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【特集】『M3-2020春』同人テクノ:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/03/19

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

先週のSangoさんのエントリー、及び一昨日のYudukiボスのエントリーで告知されている通り、今週末21日の土曜日に我々3人でパーティーを執り行います。

【3/21】早稲田音泉 厳選かけ流し – twinvite

普通のクラブパーティーと異なり、B2Bとトークを通して各個人オススメの音楽を紹介しようという催しです。
当連載に於いて毎度テクノ、ハードテクノに絞って楽曲紹介を行っておりますが、そこそこ長いこと我々もDJをやっており、それら以外の音楽にも片足を突っ込んでいるワケでして。
なのでHardonizeのメンバーが主宰という形ではありますが、テクノ、ハードテクノ以外の音楽もバンバン取り上げられると思われます。
というか、取り上げます。

そして我々もまた新しい音楽を知りたい、ということでB2Bとトーク、どちらも来場者の乱入大歓迎です。
イチオシの音源を携えて(※)お越し頂けると大変嬉しいです。
入場料も1000円とかなり安めの設定としておりますユエ。
(※持参方法につきましてはリンク先告知ページをご確認ください。)

また、当パーティーは茶箱のYoutubeチャンネルにて最初から終わりまで配信されます。
体調に不安のある方や外出を控えたい方はそちらからご覧頂くことも可能となっておりますので、そちらも是非ご検討ください。

雰囲気としてはユルい感じの催しになると思われますが、好みの音楽を発見する機会になれれば嬉しいです。
21日の15時よりいつもの早稲田茶箱にて開催。
現地と画面越しの参加をお待ちしております。

さて、前回担当回の直後の週末は同人音楽即売会M3でした。
世間を騒がせている流行り病の影響で出展ブースの半数近くが空席という、十数年この即売会に通ってきて初めて見る光景がありました。
自分の周囲でも開催を延期/中止するパーティーがあったり、余波が極めて身近なところにも及んでいることをまざまざと実感した次第です。
先日コメントが発表になりましたが、05月に開催を控えているコミックマーケット現時点では開催の見通しが立っていないようですね。

そんなわけで、釣果もいつもに比べるとかなり少なめ。



状況が状況なので致し方なし。
内訳はテクノ、ハードコア、その他音楽で等比率くらいといった感じです。

とはいえ、購入したもののクオリティについては期待通りというか、中には良い意味で期待を裏切るものもあり、インディーズ音楽の面白さここにありといった塩梅でした。
と云うわけで予告通り、当連載に於いて7回目となるM3特集を行います。

前回『M3-2019秋』特集はこちら。

【特集】『M3-2019秋』同人テクノ:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2019/10/31

それより以前の特集はこちらになります。
2019春 / 2018秋 / 2018春 / 2017秋 / 2017春

これまでと同様、表記順は『【アーティスト名】 / 【リリース名】 [【サークル(レーベル)名】]』でテクノ的オススメを挙げていきます。

それでは

『M3-2020春』で買った同人テクノ

いってみましょう。

本間本願寺 / 源氏香5 [ビッグファイア]

Genjiko5_preview – YouTube

当連載的には何を置いてもまずこちら。
これまでに行ったM3特集の全ての回で取り上げているHomma Honganjiさんのフルアルバム、源氏香シリーズの第5段。

今回はハイエナジー/ユーロビート篇という本人の弁もあり、ディスコミュージック好きとしては大いに期待していたものでしたが、往年の80年代ユーロビートのリフが現代ハードグルーヴのビートにドッキングしたトラックが10曲も収録された内容にはただただ平伏するばかりでした。
お腹いっぱい感が凄い。
このハイエナジー/ユーロビートという音楽が現行のテクノから見ると音使いやテンション的に異質な要素であり、その2つが合わさることで現行のテクノにはないグルーヴが生みだされているのがよく分かります。
ハードハウスとかテックダンスにも通用しそうな辺り、昔のBootekを彷彿とさせますね。

