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今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/03/08

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

03月に入り、ようやく暖かくなったと思ったらまた気温が下がってきました。
こんな不安定な気候にもなると季節の変わり目とやらを感じざるを得ません。
個人的に飯が美味く、汗をかいてみっともないことにならずに済む冬は好きな季節なので、それが終わってしまうことには一抹の寂しさがあります。
(余談ですがワタクシは冬も半ズボン派であり、挙句その格好でクラブに自転車で乗り付けるので、『何で生きてるの!?』と言われることがあります。褒め言葉と受け取っております。)

そんなワケでしんみりとした気持ちを表すような音楽を今回は紹介したいと思うのであります。
メロディアスで儚い感じ。
となればちょっとトランスに近くて、本連載の(一応)テーマであるハードテクノに絡むアーティスト。
以前紹介したNorman Andrettiもテーマ的にはピッタリですが、もっとベテランがいました。
この方々を今日はご紹介します。

Filterheadz

filterheadz
https://www.facebook.com/FilterheadzOfficial
https://soundcloud.com/filterheadz

ベルギー内陸部、ルーヴェン出身の2人組ユニット。
アーティスト写真の通りお互いソックリな風貌をしておりますが、それもその筈で彼らはなんと兄弟。
しかもこのFilterheadz結成前となる1980年代には2人共バンドを結成しており、The PoliceやU2などUKロックに影響された音楽活動をしていたそうです。

しかし90年代に入り、Roger SanchezやMasters at Work、David Moralesなどハウス界のレジェンド達に触れたことでダンスミュージックへ活動をシフト。
ディスコやユーロダンスのサンプリングを駆使したハウストラックをいくつかの変名義でリリースしたのちの1999年にFilterheadzと名前を決め、2人で本格的なユニットを始めるようになります。

最初期の音楽こそハウスであるものの、Carl CoxやMarco Baileyの影響でテクノのエッセンスを、また当時大きな影響力を持っていたイビザのシーンに触れたことでトランスの要素を取り入れた『美しくも鋭い』曲は多くのプロデューサー、DJの目に止まることとなりました。
特にCarl Coxのレーベル、Intec Recordsから2002年にリリースされたSunshine(後述)はトライバルテクノとプログレッシヴが融合した傑作としてスマッシュヒットを記録します。
これによってテクノ、ハウスシーンに於ける信頼を勝ち取った彼らは、その後もGreen Velvet / La La LandEric Prydz / Call on Meと云った大御所のリミックスも手掛けることとなりました。

2005年にはよりメロディアスなハウス路線を強調するように自身のレーベル、Love Distortionをスタート。
同レーベルから出たBlue Sky HappinessEndless Summerなどのアンセムトラックを生み、SPINNIN’ RECORDS、ID&T、Armada Musicと云った錚々たるトランスレーベルからコンピレーション収録のオファーが舞い込むようになります。
(この辺配信されていないのが実に勿体ないくらいのお気に入り。)
しかし2007年頃よりほぼ作曲を停止、ライブ本数もゼロと云う年がしばらく続きます。
理由については諸説あるものの、彼らがユニットを結成する切欠となった初期の音楽と、当時のシーンが求めていた音楽に乖離が生じていたことは無関係ではないでしょう。

しかし2012年にFilterheadzは帰ってくるのです。
それもMarco Baileyのレーベル、MB ElektronicsとUmekのレーベル、1605からのリリースと云うお土産を抱えてきたことは広く話題となりました。
休止の間に磨かれたサウンドは洗練さを増しており、シンプルながら深いビートに今まで培ってきた綺麗なシンセが浮遊する、まさしく『美しくも鋭い』曲に仕上がっています。
また、上記のようなベテラン同士の交流も盛んな一方、Raul Mezcolanza、D-Unityと云った若いアーティストとも積極的にコラボレーションを行っており、新しい感性を取り入れることに躊躇しない姿勢が見て取れます。

テクノと云う音楽は時代の潮流に流されないようでいて、実はそれらに影響を受けないと云うわけではありません。
従って長く活動を続けるためには多くの代償を伴います。
Filterheadzの歩んできた道筋もこのように決して平坦なものではなかったワケですが、それユエにドラマチックな存在として世代を超え、多くの支持を受けています。
最先端を走りながらも夢中になった『あの頃』を忘れず、そして『あの頃』に匹敵するものを追い続けている、そんな兄弟です。

