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新作レイヴスタイルテクノ特集 (2020年04月版):今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/04/16

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

こうも平日、週末問わず遊び場が休業、休業だと本当に日常が退屈ですね。
実際、飲食店くらいしか開いておらず、人の往来も少ないという、東京のイメージとはかけ離れた光景が続いております。
ちなみに、我らが東京麺珍亭本舗は営業しておりました。

持ち帰りチャーシューを家で魔改造しても愉快なことになったりしますのでお近くにお越しの際は是非に。

他方、自宅にいながら楽しめるとしてDJ配信なんかは毎日のように誰かが行っており、一昔前のUstreamが流行っていた頃を思い出します。
前回の担当回でお伝えしたリレー配信プログラム、Music Unity 2020今週末に2回目が行われるそうなので、自宅待機のお供に聴きましょう。

一方、自分はというとSoundcloudの個人用アカウントを設立致しました。
やっとかよという感は否めません。

それこそ自宅待機期間を利用してMIXを生産しております。
特別連載期間中に行われたHardonize #34にてプレイしたハードテクノ総纏めをテーマとするものも先日アップロードしておりますので、ご興味の方は何卒。

さて、今年からワタクシの回はハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていくものとなっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

特別連載:ハードテクノとは何か? – 第1回:黎明期編


ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

今回取り上げるサブジャンル・・・というかテーマは

レイヴスタイルテクノ

です。

何度か当連載に於いて触れている通り、現行のメインストリームテクノの一部に於いて1990年代レイヴサウンドを再評価するムーブメントが起こっており、当時の音やフレーズをサンプリングした数多くの楽曲がリリースされております。
まんま当時の音を再現した、というよりはリズムや出音は現在の技術を駆使して作られているため、現行の一般的なテクノと並べても違和感なく、且つレイヴ特有のインパクトのある音は飛び道具、ピークタイムチューンとしてバッチリ機能するという良いとこ取りなスタイルなのです。

この手の音楽の面白い点として、所謂レジェンドと呼ばれる人たちが当時を思い起こしながら作ったであろうトラックもあれば、1990年代以降に生まれたためにヨーロッパレイヴ全盛期を体験していない、言わば若手のトラックメイカーたちによる作品も数多く存在するところ。
サウンドとしてはレイヴのテイストが過分に用いられているものの、その使い方については1990年代のトラックの枠組みを超えた独自解釈が大いに含まれているため、単純なオールドスクールの焼き直しではないところがまた魅力だと思っております。
あと個人的趣向として下品なサウンドは大好物なので、1度はまとめて紹介したかった分野でもあります。

リリースはアーティストやレーベルの枠を超えて今でもコンスタントに行われているものの、サブジャンルとして確立しているほどではないため、今回はテーマという括りでお送り致します。
通例通り、今年リリースされたものの中からピックアップしていくのですが、それでも1度に紹介できる量ではないので、インパクトの強いもの、トピック性の高いものを選定致しました。
あと備考的に今年括りでないものでオススメしたい曲というのもいくつか末尾に記載しておりますので、より良いレイヴライフを送る指標になれれば幸いです。

では、レイヴスタイルの新作テクノ紹介いってみましょう。

Filterheadz / Density

Density (Original Mix) by Filterheadz on Beatport

ベルギーのDJ/クリエイターFilterheadzによるテクノ。
ちなみに今週頭のリリースと出たてホヤホヤの新譜です。
過去にアーティスト特集を組んでおりますように、テクノヘッズであれば言わずと知れた大御所アーティストではありますが、その中の作品に於いても2019年のRadiusや2015年のStarburst (Filterheadz Remix)のように度々レイヴサウンドを取り入れたトラックを輩出しておりました。

この曲もその位置付けに当たる曲。
一聴して分かるレイヴスタブの連打が最大の特徴。
Filterheadzお得意のヘヴィー級ボトムも相まって破壊力満点の仕上がりです。
パワフルなピークタイムチューン。