個人的な好みは大ネタ、Green Olives / Jive Into The Nightサンプリングの卑怯且つド級にファンキーな4曲目、本間本願寺 / 御法

http://bigfire.info/

MAREAM / 0 TO X [SPECTRA]

0 to X from SPECTRA on Beatport

現行ジャパニーズテクノシーンの先鋒Hiroyuki Arakawaさんのレーベル、SPECTRAよりリリースされたMAREAMさんのデビューアルバム。
厳密にはM3の少し前にリリースとなっていたようで、現時点ではこうしてBeatport経由でも購入が可能となっております。

規則的且つ無機質なビートを軸にした重く冷たい雰囲気を纏ったトラックにスポットを当てたストイックな作品。
現行のテクノを語る上で欠かせないキーの1つであるダーク/インダストリアルをしっかり押さえた楽曲群はどれもDJユースに富んでいます。
一口にダークテクノといっても、ものによってサウンドがヒプノティックであったりスモーキーだったり、果てはハードミニマルの速度に踏み込んだりと色々な切り口があることを伝えてくるものとしても逸品。

個人的な好みは同名のテクノアンセムを彷彿とさせるリフでありながら派手さを完全に削いだシリアスな音使いが聴ける4曲目、MAREAM / Bells

http://spectra-label.com/

V.A. / M3 Exclusive [Charterhouse Records]


Charterhouse Records@M3春第一展示場K-14b / Twitter

過去にご紹介したこともあるテクノ、ハウスをカセットという媒体でリリースすることをメインスタンスとしているレーベル、Charterhouse Records
bandcampbeatportにレーベルページがあるのでバックナンバーの購入はフィジカル、デジタル共に比較的容易ではあるのですが、前回秋のM3から会場限定で未発表曲の収録されたEPをリリースしており、それが本作となります。

レーベル全体の強みである硬め且つグルーヴィーなリズムを前面に押し出したテックハウスはどれも即戦力間違いなし。
アシッドシンセあり、スペーシーなパッドあり、アーバンなブラスリフありという個性に富んだ4曲で、テックハウスの枠外に向けても十分通用すると思われます。
国内ハウスレーベルとしても重要度の高いCharterhouse Recordsのレアトラックス、是非何かしらの機会でゲトってください。

個人的な好みは暗過ぎず明る過ぎずの丁度良い塩梅のミニマルなリフとビートがBPM130オーバーの速度で展開する、テクノに踏み込んだかのような4曲目、Motoki Hada / Raohe

http://charterhouserecords.com/

ancou / YAMAKAMINARI [旅音]

YAMAKAMINARI Sample by ancou | Free Listening on SoundCloud

エレクトロニカ、フィールドレコーディング、ボーカロイド、ジューク/フットワークとなかなかコントラストの強いワードの集合をフィーチャーしているサークル、旅音
今回初めて目に入ったのでいくつか作品を購入した中の1枚がこちらです。
こういった未知のアーティストの作品と出会えるのもこういった即売会ならでは。

で、実際に聴いたところ、全く予想していなかった山岳をテーマとする電子音楽、ゴルジェでした。
ゴルジェについてはゴルジェの第一人者であるところのhanaliさんが運営しているニュースサイト、兼ゴルジェを専門とする国内レーベルでもあるGORGE.INなどが詳しいですが、
要は歪み系エフェクトが加えられた打楽器(主にタム)を主軸とする民族音楽と電子音楽の融合点と言えるジャンルです。
その呪術的でディープな雰囲気とリズムのパワフルさがアングラ的人気を博していることまでは存じておりましたが、こういった形で手に取るとは思っていませんでした。

作品の内容も自分が捉えていたゴルジェのイメージに当て嵌まるものであり、且つゴルジェがインターネットを介してその認知度を向上させたという背景を汲んでなのか、同じくネット音楽の象徴とも言うべきボーカロイドを使っているのが面白いところ。
以前よりアイディア重視の作品もインディーズ音楽の華と申し上げているのは、やはりこういったものがあるからなのです。