そんなFilterheadzのオススメ楽曲はこちら。

Tomaz, Filterheadz / Sunshine

ハードテクノ時代の作品そのいち。上記で挙げたメロディアス+トライバルな1曲。

Tomaz, Filterheadz / los Hijos del Sol

ハードテクノ時代の作品そのに。ラテントライバル系。00年代前半のテクノを象徴するアンセム。

Filterheadz / Yimanya

プログレッシヴ時代の作品。数多くのリミックス、ブートレグが作られた大ヒットワークス。

Filterheadz / Rubicon

活動復帰後の作品。培ったプログレッシヴの要素を踏襲しつつ深いボトムの響く現代メインストリームテクノ。

Pagano / Starburst (Filterheadz Remix)

珍しいレイヴスタブもの。インパクトもありつつテクノ~ハウス間で使いやすいビート。

これらに加えて最近のFilterheadzの作品をもっと知りたいと思ったら、去年出たアルバムが大変オススメ。
現代メインストリームテクノの流れを追える上、周辺音楽の要素も取り入れたFilterheadzらしい曲もあったり、過去作品のリミックスもあったりとボリューム満点の逸品。

Filterheadz - Magnetic
Filterheadz / Magnetic

ちなみに今回このアーティストを取り上げた理由はもう1つあります。
今も昔もFilterheadzは海外パーティーに引っ張りだこで、日本にも何度か来日経験があるのですが、そのうちの1つは前回Hardonizeにご出演頂いたTAKAMI氏の所属するREBOOTの15周年アニバーサリーでした。
いよいよ今週末はREBOOT 15th ANNIVERSARY TOUR FINAL!! – DJ Q’HEY blog
Marco Baileyとペアで来たと云うのは凄い。
これが2013年。と云うことはそこから5年経った現在2018年はREBOOT 20周年に当たるわけでして、そのアニバーサリーが行われるのが今週末なのです。

青山MANIAC LOVE、代官山AIR、渋谷amate-raxiと都内では名高いハコを渡り歩き、現在は渋谷contactに拠点を構えてテクノを牽引し続けているパーティー。
是非足を運んでみてください。
REBOOT – The Best Underground Techno Party in Tokyo

そのTAKAMI氏にHardonize後のコメントで『新しいテクノも聴け!』と言われたのもあって今回の選出になった話もありますが・・・ここまでにしましょう。

次週03月13日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。


今週のオススメハードテクノ – Resident’s Recommend 2018/02/22

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

改めましてHardonizeは10周年を迎えることができ、パーティーも無事に行うことができました。
お越し頂いた方々、この記事をご覧頂いている方々、本当にありがとうございます。

ゲストとしてお招きした方々についても、それぞれが持ち味とするハードテクノを表現して頂き、嬉しかったです。
Yamajet氏はディスコ調だったりラテンノリのファンキーなハードテクノの乱れ打ちと云った感じで、テクノのストイックではない面が見れた時間帯でした。
自身のマイクパフォーマンスも加わって、パーティー感ありました。
本間本願寺氏は常に2曲以上、多い時は4デッキ同時に再生し、リアルタイムでグルーヴを入れ替えていく技巧派プレイ。
レコードでビートキープしながらロングミックス出来るのも凄いですが、手元を見ても何がどういう思考の元で行われているのか全く分からなかったです。
それらに対してTAKAMI氏は徹底的に低音に寄ったエッジのきいたテクノを主軸としたプレイ。
鳴っている音数は今回の出演陣の中で1番少なかったと思うのですが、暴力的なまでに臓に響くストロングなひとときでした。
そしてそれらと我々レジデントのプレイをKNOCKHEADZと共に映像演出して頂いたのが、今回フライヤーデザインも兼任したcoda氏。
動きと色彩豊かな映像が各々のハードテクノに華を添えていたように感じました。

そんなバッチリ格好良かったゲストの方々に対し、我々レジデントの方はとにかくヤンチャ小僧過ぎました。
774muzikさんとYudukiさんについては直近の連載(※)でトラックリスト書いておりますのでそちらをご覧頂くとして、Sangoさんもこの日トップバッターにも関わらずドアンセムだらけの内容で『10周年』にかこつけたフザけまくり。