Niereich, Shadym / Bashcid

Bashcid (Original Mix) by Niereich, Shadym on Beatport

共にドイツ出身のDJ/クリエイター、NiereichShadymによるテクノ。
アーメン+ディストーションアシッド+硬いビートとこれまたアグレッシヴなトラック。

遊び心がありつつもシリアスな雰囲気を纏ったところがまた良い感じ。
個人的にはやはり終盤で使いたくなる部類に入ります。

The YellowHeads / Energy System

Energy System (Extended) by The YellowHeads on Beatport

スペイン出身の覆面2人組ユニットThe YellowHeadsによるテクノ。
前述の2曲と比べるとこちらは深さに重点を置いたリズムメイクが施されており、よりアングラ傾向が強いです。

が、ブレイクが明けるとDensity同様、レイヴスタブが堂々とお目見え。
リフがシンプルな分、序盤で飛び道具的に使いたくもなるのですが、DJによって使いどころの解釈が分かれそうな曲、という言い方がより正確かもしれません。

Sebastian Groth / Power

Power (Original Mix) by Sebastian Groth on Beatport

ドイツのDJ/クリエイターSebastian Grothによるテクノ。
バウンシーなキックとドライクラップという、シカゴハウスを彷彿とさせるの組み合わせのリズムがファンキー。

しかしインパクトが強いのはDominatorシンセと呼ばれる、1991年のレイヴクラシック、Human Resource / Dominatorが発祥となっている独特の音。
リズムと合わさって、かなり飛び道具志向の強そうな曲だと認識しております。

余談ですが、このSebastian Grothが昨年にテクノ夫婦デュオ、Resistohrと組んで作った以下の曲はレイヴというか、ジュリアナ、デステクノのサウンドを用いたこれまたインパクトの強い曲なので、合わせて掲載しておきます。

Sebastian Groth, Resistohr / Here We Go Again

Here We Go Again (Original Mix) by Sebastian Groth, Resistohr on Beatport

ROBPM / D4 Damager (T78 Remix)

D4 Damager (T78 Remix) by ROBPM on Beatport

イタリアのDJ/クリエイターT78によるテクノ。
前回の担当回でも触れた通り、T78はこのスタイルのテクノを量産しているアーティストとして真っ先に名前が上がる内の1人です。
今年に入ってからは違う路線にも着手している様子が見られますが、代表的とも言える作風のものもあり、それがこちら。

まずイントロがアーメンブレイク丸出し、続いて差し込まれるWildchild / Renegade Masterのボイスサンプル、そして上述の曲同様、Dominatorシンセがメインリフとなってラフなキックと並走する前半パート。
後半パートでは更にT99 / Anasthasiaに代表されるオーケストラヒットまで繰り出されるレイヴアーミー総決起と言わんばかりのてんこ盛り。
ド派手路線に於いては要注目の作品です。

あとこれも今年括りではないのですが、昨年末にリリースされたDino Maggioranaとの共作もオルガンとスタブのユニゾンでこれまたド派手。
前回Hardonizeに於いてラストに使った曲でもあるので、再度推薦。

Dino Maggiorana, T78 / I Got What U Need

I Got What U Need (Original Mix) by Dino Maggiorana, T78 on Beatport

DJ Misjah, DJ Tim / Access (i_o Remix)

Access (i_o Remix) by DJ Misjah, DJ Tim on Beatport

DJ Misjah, DJ Tim / Accessといえば1995年にリリースされたアシッドテクノの大アンセムとしてクラシックに数えられる曲でもあるのですが、リリースから25年が経った今年、テクノとEDMを繋ぐアメリカのDJ/クリエイターi_oによってリミックスされた作品。
今のところ、2020年に起こったテクノ事件としては上位をマークする出来事です。

ほぼ原曲に忠実な構成をベースに、出音を現代に寄せたようなアレンジ。
リミックスというかリマスタリングに近いような印象も受けますね。
古のアシッドファンと最近のテクノヘッズ、双方納得の作品ではないでしょうか。

Mall Grab / RELEASE YOUR BODY (RECOGNIZABLE MIX)

RELEASE YOUR BODY (RECOGNIZABLE MIX) by Mall Grab on Beatport

イギリスのDJ/クリエイターMall Grabによるテクノ。
若くしてテックハウス、ガラージ、各種ベースミュージックなど、器用に作風を使い分けるアーティストではあるものの、何故かここ最近はハードテクノとレイヴに傾倒している感がある特異な存在。
その集大成ともいうべき初のアルバムが今年03月にリリースとなったWORSHIP FRIENDSHIPでして、この曲もその中に収録されているもの。