個人的な好みは強烈に歪み、増幅されたタムの音がエレクトロニカ的コラージュを施されたボイスサンプリングとエキゾチックな笛のフレーズとの間を縫っていく2曲目、ancou / サンサイ

https://tabionm3.tumblr.com/

V.A. / アイドル甲子園 [アキラトラックス]

AKTX-001 V.A. – アイドル甲子園 – YouTube

最後はこちら。
匿名アーティストによる作品名からしてどうなのかと思ってしまいがちな1枚。
前もってお伝えすると、いわゆるアイドルをフィーチャリングした作品であるとか、リミックスであるとかではなく、むしろ関係ありません。

更には今回リリースされたものはリマスタリング版に当たりまして、オリジナルのリリースは2000年、つまり20年前。
そのリリース情報を示すページがDiscogsに存在するのですが、よくよくクレジットを見るとその匿名アーティストが誰なのか判明します。

で、肝心の内容は歌謡曲、TV番組、そして往年のレイヴミュージックに至るまであらゆるものがサンプリングされ、レイヴは元よりアシッドテクノ、ハードハウス、ハッピーハードコア、ブレイクビーツに魔改造された下世話とも言うべき楽曲がずらり。
平たく言うとナードコアというやつです。
レイヴミュージックの精神性というべき快楽性の追及というテーマを各種サンプリング、及びサウンドから完全踏襲している作品。
アルバム名、トラック名の脱力感、そしてこの楽曲の内容など総括すると、正体が分かった方なら『あの人なら仕方ない。』と思うはず。

個人的な好みは電気がビリビリするボーカルを含むやっぱり下世話なサンプリングを重ねに重ねたレイヴ精神満載のテクノである12曲目、— / FLASHBACK

まだまだ取り上げたい作品は沢山ありますが、今回はここまで。
購入枚数こそ少なかったものの、個々の作品そのものの濃度は従来通りでいつも通り、満足しております。
インディーズ音楽の中でも限られた界隈にはなってしまいますが、国内音楽の動向を測るという意味でもこのような即売会には意味があると思っておりますので、未見の方であれば1度足を運んでみては如何でしょうか。
例えば今回紹介したCharterhouse RecordsのM3 Exclusiveや、アキラトラックスのアイドル甲子園といったレア音源と出会えるのもここならではの魅力ですので。

というわけでYudukiボス、ワタクシはラーメンを所望します。
今週末に東京麺珍亭本舗でも可。

次週03月24日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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【特集】Hardonize#35 プレイリストピックアップ:今週のオススメハードテクノ - Resident’s Recommend 2020/03/05

こんばんは。TAK666です。
レジデントが代わる代わるオススメハードテクノを紹介するこのコーナー、
2週間ぶりにワタクシが担当致します。

ほぼ2週間経ってしまいましたが、Hardonize 35回目が無事に終了致しました。
お越し頂いた方々、本当にありがとうございました。

自分はこの日、別パーティーとダブルブッキングだったため、途中抜けしてしまいましたが、前後編でくっきりと音のコントラストが出た回だったのではないでしょうか。
というのも今回のゲストであるDJ RINNさんもgekkoさんも割とアッパーなハードテクノを好む方々であることが事前に分かっていたため、前半を務めた774Muzikさんと、Yudukiさん、そして自分の間で『明るい音はあの人たちに任せれば良いんじゃない?』という見解一致があったのです。
実際序盤はかなりストイック進行が多く、音に緊張感のある空間が出せたと思います。
これもテクノの醍醐味の1つだと個人的には思うのですが、トリを担うSangoさんは『え、今回みんなこんな感じ?』と途中まで内心ヒヤヒヤしていたそうな。

そしてゲスト2人を含む後半もその思惑通りというか、一転してアッパーな選曲が繰り広げられたようで、やはりこれもハードテクノの魅力の1つだと思うわけです。
gekkoさんのプレイに関しては全く見られないまま会場を後にしてしまいましたが、重ね重ねゲスト両名には感謝をお伝えしたいところです。