(Yudukiトラックリスト)http://hardonize.info/recommend/post-2215.html
(774muzikトラックリスト)http://hardonize.info/recommend/post-2190.html

余談として、Hardonizeが終わった後そのまま渋谷へ移動してWILDPARTY氏とokadada氏がオーガナイズしているAUDIO TWOへ遊びに行ったのですが、そこでもStreet Carnivalやら、Polynasiaやら、Evergreenやら流れており、この日は何かがおかしかった。
普段こんなハードテクノが流れるパーティーではないのに・・・。

そこまで言うならお前はどうなんだと云う声が聞こえてきそうですが、ではご覧に入れましょう。
こちらが私のHardonize #29トラックリストです。

テクノ~レイヴ~ワープハウス~ディスコ~ハードグルーヴ

01 / Sakura / 猫鍋 [Youtube]
02 / DENKI GROOVE / KILLER POMATO [iTunes]
03 / Cristian Vogel / Don’t Take More (Jamie Lidell Remix) (2015 Remaster) [Bandcamp]
04 / Grooveyard / Watch Me Now [Youtube]
05 / THE PRODIGY / CHARLY [Youtube]
06 / SL2 / On A Ragga Tip (Original Remastered) [Youtube]
07 / Hyper Go Go / High (Rhythm Masters Remix) [Youtube]
08 / Club Royale / Give A Little More [Beatport]
09 / Kadoc / The Nighttrain (2004 Original Mix) [Beatport]
10 / Trap Two / It Feels So Wrong [Beatport]
11 / Furby / LOVEマシーン.Edit [Soundcloud]
12 / the percussionz / dance! tokio! dance! (2020 Cristal Tokio mix) [Bandcamp]
13 / DJイオ / パラレルワープハウス’98 [Bandcamp]
14 / Cameo / Word Up (Reaky’s Bootleg Mix) [Youtube]
15 / Omega Drive / Dance Like Animals [Beatport]
16 / Thermo / Cuba [Beatport]

ヤンチャ1等賞取りに行きました。
それ以外の思惑としては前後のYamajet氏、本間本願寺氏と被らないように且つ最後にはハードテクノに戻ってくると云うのがありました。
ストイック方面も想定していたのですが、レジデントが上記の有様だったのであえなくお蔵入り。また今度やります。

と云うわけで数曲かいつまんでご紹介します。

Sakura / 猫鍋


ジャケットを見て察しがつくように、同人音楽。
10年前の同人音楽特集回を書いた際に古い同人音楽括りでこの存在を思い出しました。
サイドプロテアのみらゐ氏、studioCampanellastudioCampanellaのbermei.inazawa氏を主要メンバーとした再生ハイパーべるーヴと云うサークルによる2002年の作品。
クラブミュージックと云う括りではなくポップスの要素が強いものの、全曲に渡って電子音が散りばめられた作り込みは2002年と云う時代を考えると異様で、茶太氏、霜月はるか氏、片霧烈火氏など後にアニメ・ゲームソング界のスーパースターとなる方々が参加されている点も合わせて伝説的なアルバムと言って良いでしょう。

この曲に関してもコミックソングと思わせておいて、バックトラックはテクノと呼ぶしかない得体の知れない『何か』。
特に細かく音程の変わるベースを前面に押し出した作りはのちにベースラインハウスと呼ばれる音楽の特徴でもあり、未来を先取りしてます。
今聴いても全く遜色ないと云うか、むしろベースミュージック隆盛の今こそ改めて聴いて欲しい思いもあります。

一時期プレミアが付いておりましたが、今はなんとbermei.inazawa氏の個人サイトからダウンロード購入が可能です。
実媒体が入手困難となっているものをこうしてデータ流通させてくれる姿勢は本当にありがたいですね。
bermei.inazawa official web site

Grooveyard / Watch Me Now


Secret Cinemaが変名義で1995年にリリースした曲。
テクノ、ハウスシーンでは大ヒットしたものですが、このブレイクビートとも4つ打ちともつかないパーカッシヴなリズムと、度を越して深いベースはジャンル不定だと思っていて、変ミュージック好きとしては1つ前に使ったDon’t Take More (Jamie Lidell Remix)と合わせて外せません。
従ってクロスオーバーの際にも非常に役に立つと思っていて、レイヴブレイクスもそうですし、ジャズや民族音楽にもこの1曲で橋渡しできます。
早回しするとジュークっぽくなり、遅くしてもヘヴィーなテックハウスとして使えるのもミソ。
インパクトも相まってとにかく超便利な曲。