アーメンサンプリング、ファットなベースライン、レイヴオルガンと3種揃った構成は1990年代をそのままパッケージしたかのよう。
本来とは逆の意味で年齢を感じさせないタフなサウンド目白押しで、アルバムごと強烈にオススメです。

Raito / Dark Orb

Dark Orb (Original Mix) by Raito on Beatport

フランスのDJ/クリエイターRaitoによるテクノ。
記事執筆時点ではまだリリースされておらず、明日17日の発売となるものですが、かなり面食らったので最後にご紹介します。

Raitoもまたこの手のスタイルに於いては欠かせない重要アーティストの1人。
Rave 92Hardcore RaveSummer Of Loveなど、タイトルからしてレイヴの臭気漂うトラックが数多くあり、そのどれもがオールドスクールレイヴと現代テクノを繋ぐ架け橋となる素敵チューンなのですが、
明日発売となる3曲入りEP、Moon Tearはレイヴ経過後のトランスにあったようなリフをメインに据えた、これまでの作風とは少し異なったテイストのものとなっております。

何より、リズムが鬼硬い。
タイムリーなことに前回の担当回でテックダンス / テックトランスについて触れましたが、そのどれとも質感の違う、むしろハードテクノに近い強烈なキックが鳴り響いております。

言わばレイヴ×トランス×ハードテクノという未体験音楽。
しかもそれが3曲。
加えて取り上げるならば、これのリリース元はダンスミュージック界の覇者、deadmau5率いるmau5trapという点も輪をかけて異質。
いよいよ何かが起こりつつある感がビンビンに感じられる作品となっておりますので、是非要注目でお願いします。

以上、レイヴスタイルのテクノにスポットを当ててお送りしました。
この手のサウンドは見つけ次第購入してしまう癖があるため、紹介しきれなかった曲が大量にあるというのが惜しまれます。
今年括りではないけど、自分がよく使う曲としても

Circles (Original Mix) by Atix on Beatport
Jealousy (Special Request Remix) by Disciples on Beatport
Off Season (Original Mix) by Joy Orbison on Beatport
For The People (Original Mix) by Reinier Zonneveld on Beatport
Anasthasia (Falhaber Remix) by T99 on Beatport

この辺りはパパッと挙げられるので、是非ご参考の程。
サウンド面以外でも4つ打ちとブレイクビーツの双方の要素が入り混じっているのが他ジャンルとのクロスオーバーにうってつけでもあり、そこがまた魅力的に映るのだと思います。
このリバイバルがどこまで輪を広げるのかという点も含め、引き続き注目していきます。

と云った辺りで今回のサブジャンル特集はここまで。

次週04月21日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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新作テックダンス / テックトランス特集 (2020年04月版):今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/04/02

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

04月に入り、本来なら新しい学校や職場に通う方もいる季節です。
とはいえ、世間の混乱が未だ収束しきっていない状況でもあり、なかなか華やかなムードで迎えることもできないのが歯痒いところ。
直近で開催予定となっていたパーティー、イベントの中止や延期の報も毎日のように流れているのを見るのもなかなかにツラいので、早く元の日常に戻って欲しいと願うばかりです。

これによって打撃を被っている業種も多数あり、我々Hardonizeを行っている茶箱も例外ではないため、先日このようなお知らせが公開されました。
コロナウィルス感染症によるお店の運営ご支援のお願い | 音楽喫茶 茶箱 sabaco music&cafe
茶箱で使える20杯分のドリンクパスを通販もしくは店頭で購入すると、購入枚数によってリターンが得られるというもの。
このパスによって通常料金より安くドリンクが頼めるようになるため、同店に数回足を運べば元が取れます。
今後茶箱のパーティーに足を運びたいと考えている方がいらっしゃいましたら何卒よろしくお願いします。

この件については以前Hardonizeにご出演頂いたR-9さんがnoteで詳細に纏めてくださっているので合わせて紹介します。
茶箱を支援しよう|R-9|note

あと茶箱に関連するトピックとして、今週末に北海道、東京、福岡などのクラブが連携してストリーミングを行うという企画が立ち上がり、この中に茶箱も含まれております。
4月4日、日本全国に存在するミュージックヴェニューが協力するストリーミングフェスの第一歩が始動 – MOGRA 秋葉原
特にHardonizeは絡んでおりませんが、こちらもお時間がありましたら是非ご視聴ください。
すぐに日常の通りとはいかないまでも、仮想的に以前の日常に近い生活は継続していきましょうというお話でした。


