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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/11/30

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

先週Ceephax Acid Crewを見てきました。
Squarepusherの実の弟で、ハードウェアを駆使したアシッドテクノのライブを長きに渡って行ってきたアーティスト。
今回もブース上には機材がずらり。
手法はアナログでありながら次々に変化を見せるサウンドは懐かしさと荒削りな高揚感を同時に与えてくれて実に楽しかったです。
個人的に好きだったSidney’s Sizzlerが聴けたことも一層。


Sidney’s Sizzler (Original Mix) by Ceephax Acid Crew on Beatport

先週の話で続けますと、これと同じ日にblock.fmでRemo-Con氏が行っている番組Remote Controlが303回目を迎えたと云うことでアシッドテクノの核となる音を出すシンセサイザー、TB-303とTB-303クローンの特集を組んでましたね。
リスナーから受け取ったフレーズをリアルタイムで打ち込んだりしてて自由奔放な放送内容となっておりますのでお聴きになられていない方はアーカイブが公開されているうちに是非。
素人耳にもかなり滅茶苦茶と思える音階の羅列でもカッコ良く聴こえてしまうアシッドテクノの魔力がひしひしと伝わってきます。
Remote Control | block.fm

更に同日、アシッドテクノの大御所であるHardfloorが来日してました。こちらは行かれた方も多いのではないでしょうか。
1992年にリリースされた名曲、Acperience 1から25年経ってAcperience 7が発表されたことは大きなニュースでしたし、それもアニメ『交響詩篇エウレカセブン』の劇場版挿入歌として使われると云うこともまた拍車をかけています。
旧来のテクノか最新鋭のテクノを追っているわけでもなければそう頻繁に聴ける音ではない筈ですから、ライブに行った方々の大半は新鮮に聴こえたのではないかと思われます。行きたかったけど仕方ない。

そんなワケで疑うべくもなくアシッドテクノ日和と呼べる日がありまして、かくいうワタクシも週末のプレイでちょろっとアシッドテクノ回したりもしてしまいました。(しかも全然テクノと関係ないパーティーで。)
まだ余韻に浸っている方もいると信じ、今回取り上げるのもアシッドテクノとハードテクノに因んだこの方にします。

【Sterling Moss】

Sterling Moss

https://www.facebook.com/sterlingmossuk
https://soundcloud.com/sterlingmoss

イギリス、ロンドンのDJ/クリエイター。
2001年にリリースされたデビュー作品から現在に至るまでアシッドシンセを軸に置いたハードなダンスミュージックをリリースし続けているベテランです。
Raceway Recordings、RaceTrax、Rebeltekなど自身のレーベルを複数抱えながら多くのアーティストと交流を持ち、Aaron Liberator、Chris Liberator、Julian Liberatorが立ち上げたStay Up Forever、D.A.V.E. The Drummerがボスを務めるApex Recordings、Hydraulix、そしてGuy McAfferによって運営されているRAW (Ripe Analogue Waveforms)など大御所レーベルにも積極的に作品を提供しております。
北米、南米、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリアの25カ国以上でツアー経験を持ち、日本にも2009年と2012年に来訪。
特に2012年はStay Up Foreverのリリース記念パーティーでの来日であったのでAaron Liberator、Chris Liberatorと共に招聘されていたようです。めっちゃ豪華。

また、彼の来歴を語る上で欠かせないのがMC-909の開発に携わったことです。
MC-909は2002年にローランドから出たサンプラーやシンセサイザー、エフェクターが一体となったワークステーションで、リズムマシンとして使えたり、あわよくば1台完結でトラックメイキングまで行えると云う高機能なシロモノ。
液晶画面が搭載されていたり、USB経由でPCとの連携も容易になったと云う点で当時としてはかなり画期的な要素もあったこの機材のプログラマーとして抜擢されたのがSterling Mossでした。
ハウス、テクノ、トランスなどの4つ打ちダンスミュージックに大きく貢献した機材であったことから、彼の敏腕っぷりの片鱗を窺い知ることができるでしょう。
余談ですがCo-FusionのWall5ことタニヘイゴ氏やRemo-Con氏がこのMc-909にプリセット音源を提供しています。

さて、Sterling Mossのサウンドについてですが、何と言っても印象深いのはダイナミックでバンギンなアシッドテクノでしょう。
ハードテクノ、ハードダンスの垣根をアシッドと云う武器を持って軽々と越えていく楽曲が多く、アシッドテクノシーン以外にもAndy FarleyやYoji Biomehanika氏らトランス系のDJによるMIX CDにも収録されました。
(余談ですがNish氏のリミックスも行った経験もあったり、何かと日本とはちょくちょく関わりのある方ですね。)