あとテックハウス、メインストリームテクノからビルドアップしていってハードミニマルに着地させる774Muzikさんのプレイはやっぱり個人的に好みでした。
近年のテクノにもしっかりリスペクトを払いつつ、自分のコアを通していくスタイルはトップバッターというポジション的にもバッチリハマっていたように思えます。

さて、自分のプレイも上記の通り、かなりストイック方面に寄せた内容となりました。
レジデントメンバーを含む他の方々があまりやらないであろうダークテクノやベースミュージックなど、『深度』に重点を置いたアングラ選曲。
決して万人受けするような音ではないと認識しておりますが、万が一お気に召した内容であったなら幸いです。

というのも、ここ数年でベースミュージックからテクノに手を広げたクリエイターやDJが一定数いる、ということについては以前から当連載で触れている通りであり、両音楽に於ける最近のトラックは相性の良いポイントが存在する点は個人的にはかなり面白いと感じております。
且つ、ここ数か月で買ったトラックの中にテクノの質感を持ったドラムンベースが増えつつあり、中にはドラムンベースからテクノにシフトする曲という曲まで現れ始めており、これは結構大きな衝撃でした。
その1つは実際に今回使用しているのですが、こういうクロスオーバー冥利に尽きるトラックは自分のプレイの幅を広げてくれるので堪らなく愛おしいです。

そんなワケで今回はHardonize #35にてプレイした楽曲の中からピックアップしてお送り致します。
全容はこちら。
テクノ~非4つ打ちテクノ~ベースミュージック~テクノ~ドラムンベース~テクノ
大体2~3曲括りで1タームとし、別ジャンルへと遷移していくイメージです。

No Artist Trackname Link
01 Ernst Mantel Party Bis Es Dach Lupft (Absolution Bootleg) SoundCloud
02 Leonard De Leonard, La Fraicheur Sang froid (Caravel Remix) Beatport
03 Reinier Zonneveld For The People Beatport
04 Kenji Kawai Ghost in the Shell (SIRO Remix) SoundCloud
05 Dahryl You Don’t Always Have to Win Beatport
06 Freiheit My House (Scorpion Mix) Beatport
07 DJ Ogi Off Da Beat SoundCloud
08 Militia Authority Beatport
09 Pinch & Kahn feat. Killa’s Army Crossing the Line Beatport
10 Ill_K feat. Chad Dubz Ninja Technique Beatport
11 Teffa Old Days Beatport
12 Radio Slave, SRVD, Patrick Mason Nasty Beatport
13 WLDERZ Freeze Beatport
14 Tensal Opticon Beatport
15 Sam Kdc Lead Me into Temptation Beatport
16 Sinecore Lazy Bloody Eyes Beatport
17 Abstract Elements Tenderness Beatport
18 Exept & OaT Broken Mechanics Beatport
19 Rave Creator & The Mover Atmos-fear (Andy Lane Techno Remix) SoundCloud
20 Dino Maggiorana, T78 I Got What U Need Beatport

いつもならここから数曲かいつまんでご紹介するところですが、今回曲数もそこまで多くなく、Sangoさん774Muzikさんも全曲プレビュー付きで自身のトラックリストを紹介しているため、今回は自分も全曲コメント載せます。
結構お気に入りが多くて絞り切れなかったという理由もあります。

01 / Ernst Mantel / Party Bis Es Dach Lupft (Absolution Bootleg)

Ernst Mantel – Party Bis Es Dach Lupft (Absolution Bootleg) by ABSOLUTION [DE] | Free Listening on SoundCloud

ドイツのクリエイターAbsolutionによるハードミニマル。
牧歌を思わせる、のほほんとしたギターと歌が入ったと思ったらそれと相反するかのようなヘヴィーなリズムが追従する完全飛び道具トラック。
冒頭から笑いを取れたので大変満足です。
尚、フリーダウンロードなので同じように笑いを取りたい方は是非お持ち帰りください。