しっかりね。

さて、今年からワタクシの回はハードテクノのサブジャンルにテーマを絞り、その中のオススメ楽曲について取り上げていくものとなっております。

ハードテクノとはどういった音楽を指すのか知りたいと云う方がいらっしゃいましたら約半年に渡ってお送りしておりました特別連載ハードテクノとは何か?をご参照ください。

特別連載:ハードテクノとは何か? – 第1回:黎明期編


ハードテクノをサブジャンルごとに分類し、それぞれの生い立ちや代表曲などをまとめております。

今回取り上げるサブジャンルは

テックダンス / テックトランス

です。
特別連載に於いては9回目に取り上げたテクノの質感を含んだトランス、ハードダンスのスタイルです。
煌びやかなメロディーやシンセサウンドは現行のテクノと縁遠いようでいて、その硬質なリズムはハードテクノとも相性が良いため、Hardonizeメンバーの場合はセットの終盤などに持っていきがち。
シリアスで緊張感のある音も好物ですが、なんだかんだでアップリフティングなものも未だに好きなのです。

リリースペースとしてはテックダンス発展期である2010年頃と比べると減少傾向にある、と云う点については前述の特別連載内に於いて触れた通りではありますが、完全に途絶えたわけではなく、
その一方でテクノの含んだトランスであるテックトランスが再注目を浴びており、それらの中にもテンポの速いスタイルの曲が多々存在するため、ここでまとめて紹介しようという魂胆です。

一応、Hardonizeがハードテクノのパーティーであることを念頭に置いて(分かっていますボス。本当です。)、ハードテクノとの相性が良さそうなトラックをピックアップしてお送りします。
先の特別連載期間中にリリースされたトラックも紹介したいので、今回は2019年~2020年とやや幅を広げた期間から選定しました。
ギリギリニューリリースと呼べるかな、できれば目を瞑って頂けると幸い。

あと、どうしても配信サイトの試聴ではブレイクの部分しか含まれていないケースも多々あったため、長い尺で音源が公開されているYouTubeリンクを埋め込み音源として貼り付けます。
その下にbeatportへのリンクを記載しておきますので、購入はそちらからどうぞ。

では、新作テックダンス / テックトランス紹介いってみましょう。

Everlight, Smith & Brown / Reprobate

30/03 – EVERLIGHT VS SMITH & BROWN – REPROBATE – YouTube

Reprobate (Extended Mix) by Everlight, Smith & Brown on Beatport

Reece SmithとAndrew BrownによるイギリスのプロデューサーユニットSmith & Brownと、同じくイギリスのプロデューサーEverlightとの合作曲。
これぞテックダンスと言わんばかりの王道系。
ちなみについ数日前にリリースされたばかりです。

半拍ズラしで重ねられたややクセのあるビートに疾走感のあるハイハット。
メインとなるリフはアラームのような長いスケールの音で、存在感もありつつタフさも感じさせます。
序盤から中盤、そして終盤のどのタイミングでも使えそうな優等生トラック。

Stoneface & Terminal / Rupture

Stoneface & Terminal – Rupture (Original Mix) – YouTube

Rupture (Extended Mix) by Stoneface & Terminal on Beatport

ドイツのプロデューサーユニットStoneface & Terminalによるテックトランス。
この曲に限ってはトランス特有の派手なシンセサウンドがあるわけではなく、むしろ際立つのはベースのループ感だったり、パーカッションリズム。
細かいエフェクトサウンドの配置は確かにトランスの手法ではあるものの、これはトランスというよりハードグルーヴに近いと言わざるを得ません。

音の1つ1つも非常にソリッドで洗練された印象を受けます。
これまたシーンを問わず機能しそうな出来る子といった感じ。
というわけでアッパー系ハードグルーヴが見つからないと嘆くSangoさんやその他テクノヘッズの皆さん、時代はテックトランスです。