DJに於いても非常に卓越したスキルを持っており、一般的な2デッキに加えて『3番目の何か』を使うことが多くあるようです。
それは時にターンテーブルであり、2曲を繋ぐ際の橋渡しとしてアカペラを重ねたりスクラッチを加えたりするために使い、ある時はサンプラーやリズムマシンであり、より複雑なグルーヴを表現するために用いられます。
これらはハードテクノやハードダンスの持つエネルギーを最大限生かすために考え付いた手法であると語られており、音楽の融合によって生み出される高揚感に比重を置いていることが汲み取れます。

同時に彼はこれらのハード系4つ打ちの垣根が崩壊してきているとも語っており、『それがテクノであれトランスであれ、自分が良いと思ったものをプレイしている。だから特定のジャンルを挙げて自分のスタイルを説明することは難しい。』と云うような発言を残しています。
従って厳密にはアシッドテクノの人とここで形容したのもSterling Mossからすれば良しとしないのかもしれません。
事実、彼はE.S.C.と云う名義でメインストリームテクノをリリースしたり、The Boardroomと云うエレクトロロックバンドを結成したりもしています。
多くのクリエイターと親交を持ち、世界中の魅力的なサウンドを絶え間なく巡りながら得た新しい音楽とアイディアをプロダクションやDJに反映させる探求者、それがSterling Mossです。
DJたる者であれば彼のようなハングリー精神は欠かせないものであると肝に銘じましょう。

そんなSterling Mossのオススメはこちら。

Dynamo City / One Night In Hackney (Chris Liberator & Sterling Moss Remix)

Sterling Moss / Bring The Bass

Sterling Moss / Don’t Fuck Around

Sterling Moss, Lethal One / Turn It Up

Sterling Moss, DVS / Techno Punks

Paul Janes, Sterling Moss / Karneval

次週12月05日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/11/16

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

前回Yudukiボスのエントリーでまたご指名頂きました。
出身はサイケデリックトランスのTAK666です。

ハードグルーヴと親和性の高そうなサイケデリックトランスを紹介するよ!【今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2017/11/14】
11/26開催のPandora Boxというイベントのためにテックダンスをピックしようと思ったものの、2ヶ月近くハードダンスのジャンルをノー...
モロにサイケデリックトランス紹介されてて結構面食らいました。
特にMystical Complexの名前をHardonizeで目にするとは。僕も大好きです。

2012年頃のサイケデリックトランスのトピックとして、ようやくEDMと接近を図ったと云う点が挙げられます。
フレーズを取り入れたり、ネタモノが出回るようになったり、まぁどこのジャンルでも起こっていたようなことに見えましたが、あろうことかほぼ全ての音がEDMのそれでサイケデリックトランスを作り始めた一派が出てきました。
Mystical Complexはその代表格ですね。
リミキサーのSokratesもそうですし、BlastoyzなんかはSoundcloudでバンバンブートレグ出してました。
汎用性の高いEDMの音でありながらグルーヴ感とか展開、細かいエフェクトの作り込みは従来のサイケデリックトランスを踏襲しているため、面白い聴こえ方をするトラックが多いです。
カテゴリーとしてはハイテック・サイトランスとか、ハイテック・フルオンと呼ぶ説がありましたが、あんまり定着はしていない様子。
蛇足ですが、サイケデリックトランスのカテゴリーって細分化し出すとちょっと面倒なことになるくらいあったりします。
詳しくはこことか参考にしてみてください。
http://psytranceguide.com/
サイケデリックトランスとサイトランスが別物説とかあるんですね・・・。

ちなみに日本だとlapix氏と云うアーティストがこの手の音楽を得意としています。
https://soundcloud.com/lapixmusic
こちらもご参考までに。

なぜか冒頭からサイケ話になってしまいました。
とはいえ、ちょっと今回は(今回も?)ハードテクノ話でもなく、先日行われたHardonize#27にご出演頂いたゲスト両名がプレイしていた音楽に焦点を当てます。
あ、ご来場頂いた方々ありがとうございました。
無事・・・いや、音的には大惨事だったかもしれませんが、大枠無事に開催できました。

と言うのも今回ゲストの2人、Die氏とBee.Bee.氏、前者はともかく後者のプレイ中に『こういう音楽なんて言うの?』と云う質問が寄せられました。
確かに広く知れ渡っているとも言えず、偶然耳にする機会もほぼない音楽ではあります。
と云うかHardonizeが軸足を置いているハードテクノだって一般的とは程遠いわけですし。
ただ、こんな風に周辺音楽もひっくるめて興味を持ってもらえると我々としては願ったり叶ったりであります。
そういうところにスポットを当てて運営していきたい。

