速度で展開する、テクノに踏み込んだかのような4曲目、Motoki Hada / Raohe

http://charterhouserecords.com/

ancou / YAMAKAMINARI [旅音]

YAMAKAMINARI Sample by ancou | Free Listening on SoundCloud

エレクトロニカ、フィールドレコーディング、ボーカロイド、ジューク/フットワークとなかなかコントラストの強いワードの集合をフィーチャーしているサークル、旅音
今回初めて目に入ったのでいくつか作品を購入した中の1枚がこちらです。
こういった未知のアーティストの作品と出会えるのもこういった即売会ならでは。

で、実際に聴いたところ、全く予想していなかった山岳をテーマとする電子音楽、ゴルジェでした。
ゴルジェについてはゴルジェの第一人者であるところのhanaliさんが運営しているニュースサイト、兼ゴルジェを専門とする国内レーベルでもあるGORGE.INなどが詳しいですが、
要は歪み系エフェクトが加えられた打楽器(主にタム)を主軸とする民族音楽と電子音楽の融合点と言えるジャンルです。
その呪術的でディープな雰囲気とリズムのパワフルさがアングラ的人気を博していることまでは存じておりましたが、こういった形で手に取るとは思っていませんでした。

作品の内容も自分が捉えていたゴルジェのイメージに当て嵌まるものであり、且つゴルジェがインターネットを介してその認知度を向上させたという背景を汲んでなのか、同じくネット音楽の象徴とも言うべきボーカロイドを使っているのが面白いところ。
以前よりアイディア重視の作品もインディーズ音楽の華と申し上げているのは、やはりこういったものがあるからなのです。

個人的な好みは強烈に歪み、増幅されたタムの音がエレクトロニカ的コラージュを施されたボイスサンプリングとエキゾチックな笛のフレーズとの間を縫っていく2曲目、ancou / サンサイ

https://tabionm3.tumblr.com/

V.A. / アイドル甲子園 [アキラトラックス]

AKTX-001 V.A. – アイドル甲子園 – YouTube

最後はこちら。
匿名アーティストによる作品名からしてどうなのかと思ってしまいがちな1枚。
前もってお伝えすると、いわゆるアイドルをフィーチャリングした作品であるとか、リミックスであるとかではなく、むしろ関係ありません。

更には今回リリースされたものはリマスタリング版に当たりまして、オリジナルのリリースは2000年、つまり20年前。
そのリリース情報を示すページがDiscogsに存在するのですが、よくよくクレジットを見るとその匿名アーティストが誰なのか判明します。

で、肝心の内容は歌謡曲、TV番組、そして往年のレイヴミュージックに至るまであらゆるものがサンプリングされ、レイヴは元よりアシッドテクノ、ハードハウス、ハッピーハードコア、ブレイクビーツに魔改造された下世話とも言うべき楽曲がずらり。
平たく言うとナードコアというやつです。
レイヴミュージックの精神性というべき快楽性の追及というテーマを各種サンプリング、及びサウンドから完全踏襲している作品。
アルバム名、トラック名の脱力感、そしてこの楽曲の内容など総括すると、正体が分かった方なら『あの人なら仕方ない。』と思うはず。

個人的な好みは電気がビリビリするボーカルを含むやっぱり下世話なサンプリングを重ねに重ねたレイヴ精神満載のテクノである12曲目、— / FLASHBACK

まだまだ取り上げたい作品は沢山ありますが、今回はここまで。
購入枚数こそ少なかったものの、個々の作品そのものの濃度は従来通りでいつも通り、満足しております。
インディーズ音楽の中でも限られた界隈にはなってしまいますが、国内音楽の動向を測るという意味でもこのような即売会には意味があると思っておりますので、未見の方であれば1度足を運んでみては如何でしょうか。
例えば今回紹介したCharterhouse RecordsのM3 Exclusiveや、アキラトラックスのアイドル甲子園といったレア音源と出会えるのもここならではの魅力ですので。

というわけでYudukiボス、ワタクシはラーメンを所望します。
今週末に東京麺珍亭本舗でも可。

次週03月24日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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