ちなみに元ネタはドイツのコメディアン兼ミュージシャンであるErnst Mantelという人のPartyという曲。
更にこれを同じくドイツのテクノクリエイターTimo MandlがサンプリングしたPardy bisses Dach Lupftという曲があり、これに影響を受けたAbsolutionをはじめとする新興のテクノクリエイターたちが2018年から2019年にかけて、このネタでトラックを作りあっていたという経緯がありました。
Soundcloud上でこのタイトルを検索するとその中のいくつかについては確認することができますが、発端となったTimo Mandlの曲も含め、手法としてはどれもほぼ同じです。

02 / Leonard De Leonard, La Fraicheur / Sang froid (Caravel Remix)

Sang froid (Caravel Remix) by Leonard De Leonard, La Fraicheur on Beatport

フランスのクリエイターCaravelによるアシッドテクノ。
シンプルなアシッドシンセのリフに太いベース、そしてハイハットとクラップの走る感じが重厚さを醸す硬めな仕上がり。
テクノシーンあるあるとして女性の方が攻め気のある作品が多いというジンクスがありますが、Caravelもまた女性ということでそれを裏付ける曲といえるのではないでしょうか。

03 / Reinier Zonneveld / For The People

For The People (Original Mix) by Reinier Zonneveld on Beatport

オランダのクリエイターReinier Zonneveldによるテクノ。
近年のレイヴリバイバル系テクノに於いて欠かせないアーティストであり、本作もそんな彼の十八番が遺憾なく発揮されております。
肉厚なボトムとインパクトのあるレイヴシンセのリフのユニゾンはド直球に好み。

04 / Kenji Kawai / Ghost in the Shell (SIRO Remix)

[FREE DL] Kenji Kawai – Ghost in the Shell [SIRO BOOTLEG] by SIRO | Free Listening on SoundCloud

ドイツのクリエイターSIROによるダークテクノ。
タイトル通り、GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊の劇中曲川井憲次 / 謡I – Making of Cyborgが元ネタ。
そのオリエンタルなサンプリングが深いテクノのビートに乗ることである種の不穏感が演出できており、元ネタ抜きにしてもお気に入りのトラック。
勿論、フリーダウンロードでございます。アリガタヤ。

05 / Dahryl / You Don’t Always Have to Win

You Don’t Always Have to Win (Original Mix) by Dahryl on Beatport

イギリスのクリエイターDahrylによるインダストリアルテクノ。
歪んだビートとドライな金物リズム、スモーキーなFXと全てが無機質でシリアス。
近年のメインストリームテクノに於けるハードテクノ要素の流入といった辺りも取り上げたかったので。

06 / Freiheit / My House (Scorpion Mix)

My House (Scorpion Mix) by Freiheit on Beatport

イタリアのクリエイターFreiheitによるダークテクノ。
1990年にリリースされたレイヴクラシックとしても名高いThe Break Boys / My House Is Your House (And Your House Is Mine)のボイスサンプリングを使い倒したもの。
テクノ、ハウスに於いてはあらゆるリミックス、ブートレグが量産されたため、この声ネタは聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか。

こちらもひたすら硬いビートが狂暴でストイック。
ドライクラップの感触とか、治安の悪さも加わっている感が◎。

07 / DJ Ogi / Off Da Beat

DJ Ogi – Off Da Beat – Techno Factory 8FREE DOWNLOAD) by DJ Ogi | Free Listening on SoundCloud

クロアチアのクリエイターDJ Ogiによる非4つ打ちテクノ。
01月に執筆した【特集】フリーダウンロード2019 (後編)でも取り上げた通り、昨年にフリーダウンロードで公開されたトラックなのですが、2016年にEPでリリースされていたものだったことは後に知りました。
ハードテクノ、シュランツクリエイターとしてのキャリアに裏打ちされた硬質なビートが非4つ打ちで進行する変わり種。
こういったインダストリアル・ミーツ・ブレイクスみたいなテイストも飛び道具感あって好き。

08 / Militia / Authority

Authority (Original Mix) by Militia on Beatport

イギリスのクリエイターMilitiaによる非4つ打ちテクノ。
こちらも同系統のインダストリアル・ミーツ・ブレイクススタイルのトラック。
ちょっとヒプノティックなウワモノが特徴的ですかね。