Paul Denton / Mosquito

Paul Denton – Mosquito (Original Mix) – YouTube

Mosquito (Original Mix) by Paul Denton on Beatport

アイルランドのDJ/クリエイターPaul Dentonによるテックトランス。
こちらも派手さを削いだミニマル志向の強いボトム寄りトラック。
というかこれもメインパートで定期的に鳴っている音がハードミニマルを彷彿とさせます。

やや重心を後ろに置いたベースがテクノにしては異色かもしれませんが、全体通して無機質な感じはハードテクノに向いている筈です。
これをキーに色々なジャンルへの橋渡しができそうなトラック。

T78 / Darron (2K20 Rework)

Darron (2K20 Rework) – YouTube

Darron (2K20 Rework) by T78 on Beatport

イタリアのDJ/クリエイターT78によるテックトランス。
現行テクノシーンの一端を担うレイヴリバイバルスタイルの筆頭格でもあるT78が2020年に入ってからテックトランスにスポットを当て始めており、本作もそんな今年にリリースされたもの。

実は最近知ったのですが、T78は昔Activatorという名義で主にハードスタイルを手掛けていたアーティストでした。
1997年より現在まで続いているハードダンスの名門Activa Recordsの看板アーティストにまで上り詰めたActivatorですが、その一方でハードスタイル以外の音楽も実験的に制作していた時期がありました。
その1つが2011年に自身で設立したレーベルSubgroundの第1作目としてリリースされたActivator / Darronであり、これがアップデートされたものが本作に当たるわけです。
ちなみに現在はT78としての活動に専念するとしてActivator名義での活動は完全に休止しております。

原曲と比べると音の太さが段違いですね。
トランス由来のシンセは使われているものの、肉厚なリズム帯を軸としたかなりストイックな展開が続く曲。
黎明期のハードスタイルを遅くしたらこういう音になりそうと思わせる辺り、上述の出自にも納得です。

Hagane Shizuka / #D3Nd1

#D3Nd1 (Original Mix) – YouTube

#D3Nd1 (Original Mix) by Hagane Shizuka on Beatport

ハンガリーのDJ/クリエイターHagane Shizukaによるテックダンス。
特別連載でもご紹介しておりましたが、振り返って2019年にリリースされたテックダンスの中でも特に強烈だったなと思ったので改めてご紹介します。

国内コンピレーションへの参加経験もあるのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、このHagane Shizukaというアーティストはテックダンス、ハードハウス、ハードスタイルを含むハードダンスに対する造詣が深く、これまでに様々なサブジャンルのハードダンスを世に放ってきた凄腕利き。
その叡智が1か所に集約されるとどうなるか、という問いに対する1つの答えがこのトラックになります。
歪んだベースを核とする重厚なリズムにピアノ連打というメインパート、リズムの種類もパターンもコロコロ変わる展開とアグレッシヴ一直線。

特別連載の際はインダストリアル・ミーツ・ハードダンスとご紹介しましたが、端的に少ないワードで説明するにはこれがドンピシャだと思っております。

Lost In Noise / Heeding The Call

Heeding The Call (Extended Mix) – YouTube

Heeding The Call (Extended Mix) by Lost In Noise on Beatport

ドイツのDJ/クリエイターLostlyとポーランドのDJ/クリエイターIndecent NoiseのプロデューサーユニットLost In Noiseによるアシッドトランス。
お互いソロで作っている曲に関してはトランス全般に渡って手広く活動している印象を受けるのですが、組んだ際は今のところアシッドトランス1点絞り。
理由はよく分かりません。

アシッドトランスとはその名の通り、アシッドテクノと同様のアシッドシンセを用いたトランスです。
この曲もブレイクでこそ壮大なシンセが使われているものの、イントロとブレイク以外に於いては最後までアシッド鳴りっ放し。
そしてハードアシッドに負けず劣らず、ボトムが太い。
1つ1つのパートが長いという点も、テクノとの間に近似性を見出せます。

ちなみにこの曲がリリースされているWho’s Afraid Of 138?!というレーベルは個人的にオススメです。
『誰が138を怖がるんだ!?』という名前の通り、BPM138前後の曲、すなわちハードテクノに近いテンポの曲が大半を占めております。
リリーススパンも早く、1週間に1作品くらいのペースで現在まで活動が続いているので定期的なチェックが欠かせません。