なので上述の通り、今回は前回のおさらいです。
現場にお越し頂いた方々はあの空気を思い起こしながら、ご都合の合わなかった方は『こういう音楽もかかるんだ。』くらいの面持ちでご覧頂けると嬉しいです。

まずゲスト先鋒、Bee.Bee.氏のプレイバック。
彼がプレイしたのは『UKハードハウス』と云う音楽で、その名の通りイギリスで発展したハードダンスの1種です。
ハウスと名前に冠しておりますが、ハード◎◎と付く音楽の中で最も原型を留めていないと言って良い程、一般的なハウスミュージックとは別物。
どうも初期はあのハウスで、進化の過程でこうなったらしいですが・・・ちょっと歴史的な沿革については分かりません。
BPM幅は140~155に多く、音の特徴としてはトランスがロングスケールのメロディーを主軸に置いているのに対し、短いリフをフーバーやアシッドと云った攻撃的な音で鳴らすと云う点や、キックに重点を置かず、短い間隔で刻まれたハイハットや完全裏打ちのベースで前のめりなグルーヴを擁していると云った点が挙げられます。
ブレイクビーツやベースミュージックとは違った『ワルい』音が鳴っているジャンルです。

UKハードハウスの原型となる音は90年代後期には既に存在していたようです。
当時の有名曲と言われてパッと思いつくのはこれですね。

Cortina / Music Is Moving (Bk & Dbm Amber Mix)

シンプルな構成ながらレイヴの残り香のようなオルガンシンセが耳に残ります。声ネタも聴き覚えがあると云った方もいるかもしれません。
後年にもジャンルを超えて様々なリミックスが出たクラシックアンセム。
こういうバウンシーなベースもUKハードハウスの特徴の1つと言って良い気がします。
事実、このベースをもっと際立たせてアホっぽくした音楽がスカウスハウスと云うカテゴリーで、今も現存しております。

先の曲が90年代のリリースであり、所謂オールドスクールに分類されるわけですが、サイケデリックトランス同様にダブステップ、EDM出現後に大きく音の転換がありました。
特にトランスと比べ、シンプルなリフ回しを持ち味としていたこともあってブレイク明けで急激にテンションダウンさせるような曲が結構出回ってました。
分かりやすい例としてはこの辺。

Andy Whitby, Karlston Khaos / Fire

ブレイクで綺麗目シンセとボーカルで煽っておいてガクッと肩の力が抜ける展開。
今はもうすっかり定着していた手法ですが、ド派手なシンセを武器にブレイク明けで一気に盛り上げることを主眼に置くハードダンスに於いてこう云った曲は一際異彩を放ってました。
むしろ当時玉石混合と化していたベースミュージックの流れでこういったトラックが2、3曲放り込まれているなんてMIXも出ていた程です。

一方、それらとは別のベクトルでひたすらフーバーやアシッドなどのシンセ使いに魂を削っていた界隈も存在してて、より攻撃的な音を前面に打ち出した活動を展開していました。
HardonizeでBee.Bee.氏がプレイしていたのはこっちです。
以下の曲も実際に当日かけていたもの。

Grady G / James Brown Is Still Alive

タイトル通りのネタモノです。あのオーケストラシンセもUKハードハウスによくマッチしてますね。
こうなるとベースの打ち方もどちらかと云うとサイケデリックトランスに似てくるわけなのですが、疾走感は紛れもなくUKハードハウス。
前出の雰囲気とは違えど、アシッドテクノもイギリス育ちであることを考えるとこういった進化を遂げるのもある種の必然と捉えることもできるのではないでしょうか。
しかしホントにガラが悪い。

ちなみに日本だとquad氏と云う方がアシッド寄りのUKハードハウスを多く手掛けております。
ゲーム音楽や同人音楽のフィールドで古くから活動されている方なのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
http://luvtrax.com/
https://soundcloud.com/luvtrax