で、このMilitiaは去年デビューしたばかりという最若手の部類なのですが、本作の1つ前に出たEP全曲インダストリアル・ミーツ・ブレイクスという、個人的にちょっと侮れない存在感があります。
この調子でテクノの垣根を壊して回っていって欲しいところです。

09 / Pinch & Kahn feat. Killa’s Army / Crossing the Line

Crossing the Line (feat. Killa’s Army) (Original Mix) by Kahn, Pinch, Killa’s Army on Beatport

イギリスのクリエイターPinchKahnのタッグに加え、Killa’s ArmyがMCを務めたグライム。
この激硬いキックは絶対にインダストリアルと相性が良いと思ったのでこういう形でジャンルシフト。
硬質なビートにMCが入るとちょっとギョッとする感じも込みで、こういう異物感は追求していきたいですね。

10 / Ill_K feat. Chad Dubz / Ninja Technique

Ninja Technique (Original Mix) by Ill_k, Chad Dubz on Beatport

ドイツのクリエイターIll_KとイギリスのクリエイターChad Dubzという国境を越えた組み合わせでありながらタイトルがニンジャという、更に異国を増しているダブステップ。
引き続きビートは硬い音を維持しながら音の隙間を開けていく試み。
深度のあるベースもこの手のジャンルならでは。

11 / Teffa / Old Days

Old Days (Original Mix) by Teffa on Beatport

イギリスのクリエイターTeffaによるディープダブステップ。
ベースの深さはそのままに浮遊感のあるウワモノと、複雑なキックの配置が独特です。
こういうミニマルな感じはテクノにも通ずるところがあると思うのです。

12 / SRVD / Nasty

Nasty (Original Mix) by Radio Slave, SRVD, Patrick Mason on Beatport

イギリスのクリエイターRadio Slaveとドイツのボーカリスト、パフォーマーPatrick Masonのユニット、SRVDによるヴォーグハウス。
我々世代だとRadio Slaveは2000年代の新世代テクノスターという印象が強いのですが、そのヒトクセあるトラックは時にテクノの枠組みを大きく超える瞬間があり、それが現行の彼のプロダクションにも表れている、という好例でもあります。

ヴォーグハウスについては2014年のこの記事なんかが分かりやすくまとめられておりますが、ベースミュージックのリズムやベースを取り入れたハウスの亜種です。
昨今のテクノとベースミュージックの接近というトピックからもそう縁遠い存在ではないため、是非お見知りおきを。

13 / WLDERZ / Freeze

Freeze (Original Mix) by WLDERZ on Beatport

フランスのデュオユニットWLDERZによるヒプノティックテクノ。
ザラついたビートにアラームっぽいシンプルなリフがひたすら反復するという、ミニマルテクノの現代版ともいえるスタイル。

最近、Beatportの新カテゴリーにTECHNO (RAW / DEEP / HYPNOTIC)が加わったことが話題になりましたが、その恩恵としてこういった曲が探しやすくなることになることについては期待したいところ。

14 / Tensal / Opticon

Opticon (Original Mix) by Tensal on Beatport

スペインのクリエイターTensalによるヒプノティックテクノ。
終始ノイズっぽいサウンドが鳴り響いていたり、同周期で延々と繰り返されるリズムなど、こちらもかなりミニマル指向の強い作品です。
Tensalはこの手のトラックに於いて抜群の信頼性があると勝手に思っております。

15 / Sam Kdc / Lead Me into Temptation

Lead Me into Temptation (Original Mix) by Sam Kdc on Beatport

スペインのクリエイターSam Kdcによるグレイエリア。
『グレイエリアとは何ぞや?』という方は以前執筆した【特集】グレイエリアをご参照ください。
リズムが複数の間で同時に進行するエクスペリメンタル音楽で、この曲も3拍子のテクノと4拍子のブレイクビートのリズムが並走しております。
それを利用して今回もテクノからドラムンベースにシフトさせました。