Richard Lowe / Razorback

Razorback (Original Mix) – YouTube

Razorback (Original Mix) by Richard Lowe on Beatport

アイルランドのDJ/クリエイターRichard Loweによるテックトランス。
前述のRuptureやMosquitoに近いシリアス調トラック。
ドライブ感のあるリズムはやはりハードグルーヴと親和性高め。

最大の特徴はブレイク以降で差し込まれるカウベルっぽい音のメインリフ。
ハード系4つ打ちに於いてはあまり聴くことのない音なので、初めて聴いたときちょっと笑いそうになりました。
そういうアンバランスさにも魅力を感じるトラック。

Commander Tom / Are Am Eye? (John Askew Remix)

Are Am Eye? (John Askew Remix) – YouTube

Are Am Eye? (John Askew Remix) by Commander Tom on Beatport

1995年にリリースされたハードハウス、ジャーマントランスの傑作Commander Tom / Are Am Eye?をイギリスのクリエイターJohn Askewが2014年に非公式リミックスしたという経緯がありまして。
それはJohn AskewのSoundcloud上でフリーダウンロード公開されていたのですが、ある時を境に配布中止。
(ページそのものは今でも現存しております。)
その後時が経ち、2019年にオリジナルがリリースされていたのと同じNoom Recordsより正式に販売されたという、なかなかのストーリーを持った曲です。

原曲に倣ってアシッドあり、フーバーありという往年のトランスのフレーバーが遺憾なく発揮されている曲。
その一方でJohn Askewお得意の肌理細かいリズムは綺麗というほかなく、元ネタに頼りきりではない、ちゃんと聴かせるアレンジになっております。

完全に余談ですが、先程久しぶりにJohn AskewのSoundcloudページを見たらDave Clarke / The StormFutureshock / Sparcといったテクノ/ハウスを元ネタとするブートレグがつい数日前に公開されていたことを知って驚き嬉しくなりました。
サイケデリックトランス出身としては同じく公開されたばかりのAstrix / FeeL.S.Dアレンジにも懐かしさを覚えました。

Felix R / Danger

Danger (Original Mix) – YouTube

Danger (Original Mix) by Felix R on Beatport

オーストラリアのDJ/クリエイターFelix Rによるテックトランス。
曲名とは裏腹にエコー+ディレイによるエモーショナルなリフ回しを前面に押し出した綺麗系トラック。
その一方でハイハットをはじめとする金物リズムの重なり方はかなりテクノっぽい。
セットの終盤とかに使いたくなる感じ。

実はこの人も過去のある人で、以前の名義はDark Electric
テックダンス誕生直後の2008年にレーベルElectric Releasesを立ち上げ、テックダンスの発展に一役買ったのでした。
更にここのアーティストページを見るとni-21さんやBee. Bee.さんの名前が所属アーティストとして並んでおり、以前から日本と交流のあったアーティストでもあったわけです。

Nhato / Enigma

[OTO-055] Nhato – Enigma – YouTube

Enigma (Original Mix) by Nhato on Beatport

最後はこちら。
日本のDJ/クリエイターNhatoさんによるテックトランス。
とにかくリズム帯が厚い。
アップリフティングなシンセ層も絡まってグイグイブレイクまで引っ張っていきます。
そんでもってブレイクのユーフォリックなノンビートパートを経てNhatoさんの武器であるスケールの長いメロディーが炸裂する、神秘的サウンドスケープと銘打たれた次世代型トランス。

複数種類のベースシンセをスイッチしたり、シンセの重ね方だったりとテクニカルな部分も光るトラック。
毎度何食ったらこんな曲を思いつくのだろうと思わずにはいられません。

以上、テックダンス / テックトランスにスポットを当ててお送りしました。
過去2回サブジャンル特集を行ってきた中で早速最大分量となってしまいましたが、本連載で大々的にスポットが当たる機会もなかったなと思ったのでここぞとばかりに。
なんだかんだで我々Hardonizeクルーも多かれ少なかれ、トランスに触れて育っている部分もあるため、それがテクノと結びついた産物も同じくらい好みだったりするのです。
これらのスタイルの曲も引き続きフォローしていきたいと思っております。

と云った辺りで今回のサブジャンル特集はここまで。

次週04月07日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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