続いてDie氏のプレイしていた音楽について。
いやはや、凄まじかった。改めて言うまでもありませんが、オランダ産の高速ダンスミュージック、ガバでございます。
何度か告知でも触れておりましたが、Die氏はHardonize開催前までテクノ紀行と称してオランダを凱旋しており、現地で買い付けたレコードをメインに持ってきたと云うことでこうなりました。
ハードコアに関してはそこそこ聴いてきている自負はあるものの初めて耳にする曲もあったり、しかもそれを茶箱のレイオーディオ環境で耳にすることもあり、大変貴重な機会だったと感じております。
さておき、改めてガバの特徴として挙げられるのはBPM150~200以上と云う速いテンポ、とにかく派手なシンセ、そして何と言っても過度に歪んだガバキックと呼ばれるキックなどでしょう。
世間に認知され始めたのが90年代初頭であることを考えると、キック1音をジャンルの特徴とする音楽ってかなり珍しかったのではないかと思います。

当日のDie氏がスポットを当てていたのはその中でもハッピーガバと呼ばれる文字通り、底抜けに明るい(≒アホっぽい)メロディーを取り入れたガバでした。
具体的にアホっぽさを言葉で説明するのが難しいため、代表曲を挙げます。

Technohead / I Wanna be a Hippy (Radio Mix)

これです。これですとしか説明できません。PVも合わせて何度再生したか分かりません。
単調なシンセ、等間隔で並んだ軽いキック、ピッチの高い声ネタなど全てがアホっぽく聴こえる原因を作っています。
ちなみにこのハンマーはMokum Recordsと云うこの時代を代表するガバのレーベルのロゴマークです。
Die氏も1曲目にこのマークのヴァイナルをターンテーブルにセットしててSangoさんと『ヤバい、ヤバい。』みたいな言い合いをしてました。
I Wanna be a Hippy (Radio Mix) by Technohead on Beatport

もうちょっと時代が進むとよりクラブミュージックとして機能するように構成された曲が出てくるようになります。
90年代中期に出たこちらはワタクシ特に大好物でして、未だにハードコアのパーティーに出ると使いたくなります。

Trickster / Emphasis On Hardcore

多少格好良く聴こえる筈です・・・多少・・・。ここで使われているキックがガバキックと呼ばれる音ですね。
ガバとは別に当時の高速ダンスミュージックとしてハッピーハードコアと云う音楽がありますが、この2つの音楽は近いようでいて出音に差があるので上手いこと繋ぐために機能する曲が実は限られていたりします。
そういう合間を縫ってくれるこういったナイストラックを多く輩出していたのがRuffneck Recordsと云うレーベルでして、これもまた当日Die氏が針を落としてました。

こういったガバも現在はすっかり形が変わり、洗練されてちゃんと格好良い音になり、大規模なフェスもオランダに限らず世界中で行われています。
従って上で挙げたような旧来のガバは2000年代初頭からすっかりリリースされなくなったわけなのですが、つい3年前に大きな出来事がありました。

DJ Paul Elstak and Mental Theo featuring Gin Dutch / Raving Beats

上のI Wanna be a Hippyが1995年リリース、こちらが2014年リリースです。何1つ変わってない音が20年後にもリリースされたとあって界隈騒然としました。
しかもリリース元がかつてAvicii、Nicky Romero、Steve Aokiなども所属し、現行のEDMシーンを代表するレーベルSpinnin’ Recordsであったこともビッグニュースでした。
尚、Paul Elstakは黎明期よりガバと云う音楽を引っ張ってきたシーンに於ける第1人者。
DJやプロデュースで有名になり過ぎたあまり、本国オランダではタレント、俳優、スポーツ選手としても迎え入れられているそうです。スケールが違い過ぎる。
Raving Beats – DJ Paul Elstak and Mental Theo featuring Gin Dutch – Spinnin Records – MP3/WAV Download at Trackitdown

日本でも同人音楽やゲーム音楽などで今でもたまに耳にする機会があります。
テクノと近いところだと何と言ってもリッジレーサーのBGMでしょう。
加えて、大阪のDJであるC-TYPE氏が監修している『日本のガバ年表』と云うウェブサイトにて日本におけるガバシーンの流れを一読できるようになっておりますのでこちらも是非。
日本のガバ年表

以上が今回のHardonizeでゲスト両名によって流された音楽の概要になります。
思いのほか長くなってしまった割に本当に上澄みだけ掬った形ですが、世の中には面白い音楽が溢れているなぁと思うばかりです。
進化を続ける音楽もあれば残念ながら後に続かない音楽もありますけれど、その両方に焦点を当てられるのもまた1つのDJの醍醐味ではないかなと考えております。
勿論、ハードテクノも明日にはどうなってるか分からない音楽ですので、注意深くウォッチしていかねばいけませんね。
まだまだお付き合いの程よろしくお願いします。
(最後くらいハードテクノの名前を出さないとレジデントに絞め殺されそうなので。)

次週11月21日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。