Kadoc / The Nighttrain (2004 Original Mix)


UKハードハウス、ユーロダンス、レイヴ、テクノ辺りの90年代ヨーロッパカルチャーがごちゃっと混ざった陽気な音楽、ワープハウス。
反復するベルの音とバウンシーなベース、小気味良いハイハットが特徴的なこのトラックも当ジャンルを代表する作品ですね。

上記の通り、今回のタイムテーブルでYamajet氏と本間本願寺氏の間で2人の流れを汲むものを考える必要があったので、古い路線に走った感じです。
ハードグルーヴより遥か昔にもファンキーなテクノはあったんだよと云うことで。

ちなみにこの音楽についてはHardonizeにもご出演頂いたDJイオ氏がピコピコカルチャージャパンで掲載した記事が秀逸なので是非ご一読頂きたいところ。
ピコピコカルチャージャパン – DJイオの「はぐれDJ道」第8回「ワープハウスと元ネタ」

加えて、この手の音楽もBeatportで探すと意外に見つかるので入手も容易だったりします。
テクノ、ハウス、トランス以外に、レイヴ、ガラージ、ベースライン系なんかとも相性良かったりするので、これもまた色んな人に薦めたい音楽ですね。

the percussionz / dance! tokio! dance! (2020 Cristal Tokio mix)


ネタが大量に詰め込まれたジャパニーズアシッドディスコ。
常に何かしらのサンプリングが手を変え品を変え鳴らされている悪ノリっぷりがとても素敵。
フリーダウンロードなのでDJにもそうでない人も是非ポチッと入手して欲しい。

この曲のリリース元となったOmanticRecordsについては過去の連載で取り上げているので是非そちらをご覧ください。
OmanticRecords 特集回
レーベル名も含めて本気なのかネタなのか分からない、ある種のネットレーベルらしさが光っております。

Thermo / Cuba


最後に流したのがこちらのハードグルーヴ。
曲名がキューバであるのに違わず、ラテン系のウワモノを疾走感のあるリズムが支えるコッテコテの仕上がり。大好きです。

Thermoはブルガリア在住で、DJとしてのキャリアは20年近くあるベテラン。
クリエイターとしての出世作はハードテクノであり、特に派手な音使いを得意とする傾向が見えます。
この曲がリリースされた2010年前後の彼の作品は特にそういう印象を受けるので、アップリフト系が好きな方に聴いて貰いたい。

尚、後ろに控える本間本願寺氏を意識したつもりでしたが、初っ端シカゴハウスをプレイされていてどうやら要らぬお節介だった模様。

その他の曲も全てレビュー書けるくらいには好きですが、今回はここまで。

ワタクシ個人は特定のジャンルに依存しないプレイを心がけておりますので、Hardonizeに於いてもハードテクノを軸にしつつ、シッチャカメッチャカ散らかしていくのが好き。
あえて他の人と同じことをやる必要はなく、他の人がやらないスキマスキマを埋めていく感じで今後ともやっていきたいと思います。

でもってHardonizeレジデントが3名出演するパーティーが今週末ございます。

Techno Alliance Meeting
Techno Alliance Meeting

秋葉原重工Back 2 Bellforest、そしてHardonizeなど、東京で行われているテクノパーティー同士が協力し、各パーティーに所属していたり縁の近いアーティストにスポットを当てたダウンロードコンピレーション、TECHNO ALLIANCE
そのフラッグパーティーが土曜日に行われます。
互いに交流はあるものの、共演回数は少なかったりする中でこうして一堂に集まると云うのはなかなか実現しなかったことでして、しかもクリエイター陣は自身の曲によるライブセットで臨む方も多数いる模様。
どういった内容になるのか大変楽しみです。

HardonizeからはyudukiさんがDJで、774muzikさんが初のライブセットで出演致します。
ワタクシは秋葉原重工CEO、Takayuki Kamiya氏とB2Bです。
年始にIncidentを飽きる程かけ続けた2人ですが、どうなることやら。ちなみに、もう1人くらい混ざるとか混ざらないとか。

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

次週02月27日は774Muzikさんが担当します。今回はこれにて。