このSam Kdcと以前特集したアメリカのASCというアーティストはこのジャンルの第1人者ですね。
最新鋭にして極北を走るクリエイターとして是非ご留意の程。

16 / Sinecore / Lazy Bloody Eyes

Lazy Bloody Eyes (Original Mix) by Sinecore on Beatport

ベルギーのクリエイターSinecoreによるドラムンベース。
深いながらも主張のあるベースとテンポに対して半分の間隔で組まれたリズムが特徴的。
こちらもかなりミニマル且つストイックなテイスト。

17 / Abstract Elements / Tenderness

Tenderness (Original Mix) by Abstract Elements on Beatport

ロシアのクリエイターBopDiagramによるユニットAbstract Elementsによるドラムンベース。
漫画チックなジャケットや優しさというタイトルからは到底想像できない変なリズム、というか中盤以降完全に4つ打ちになる突然変異系トラック。
アシッドシンセが入ってくるパートもわけが分からな過ぎて本当に大好き。
既に今年に入ってから出演したパーティーで3回使っているくらい、お気に入りです。

実は未リリースの時から耳にしており、『何だこれは!?』と思ったこともあってずっとリリースを待っていた作品。
それが数年経ってようやく発売となったのが去年だったのですが、個人的には2019年の最大問題作だと思っております。
異端にして最新鋭。

18 / Exept & OaT / Broken Mechanics

Broken Mechanics (feat. OaT) (Original Mix) by Exept, OaT on Beatport

イタリアのクリエイターExeptとドイツのクリエイターOaTによるドラムンベース。
でありながら後半はテクノにシフトチェンジする、クロスオーバーにもってこいのトラック。
両パートともカッチリ作ってあって大変使いやすいというのも良ポイント。

冒頭で触れたように、この手のドラムンベース⇔テクノの遷移トラックが結構出てきたように感じます。
グレイエリアの存在もそうですが、こうやってジャンルの垣根を積極的に乗り越えていく風潮が出ているのはとても良いことだと思っております。

19 / Rave Creator & The Mover / Atmos-fear (Andy Lane Techno Remix)

Rave Creator & The Mover – Atmos-fear [Andy Lane Techno Remix] (Free Download) by Andy Lane (Official) | Free Listening on SoundCloud

オランダのクリエイターAndy Laneによるテクノ。
実は原曲はこの通り、1994年にリリースされたガバだったりします。
あまりガバっぽさのないアレンジに聴こえますが、よく注意するとブレイクでうっすらガバキックが入っていたりする辺り、原曲に対するリスペクトが感じられます。

その一方、異ジャンルアレンジの不和のようなものもなくテクノに落とし込めているのが良アレンジ。
これもフリーダウンロードなので是非お持ち帰りください。

20 / Dino Maggiorana, T78 / I Got What U Need

I Got What U Need (Original Mix) by Dino Maggiorana, T78 on Beatport

最後はイタリアのクリエイターDino MaggioranaT78によるテクノ。
やはりというか何というか、レイヴもの大好き。
オルガンシンセとレイヴスタブの連打がド派手で高まります。

これも両者ともこのスタイルのテクノのトップなので、引き続きチェックを欠かせない2人。
いずれここにもスポットを当ててご紹介する予定です。

以上、Hardonize #35のトラックリストをお送り致しました。
所謂ハードテクノという言葉からは連想できないような曲も使っておりますが、2020年現在のハードテクノの解釈を広げていくとその延長線にはこういった音楽も上がってくるということでひとつ。
音楽の進化は日進月歩なので、パーティーが続く限りはレガシーの部分だけでなく、新興的な側面にも光を当てていきたいところです。

また、それらの情報についても引き続き当連載では積極的に触れていきたいと思っております。
今後ハードテクノとその周辺音楽がどういった進化を辿っていくのかについては、そこそこの期間聴いててパーティーを行っているということを差し引いても十分に興味がありますので。

あ、次回のワタクシ担当回は恒例のM3特集回になります。
国内インディーズテクノ情報をお求めの方は何卒よしなに。

次週03月10日は774Muzikさんが担当します。
今回はこれにて。

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